いつも通りの制服で姿を現した麗奈さんに対し、凛子ちゃんはアイドル衣装に身を包み笑顔を振りまく。
麗奈さんコールと凛子ちゃんコールが半々といったくらいで会場は熱気に満ちてゆく。
(凛子ちゃんは今人気のアイドルよね?白桜中学校だということは聞いたことがあるけれど……何故この大会に出場しているのかしら……?)
このような格闘大会に現役アイドルが出場する理由が私には思い浮かばない。
しかし、現実として凛子ちゃんはそこにいた。
リングへ上がってきた麗奈さんを見た凛子ちゃんは、何故かリングを降りてスタッフに何か話をし始めた。
それから間もなく、リングへスタッフが上がり、麗奈さんと話を始める。
腕を組んだまま、不機嫌そうに応じていた麗奈さんは大げさなため息をつくと何故かリングを降りて戻ってしまった。
何が起きているのかわからず、会場が騒然とする。
「今日はぁりんこのためにぃ、集まってくれてぇ、ありがとぉ!麗奈お姉様が着替えてくるまでぇ、りんこが歌いま〜す!応援よろしくねぇ!」
マイクを手に凛子ちゃんがリングの中央に立つと、会場内に曲が流れ始め、凛子ちゃんが熱唱する。
2曲歌い終わると、凛子ちゃんは可愛らしくお辞儀をした。
「麗奈お姉様には勝てないと思いますけどぉ、りんこ精一杯頑張りま〜す!」
歓声とともに、凛子ちゃんコール一色に染まった会場へ麗奈さんが戻ってくる。
その姿に、私は絶句してしまった。
白桜第一高校指定のスクール水着を着ていたからだ。
何故、わざわざ着替えることにしたのかも、私にはわからない。
(麗奈さんは着替えに戻ると言っていたけれど……よりによってスクール水着なの……?)
健康的でむっちりとした肉質が感じられる肢体に顔が熱くなる。
女性らしい肉質は魅力的である一方で過剰ではなく、その引き締まった身体は美しさを際立たせていた。
思わず私自身の胸元を見てため息が漏れた。
リングに上がった麗奈さんは憮然とした表情で凛子ちゃんを見下ろす。
それを上目遣いで見返す凛子ちゃんの表情は何とも可愛らしく思わず応援したくなってしまいそうだった。
「麗奈お姉様の身体はぁ、引き締まっていてぇ綺麗ですよねぇ。」
「あら、アイドルは頭の弱い子ばかりかと思っておりましたけれど、凛子さんには見る目がありますわね。」
凛子ちゃんの言葉に、かすかに表情を緩めた麗奈さんは、次の凛子ちゃんの言葉に微笑をたたえたまま引きつらせることになった。
「そんなに素敵な身体でぇ、どぉして華奢な月乃なんかに負けたんですかぁ?」
その言葉に表情を引きつらせたのは麗奈さんだけではなかった。
そこには、白桜第二高等学校を見下すニュアンスが含まれていることは、白桜学園の者なら誰もがわかっただろう。
私の表情も思わず引きつるのを感じた。
「あら、油断していただけですわ。次に戦うときは圧倒的な力の差を見せつけて勝ってやりますわ。凛子さん、これからあなたにそうするのと同じように、ね。」
「うぇ〜ん……麗奈お姉様怖いですぅ……」
麗奈さんの苛立ちのこもった声に、急に凛子ちゃんが泣き出してしまった。
誰が見ても麗奈さんの勝利は疑う余地もない。
それが余計に、麗奈さんを悪者へと仕立て上げてしまった。
会場の至るところから、麗奈さんに対して罵声が浴びせられる。
会場全体が、凛子ちゃんコールに包まれ、麗奈さんが悔しさと困惑の入り混じった表情を浮かべていた。
どちらを応援したら良いのかわからないまま試合は開始された。
試合が開始されると同時に、麗奈さんが凛子ちゃんに殴りかかる。
凛子ちゃんはそれを回避しながら、麗奈さんの腕を掴む。
次の瞬間には、身体を捻りながら麗奈さんの懐に入り込むように背中を潜り込ませた凛子ちゃんは、そのまま麗奈さんの重心を崩すようにしながら背負い投げを決めていた。
「あぐ……」
麗奈さんが背中からマットに叩きつけられる。
