「う・・・く・・・」
言葉も無く抱き合う二人の耳に、くぐもった声が届いた。
忘れていたというより、無視していたのだろう。
麻尋が眉をひそめてみなみを窺い、縋る瞳を睨みつけた。
「どうした。顔色が悪いぞ?」
薄く汗を滲ませながら、落ち着き無く体を揺すっている。
その態度がなにを意味するか知りながらも、晃揮は殊更に問いかけた。
みなみが悔しさに歯噛みし、鋭くにらみ返す。
「言いたいことがあるなら言えよ。聞くだけ聞いてやる」
「・・・トイレに」
「トイレに行くような事情があるのか?」
嘲りの声にも反撃できない。晃揮だけでなく、麻尋までもが薄笑いを浮かべている姿に、
悔しさに歪んでいた顔に涙が滲む。
それでも、今までの友誼にすがるしかなかったのだろう。
みなみは上目で麻尋をみつめ、膝立ちになって近づく。
「お願い、麻尋。もう、限界なの」
「そのためのおむつでしょ?」
「やだ。やだよ、お漏らしなんて・・・」
「あたしと違って、我慢ができるんでしょ? 我慢すればいいじゃない」
「もう・・・無理。無理なの。ねえ、トイレに行かせてよ。トイレでさせてよ!」
「うーん、そうだねぇ・・・」
受けた仕打ちを思えば、許す理由はどこにも無い。
それでも考え込んだのは、この優位をどう活かすか決めかねたからだろう。
「まず、トイレでなにをするのか、説明してもらおうかな」
「そんなの、決まってるじゃない!」
「どう決まってるの?」
「おしっこだよ! おしっこするに決まってるでしょ!」
男の前で口にするような言葉ではない。
みなみは固く目をつぶり、吐き出すように叫んでいた。
その姿に麻尋が薄く笑い、晃揮が目をそらす。
「なに考えてんの?」
「いや、別に・・・」
「正直に言ってよ。怒らないから」
「まあ、なんと言うか・・・。女のトイレってのは、男からすると、そそるというか、
興味が湧くというか・・・」
「へえ、見たいんだ」
「いや、あのな。トイレでしゃがんでる姿とか、堪らんわけだよ、男としては」
あくまで一般論だと言いたいのだろうが、偏向した趣味なのは否めない。
麻尋のジト目に居心地悪く身じろいだ晃揮は、わざとらしく咳払いをし、後ろに下がる。
そんな姿に微笑を浮かべた麻尋が、荒い息を吐くみなみを振り返った。
「じゃあ、ちょっと見せてあげてよ。おトイレでどんな風にしてるのか」
「や、やだよ・・・」
「しゃがむだけでいいよ。その格好で一分我慢したら、トイレに連れて行ってあげる」
「約束だよ」
今、そんな姿勢を取れば、漏れかねない。だが、それを乗り切ればトイレに行ける。
それだけを心の支えに、みなみは麻尋の前に立った。
肩幅に足を開き、そのままゆっくりしゃがんでいく。
こんもりと膨らんだおむつの股間を晒し、じっと和式での放尿ポーズを取り続ける。
「これで満足?」
「い、いや、まあ・・・」
腕を組み、冷たく睨む麻尋の前で言葉を失う。
それでも視線はみなみを窺い、男にとっては酷く卑猥で魅惑的なポーズを観察していた。
「ねえ、早くトイレ!」
「ん、そうだね」
晃揮の目を奪われるのが嫌なのだろう。
まだ一分は経っていないが、みなみの求めに大きく頷く。
「おいでよ」
「あ、ありがとう」
半信半疑でいたのだろう。
先に立った麻尋がドアを開くと、みなみは驚きながら立ち上がった。
歩くのも辛いらしく、顔をしかめてゆっくりと足を踏み出す。
(もう・・・ちょっと・・・)
麻尋がトイレのドアを開いて待っている。
あそこまで行けば、見られはするだろうが、ちゃんとトイレで用を足せる。
一人の女として、最低の姿を晒さなくて済む。
「麻尋! 早く外して!」
「外す? 何を?」
「お、おむつだよ! このままじゃおしっこできない!」
「できるでしょ?」
「何で? 酷いよ! トイレに行かせてくれるって約束だったじゃない!」
「だから、連れてきてあげたじゃない」
「トイレでさせてくれるって・・・」
「言ってないよね。連れて行くって約束しかしてないはずだよ」
「あ・・・」
凄惨な笑みに、絶望を浮かべる。
最初からそのつもりだったのだろう。
麻尋はみなみを便座に座らせ、晃揮と並んでその姿を見つめた。
「で・・・ちゃう。もう・・・漏れちゃう・・・」
あふれ出た涙が頬を伝う。
拭うことも、顔を覆うことも出来ない少女は、用を足すための場所に座りながら、
屈辱的な排泄に追い込まれていた。
唇をかみ締め、恨めしげに麻尋を睨みながら、細かく震えている。
だが、瞳の奥には歓喜が潜み、苦悶の喘ぎに甘さが混ざり始めていた。
忌まわしく、恥ずかしいからこそ感じる甘美さ。
あれほど嫌がり、拒んでいた行為に潜む快楽に、気づき始めていた。
「う・・・うぅ・・・」
「んー、でてるのかなぁ?」
涙を零しながらも、かろうじて堪えていた顔が歪む。
小さな部屋に嗚咽を響かせるみなみの姿に、破綻を確信しながらも麻尋が首をかしげた。
膨らんだ股間に片手を伸ばし、確かめるようにしっかりと押さえる。
「ああ、出てるね。暖かくなってる」
「う・・・うぇ・・・え・・・」
「どう、トイレに座りながらおむつにする気持ちは?」
「うっ、うああっ! こんなの! こんなのおっ!」
あまりの屈辱に取り乱し、麻尋に頭突きを食らわせる。
こんなことをされて感じた自分を許せなかったのもあるだろう。
不意をうたれた少女がよろめき、晃揮が慌てて背中を支えた。
「なにすんのよっ!」
「だって! だってえっ!」
みなみの髪を掴んで立たせる。睨みつける瞳には、もう憎しみしか残っていなかった。
泣き叫ぶみなみを引っぱり、自室の布団に突き倒す。
「さーて、お漏らしおむつを外さないとね」
鈍く痛む胸を押さえ、揶揄に満ちた声を叩きつける。
晃揮がみなみの背後に回り、肩をふとんに押し付けた。
暴れる足に手こずる姿を見かねたか、腕を伸ばして右足を抱える。
麻尋は左足を開かせて跨り、尻で押さえつけた。
「お漏らしをじっくり観察してあげるからね」
「やだ・・・。見ないでよ。許してよ・・・」
「あたしがそう言ったとき、許してくれてればねぇ」
やられたことをやり返しているだけだと告げる。
文句はその時の自分に言えと、強い瞳が語っていた。
「さぁて、どうなってるかなぁ?」
「ひっ、いっ、やあっ!」
二つのテープのうち、右側を摘む。
わざとゆっくりそれを剥がし、反対のテープに手を伸ばす。
鈍く響く剥離音に、みなみが顔を青ざめさせ、緩やかに首を振った。
これを開かれたら見られてしまう。この恥辱に、この屈辱に、昂ぶり濡れる女の場所を。
「ふふっ」
テープを外し、左右の羽を開く。
隙間から零れるおしっこの臭いに、思わず笑みが零れていた。
自分が見られていた姿を、とてつもなく惨めで無力な姿を、みなみにさせられる。
密かに自分を見下し続けていた相手を、同じ目にあわせてやれる。
その興奮が手を震わせ、息を乱した。
「もう、これだけだよ。すぐにみなみの恥ずかしいところが丸見えになっちゃう」
「あ・・・あぁ・・・」
「晃揮も楽しみにしてるよ。さ、見てもらおうね」
「や・・・だ。やだよお・・・」
「・・・あたしだって嫌だけどね」
恋人の目の前に、他の女を晒すのは嫌に決まっている。
小声での呟きに晃揮が肩を竦め、さりげなく目線をそらした。
上目でそれを確かめた麻尋が、ほのかに頬を緩めて前あてを開いていく。
「おしっこの臭いがすごい。おむつも重たいし、たくさん出したんだね」
「やああっ! 見ないで! 見ないでよおっ!」
「うわ、まっ黄色。すごいなぁ・・・」
我慢ができないせいか、麻尋のおしっこは量が少なく色も薄かった。
それに比べると、みなみのおむつは色も臭いもずっと強い。
恥ずかしさにみなみの全身が赤く染まり、叫ぶ声が枯れていた。
だが、麻尋が見つめるその先で、みなみの股間は雫を垂らし、淫猥に口を開いていた。
「で、お漏らししたらお仕置きだったっけ?」
妙な気持ちになりかけた自分を押さえ、殊更に意地悪い声を出す。
怯えるみなみを立たせた麻尋は、晃揮の助けを得てうつ伏せにさせた。
膝を突かせ、尻を突き上げさせる。
「そういえば、おしっこが好きなんだったね」
