The"BellKnight series"

「顔上げろって」
「分かっている」

普段通りの問答が心地良かった

「月の女神に宜しく伝えてくれよな」
「戻って一番に伝えるよ」
「そりゃいいや」

アメリィの返事に微笑むカサシスクにアメリィが続ける

「お前が漆黒の魔王を倒した事で
 月に住む奴らもバッシングをやめる
 月の女神もやっと開放されるな」
「あぁ……」
「おし、じゃ始めてくれ」
「分かった」

その言葉を最後にカサシスクは
月の聖剣アメリィブレイカーを地に刺した
その下には先ほど大地へ生めた漆黒の魔魂がある
漆黒の魔魂を眠らせる場所は
魔力の力が一番強いとされる場所
ヴァング大陸の魔導区域にある神殿跡地にした
魔力の流れが活発な場所だと月光の護封剣の力も
それに相乗して効果が強くなると判断したからだ
静かに瞳を閉じて精神を集中するカサシスク
アメリィと彼女の間にもう言葉は必要無かった
しばらくの沈黙があった後カサシスクが目を開く
と同時にカサシスクの体が月の光に包まれた

「月の力よ、月光の護封剣にその光を」

カサシスクの体から光がアメリィへと移動する
月光色に輝く月の聖剣アメリィブレイカーに両掌を向け
カサシスクが月光の護封剣、最後の仕上げへと入る
月光の護封剣は月の聖剣から光を奪い対象を封印する
そしてこの技をカサシスクが使う事によって
アメリィブレイカーの中の自我は消滅する
月光の護封剣が発動してしまえば
もう何をどうしようともアメリィの自我は戻らない

ずっと一緒に戦って来た
よく喧嘩した
挫けそうな時はお互い支え合った
お互いの事が大好きだった
唯一の友達だった
相棒だった

月の聖剣アメリィブレイカーから
少しずつ光が大地の中へと送り込まれていく
そしてそれとは逆にアメリィから光が消えていく
消えていく相棒の心を見ている様で
カサシスクの両目からは涙が溢れ出た
それでも月光の護封剣をカサシスクは続ける

「あたしはルナの騎士だから」

自分に言い聞かせるくらいの小さな声で呟いた
月の聖剣から大地の中への光の移動は続いている
もう見るからにアメリィの光は残っていない
そしてようやく、長い長い時間は終わった
輝きを失い静かにそこに存在する月の聖剣と
全てをやり遂げ呆然と立ち尽くす月の騎士

「終わったよ、アメリィ」

返事は無い
それは月光の護封剣の成功を意味する
この先漆黒の魔魂がどれだけ邪悪な存在になろうとも
ここに突き刺された月の聖剣が存在し続ける限り
再び世界に漆黒の帳が下ろされる事はないだろう

アメリィを背にカサシスクが距離を取る
聞こえるか聞こえないかくらいの声で
「バイバイ」と残したままカサシスクはその場を後にした



あれからどれくらいの時が経ったのだろうか
SC1534年、変わらずこの地に漆黒の魔魂は眠っている
長い時間を過ごしたせいか月の聖剣も多少は朽ちてしまった
カサシスクがもう存在してないこの現世に
持ち主を失った月の聖剣アメリィブレイカーは
輝きを失ったまま……ただ静かにここに居る

ここに封印されてから
何度か人に発見されてしまったが
誰も月光の護封剣を破る事は出来ず
この地から去っていった

今ではこの場所は封印の地として
ヴァング大陸を治めるラグランジュ協会が
管理をし、ここを守っている


人々はここに何が眠っているのか
なぜこの剣がここに突き刺さっているのか
そしてこの剣の名前が何というのか
この剣を振るい、世界を守り戦った
ルナの騎士と呼ばれた騎士が居たという事を
伝説の中の一つでしか知らない

ただひとつ

カサシスクの戦いを見守り続けた
月の聖剣アメリィブレイカーを照らす
夜空に見事に輝く、月を除いては……



おしまい。


ここまで読んでくれてありがとうございました。

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