と同時に凛子ちゃんの拳が麗奈さんの左胸に突き刺さっていた。
一瞬のできごとに観客席は波を打ったような静けさに支配されていた。
心臓部を撃ち抜かれた麗奈さんは、目を見開き口をぱくぱくさせている。
(う……)
観客が状況を理解して歓声を上げるなか、私は思わず左胸部を押さえていた。
痙攣させるように身体を震わせている麗奈さんの心臓に、かなりの負担がかかっていることは、疑う余地もなかった。
微笑を浮かべたまま、凛子ちゃんは無防備な麗奈さんの腹部へ、勢いよく踵を叩き込む。
「かふっ……」
空気の抜けるような悲鳴をあげ、麗奈さんの身体がマットを跳ねる。
まともに呼吸すらできないのか、苦しそうな表情で身悶える麗奈さんの姿に、私まで息苦しくなるような感覚に襲われていた。
周囲が凛子ちゃんに沸くほど、私の息苦しさが増してゆく気がする。
「まさかぁ、この程度でぇ、終わりなんて言いませんよねぇ?」
麗奈さんの腹部を靴の裏で踏みにじりながら、凛子ちゃんの絡みつくような声が麗奈さんを煽る。
しかし、麗奈さんは声を出すこともできないようで、必死に震える腕を動かそうとしているだけだった。
リングを照らすライトの明かりに、麗奈さんの全身に噴き出している汗が光る。
むき出しの四肢に光る汗は、それだけ見たら麗奈さんの肉体的魅力を引き出していた。
スクール水着も汗に濡れ、ところどころ色が濃紺に変化し始めている。
その魅惑的な姿と苦しそうな表情は、観客にとってはこの上ないもののようだった。
しばらくして、ようやく凛子ちゃんの足を振り払った麗奈さんは、ゆっくりと何度も倒れそうになりながらも立ち上がった。
(麗奈さん……頑張って……)
倒れそうになるたびに拳を握りしめながら、心の中で麗奈さんに声援を送る。
今にも倒れそうな麗奈さんは、それでも懸命に身構えようとする。
そんな麗奈さんが身構えるより速く、凛子ちゃんの掌底が麗奈さんの腹部を叩いていた。
一瞬の硬直のあと、後方へ倒れそうになった麗奈さんは、数歩後ろへよろけロープに背中をあずけるようにして何とか踏みとどまる。
「いいですよぉ。この肉感、感触、たまりませんねぇ。水着はいいですよねぇ。」
ロープ際へ追い込まれる形になった麗奈さんへ、凛子ちゃんの拳が降り注ぐ。
胸やお腹、腕、肩を容赦ない拳が打ち込まれるたびに、派手な打音が鳴り響く。
「あっ……うっ……いやっ……」
麗奈さんの悲痛な悲鳴に、会場が沸く。
(お願い……もうやめて……)
ロープに支えられ、倒れることも許されない麗奈さんをサンドバッグのように殴り続ける凛子ちゃんに、私は憤りを覚えていた。
それと同時に、喜んでいる観客たちに、嫌悪感がこみ上げてくる。
(この人たち最低ね……あんなに苦しんでいる麗奈さんの姿を見て喜ぶなんて……)
殴られ続けた麗奈さんは、次第に声も出さなくなり、ぐったりとして動かなくなった。
そこでようやく凛子ちゃんが攻撃をやめ、麗奈さんの身体は座り込むように崩れ落ちる。
「月乃ごときに負けるようじゃぁ、りんこには勝てませんよぉ?」
ロープに背中をあずけるようにして座り込む麗奈さんの顔を踏みつけながら、凛子ちゃんが嘲笑う。
そこで試合終了の合図が鳴り響き、凛子ちゃんはリング中央に戻った。
凛子ちゃんの足がどかされると、麗奈さんの身体は横に倒れ、リングの端で動かなくなっていた。
「今日はぁ、りんこの応援ありがと〜。麗奈お姉様は怖かったけどぉ、みんなの応援で頑張れたよぉ!またりんこのことぉ、応援よろしくねぇ!」
勝ち誇るように、両手を振りながら観客に応える凛子ちゃんの姿に、私は震える腕で拳を握りしめていた。
麗奈さんコールと凛子ちゃんコールが半々といったくらいで会場は熱気に満ちてゆく。
(凛子ちゃんは今人気のアイドルよね?白桜中学校だということは聞いたことがあるけれど……何故この大会に出場しているのかしら……?)