顔と肩で体を支えるみなみの姿に、何かを企んだらしい。
麻尋は汚れたおむつを拾い上げ、それをみなみの目の前に置いた。
晃揮にみなみを持ち上げさせ、それを顔の下に敷く。
「ひっ! 外して! 汚い! 汚いっ! ぐっ、ごほっ!」
湿ったおむつに押し付けられ、みなみの顔が嫌悪に歪む。
染み出したおしっこに頬を濡らし、強い臭いに咽せて咳き込む。
そんな姿を冷たく見下ろす麻尋が、無慈悲に頭を押さえつけた。
「おしっこがすきなんでしょ? たっぷり愉しめばいいじゃない。ほら、ほらっ」
「んぐっ! ぐっ、自分のはイヤ! ごほっ! こんなのっ、は、イヤ・・・なのっ!」
「じゃあ、ちょっとだけ我慢しなさい。十回叩いたら許してあげるから」
みなみの反応に満足を浮かべ、お尻へと回る。
高く突き上げられた尻を撫で、手を振り上げた麻尋は、太ももを伝う雫に手を止めた。
嫌がっているが、みなみの体は悦んでいる。
そんな姿を目の当たりにし、改めて嫌悪を浮かべる。
「ほんと、最悪」
「はや・・・く。早く、終わりにして・・・」
「判ってる。あたしだって、さっさと終わりたいよ」
解放を願っての言葉が、催促に聞こえた。
音高く舌打ちを響かせた麻尋が手を振り下ろし、白い臀部を平手で打つ。
鋭く高い音が響き渡り、みなみが息をつめて歯を食いしばった。
「どんどんいくよ」
「ひぎっ! ぐぎい! いひっ!」
食いしばる歯の間から、聞き苦しい悲鳴が零れる。
だが、スパンキングが五回を超えたところで、声の中に甘い響きが篭り始めた。
股を伝う雫は量を増し、瞳にも陶酔が浮かんでいる。
「なに・・・こいつ・・・」
「・・・ねえ、あと五回だよね・・・」
思わず手を止めた麻尋に、こんどはあからさまな催促がなされた。
性癖を隠す必要を無くしたのか、ここにきて受け入れたのか、
みなみは痛みを求めて尻を振り、麻尋に惚けた顔を向けている。
「晃揮っ!?」
「・・・とりあえず、五回打ってやれ」
麻尋は気味悪さに竦み、怯えた顔で首を振る。
肩を竦めた晃揮が、代わりにみなみの背後に回り、柔らかい尻に手を当てた。
「代わりにやってやる。ちょっときついかもしれんがな」
「はぁ・・・、お願い・・・します」
被虐に浸る少女が、尻を突き出した。
晃揮は軽く振りかぶり、スナップを効かせて尻を打つ。
麻尋のときより鈍い音が響き、みなみの体がぐらついた。
「難儀な奴だな。尻がこんなに赤くなってるのに、なにを悦んでる?」
「痛いけど、痛いけど・・・気持ちいい。臭くて、恥ずかしくて、情けなくて、
だけどすごく気持ちいいの・・・。なんでなの? どうして、わたし・・・?」
「マゾなんだよ、お前は。自分でも気づいてたんだろ?」
「そうかもって思ってた・・・。だけど、ちょっとMっぽいだけで・・・」
「そんなわけがあるか。ドMだ、お前は」
決め付けて、さらに一発叩く。
その瞬間こそ耐えるが、すぐうっとりと目を細め、尻の熱さと痛みを愉しみ始める。
そんなみなみに晃揮が呆れ、麻尋は軽蔑をあらわにした。
「これで終わりだ!」
「ひぐっ! うぅ・・・ぁ・・・」
ひときわ強いスパンキングを受け、みなみが体を強張らせた。
ぶるぶると震え、不意にぐったりと倒れこむ。
荒い呼吸と満ち足りた惚け顔が、みなみの絶頂を物語っている。
尻を叩かれて達したかつての親友を、麻尋は気味悪そうに見下ろし、
困り顔で晃揮に寄り添った。
「ねえ、こいつどうしよう?」
報復の熱狂が、異常な性癖に醒まされてしまった。
冷静さを取り戻して考えると、みなみの始末は問題が多い。
このまま一緒に暮らす気にはなれないが、かといって野放しにするには、
麻尋の秘密を知りすぎている。
「逆らえないようにして監視するしかないだろうが・・・」
「やだよ、毎日こんなことするの」
「俺もだ。ここまで来ると、俺の手には余る」
もともとSの気は持っている。
逆上していたとはいえ、そうでなければみなみにあんなことはできなかっただろう。
だが、麻尋のおむつぐらいは受け入れられるが、あまりディープなプレイは荷が重い。
みなみを満足させ、従属させるのは難しいだろう。
「手が無いことはないが・・・」
「どんなの?」
「知り合いにこういうのの相手が得意そうな奴がいる」
「・・・どんな知り合い?」
問いかけてくる声が冷たい。
常識的に考えて、あまりまっとうな付き合いではないと感じたのだろう。
思い当たる節が無いわけでもない晃揮としては、非常に居心地が悪い。
「その手のゲームをやり込んでるんだ。たまーに、軽めのやつを借りるんだがな」
できるだけ傷を小さくしようとしてみたが、やはり無理があった。
いわゆるエロゲーというものに対し、女性が寛容である理由は何一つ無い。
案の定、麻尋は冷めた目で晃揮を見やり、この変態がという言葉を喉にまで上げていた。
「いや、ほんとにたまにだ。それも、ごく一般的なやつでな・・・」
「そのお友達がやってるのに比べれば・・・だよね?」
「・・・もうやらないから、許してくれ」
観念して頭を下げる。こういうとき、女に対しては素直に謝っておくに限る。
「まあ・・・ね。今まではあたしも相手をしてなかった訳だし・・・」
性欲盛んな年頃に、発散対象を求めるのは仕方ないと判ってはいるのだろう。
釈然としないものを感じながらも、しぶしぶといった感じで妥協する。
何とか破滅を免れた晃揮は、おむつに顔を乗せて惚けている少女の傍らに、
真顔でしゃがみ込んだ。
「さて、久留米」
「んあ・・・?」
涎に汚れた顔が上げられ、濁った瞳が開かれる。
晃揮は麻尋を傍らに抱き寄せ、ゆっくりと語りかける。
「お前みたいなド変態の相手は、俺や麻尋には荷が重い」
「変態・・・? わたし・・・?」
「自覚がないのか? 自分のションベンに塗れてイクような女のことを、そう呼ぶんだよ」
「変態・・・、わたし、ドMで・・・」
自分の振る舞いを思い出したのだろう。真っ青になり、ぶるぶると震える。
だが、吐く息は熱く乱れ、乳首も固く尖っている。
思い出すだけで、体が昂ぶり始めているらしい。
「責めて欲しいんだろう? 罵って欲しいだろう? 痛めつけられ、拘束され、汚される。
そんな自分を想像すると堪らないだろう?」
「うあ・・・」
言われているだけで、心臓が高鳴った。
冷静に考えることなどできず、思わず足を開いてしまう。
自分の全てを見て欲しい。欲望に溺れる姿を見て欲しい。
その欲求に抗いきれず、足を開いて全てを晒す。
「さいってー・・・」
吐き捨てる麻尋の声に、びくりと震える。
蔑みの言葉を褒美とするマゾヒストがそこにいた。
麻尋は晃揮の目を塞ぎ、自身は不機嫌に目をそらした。
「この通り、俺はお前の相手をできない。麻尋もそんな趣味はない。
で、どうするかという話になる」
訪れた沈黙に、みなみが怯えた。
マゾとしての自分を突きつけられた今、二人に捨てられては行き場がない。
「幸い、知り合いにお前みたいな女が好きな奴がいる。どうしてもと言うなら、
紹介してやるぞ」
「え、Sの人?」
「ドSだ。お前がどんな目に会うか、俺には全く想像できん」
「あ・・・あぁ・・・」
予想も出来ない責め。その言葉に怯えながらも、昂ぶっていた。
返事を待つまでもありはしない。晃揮は麻尋に小さく頷き、みなみに笑いかけた。
「すぐに呼んでやる。来るまでの間、もう一度おむつをあてていろ」
このまま放っておいたら、淫液で部屋が汚れて仕方ない。
晃揮は麻尋におむつを当てるよう告げ、自身は携帯を手に部屋を出て行った。
二時間ほどの後、晃揮は一人の男性を伴って戻ってきた。
中肉中背で理知的な顔つき。丸い眼鏡の下に、人当たりの良い微笑を浮かべている。
外見に気を使うタイプでは無いらしく、髪は床屋で済ませたままで、
ジーンズにTシャツという適当な格好をしている。
「中沢です。よろしく」
初対面に備えて、準備をしたのだろう。
麻尋もみなみもちゃんと衣服を整え、居間で晃揮たちを待っていた。
さわやかに微笑む中沢の姿に、それぞれスカートを揺らして立ち上がり、頭を下げる。
