コラム
最近、債務整理を行っている司法書士・弁護士のホームページを見ると、「任意整理の減額報酬はいただきません」といった文言をよく見かけないでしょうか?減額報酬っていったい何でしょうか? 今回は、この聞きなれない、「任意整理における減額報酬」について考えてみたいと思います。
任意整理における減額報酬とは、成功報酬の一種類であり、利息制限法による引き直し計算をした結果、過払いにはならず元本の減額にとどまった場合に、「その減額分に一定の割合を乗じた金額」を報酬とするものです。例えば、当初の業者請求額が100万円あったところ、引き直し計算した結果60万円になった場合には、減額部分40万円に対して一定割合10%の4万円を報酬としていただくというものです。
ここで、任意整理の報酬について、次の司法書士事務所についてケース1、2について考察してみましょう。
X司法書士事務所:1社につき費用が4万円、減額報酬10%
Y司法書士事務所:1社のときの費用14万円かかり、1社増えるごとに2万円増えていくが、減額報酬なし
まず、ケース1はAさんが貸金業者4社、債務総額300万円の場合で和解交渉の結果、債務総額が200万円となったとき。X司法書士事務所では費用が16万円、減額報酬は減額した100万円の10%として10万円となり報酬及び費用で26万円掛かり、Y司法書士事務所では費用が16万円+増加3社×2万円の20万円掛かるということになります。
次に、ケース2は、Aさんが貸金業者1社、債務総額300万円の場合で和解交渉の結果、債務総額が250万円となったとき。X司法書士事務所では、費用4万円と減額報酬5万円となり報酬及び費用の総額は9万円となり、Y司法書士事務所では、費用14万円となります
以上のように、報酬及び費用の金額について、どちらが低額になるかはケースによるもので、減額報酬の有無では一律に判断はできません。定額報酬に比して減額報酬のメリットは、着手金を低額に抑えることができ、減額幅が低い時には、発生する報酬も安くなります。逆にそのデメリットは、報酬額の不明確さであり、和解交渉後の支払いに加えて減額報酬の支払いも課されることとなり、二重支払いの可能性があるという点です。しかしながら、金融業者がなかなか過払いを認めなかった以前であれば、交渉努力の結果としての減額分について成功報酬を請求するというのは十分な合理的理由があると思われますが、平成18年最高裁のシティズ判決以降、各金融業者に引き直し計算を前提として交渉に望むことができるようになった現在、単に引き直し計算をしただけでその減額分割合の報酬が発生するということには、やや不合理性を感じえないように思います。
減額報酬の事務所か?それとも定額報酬の事務所か?選ぶのは依頼者の皆様です。ただ、報酬・費用についてのトラブルが絶えない現状においては、その事務所の報酬について、初めの相談時に十二分な説明を受ける必要があります。少しでも判らないことがあれば何でも質問することが必要です。安易に報酬及び費用の安い事務所を選んでも、必要な作業が削られ十分満足な結果につながらない場合があります。トラブルに巻き込まれないためにも慎重に、信頼できる事務所を選びましょう。
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