概要

フィードの戦いとは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ693年7月、ロードレア国軍とシャリアル国軍の間に起きた戦いである。

戦闘に至るまでの背景


▲693年の勢力図(バルドの国替え後)

この頃、大陸中に奇妙な噂が流れた。
それは、カルディスが生きているという噂である。
この噂の真相については蜉蝣時代最大の謎とされているが、アルディア著の蜉蝣戦記にも噂の事ははっきりと書かれている為、当時実際にその様な噂が流れたが、その後カルディスが歴史の表舞台に立つことがないことから、単なる噂だったという説が有力である。

しかし、近年アルディアの日記が発見され、全身に傷を負いながらも奇跡的に生還を果たしたカルディスが、山奥で隠遁生活を送り、たずねてきたアルディアと接触する。
その時、まるで憑き物が落ちたかの様に、彼の性格が穏やかになっていたこと、二度と乱世の表舞台に立つつもりのないこと、更にはその後アルディアの従者として、共に旅をしたこと等が書かれている。
これが本当にアルディアの日記ならば、彼の生存は間違いないものであり、カルディス本人の希望によって歴史には書き残さなかった、ということが想像できるが、日記が発見された場所がアルディアと所縁のない土地だったことから、名もなき作家がアルディアの名前を借りて作った後世の創作という説も否定できず、結局のところ真相は謎のままである。

だが、乱世の覇者達は、そんな噂に流されることなく情勢を動かしていく。
7月28日、ロードレア国は、ロー・レアルス国との戦いから一旦離れ、シャリアル国との決戦に挑む事となった。
これは、ベルザフィリス国と友好関係(同盟には至らず)を結び、ルーディア包囲網を背後から牽制するという意味もあったが、ベルザフィリス国に目線を向け、比較的手薄になっていたシャリアル国に攻め込みたいというのが本音であった。
これに対して、シャリアル国は、切り札とも言うべきシャリアル三牙王を召集し、更にディグドが総大将として、最強の布陣で迎え撃つ。
「手薄」という当初の目論見は思わぬメスローの対応の早さで挫かれるが、ロードレア国も、レイディック自らが、ヴェリアアレスアリガルラディアの、いわゆる「ロードレア四天王」を揃えて出陣することで、牽制などではない、本気の決戦に挑むこととなった。

戦闘経緯



この頃、シャリアル国との国境に駐屯していたのはボルゴスであったが、同僚であったアリガルが次々と戦功を重ねるのに対して、自身は国境の城の城主にすらなれなかったことに不満を述べ、駐屯先の城主オーバストの失脚を密かに謀るものの、それよりも前にオーバストが病没したため、労せずして後任として城主に任命されていた。
この様に、ボルゴスは野望に忠実な性格ではあったが、実力は本物であり、彼はレイディック率いる主力部隊が到着するまでこの地を守り抜いた。

到着したロードレア国軍を迎え撃つべく、地形を最も有利に使える場所に布陣したディグド
さすがの手腕に、レイディックも感嘆の声をあげるが、ヴェリアアレスと打ち合わせを終えると、すぐに出陣の準備に取り掛かった。



まずはアリガルが真正面から突撃し、ドラグゥーン部隊を突き破る勢いで、ディグド本陣に迫るが、サイリオスリガリオン部隊が、すぐさまこのアリガル部隊に蓋を閉める形で包囲する。
これはシャリアル三牙王が得意とした策で、この罠にかかった部隊は壊滅するまで脱出することすら許されず、これまでもこの戦法で幾度も勝利を重ねてきた。



しかし、今回はそれまで彼らが相手をしてきた敵将とは、格そのものが違っていた。
アリガルは、軍師ヴェリアからあらかじめこうなることは聞かされていた為、慌てる事もなくそのままドラグゥーン部隊への突撃を継続。
普段なら、敵軍は混乱を起こすのに、一向に動じないアリガル部隊の前に、彼を包囲しようとしたサイリオスリガリオン両将の方が動揺するが、そこに、これまで国境の激戦区を渡り歩いた勇将シルヴァス、更にボルゴス部隊が突撃を仕掛け、シャリアル三牙王による包囲網を崩そうとする。
本来なら、これを妨害する筈に布陣していた右翼のクレットバンガーナ、左翼のファクトだったが、ラディアラドゥ等の横槍によって、逆に混戦へと持ち込まれていく。

一度は混戦に持ち込むが、流石はシャリアル国の誇る三牙王と軍師ディグドであった。
これ以上の戦いは不利になると悟ると、すばやく撤退命令を下し、損害らしい損害も出さずに一線下がった場所で再布陣、ロードレア国軍も追撃をせず、こちらも一旦後退し、両軍はにらみ合いの体勢をとった。