「いきなりの話で驚きました。どちらがみなみさんですか?」
柔らかく微笑みながら、丁寧に問いかける。
その姿からは、とてもサディズムを秘めているとは思えなかった。
みなみが安堵と失望を混ぜ合わせたような表情で小さく手を挙げ、改めて頭を下げる。
「久留米みなみです。あの、よろしく」
「ええ、よろしく。それで立木、すぐに始めていいのかな?」
「そうしてくれ。いいよな、麻尋?」
「いいけど・・・、大丈夫なの?」
予想外に紳士的な態度に、失望を覗かせている。
そんな麻尋に頷きを返した晃揮は、細い体を抱き寄せて壁際のクッションに座った。
「では、さっそく見せてもらいましょうか」
「な、なにを?」
「判りませんか? スカートを捲くるようにと言っているんです」
「・・・そんな、いきなり」
「大体の話はもう聞いてます。面白い趣味をしているそうじゃないですか」
「これは・・・、趣味なんかじゃ・・・」
「趣味だといえるようにしてあげますよ。さあ、見せなさい」
穏やかな声のままだが、要求が命令に変わっていた。
静かな微笑の中で、僅かに細められた瞳が強く光っている。
思いがけない威圧感に、みなみが一瞬惚け、おずおずとスカートに手を下ろした。
ゆっくりと前を持ち上げ、へそ上までを覆っている紙おむつをさらけ出す。
「あ・・・あぅ・・・」
「ふふ、話には聞いていましたが、変わった下着を使っていますね」
「これは・・・、これは・・・」
「説明してくれるのですか? では、聞きましょう。それはなんという下着です?」
「これ・・・は、好きでしてるんじゃ・・・」
「下着の名前を聞いています」
穏やかに、しかし毅然と言い訳の声を遮る。
みなみが怯えを含んだ顔で口をつぐみ、自分を包む紙おむつを見下ろした。
「おむつ・・・です」
「聞こえませんよ」
「おむつです。紙おむつです」
言いたくない言葉を強いられ、鼻声で答える。
そんな姿にも中沢は表情を動かさず、穏やかに頷いた。
「どうして履いているんです?」
「無理やりに、イヤだったのに履かされて」
「どうして脱がないんです?」
「だって、勝手に外したら・・・」
「どうなるんです?」
「・・・」
言われて初めて、外さないようにとは言われていなかったと気づいた。
当然、罰則など決まっているはずが無い。
「外せるのに、好きであて続けていたんですね?」
「ちがう。そんなのちがう・・・」
「おむつはどうなっています?」
必死に否定する声を無視し、質問を変える。
緩やかに歩を進めた中沢がおむつに触れ、じっとみなみを見つめた。
「この中はどうなっているんです?」
「・・・濡れて・・・ます」
「どうしてです?」
「おしっこ・・・したから・・・」
「どうしてトイレに行かなかったんですか?」
「だって、トイレになんて・・・」
「行くなとは言ってないよ」
中沢のやり方が飲み込めてきたのだろう。背後から麻尋が口を挟んだ。
その言葉に中沢が満足そうに頷き、みなみが追い詰められて青ざめた。
「トイレに行けたのに、わざわざおむつにしたんですね?」
「・・・知らなかったから」
「聞くまでも無かったんですね? トイレに行けなくても構わない。おむつにすればいい。
そう思ったんでしょう?」
「そんなこと・・・」
「おむつをあてられ、お漏らしさせられる。そんな惨めな自分に悦びを見出したでしょう?
耐えながら、漏らしながら、愉しんでいたでしょう?」
「ちがう・・・。そんなことない・・・」
「そうですか?」
「そうだよ。当たり前じゃない」
「では、賭けをしましょう」
薄く哂いながら、おむつを撫で回す。
みなみが嫌悪に体を竦め、引きつった顔を背けた。
「このおむつを開いて、あなたが悦びを見せていなければ外してあげましょう。
ですが、もし濡れていたなら、あなたはこれからずっとおむつです。いかがですか?」
「そん・・・な・・・」
「おむつや失禁で感じるなど、よほどの変態です。あなたはそうではないんでしょう?」
「そう・・・だよ」
「では、見せてもらいましょう」
「ひっ!」
中沢の手がテープを剥がした。おむつが重力に引かれて開き、床に落ちる。
黄色い内側を晒すおむつの上で、みなみはスカートを捲り上げたまま立ち尽くした。
「さて、どうでしょうか?」
聞くまでもありはしない。
おむつを晒し、言葉で責められ、みなみは隠しようも無く昂ぶっていた。
おむつをしている間は吸ってくれたが、外されてしまった今、
みなみの雫は太ももを伝い、淫らに光っている。
「よく判りませんね。そこにしゃがみなさい」
「い・・・や・・・」
口では拒みながらも、体は命令に従っていた。
その場にしゃがみ、尻を着き、大きく足を拡げる。
己を晒す喜びに目覚めた少女は、破滅に向うと知っていながら全てを自ら晒した。
「判断は同性に任せましょうか。麻尋さん、どうですか?」
「・・・濡れてるよ。ぐしょぐしょになってる」
巻き込まれるのは迷惑なのだろう。嫌そうに吐き捨てる。
その言葉に中沢が不吉に笑い、みなみが絶望に酔った。
「どうしてこれほど濡らしているんです?」
「それ・・・は・・・」
「おむつをあてられ、お漏らしをさせられて、どうしてこんなに濡れているんです?」
「あ・・・あぁ・・・」
「おむつをあてられて、どう思いました? お漏らしした時、どう感じました?
ここがこんなになるようなことを感じていたんでしょう?」
「は・・・い・・・」
執拗な言葉に、みなみが追い詰められた顔で頷いた。
もう言わないでくれと訴えながら、涙を零して頷き続ける。
だが、中沢は鋭い笑みを浮かべると、更に言葉を重ねた。
「説明しなさい。おむつをあてられたとき、どう感じていましたか?
立木や麻尋さんの前で、正直な気持ちを話しなさい」
「おむつをあてられて・・・」
弱々しい声が零れる。自分を失ったような様子で、ぼうっと虚空を見上げるみなみが、
スカートをまくり、股間を見せつけたままでゆっくりと語る。
「すごく恥ずかしくて・・・、すごく情けなくて・・・。なのに、なんだかどきどきして、
あそこが・・・熱くなって・・・」
「漏らした時はどうでしたか?」
「おしっこ・・・我慢して・・・。痛くて、苦しくて・・・。お漏らしだけはイヤだって、
ずっと我慢して、できなくて・・・。出ちゃった時は、もうダメだって、
すごく情けなくなって・・・。おむつが熱くて、あそこが熱くて、おしっこの臭いに、
なんだかすごく興奮して・・・」
語りながらもじもじと股を擦り合わせる。そんなみなみに、中沢は穏やかに声を投げた。
「おむつに、お漏らしに興奮したんですね?」
「・・・はい」
「変態ですね。否定も出来ないでしょう?」
「・・・はい。できません・・・」
涙を浮かべながら、深く頷く。
言葉だけでみなみを屈服させた中沢を、麻尋が唖然と見つめた。
「認めたところで挨拶をして貰いましょう。まず、裸になりなさい」
「・・・・・・」
おずおずとスカートを下ろし、自由になった手で上着を脱ぐ。
スカートを落とし、ブラを外し、上目で中沢を窺う。
「おむつを拾いなさい」
「はい・・・」
床に広がっていたおむつを拾い上げる。
汚れた内側を隠すように丸めた女性に、中沢がゆっくりと首を振った。
「見てもらいなさい。あなたが汚したおむつを、立木に、麻尋さんに」
「い・・・やぁ・・・」
「見せなさい」
「ひ・・・ひっ・・・ぅ」
静かな、しかし強い命令を受け、みなみがおむつを拡げた。
端を持って体の前にぶら下げ、黄色く染まった内側を見せ付ける。
自分のお漏らしを見られるのが辛いのだろう。
みなみの体は真っ赤に染まり、おむつを持つ手が震えていた。
「すいませんが、しばらく付き合ってください」
「・・・うん」
あらかじめ了解していた晃揮が無言で頷き、遅れて麻尋が了承した。
二組の視線がみなみを、その前に晒されているおむつを見つめている。
みなみが泣くのを堪えるような顔になり、口を引き結んで俯いた。
「さあ、お願いしなさい。これから、面倒をかけるんですから」
「これから・・・?」
「さっきの約束を覚えているでしょう? あなたはこれからずっとおむつですよ?
