エロパロ板「おむつ的妄想」スレッドに投下された作品のまとめwikiです。

満月の、せいだろうか。

小さいころからしょっちゅう泊まりに来て、見知っているはずの呉羽ちゃんの家が、まるっきり別のものに変わっているような、そんな妖しい錯覚。
私は、涼やかな潮風に乗って狂気がやってくる気がして、パジャマの裾をぎゅっと握った。

すべての違和感の元凶は、トイレの床の上に我が物顔で鎮座する、写実的な磁器の「あひる」……。
その背中には深い穴があいていて、甕のようになっている。

「何なん、これ。ねえ、呉羽ちゃん?」わたしの声は、びっくりするほど心細げ。
「へんな意地悪はいかんよ……」

「私が意地悪をするように見える?」

「いや、絶対しいひんとは思うけど……」

頭を抱えたくなる。暑さか、はたまた冷や汗だろうか、首筋に雫がつぅっと流れた。
呉羽ちゃんの家は海のそばに建っていて、波打つ音を遠くに聞いていると、中有の世界をたゆたうような嫌な心地に襲われる。
見間違いかもしれない、と思い、もう一度トイレのドアを開ける。
けれどそこには相変わらず、格子窓から射し込む月明かりに照らされた忌々しい造形物…………「あひるのおまる」が、わたしをせせら笑うかのように横たわっていた。

「あのね、呉羽ちゃん」

「何?」

「わたし、今めっちゃトイレしたいんです」

「知ってるよ。だから、先にお済ましあそばせ?」

本当に悪気のかけらもなさそうな呉羽ちゃんの顔を見ていると、なんだか催眠術にかけられたように、事のおかしさが薄らいでゆく気がする。
とはいえ、大人しくおまるに座るわけにもいかず、さりとてこのまま踵を返してベッドへ戻ることもできず。私は困惑と恐怖から、立ち尽くすしかなかった。

「ちがうの……! やから、本当のトイレの場所を教えてほしい、ってことなんだけど」

「…………だから、ここへ連れてきたんだよ……。ねえ、葉月ちゃん、早くして? 私、もう漏っちゃいそうだから」

そう言い置いて呉羽ちゃんは、わたしをトイレへ押し込むと、ばたんと強くドアを閉めた。

正直、そのときわたしの我慢はピークを大幅に超えていて、「あひるのおまる」でも何でもいいから、トイレがしたい……。そんな悪魔の誘惑が、脳の中で感染症のように広がっていた。
もどかしい手でパジャマをおろす間にも、けたたましいアラートが頭の中を乱す。膝ががくがく震える。

(大丈夫、誰も見てないから……)

あひるの頭から左右に伸びる取手に手を掛け、深い穴の上にしゃがみこむ。とたん、ほとばしる水流音が、あられもなく響いた。



…………ばちゃばちゃばちゃ、じょぉぉぉぉ…………



…………その夜わたしと呉羽ちゃんが、おしめをびちょびちょにしながら見ていたのは、こんな、余りに品のない夢だった。

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