The"BellKnight series"

音の無い闇を走る

自分の足音に合わせて
心臓の音が聞こえる様な気がした

金色の髪の毛を束ねた女性
彼女の名前はカサシスク
月の女神から命を受け
漆黒の魔王を倒すべく
この地に降り立ったルナの騎士だ

闇の中でうごめく何かの繰り出す攻撃を避けながら
右手に持っている金色の光を放つ聖剣
アメリィブレイカーでその何かを斬り捨てる

「所詮は漆黒獣、敵じゃないよな」

意思を持つ剣、アメリィがキザに言う
それを全く相手にせずカサシスクは先へと進む

漆黒獣
漆黒の魔王が纏う闇の中から生み出された魔物
魔王は過去にこの世界を襲った時も
この漆黒獣を使い抵抗する者達を黙らせた

一匹、二匹、
カサシスクが漆黒獣を斬り進む
普段は冷静な彼女も戦いの連続で興奮状態になり
受けているはずの傷から来る痛みも感じない
荒くなった息がさらに疲れを呼ぶ
もうどれくらいの敵を倒しただろうか

「休もうカサシスク」
「まだいい」
「だめだ、ここで魔王と当たったら終わる」
「……」

足を止め肩で息をする
後ろを振り向き進んだ距離と
敵が来てないかを確認した

「どこか休めるところは……」

暗い中を目を凝らしながら進む
すると前に村の様な建物が並ぶ場所を発見した

「ついてるな、村だ」

アメリィの言葉にカサシスクは相変わらず答えない
彼女が月の女神からルナの騎士という肩書きを授けられ
月の聖剣アメリィブレイカーを与えられた日から
カサシスクとアメリィの関係は始まった
独り言の様にボツボツと何かを言い続けるアメリィ
カサシスクが言葉を返す事は少ない
しかしこの二人、なぜだか相性だけは良かった

「小さな村だな、住んでた奴らは全滅か」
「休むなら宿屋だよな、ベッドもあるしさ」
「ついでに道具屋も見て使えるモノが無いか確認だ」

よくしゃべるアメリィを例の如く無視しながら
カサシスクは一軒の家の扉を開いた

「おいおいカサシスクどうした?」
「タンスの中でも調べようってのかい」

中に入るとそこにも静かで暗い空間が広がっている
テーブルの上に置かれた写真立てを手に取る

「3人家族か……」

そう言うとカサシスクは写真立てを元の位置へと戻した

「ちょっと前まではここに
 当たり前の日常があったんだろうさ」
「そいつを一瞬で奪っちまうんだ
 漆黒の魔王……クソッタレのバカ野郎だぜ」
「見ろよカサシスク」

アメリィの言葉に視線を移す
その先には飾りつけをされた
小さなクリスマスツリーがあった

「そうか……、今日はクリスマス・イヴ」

本当ならこの場所で今頃
幸せな家族団欒が行われていたに違いない
家中を探せば父親のサンタ服にプレゼント
冷蔵庫の中にはクリスマスケーキにシャンメリー
今日を祝う為の色々なアイテム達が出てくるだろう

「……」

無言で何かを考えている彼女に
アメリィはあえて何も言わなかった

カサシスクはそのまま部屋の隅へと行き
壁に背中を預けて座り両足を両手で抱え込んで眠った

12月24日 23:00
漆黒の魔王によって世界が闇に包まれてから
10時間が経過しようとしている


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