麻尋さん以外、誰に換えてもらうつもりですか?」
「麻尋に・・・? いや・・・。そんなの、そんなのはいや・・・」
「どうしてです? おむつは好きでしょう? 麻尋さんに見て欲しいんでしょう?
嫌がる理由がどこにあります?」
「あたしは・・・お世話をする側なの・・・。されるのはイヤ・・・。
要らなくなるのはいやなの・・・」
「ああ、そういうことですか」
己の被虐性向を認めながらも、おむつやお漏らしを拒もうとする。
その理由を耳にし、中沢が大きく頷いた。
仕方ないといった顔で肩を竦め、やれやれと首を振る。
「それはしかたありませんね」
「え・・・?」
「そんな理由があるのなら無理強いはできません。私はこれで失礼しましょう」
「なん・・・で?」
思いがけない成り行きに、誰よりもみなみが驚きを浮かべた。
中沢は穏やかに微笑み、みなみが脱ぎ落とした服を拾い上げる。
「どうぞ」
「そんなの・・・。ここまでしといて・・・」
「おや、どうしました?」
おむつを見せ付けたまま、立ち尽くしている。
そんなみなみに微笑を捧げ、中沢が服を差し出した。
緩く首を振る少女を、意地悪く見つめる。
「服を着ていいんですよ? おむつなんか、もう捨ててしまいましょう」
「い、いやっ!」
中沢の手が、汚れたおむつを奪おうと伸びた。
さっきよりも切実な悲鳴をあげ、みなみがそれを避ける。
そんな反応を予測していたのだろう。
中沢は悠然と腕を組み、おむつを抱きしめるみなみを見据えた。
「おむつをするのも嫌、捨てるのも嫌。いったいどうしたいんです?」
「し・・・ます」
「はい?」
「おむつ・・・します。ずっと、おむつをあてます」
「いいんですか? 麻尋さんのお世話をできなくなりますよ?」
「・・・もう、いいです。麻尋は、立木くんに任せます。麻尋を守るより、
満たされることが出来たから・・・。気持ちいいことを見つけたから・・・」
「無理をしなくてもいいんですよ?」
「無理じゃないです。おむつ、気持ちいいから・・・。お漏らしが恥ずかしくて、
ぞくぞくするから・・・。だから、おむつが欲しい・・・」
「そうですか。そこまで言うなら、叶えてあげましょう」
完全な屈服を見せたみなみの告白に、中沢が満足そうに頷いた。
服を投げ落とし、泣き笑いのみなみを麻尋に正対させる。
「では、あらためて挨拶をしなさい。あなたに相応しく、思い切り惨めに」
「・・・はい」
己のマゾヒズムを認めた人間は、ここまで安らかな笑みを浮かべるのだろうか。
涙に汚れるみなみの顔には、全てを晒したが故の穏やかさがあった。
堕ちる道を選んだ、全てを諦めた笑顔。
貪欲に快楽を求め、その妨げとなる理性も羞恥も投げ打っている。
「隠しててごめんなさい・・・。あたし、マゾでした。麻尋・・・様のおしっこ嗅いで、
おむつを履いて、汚してもらった気になって、オナニーしてました」
「なに・・・言ってるの?」
突然の告白に、麻尋が不快を顕にした。
既に知ってはいたが、改めて告白されると気持ち悪さが湧き上がるらしい。
「わたしは変態です。おしっこの臭いが大好きで、汚されるのが嬉しい変態です。
おむつをして、お漏らしをして悦ぶ変態です。今日から、ずっとおむつで過ごします。
おしっこも、全部おむつにします」
「ふふ、いい挨拶ですね」
自分の言葉に酔うみなみの前に、笑顔の中沢が立ちはだかった。
顎を摘んで顔を上げさせ、新しいおむつを見せ付ける。
「これをあてたら、この先ずっとおむつです。覚悟はできていますね?」
「はい・・・。どうか、あててください・・・」
「いいでしょう。でもその前に、あなたの覚悟を見せてもらいましょうか」
「かく・・・ご?」
「簡単なことですよ」
穏やかに微笑み、短く命じる。
裸のままで自室に向うみなみを見送り、中沢は麻尋にも依頼を投げた。
「・・・嫌な予感がするんだけど?」
「ええ、先に謝っておきます。ですが、付き合ってもらいますよ」
みなみを屈服させるために、この三人に逆らえなくするために、立ち会っていて欲しい。
そんな中沢の言葉に、麻尋はしぶしぶと頷いた。
小走りに浴室へと向い、バケツを手に戻ってくる。
中沢が敷いた新聞の上にそれを置き、その様子に麻尋が憂鬱そうに首を振った。
「持ってきました・・・」
麻尋に遅れること数分、みなみが戻ってきた。
両手に女性用の下着を抱え、恥ずかしそうに俯いている。
二十枚ほどの下着の中には、なかなかに気合の入ったものも混ざっている。
「全部ですか?」
「はい」
「では、それをそこに入れてください」
「・・・はい」
抱えてきた下着を、バケツの中に落とす。
何をさせられるか、おおよその見当はついているだろう。
お気に入りらしい下着を一枚残し、躊躇いながら隅に置いた。
「何を躊躇うんです? あなたにはもう、必要ないものでしょう?」
「・・・はい。もう、履かないものです」
「その言葉を、形にしてもらいましょう。二度と履く気がおきないように、
あなた自身で汚してしまいなさい」
「・・・うぅ」
予想はしていたが、惨い命令に涙が滲む。
視線が集まる中で、みなみはおずおずとバケツを跨ぎ、ゆっくり腰を落としていく。
震える膝を手で押さえ、中腰に尻を浮かせて止まる。
「く・・・ぅう・・・」
中途半端な状態で固まる。
体がぷるぷると震えるのは、姿勢の辛さか、恥ずかしさからか。
「い・・・やあぁ・・・」
小刻みに震えるお尻から、力の無い雫が垂れ落ちた。
俯いた顔から弱々しい悲鳴が零れ、首まで真っ赤に染まる。
雫が細い流れとなり、緩い放物線を描いた。
しゅおしゅおと鳴りながら、バケツの中に注がれていく。
「いいですね。お気に入りのパンツがぐしょぐしょになっていますよ」
「あう・・・う・・・」
「ちゃんと確認しなさい。あなたの下着がどうなっているか」
「は・・・い・・・」
惨い命令に、目じりに涙を滲ませる。
それでも足の間を見下ろしたみなみは、おしっこに染まった下着を目の当たりにした。
昨日まで、普通に使っていた下着。今日からは、二度と足に通すことの無いショーツ。
自分の堕ちざまを見せ付けられ、みなみが泣きそうな顔になる。
その瞳が僅かに細まり、どこかうっとりとした顔つきに変わった。
「わたし・・・、おしっこしてる。自分のパンツ・・・汚してる。
みんなの・・・みんなの前で、おしっこで感じてる・・・」
「ふふ・・・、どうしようもないひとですね」
恥辱を快楽に転化し、背中を這う歓喜に震えている。
そんなみなみを中沢が嬉しそうにあざ笑った。
この二人はお似合いだ。
気味悪そうにみなみを見やっている麻尋が、心の中でそう呟いた。
「おしっこ・・・、終わりました。パンツ、履けなくしました・・・」
力を失ったおしっこがだらしなく垂れ、雫がお尻を伝った。
わざと大きくお尻を振ってそれを落としたみなみが、惚けた声で主に報告する。
中沢はゆっくりと眼鏡を押し上げ、目を細めてバケツを覗き込んだ。
言葉も無く抱き合う二人の耳に、くぐもった声が届いた。
忘れていたというより、無視していたのだろう。
麻尋が眉をひそめてみなみを窺い、縋る瞳を睨みつけた。
「どうした。顔色が悪いぞ?」
薄く汗を滲ませながら、落ち着き無く体を揺すっている。
その態度がなにを意味するか知りながらも、晃揮は殊更に問いかけた。
みなみが悔しさに歯噛みし、鋭くにらみ返す。
「言いたいことがあるなら言えよ。聞くだけ聞いてやる」
「・・・トイレに」
「トイレに行くような事情があるのか?」
嘲りの声にも反撃できない。晃揮だけでなく、麻尋までもが薄笑いを浮かべている姿に、
悔しさに歪んでいた顔に涙が滲む。
それでも、今までの友誼にすがるしかなかったのだろう。
みなみは上目で麻尋をみつめ、膝立ちになって近づく。
「お願い、麻尋。もう、限界なの」
