大学水準の西洋哲学として知っておくべきことのすべて


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ラッセル

【原子命題 atomic sentence】
 ラッセル(『論理的原子論の哲学』)
 「記述理論」において、それ以上、単純な命題には分析されえない相互に独立の命題。その他の命題はこのような命題から論理的に構成されえ、分子命題と呼ばれる。したがって、原子命題が、その体系の基礎であり、これは、実在の原子事実と感覚与件 sense data を媒介として1対1に対応している。それゆえ、物は、むしろその属性という事実を感覚与件言語で語る命題に還元されるべきものなのである。
 このような単純命題への還元は、ヴィットゲンシュタイン『論理哲学論考』にも見られるが、彼は、このような命題に対応するものは個々の事実ではなく、世界全体であるとし、相互に1対多の写像理論を考えた。
 また、カルナップは、当初は、このような感覚与件を考えたが、物は感覚与件で語りつくせるものではないことから、後に、物を対象として直接に語る物言語を考えた。

【確定記述 definite description】
 ラッセル(『論理的原子論の哲学』)
 「記述理論」において、名前は、事実に内在する熟知の物事を示す単純記号に限定され、 all,some,a のつくような名詞や、人名や theがつくような名詞は、本来の名前ではなく、前者は不確定記述として命題関数に還元され、また、後者は「省略され、圧縮された記述」であり、確定記述に還元される。
 確定記述されるものは、その存在はいったん不確定の命題関数に置き換えられ、そのようなものが少なくとも1つ存在し、かつ、多くとも1つしか存在しない、として与えられ、また、その性質は、その存在、かつ、そのような存在者の性質、として与えられる。
 このような処理をすることによって、「現在のフランス国王ははげである」のような非存在事物に関する記述をも無意味とせずに、偽の命題として扱うことができる。

【タイプ理論 type theory】
 ラッセル(『プリンピキア・マテマティカ』)
 自己包摂集合の集合に関する「ラッセルのパラドクス」を解決するために構成された集合論。個体を階型(oder) 0とし、以下、命題関数において、その階型は、その束縛変項の階型をこえていなければならない、とする。
 しかし、既成の定理を保存しつつ、この理論を十分に展開するには、実数に関して還元公理、すなわち、[任意の命題関数に対して、それと外延を等しくする述語的(1階型下の)命題関数が存在する]という公理が要請されるが、しかし、これは自明ではないためにタイプ理論そのものが批判された。

【記述による知識/見知りによる知識
  knowledge by description / by acquaintance】
 ラッセル(『哲学の諸問題』1912第5章)
 知識には、あることが成立しているという「真理の知識」と、あるものごとについての「事物の知識」があり、後者は、「記述による知識」と、「見知りによる知識」とに分けられる。「見知りによる知識」とは、感覚与件、記憶、内省などによるものであり、個別的事象はもちろん普遍もこれらによって知られる。また、「記述による知識」とは、「ある○○」という多義記述ではなく、「その○○」として確定記述されることによるものであり、そのような性質のものが少なくとも1つ、多くても1つのみ存在すると知られ、物的対象や他人の心、さらに固有名詞で表されるものなどはこれによってのみ知られる。

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