8月15日、このにらみ合いに耐え切れなくなったナッシュ部隊が、独断専行してバンガーナ部隊への奇襲を敢行した。
ナッシュを副将として預かっていたラディアは、その無謀さを指摘するが、一方でその動機を聞かされて悩んでいた。
ナッシュはかつてリディアニーグの策により、ラディアの祖国アゾル国を滅亡させている。
その後、紆余曲折を経て二人はロードレア国の将として並ぶ事となるが、過去のいきさつから、ラディアナッシュとの会話を職務上の最低限に留めていたが、ナッシュは「いつか手柄をたててそれをラディアに献上し、過去の罪滅ぼしとしたい」と他者に洩らしていた。
その事実を知ったラディアは、ナッシュ救援の部隊を率いて出陣する。
だが、罪滅ぼしの覚悟があったとはいえ、ナッシュの将としての器は、三牙王には遠く及ばず、彼の奇襲は看破されて反撃を受けていた。
そこにラディア部隊が現れ、突撃により敵軍を一瞬混乱させると、そのままナッシュ部隊を回収して後退していく。
二人は帰還後、レイディックに呼ばれ査問を受ける。
軍令にそむく事は重罪ではあるが、戦乱の時代においては軍令に背いたとしても手柄を上げれば相殺、場合によっては恩賞の対象ともなる風習があった。
しかし、今回の件は完全にナッシュの失敗であり、軍令違反は免れないと思われたが、これをラディアが弁護して彼を救う、ここに二人の過去は清算され、以後二人は私情を挟むことなく互いの職務に打ち込むこととなる。
また、全てを承知で罪なしとしたレイディックも、器の大きさを見せた。

消えた指揮官

その後も両国の軍勢は数度にわたり激突するが、ついに決着が付かないまま8月29日を迎える。
このまま戦いは続くかと思われたが、最初の戦い以後、軍勢の采配を副軍師アレスに任せ、戦場から姿を消していた軍師ヴェリアが密かに行っていた策がここにきて動き始め、ディグドは戦いの最中、突如本国に召集命令を受ける。

メスローの元に駆けつけたディグドが目にした光景は、処刑された自らの妻子の亡骸であった。
ヴェリアの反間の計によって、ディグド反乱の噂を、国主メスローは信じてしまったのだ。
ヴェリアアレスは、常時いかなる策でも実行できる様に、子飼いの隠密、または共にエザリアンの元で学んだ隠密達を、各国の将やその身の回りの世話をする者、更には一般市民にまで潜ませていた。
そして彼らを使って「ディグドが国境で長期戦の構えを見せたのは時間稼ぎであり、自らの息のかかった部隊を用意し、時がくればロードレア国軍と同時にシャリアル本国へ攻め込む」という噂を流させた。
噂だけならばメスローも信じる事はなかったが、ヴェリアディグドの家にロードレア国からの使者を送り、わざと捕らえさせたりと、周到に状況証拠を数多く作り上げた。
元々部下に対して猜疑心を持つ独裁者タイプのメスローは、これをヴェリアの策と見破れずにディグドの反乱を信じ込み、見せしめのために一族を処刑し、召集に応じて帰国したディグドを捕らえた。
しかし、幼き頃の自らの兵法の師であったディグドを即刻処刑することはさすがに躊躇したのか、とりあえず牢内に閉じ込めることとした。

9月5日、戦局は一変した。
ディグドを戦場から引き離したヴェリアロードレア国本隊と合流。
シャリアル国軍にもディグド捕縛の報告が届き、シャリアル三牙王は完全に動揺、兵士達の士気も揺らぎ、そこにロードレア国軍の総攻撃が開始される。
三牙王といえども、炎に飲み込まれていく運命からは逆らえず、サイリオスアリガルに討ち取られ、リガリオンは全身に槍を受けて戦死、ドラグゥーンは兵士達の裏切りにあい、背後から矢を受けて命を落とした。
味方を撤退させるため戦場に残ったファクトは、ボルゴスに敗れて捕虜となるが、その度量を買われて以後は彼の配下となる。


戦いの結末

国境での戦いに完全勝利したロードレア国軍は、そのままシャリアル国へ侵入、ロードレア四天王がそれぞれ手柄をたて、完全勝利を収めながら軍勢は進み、ついにシャリアル国首都に迫る勢いであった。
だが、このまま手を拱いているメスローではなかった。
すぐさまリューグ国とロー・レアルス国に、手薄となったロードレア国の背後を突いてほしいと使者を送る。
2国がシャリアル国を助ける義理などないが、確かに手薄となったロードレア領土は彼らにとって魅力的な餌であり、それを視野に入れてのメスローの外交戦略であった。
事実、2国はメスローの為ではなく、自らの為、しかしそれが結果的にメスローの為となる形で軍勢を出陣させ、ロードレア国軍もこれにあわせて、国境にレイアスナッシュの2将を配備して残りの全軍を持ってこのリューグロー・レアルス国連合軍と対陣するべく引き返した。

しかし、リューグ国のキルレイツロー・レアルス国のドゥバは、合同軍議において口論となり、結局この連合軍は機能する事無くロードレア国軍を動かしたという最低限の役目だけを終わらせて解散した。
皮肉なことにこのメスローの外交戦略は、かつて彼がディグドこそ兵法の師と仰いでいた頃に教わったものであった。


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