「そのためのおむつでしょ?」
「やだ。やだよ、お漏らしなんて・・・」
「あたしと違って、我慢ができるんでしょ? 我慢すればいいじゃない」
「もう・・・無理。無理なの。ねえ、トイレに行かせてよ。トイレでさせてよ!」
「うーん、そうだねぇ・・・」
受けた仕打ちを思えば、許す理由はどこにも無い。
それでも考え込んだのは、この優位をどう活かすか決めかねたからだろう。
「まず、トイレでなにをするのか、説明してもらおうかな」
「そんなの、決まってるじゃない!」
「どう決まってるの?」
「おしっこだよ! おしっこするに決まってるでしょ!」
男の前で口にするような言葉ではない。
みなみは固く目をつぶり、吐き出すように叫んでいた。
その姿に麻尋が薄く笑い、晃揮が目をそらす。
「なに考えてんの?」
「いや、別に・・・」
「正直に言ってよ。怒らないから」
「まあ、なんと言うか・・・。女のトイレってのは、男からすると、そそるというか、
興味が湧くというか・・・」
「へえ、見たいんだ」
「いや、あのな。トイレでしゃがんでる姿とか、堪らんわけだよ、男としては」
あくまで一般論だと言いたいのだろうが、偏向した趣味なのは否めない。
麻尋のジト目に居心地悪く身じろいだ晃揮は、わざとらしく咳払いをし、後ろに下がる。
そんな姿に微笑を浮かべた麻尋が、荒い息を吐くみなみを振り返った。
「じゃあ、ちょっと見せてあげてよ。おトイレでどんな風にしてるのか」
「や、やだよ・・・」
「しゃがむだけでいいよ。その格好で一分我慢したら、トイレに連れて行ってあげる」
「約束だよ」
今、そんな姿勢を取れば、漏れかねない。だが、それを乗り切ればトイレに行ける。
それだけを心の支えに、みなみは麻尋の前に立った。
肩幅に足を開き、そのままゆっくりしゃがんでいく。
こんもりと膨らんだおむつの股間を晒し、じっと和式での放尿ポーズを取り続ける。
「これで満足?」
「い、いや、まあ・・・」
腕を組み、冷たく睨む麻尋の前で言葉を失う。
それでも視線はみなみを窺い、男にとっては酷く卑猥で魅惑的なポーズを観察していた。
「ねえ、早くトイレ!」
「ん、そうだね」
晃揮の目を奪われるのが嫌なのだろう。
まだ一分は経っていないが、みなみの求めに大きく頷く。
「おいでよ」
「あ、ありがとう」
半信半疑でいたのだろう。
先に立った麻尋がドアを開くと、みなみは驚きながら立ち上がった。
歩くのも辛いらしく、顔をしかめてゆっくりと足を踏み出す。
(もう・・・ちょっと・・・)
麻尋がトイレのドアを開いて待っている。
あそこまで行けば、見られはするだろうが、ちゃんとトイレで用を足せる。
一人の女として、最低の姿を晒さなくて済む。
「麻尋! 早く外して!」
「外す? 何を?」
「お、おむつだよ! このままじゃおしっこできない!」
「できるでしょ?」
「何で? 酷いよ! トイレに行かせてくれるって約束だったじゃない!」
「だから、連れてきてあげたじゃない」
「トイレでさせてくれるって・・・」
「言ってないよね。連れて行くって約束しかしてないはずだよ」
「あ・・・」
凄惨な笑みに、絶望を浮かべる。
最初からそのつもりだったのだろう。
麻尋はみなみを便座に座らせ、晃揮と並んでその姿を見つめた。
「で・・・ちゃう。もう・・・漏れちゃう・・・」
あふれ出た涙が頬を伝う。
拭うことも、顔を覆うことも出来ない少女は、用を足すための場所に座りながら、
屈辱的な排泄に追い込まれていた。
唇をかみ締め、恨めしげに麻尋を睨みながら、細かく震えている。
だが、瞳の奥には歓喜が潜み、苦悶の喘ぎに甘さが混ざり始めていた。
忌まわしく、恥ずかしいからこそ感じる甘美さ。
あれほど嫌がり、拒んでいた行為に潜む快楽に、気づき始めていた。
「う・・・うぅ・・・」
「んー、でてるのかなぁ?」
涙を零しながらも、かろうじて堪えていた顔が歪む。
小さな部屋に嗚咽を響かせるみなみの姿に、破綻を確信しながらも麻尋が首をかしげた。
膨らんだ股間に片手を伸ばし、確かめるようにしっかりと押さえる。
「ああ、出てるね。暖かくなってる」
「う・・・うぇ・・・え・・・」
「どう、トイレに座りながらおむつにする気持ちは?」
「うっ、うああっ! こんなの! こんなのおっ!」
あまりの屈辱に取り乱し、麻尋に頭突きを食らわせる。
こんなことをされて感じた自分を許せなかったのもあるだろう。
不意をうたれた少女がよろめき、晃揮が慌てて背中を支えた。
「なにすんのよっ!」
「だって! だってえっ!」
みなみの髪を掴んで立たせる。睨みつける瞳には、もう憎しみしか残っていなかった。
泣き叫ぶみなみを引っぱり、自室の布団に突き倒す。
「さーて、お漏らしおむつを外さないとね」
鈍く痛む胸を押さえ、揶揄に満ちた声を叩きつける。
晃揮がみなみの背後に回り、肩をふとんに押し付けた。
暴れる足に手こずる姿を見かねたか、腕を伸ばして右足を抱える。
麻尋は左足を開かせて跨り、尻で押さえつけた。
「お漏らしをじっくり観察してあげるからね」
「やだ・・・。見ないでよ。許してよ・・・」
「あたしがそう言ったとき、許してくれてればねぇ」
やられたことをやり返しているだけだと告げる。
文句はその時の自分に言えと、強い瞳が語っていた。
「さぁて、どうなってるかなぁ?」
「ひっ、いっ、やあっ!」
二つのテープのうち、右側を摘む。
わざとゆっくりそれを剥がし、反対のテープに手を伸ばす。
鈍く響く剥離音に、みなみが顔を青ざめさせ、緩やかに首を振った。
これを開かれたら見られてしまう。この恥辱に、この屈辱に、昂ぶり濡れる女の場所を。
「ふふっ」
テープを外し、左右の羽を開く。
隙間から零れるおしっこの臭いに、思わず笑みが零れていた。
自分が見られていた姿を、とてつもなく惨めで無力な姿を、みなみにさせられる。
密かに自分を見下し続けていた相手を、同じ目にあわせてやれる。
その興奮が手を震わせ、息を乱した。
「もう、これだけだよ。すぐにみなみの恥ずかしいところが丸見えになっちゃう」
「あ・・・あぁ・・・」
「晃揮も楽しみにしてるよ。さ、見てもらおうね」
「や・・・だ。やだよお・・・」
「・・・あたしだって嫌だけどね」
恋人の目の前に、他の女を晒すのは嫌に決まっている。
小声での呟きに晃揮が肩を竦め、さりげなく目線をそらした。
上目でそれを確かめた麻尋が、ほのかに頬を緩めて前あてを開いていく。
「おしっこの臭いがすごい。おむつも重たいし、たくさん出したんだね」
「やああっ! 見ないで! 見ないでよおっ!」
「うわ、まっ黄色。すごいなぁ・・・」
我慢ができないせいか、麻尋のおしっこは量が少なく色も薄かった。
それに比べると、みなみのおむつは色も臭いもずっと強い。
恥ずかしさにみなみの全身が赤く染まり、叫ぶ声が枯れていた。
だが、麻尋が見つめるその先で、みなみの股間は雫を垂らし、淫猥に口を開いていた。
「で、お漏らししたらお仕置きだったっけ?」
妙な気持ちになりかけた自分を押さえ、殊更に意地悪い声を出す。
怯えるみなみを立たせた麻尋は、晃揮の助けを得てうつ伏せにさせた。
膝を突かせ、尻を突き上げさせる。
「そういえば、おしっこが好きなんだったね」
顔と肩で体を支えるみなみの姿に、何かを企んだらしい。
麻尋は汚れたおむつを拾い上げ、それをみなみの目の前に置いた。
晃揮にみなみを持ち上げさせ、それを顔の下に敷く。
「ひっ! 外して! 汚い! 汚いっ! ぐっ、ごほっ!」
湿ったおむつに押し付けられ、みなみの顔が嫌悪に歪む。
染み出したおしっこに頬を濡らし、強い臭いに咽せて咳き込む。
そんな姿を冷たく見下ろす麻尋が、無慈悲に頭を押さえつけた。
「おしっこがすきなんでしょ? たっぷり愉しめばいいじゃない。ほら、ほらっ」