このような格闘大会に現役アイドルが出場する理由が私には思い浮かばない。
しかし、現実として凛子ちゃんはそこにいた。
リングへ上がってきた麗奈さんを見た凛子ちゃんは、何故かリングを降りてスタッフに何か話をし始めた。
それから間もなく、リングへスタッフが上がり、麗奈さんと話を始める。
腕を組んだまま、不機嫌そうに応じていた麗奈さんは大げさなため息をつくと何故かリングを降りて戻ってしまった。
何が起きているのかわからず、会場が騒然とする。
「今日はぁりんこのためにぃ、集まってくれてぇ、ありがとぉ!麗奈お姉様が着替えてくるまでぇ、りんこが歌いま〜す!応援よろしくねぇ!」
マイクを手に凛子ちゃんがリングの中央に立つと、会場内に曲が流れ始め、凛子ちゃんが熱唱する。
2曲歌い終わると、凛子ちゃんは可愛らしくお辞儀をした。
「麗奈お姉様には勝てないと思いますけどぉ、りんこ精一杯頑張りま〜す!」
歓声とともに、凛子ちゃんコール一色に染まった会場へ麗奈さんが戻ってくる。
その姿に、私は絶句してしまった。
白桜第一高校指定のスクール水着を着ていたからだ。
何故、わざわざ着替えることにしたのかも、私にはわからない。
(麗奈さんは着替えに戻ると言っていたけれど……よりによってスクール水着なの……?)
健康的でむっちりとした肉質が感じられる肢体に顔が熱くなる。
女性らしい肉質は魅力的である一方で過剰ではなく、その引き締まった身体は美しさを際立たせていた。
思わず私自身の胸元を見てため息が漏れた。
リングに上がった麗奈さんは憮然とした表情で凛子ちゃんを見下ろす。
それを上目遣いで見返す凛子ちゃんの表情は何とも可愛らしく思わず応援したくなってしまいそうだった。
「麗奈お姉様の身体はぁ、引き締まっていてぇ綺麗ですよねぇ。」
「あら、アイドルは頭の弱い子ばかりかと思っておりましたけれど、凛子さんには見る目がありますわね。」
凛子ちゃんの言葉に、かすかに表情を緩めた麗奈さんは、次の凛子ちゃんの言葉に微笑をたたえたまま引きつらせることになった。
「そんなに素敵な身体でぇ、どぉして華奢な月乃なんかに負けたんですかぁ?」
その言葉に表情を引きつらせたのは麗奈さんだけではなかった。
そこには、白桜第二高等学校を見下すニュアンスが含まれていることは、白桜学園の者なら誰もがわかっただろう。
私の表情も思わず引きつるのを感じた。
「あら、油断していただけですわ。次に戦うときは圧倒的な力の差を見せつけて勝ってやりますわ。凛子さん、これからあなたにそうするのと同じように、ね。」
「うぇ〜ん……麗奈お姉様怖いですぅ……」
麗奈さんの苛立ちのこもった声に、急に凛子ちゃんが泣き出してしまった。
誰が見ても麗奈さんの勝利は疑う余地もない。
それが余計に、麗奈さんを悪者へと仕立て上げてしまった。
会場の至るところから、麗奈さんに対して罵声が浴びせられる。
会場全体が、凛子ちゃんコールに包まれ、麗奈さんが悔しさと困惑の入り混じった表情を浮かべていた。
どちらを応援したら良いのかわからないまま試合は開始された。
試合が開始されると同時に、麗奈さんが凛子ちゃんに殴りかかる。
凛子ちゃんはそれを回避しながら、麗奈さんの腕を掴む。
次の瞬間には、身体を捻りながら麗奈さんの懐に入り込むように背中を潜り込ませた凛子ちゃんは、そのまま麗奈さんの重心を崩すようにしながら背負い投げを決めていた。
「あぐ……」
麗奈さんが背中からマットに叩きつけられる。
と同時に凛子ちゃんの拳が麗奈さんの左胸に突き刺さっていた。
一瞬のできごとに観客席は波を打ったような静けさに支配されていた。
