この戦いは、正面から行われた要塞攻めの他に、謀略戦が数多く展開された。
この時点で既にガルデス共和国の未来を見切り、ラグライナ帝国と密かに繋ぎを求める共和国議員が少なからず存在し、それらはエルの手駒として利用されていた。
そして、エルは、ラヴェリアに、モンレッドの健闘を讃えると称して剣を贈ると、今度は内通していた議員を使い、「ラヴェリアがラグライナ帝国から金品を受け取っている、反乱の疑いあり」として、彼を査問委員会の名の下に首都に招聘させた。
ラヴェリアは、これを策略と判りながらも、逆に内通派議員を一掃するべく首都へ向かった。
また、クァル・アヴェリの難攻不落ぶりを知っていた為、自分がここを離れても大丈夫だろうという楽観的な考えもそこにはあった。
しかし、ラグライナ帝国軍もそのことは熟知していたため、力攻めと平行して、謀略戦も展開していた。
本来なら、一致団結してこれらの謀略を跳ねのけていただろうが、この時既にエルに買収されていたミズハが内応工作を行ったため、クァル・アヴェリは内部で反乱や造反が相次ぎ、士気も下がり始めていた。
ただし、これらの策はエルにしては珍しく、かなり強硬的に「失敗してもいいからとにかく数打つ」という形で行われていた。
その理由は、戦後になってから明らかにされたことであり、この時のガルデス軍はまったく知らないことであったが、この戦いの直前、皇帝セルレディカが突然吐血して倒れていた。
皇帝の病が知られれば、敵味方の士気は逆転すると考えた帝国将軍達は、セルレディカ不在を敵味方から隠し、なんとしても短期のうちにこの要害を落とさなければならず、強引な力攻めと、露骨なまでの謀略戦を同時進行でおこなった。
これ以上の防衛は不可能と考えた共和国軍は、5周期10日目の夜、撤退を決意。
翌日の明け方、キロール部隊が西門より帝国軍に向かって進軍、その隙に東門から全軍が撤退した。
これにより共和国軍はかろうじて全滅は免れたが、共和国随一の将であるキロールは捕虜となり、処刑された。
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