「んぐっ! ぐっ、自分のはイヤ! ごほっ! こんなのっ、は、イヤ・・・なのっ!」
「じゃあ、ちょっとだけ我慢しなさい。十回叩いたら許してあげるから」
みなみの反応に満足を浮かべ、お尻へと回る。
高く突き上げられた尻を撫で、手を振り上げた麻尋は、太ももを伝う雫に手を止めた。
嫌がっているが、みなみの体は悦んでいる。
そんな姿を目の当たりにし、改めて嫌悪を浮かべる。
「ほんと、最悪」
「はや・・・く。早く、終わりにして・・・」
「判ってる。あたしだって、さっさと終わりたいよ」
解放を願っての言葉が、催促に聞こえた。
音高く舌打ちを響かせた麻尋が手を振り下ろし、白い臀部を平手で打つ。
鋭く高い音が響き渡り、みなみが息をつめて歯を食いしばった。
「どんどんいくよ」
「ひぎっ! ぐぎい! いひっ!」
食いしばる歯の間から、聞き苦しい悲鳴が零れる。
だが、スパンキングが五回を超えたところで、声の中に甘い響きが篭り始めた。
股を伝う雫は量を増し、瞳にも陶酔が浮かんでいる。
「なに・・・こいつ・・・」
「・・・ねえ、あと五回だよね・・・」
思わず手を止めた麻尋に、こんどはあからさまな催促がなされた。
性癖を隠す必要を無くしたのか、ここにきて受け入れたのか、
みなみは痛みを求めて尻を振り、麻尋に惚けた顔を向けている。
「晃揮っ!?」
「・・・とりあえず、五回打ってやれ」
麻尋は気味悪さに竦み、怯えた顔で首を振る。
肩を竦めた晃揮が、代わりにみなみの背後に回り、柔らかい尻に手を当てた。
「代わりにやってやる。ちょっときついかもしれんがな」
「はぁ・・・、お願い・・・します」
被虐に浸る少女が、尻を突き出した。
晃揮は軽く振りかぶり、スナップを効かせて尻を打つ。
麻尋のときより鈍い音が響き、みなみの体がぐらついた。
「難儀な奴だな。尻がこんなに赤くなってるのに、なにを悦んでる?」
「痛いけど、痛いけど・・・気持ちいい。臭くて、恥ずかしくて、情けなくて、
だけどすごく気持ちいいの・・・。なんでなの? どうして、わたし・・・?」
「マゾなんだよ、お前は。自分でも気づいてたんだろ?」
「そうかもって思ってた・・・。だけど、ちょっとMっぽいだけで・・・」
「そんなわけがあるか。ドMだ、お前は」
決め付けて、さらに一発叩く。
その瞬間こそ耐えるが、すぐうっとりと目を細め、尻の熱さと痛みを愉しみ始める。
そんなみなみに晃揮が呆れ、麻尋は軽蔑をあらわにした。
「これで終わりだ!」
「ひぐっ! うぅ・・・ぁ・・・」
ひときわ強いスパンキングを受け、みなみが体を強張らせた。
ぶるぶると震え、不意にぐったりと倒れこむ。
荒い呼吸と満ち足りた惚け顔が、みなみの絶頂を物語っている。
尻を叩かれて達したかつての親友を、麻尋は気味悪そうに見下ろし、
困り顔で晃揮に寄り添った。
「ねえ、こいつどうしよう?」
報復の熱狂が、異常な性癖に醒まされてしまった。
冷静さを取り戻して考えると、みなみの始末は問題が多い。
このまま一緒に暮らす気にはなれないが、かといって野放しにするには、
麻尋の秘密を知りすぎている。
「逆らえないようにして監視するしかないだろうが・・・」
「やだよ、毎日こんなことするの」
「俺もだ。ここまで来ると、俺の手には余る」
もともとSの気は持っている。
逆上していたとはいえ、そうでなければみなみにあんなことはできなかっただろう。
だが、麻尋のおむつぐらいは受け入れられるが、あまりディープなプレイは荷が重い。
みなみを満足させ、従属させるのは難しいだろう。
「手が無いことはないが・・・」
「どんなの?」
「知り合いにこういうのの相手が得意そうな奴がいる」
「・・・どんな知り合い?」
問いかけてくる声が冷たい。
常識的に考えて、あまりまっとうな付き合いではないと感じたのだろう。
思い当たる節が無いわけでもない晃揮としては、非常に居心地が悪い。
「その手のゲームをやり込んでるんだ。たまーに、軽めのやつを借りるんだがな」
できるだけ傷を小さくしようとしてみたが、やはり無理があった。
いわゆるエロゲーというものに対し、女性が寛容である理由は何一つ無い。
案の定、麻尋は冷めた目で晃揮を見やり、この変態がという言葉を喉にまで上げていた。
「いや、ほんとにたまにだ。それも、ごく一般的なやつでな・・・」
「そのお友達がやってるのに比べれば・・・だよね?」
「・・・もうやらないから、許してくれ」
観念して頭を下げる。こういうとき、女に対しては素直に謝っておくに限る。
「まあ・・・ね。今まではあたしも相手をしてなかった訳だし・・・」
性欲盛んな年頃に、発散対象を求めるのは仕方ないと判ってはいるのだろう。
釈然としないものを感じながらも、しぶしぶといった感じで妥協する。
何とか破滅を免れた晃揮は、おむつに顔を乗せて惚けている少女の傍らに、
真顔でしゃがみ込んだ。
「さて、久留米」
「んあ・・・?」
涎に汚れた顔が上げられ、濁った瞳が開かれる。
晃揮は麻尋を傍らに抱き寄せ、ゆっくりと語りかける。
「お前みたいなド変態の相手は、俺や麻尋には荷が重い」
「変態・・・? わたし・・・?」
「自覚がないのか? 自分のションベンに塗れてイクような女のことを、そう呼ぶんだよ」
「変態・・・、わたし、ドMで・・・」
自分の振る舞いを思い出したのだろう。真っ青になり、ぶるぶると震える。
だが、吐く息は熱く乱れ、乳首も固く尖っている。
思い出すだけで、体が昂ぶり始めているらしい。
「責めて欲しいんだろう? 罵って欲しいだろう? 痛めつけられ、拘束され、汚される。
そんな自分を想像すると堪らないだろう?」
「うあ・・・」
言われているだけで、心臓が高鳴った。
冷静に考えることなどできず、思わず足を開いてしまう。
自分の全てを見て欲しい。欲望に溺れる姿を見て欲しい。
その欲求に抗いきれず、足を開いて全てを晒す。
「さいってー・・・」
吐き捨てる麻尋の声に、びくりと震える。
蔑みの言葉を褒美とするマゾヒストがそこにいた。
麻尋は晃揮の目を塞ぎ、自身は不機嫌に目をそらした。
「この通り、俺はお前の相手をできない。麻尋もそんな趣味はない。
で、どうするかという話になる」
訪れた沈黙に、みなみが怯えた。
マゾとしての自分を突きつけられた今、二人に捨てられては行き場がない。
「幸い、知り合いにお前みたいな女が好きな奴がいる。どうしてもと言うなら、
紹介してやるぞ」
「え、Sの人?」
「ドSだ。お前がどんな目に会うか、俺には全く想像できん」
「あ・・・あぁ・・・」
予想も出来ない責め。その言葉に怯えながらも、昂ぶっていた。
返事を待つまでもありはしない。晃揮は麻尋に小さく頷き、みなみに笑いかけた。
「すぐに呼んでやる。来るまでの間、もう一度おむつをあてていろ」
このまま放っておいたら、淫液で部屋が汚れて仕方ない。
晃揮は麻尋におむつを当てるよう告げ、自身は携帯を手に部屋を出て行った。
二時間ほどの後、晃揮は一人の男性を伴って戻ってきた。
中肉中背で理知的な顔つき。丸い眼鏡の下に、人当たりの良い微笑を浮かべている。
外見に気を使うタイプでは無いらしく、髪は床屋で済ませたままで、
ジーンズにTシャツという適当な格好をしている。
「中沢です。よろしく」
初対面に備えて、準備をしたのだろう。
麻尋もみなみもちゃんと衣服を整え、居間で晃揮たちを待っていた。
さわやかに微笑む中沢の姿に、それぞれスカートを揺らして立ち上がり、頭を下げる。
「いきなりの話で驚きました。どちらがみなみさんですか?」
柔らかく微笑みながら、丁寧に問いかける。
その姿からは、とてもサディズムを秘めているとは思えなかった。
みなみが安堵と失望を混ぜ合わせたような表情で小さく手を挙げ、改めて頭を下げる。
「久留米みなみです。あの、よろしく」