心臓部を撃ち抜かれた麗奈さんは、目を見開き口をぱくぱくさせている。
(う……)
観客が状況を理解して歓声を上げるなか、私は思わず左胸部を押さえていた。
痙攣させるように身体を震わせている麗奈さんの心臓に、かなりの負担がかかっていることは、疑う余地もなかった。
微笑を浮かべたまま、凛子ちゃんは無防備な麗奈さんの腹部へ、勢いよく踵を叩き込む。
「かふっ……」
空気の抜けるような悲鳴をあげ、麗奈さんの身体がマットを跳ねる。
まともに呼吸すらできないのか、苦しそうな表情で身悶える麗奈さんの姿に、私まで息苦しくなるような感覚に襲われていた。
周囲が凛子ちゃんに沸くほど、私の息苦しさが増してゆく気がする。
「まさかぁ、この程度でぇ、終わりなんて言いませんよねぇ?」
麗奈さんの腹部を靴の裏で踏みにじりながら、凛子ちゃんの絡みつくような声が麗奈さんを煽る。
しかし、麗奈さんは声を出すこともできないようで、必死に震える腕を動かそうとしているだけだった。
リングを照らすライトの明かりに、麗奈さんの全身に噴き出している汗が光る。
むき出しの四肢に光る汗は、それだけ見たら麗奈さんの肉体的魅力を引き出していた。
スクール水着も汗に濡れ、ところどころ色が濃紺に変化し始めている。
その魅惑的な姿と苦しそうな表情は、観客にとってはこの上ないもののようだった。
しばらくして、ようやく凛子ちゃんの足を振り払った麗奈さんは、ゆっくりと何度も倒れそうになりながらも立ち上がった。
(麗奈さん……頑張って……)
倒れそうになるたびに拳を握りしめながら、心の中で麗奈さんに声援を送る。
今にも倒れそうな麗奈さんは、それでも懸命に身構えようとする。
そんな麗奈さんが身構えるより速く、凛子ちゃんの掌底が麗奈さんの腹部を叩いていた。
一瞬の硬直のあと、後方へ倒れそうになった麗奈さんは、数歩後ろへよろけロープに背中をあずけるようにして何とか踏みとどまる。
「いいですよぉ。この肉感、感触、たまりませんねぇ。水着はいいですよねぇ。」
ロープ際へ追い込まれる形になった麗奈さんへ、凛子ちゃんの拳が降り注ぐ。
胸やお腹、腕、肩を容赦ない拳が打ち込まれるたびに、派手な打音が鳴り響く。
「あっ……うっ……いやっ……」
麗奈さんの悲痛な悲鳴に、会場が沸く。
(お願い……もうやめて……)
ロープに支えられ、倒れることも許されない麗奈さんをサンドバッグのように殴り続ける凛子ちゃんに、私は憤りを覚えていた。
それと同時に、喜んでいる観客たちに、嫌悪感がこみ上げてくる。
(この人たち最低ね……あんなに苦しんでいる麗奈さんの姿を見て喜ぶなんて……)
殴られ続けた麗奈さんは、次第に声も出さなくなり、ぐったりとして動かなくなった。
そこでようやく凛子ちゃんが攻撃をやめ、麗奈さんの身体は座り込むように崩れ落ちる。
「月乃ごときに負けるようじゃぁ、りんこには勝てませんよぉ?」
ロープに背中をあずけるようにして座り込む麗奈さんの顔を踏みつけながら、凛子ちゃんが嘲笑う。
そこで試合終了の合図が鳴り響き、凛子ちゃんはリング中央に戻った。
凛子ちゃんの足がどかされると、麗奈さんの身体は横に倒れ、リングの端で動かなくなっていた。
「今日はぁ、りんこの応援ありがと〜。麗奈お姉様は怖かったけどぉ、みんなの応援で頑張れたよぉ!またりんこのことぉ、応援よろしくねぇ!」
勝ち誇るように、両手を振りながら観客に応える凛子ちゃんの姿に、私は震える腕で拳を握りしめていた。
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