概要

リッドゾーンの戦いとは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ694年9月、ベルザフィリス国軍とアル国軍の間に起きた戦いである。
それまでも、建国以降ギリギリの綱渡りの様な戦いを繰り広げてきたルーディアが、自身が指揮官として望む戦いでは、生涯ではじめて完敗を喫することとなる戦いである。

戦闘に至るまでの背景


▲694年2月における勢力図

ベルザフィリス国を囲むルーディア包囲網は、決して連携がとれていたわけではないが、それでもアル国、シャリアル国、バルド国の3国を同時に相手にすることで、ルーディアを苦しめていた。
更に、舞姫散華により、ロードレア国との正面決戦に向かうため方向転換を強いられたロッド国までもがこの連合に加わる。
ロッド国は、直接兵を送る事はなかったが、アル国と和睦を結ぶことにより、アル国は兵力の全てを南のベルザフィリス国に向けさせることになる。
各方面から同時に攻め込まれたベルザフィリス国軍は、国境の戦いで次々と敗れ、国境を侵食され、建国以来最大の危機を迎えていた。
ルーディアは、ロードレア国に使者を派遣してロッド国、シャリアル国の動きを封じ込める様に牽制を依頼すると、自らはガイヴェルドを引きつれ、アル国の最前線基地となったザッツ砦へ先制攻撃を仕掛ける準備に取り掛かっていた。

軍師ディルセアレニィラ五舞将ラゴベザスデイロードシレンヴィルガスといった将軍は、四方から侵入する連合軍を打ち払う為各地に出陣していた為、それぞれの部隊の層が薄くなるという不安を抱えたままの出陣であった。


両軍の戦力

攻撃側守備側

ベルザフィリス国軍
軍勢
アル国軍
総兵力10800兵力総兵力18000
ルーディア総指揮フィッツ
軍師
主要参戦者

ルーディア

ガイヴェルド

アルシェ



フィッツ

メリア

レガード

ラミア

バドン

戦闘経緯



ルーディアが対峙していた相手は、アル国の独眼竜と呼ばれるフィッツであった。
暴君ザグルスは、平民出身というだけで彼の才能を放置していたが、彼こそがアル国最強の将であった。
フィッツがとった作戦は、わざと負けて相手を引き込み殲滅するというごく初歩の戦法であったが、それを実現させるために擁した努力は並大抵のものではなかった。
まず初戦では砦の東にある湖に軍勢を密かに移動させ水攻めの準備をするが、ルーディアに看破され、待ち伏せされて撃退される。
続いて、ザッツ砦の戦いでも敗戦、撤退しながら陣を敷きなおし迎撃しようとするが、これもガイヴェルドによって撃退されている。
こうして、少しずつルーディアを誘い込むフィッツ
ルーディアガイヴェルドも優れた将であり、相手の誘き出し作戦にかかるほどあさはかではない。
しかしフィッツは、ルーディアの将としての実力も才能もすべて調べ尽くし、ルーディアがギリギリ見抜ける罠を張り、戦場でもかろうじての脱出を繰り返すことで、次は逃さないと相手に信じ込ませて深入りさせていく。
並の将なら芝居ではなく本当に全滅させられる様な戦局から、フィッツは軍勢を最低限の損害で見事に後退させ、「これは演技でわざと負けたとは思えない」と信じ込ませるほどの敗北を繰り返し、ついに反撃の時を迎えた。



ルーディア自身が、「倒せそうなのにいつもあと一歩で逃げられている」ことの違和感に気付き、フィッツの策の可能性を考え、一旦軍勢を撤退させようとしたその瞬間、フィッツの夜襲による総攻撃が始まった。
密かに呼び寄せていた猪突を好むラミアバドン、そしてレガードを従わせたフィッツ自身の軍勢が、三方向から同時に攻撃を仕掛け、狭い街道で完全に包囲されたベルザフィリス国軍は逃げ道を失い、統率もなくなり大混乱に陥る。



ルーディアだけは脱出させようとアルシェは戦場に踏みとどまり、彼女に山道を抜けさせてリッドゾーン盆地へ逃がそうとするが、フィッツの命令によりそこに待ち伏せしていたメリアの弓隊によって一斉射撃を受ける。
この矢の雨に、ルーディア自身も馬を射抜かれ、夜のリッドゾーン川に落ちていき姿を消す。

ベルザフィリス国軍は、一晩で三分の一の兵力を失い、アルシェも囚われる。
ラミアメリアの性格を熟知して、前半戦の忍耐と精神力を必要とする「わざと負ける戦い」には召集せず、後半の破壊力を存分に発揮できる殲滅戦に投入したのは、フィッツの人事の妙であった。
そして、奇襲・夜襲で大軍を打ち破る事を得意としていた独眼竜ルーディアが、もう一人の独眼竜フィッツが謀った夜襲によって完膚なきまでに叩かれた戦いであった。

夜の川に馬ごと落ちたルーディアだが、奇跡的に一命を取り留めていた。
彼女は、この地に隠れ住んでいたレイラという少女に救われ、看護を受けていた。
レイラの親は、アル国の内政官であったが、暴君ザグルスに諫言した為処刑され、彼女は追っ手から逃れるためこの地に1人で隠れ住んでいた。
ルーディアは、一つの決意を固めると、自らの居場所にベルザフィリス国軍本陣の旗を立てた。
「敵が先にこの旗を見つければ死を、味方が先に見つければ生を」と言い放ち、策もなく自らの運のすべてをここに賭けたのだ。

そして数刻後、ルーディアの前に姿を現した軍勢は、ガイヴェルドが敗残軍をまとめて再編した味方のものであった。
自らの運がまだ尽きていない事を知ったルーディアは、急ぎ軍勢をまとめると本国へと撤退していく。

なお、ガイヴェルドは、フィッツがこれ以上の追撃は無謀と止めたにも関わらずに攻撃を仕掛けてきたラミアを撃退している。
それでも、ベルザフィリス国軍が撤退した後、ラミアメリアはこの地を占領し、かつてアル国の民だった人々に対して激しい報復を行った。

戦いの結末

ルーディアは、カルディスの様に常勝を誇りとするタイプではなく、敗戦から学び、前回の戦いより強くなるタイプの将である。
この戦いでも、勝ちすぎることの危険を学んだ彼女は、11月9日に諸将の前で今回の敗戦の責任は自らの驕りにあったと自分自身を戦犯者とし、その髪を切ろうとしたが、グレシアに説得されこの戦いは戦犯者なしとして記録されることとなった。
これより、しばらくベルザフィリス国は、攻撃ではなく防衛に徹することとなるが、アルバルドシャリアル3国が、連合軍を組むことなくそれぞれ各個に動いたこともあり、派遣された各将が各地で戦果をあげ、国境を越えてきた軍勢を撃退し、ベルザフィリス国軍は少しずつ盛り返していた。
そんな中、ルーディアの命の恩人であるレイラと養子ガイヴェルドが、12月21日に婚儀を行うこととなったのは、独眼竜のつかの間の安らぎであった。


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