「ええ、よろしく。それで立木、すぐに始めていいのかな?」
「そうしてくれ。いいよな、麻尋?」
「いいけど・・・、大丈夫なの?」
予想外に紳士的な態度に、失望を覗かせている。
そんな麻尋に頷きを返した晃揮は、細い体を抱き寄せて壁際のクッションに座った。
「では、さっそく見せてもらいましょうか」
「な、なにを?」
「判りませんか? スカートを捲くるようにと言っているんです」
「・・・そんな、いきなり」
「大体の話はもう聞いてます。面白い趣味をしているそうじゃないですか」
「これは・・・、趣味なんかじゃ・・・」
「趣味だといえるようにしてあげますよ。さあ、見せなさい」
穏やかな声のままだが、要求が命令に変わっていた。
静かな微笑の中で、僅かに細められた瞳が強く光っている。
思いがけない威圧感に、みなみが一瞬惚け、おずおずとスカートに手を下ろした。
ゆっくりと前を持ち上げ、へそ上までを覆っている紙おむつをさらけ出す。
「あ・・・あぅ・・・」
「ふふ、話には聞いていましたが、変わった下着を使っていますね」
「これは・・・、これは・・・」
「説明してくれるのですか? では、聞きましょう。それはなんという下着です?」
「これ・・・は、好きでしてるんじゃ・・・」
「下着の名前を聞いています」
穏やかに、しかし毅然と言い訳の声を遮る。
みなみが怯えを含んだ顔で口をつぐみ、自分を包む紙おむつを見下ろした。
「おむつ・・・です」
「聞こえませんよ」
「おむつです。紙おむつです」
言いたくない言葉を強いられ、鼻声で答える。
そんな姿にも中沢は表情を動かさず、穏やかに頷いた。
「どうして履いているんです?」
「無理やりに、イヤだったのに履かされて」
「どうして脱がないんです?」
「だって、勝手に外したら・・・」
「どうなるんです?」
「・・・」
言われて初めて、外さないようにとは言われていなかったと気づいた。
当然、罰則など決まっているはずが無い。
「外せるのに、好きであて続けていたんですね?」
「ちがう。そんなのちがう・・・」
「おむつはどうなっています?」
必死に否定する声を無視し、質問を変える。
緩やかに歩を進めた中沢がおむつに触れ、じっとみなみを見つめた。
「この中はどうなっているんです?」
「・・・濡れて・・・ます」
「どうしてです?」
「おしっこ・・・したから・・・」
「どうしてトイレに行かなかったんですか?」
「だって、トイレになんて・・・」
「行くなとは言ってないよ」
中沢のやり方が飲み込めてきたのだろう。背後から麻尋が口を挟んだ。
その言葉に中沢が満足そうに頷き、みなみが追い詰められて青ざめた。
「トイレに行けたのに、わざわざおむつにしたんですね?」
「・・・知らなかったから」
「聞くまでも無かったんですね? トイレに行けなくても構わない。おむつにすればいい。
そう思ったんでしょう?」
「そんなこと・・・」
「おむつをあてられ、お漏らしさせられる。そんな惨めな自分に悦びを見出したでしょう?
耐えながら、漏らしながら、愉しんでいたでしょう?」
「ちがう・・・。そんなことない・・・」
「そうですか?」
「そうだよ。当たり前じゃない」
「では、賭けをしましょう」
薄く哂いながら、おむつを撫で回す。
みなみが嫌悪に体を竦め、引きつった顔を背けた。
「このおむつを開いて、あなたが悦びを見せていなければ外してあげましょう。
ですが、もし濡れていたなら、あなたはこれからずっとおむつです。いかがですか?」
「そん・・・な・・・」
「おむつや失禁で感じるなど、よほどの変態です。あなたはそうではないんでしょう?」
「そう・・・だよ」
「では、見せてもらいましょう」
「ひっ!」
中沢の手がテープを剥がした。おむつが重力に引かれて開き、床に落ちる。
黄色い内側を晒すおむつの上で、みなみはスカートを捲り上げたまま立ち尽くした。
「さて、どうでしょうか?」
聞くまでもありはしない。
おむつを晒し、言葉で責められ、みなみは隠しようも無く昂ぶっていた。
おむつをしている間は吸ってくれたが、外されてしまった今、
みなみの雫は太ももを伝い、淫らに光っている。
「よく判りませんね。そこにしゃがみなさい」
「い・・・や・・・」
口では拒みながらも、体は命令に従っていた。
その場にしゃがみ、尻を着き、大きく足を拡げる。
己を晒す喜びに目覚めた少女は、破滅に向うと知っていながら全てを自ら晒した。
「判断は同性に任せましょうか。麻尋さん、どうですか?」
「・・・濡れてるよ。ぐしょぐしょになってる」
巻き込まれるのは迷惑なのだろう。嫌そうに吐き捨てる。
その言葉に中沢が不吉に笑い、みなみが絶望に酔った。
「どうしてこれほど濡らしているんです?」
「それ・・・は・・・」
「おむつをあてられ、お漏らしをさせられて、どうしてこんなに濡れているんです?」
「あ・・・あぁ・・・」
「おむつをあてられて、どう思いました? お漏らしした時、どう感じました?
ここがこんなになるようなことを感じていたんでしょう?」
「は・・・い・・・」
執拗な言葉に、みなみが追い詰められた顔で頷いた。
もう言わないでくれと訴えながら、涙を零して頷き続ける。
だが、中沢は鋭い笑みを浮かべると、更に言葉を重ねた。
「説明しなさい。おむつをあてられたとき、どう感じていましたか?
立木や麻尋さんの前で、正直な気持ちを話しなさい」
「おむつをあてられて・・・」
弱々しい声が零れる。自分を失ったような様子で、ぼうっと虚空を見上げるみなみが、
スカートをまくり、股間を見せつけたままでゆっくりと語る。
「すごく恥ずかしくて・・・、すごく情けなくて・・・。なのに、なんだかどきどきして、
あそこが・・・熱くなって・・・」
「漏らした時はどうでしたか?」
「おしっこ・・・我慢して・・・。痛くて、苦しくて・・・。お漏らしだけはイヤだって、
ずっと我慢して、できなくて・・・。出ちゃった時は、もうダメだって、
すごく情けなくなって・・・。おむつが熱くて、あそこが熱くて、おしっこの臭いに、
なんだかすごく興奮して・・・」
語りながらもじもじと股を擦り合わせる。そんなみなみに、中沢は穏やかに声を投げた。
「おむつに、お漏らしに興奮したんですね?」
「・・・はい」
「変態ですね。否定も出来ないでしょう?」
「・・・はい。できません・・・」
涙を浮かべながら、深く頷く。
言葉だけでみなみを屈服させた中沢を、麻尋が唖然と見つめた。
「認めたところで挨拶をして貰いましょう。まず、裸になりなさい」
「・・・・・・」
おずおずとスカートを下ろし、自由になった手で上着を脱ぐ。
スカートを落とし、ブラを外し、上目で中沢を窺う。
「おむつを拾いなさい」
「はい・・・」
床に広がっていたおむつを拾い上げる。
汚れた内側を隠すように丸めた女性に、中沢がゆっくりと首を振った。
「見てもらいなさい。あなたが汚したおむつを、立木に、麻尋さんに」
「い・・・やぁ・・・」
「見せなさい」
「ひ・・・ひっ・・・ぅ」
静かな、しかし強い命令を受け、みなみがおむつを拡げた。
端を持って体の前にぶら下げ、黄色く染まった内側を見せ付ける。
自分のお漏らしを見られるのが辛いのだろう。
みなみの体は真っ赤に染まり、おむつを持つ手が震えていた。
「すいませんが、しばらく付き合ってください」
「・・・うん」
あらかじめ了解していた晃揮が無言で頷き、遅れて麻尋が了承した。
二組の視線がみなみを、その前に晒されているおむつを見つめている。
みなみが泣くのを堪えるような顔になり、口を引き結んで俯いた。
「さあ、お願いしなさい。これから、面倒をかけるんですから」
「これから・・・?」
「さっきの約束を覚えているでしょう? あなたはこれからずっとおむつですよ?
麻尋さん以外、誰に換えてもらうつもりですか?」
「麻尋に・・・? いや・・・。そんなの、そんなのはいや・・・」
「どうしてです? おむつは好きでしょう? 麻尋さんに見て欲しいんでしょう?
嫌がる理由がどこにあります?」
「あたしは・・・お世話をする側なの・・・。されるのはイヤ・・・。
要らなくなるのはいやなの・・・」
「ああ、そういうことですか」
己の被虐性向を認めながらも、おむつやお漏らしを拒もうとする。
その理由を耳にし、中沢が大きく頷いた。
仕方ないといった顔で肩を竦め、やれやれと首を振る。
「それはしかたありませんね」
「え・・・?」
「そんな理由があるのなら無理強いはできません。私はこれで失礼しましょう」
「なん・・・で?」
思いがけない成り行きに、誰よりもみなみが驚きを浮かべた。
中沢は穏やかに微笑み、みなみが脱ぎ落とした服を拾い上げる。
「どうぞ」
「そんなの・・・。ここまでしといて・・・」
「おや、どうしました?」
おむつを見せ付けたまま、立ち尽くしている。
そんなみなみに微笑を捧げ、中沢が服を差し出した。
緩く首を振る少女を、意地悪く見つめる。
「服を着ていいんですよ? おむつなんか、もう捨ててしまいましょう」
「い、いやっ!」
中沢の手が、汚れたおむつを奪おうと伸びた。
さっきよりも切実な悲鳴をあげ、みなみがそれを避ける。
そんな反応を予測していたのだろう。
中沢は悠然と腕を組み、おむつを抱きしめるみなみを見据えた。
「おむつをするのも嫌、捨てるのも嫌。いったいどうしたいんです?」
「し・・・ます」
「はい?」
「おむつ・・・します。ずっと、おむつをあてます」
「いいんですか? 麻尋さんのお世話をできなくなりますよ?」
「・・・もう、いいです。麻尋は、立木くんに任せます。麻尋を守るより、
満たされることが出来たから・・・。気持ちいいことを見つけたから・・・」
「無理をしなくてもいいんですよ?」
「無理じゃないです。おむつ、気持ちいいから・・・。お漏らしが恥ずかしくて、
ぞくぞくするから・・・。だから、おむつが欲しい・・・」
「そうですか。そこまで言うなら、叶えてあげましょう」
完全な屈服を見せたみなみの告白に、中沢が満足そうに頷いた。
服を投げ落とし、泣き笑いのみなみを麻尋に正対させる。
「では、あらためて挨拶をしなさい。あなたに相応しく、思い切り惨めに」
「・・・はい」
己のマゾヒズムを認めた人間は、ここまで安らかな笑みを浮かべるのだろうか。
涙に汚れるみなみの顔には、全てを晒したが故の穏やかさがあった。
堕ちる道を選んだ、全てを諦めた笑顔。
貪欲に快楽を求め、その妨げとなる理性も羞恥も投げ打っている。
「隠しててごめんなさい・・・。あたし、マゾでした。麻尋・・・様のおしっこ嗅いで、
おむつを履いて、汚してもらった気になって、オナニーしてました」
「なに・・・言ってるの?」
突然の告白に、麻尋が不快を顕にした。
既に知ってはいたが、改めて告白されると気持ち悪さが湧き上がるらしい。
「わたしは変態です。おしっこの臭いが大好きで、汚されるのが嬉しい変態です。
おむつをして、お漏らしをして悦ぶ変態です。今日から、ずっとおむつで過ごします。
おしっこも、全部おむつにします」
「ふふ、いい挨拶ですね」
自分の言葉に酔うみなみの前に、笑顔の中沢が立ちはだかった。
顎を摘んで顔を上げさせ、新しいおむつを見せ付ける。
「これをあてたら、この先ずっとおむつです。覚悟はできていますね?」
「はい・・・。どうか、あててください・・・」
「いいでしょう。でもその前に、あなたの覚悟を見せてもらいましょうか」
「かく・・・ご?」
「簡単なことですよ」
穏やかに微笑み、短く命じる。
裸のままで自室に向うみなみを見送り、中沢は麻尋にも依頼を投げた。
「・・・嫌な予感がするんだけど?」
「ええ、先に謝っておきます。ですが、付き合ってもらいますよ」
みなみを屈服させるために、この三人に逆らえなくするために、立ち会っていて欲しい。
そんな中沢の言葉に、麻尋はしぶしぶと頷いた。
小走りに浴室へと向い、バケツを手に戻ってくる。
中沢が敷いた新聞の上にそれを置き、その様子に麻尋が憂鬱そうに首を振った。
「持ってきました・・・」
麻尋に遅れること数分、みなみが戻ってきた。
両手に女性用の下着を抱え、恥ずかしそうに俯いている。
二十枚ほどの下着の中には、なかなかに気合の入ったものも混ざっている。
「全部ですか?」
「はい」
「では、それをそこに入れてください」
「・・・はい」
抱えてきた下着を、バケツの中に落とす。
何をさせられるか、おおよその見当はついているだろう。
お気に入りらしい下着を一枚残し、躊躇いながら隅に置いた。
「何を躊躇うんです? あなたにはもう、必要ないものでしょう?」
「・・・はい。もう、履かないものです」
「その言葉を、形にしてもらいましょう。二度と履く気がおきないように、
あなた自身で汚してしまいなさい」
「・・・うぅ」
予想はしていたが、惨い命令に涙が滲む。
視線が集まる中で、みなみはおずおずとバケツを跨ぎ、ゆっくり腰を落としていく。
震える膝を手で押さえ、中腰に尻を浮かせて止まる。
「く・・・ぅう・・・」
中途半端な状態で固まる。
体がぷるぷると震えるのは、姿勢の辛さか、恥ずかしさからか。
「い・・・やあぁ・・・」
小刻みに震えるお尻から、力の無い雫が垂れ落ちた。
俯いた顔から弱々しい悲鳴が零れ、首まで真っ赤に染まる。
雫が細い流れとなり、緩い放物線を描いた。
しゅおしゅおと鳴りながら、バケツの中に注がれていく。
「いいですね。お気に入りのパンツがぐしょぐしょになっていますよ」
「あう・・・う・・・」
「ちゃんと確認しなさい。あなたの下着がどうなっているか」
「は・・・い・・・」
惨い命令に、目じりに涙を滲ませる。
それでも足の間を見下ろしたみなみは、おしっこに染まった下着を目の当たりにした。
昨日まで、普通に使っていた下着。今日からは、二度と足に通すことの無いショーツ。
自分の堕ちざまを見せ付けられ、みなみが泣きそうな顔になる。
その瞳が僅かに細まり、どこかうっとりとした顔つきに変わった。
「わたし・・・、おしっこしてる。自分のパンツ・・・汚してる。
みんなの・・・みんなの前で、おしっこで感じてる・・・」
「ふふ・・・、どうしようもないひとですね」
恥辱を快楽に転化し、背中を這う歓喜に震えている。
そんなみなみを中沢が嬉しそうにあざ笑った。
この二人はお似合いだ。
気味悪そうにみなみを見やっている麻尋が、心の中でそう呟いた。
「おしっこ・・・、終わりました。パンツ、履けなくしました・・・」
力を失ったおしっこがだらしなく垂れ、雫がお尻を伝った。
わざと大きくお尻を振ってそれを落としたみなみが、惚けた声で主に報告する。
中沢はゆっくりと眼鏡を押し上げ、目を細めてバケツを覗き込んだ。
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