The"BellKnight series"

暗闇がただ広がる空間
ゆっくりと川を流れる葉の様に
その中を静かにユラユラと歩いていた男は
足をピタリと止めると
隣にある大きな岩へと腰掛けた

煙管で吸い込んだ煙をスーっと吐く

漆黒の中を白い煙が漂っては消えていく
男の背中で枝を踏む乾いた音が鳴るが
煙管の灰をゆったりと地面に落とした男は
懐から新しい煙草を取り出し煙管の火皿に詰めた

「匂いに釣られて獣が来たか」

枝を踏んだ正体
漆黒獣がその男へと向かう
かなりの速度、その数10

「忠告しておくが」

持っていた刀の先を地面に刺し
柄から手を離すと自分の足元を指差した

「そこらには 真空 を撒いておる」
「注意されたし」

当然漆黒獣が言葉を理解出来る訳は無く
10匹の黒い獣達は問答無用で男に向かう
その刹那、獣達を無数の刃が斬り刻んだ
獣の鳴き声と共に黒い煙となって消滅する漆黒獣
男に向かった10匹全てが一瞬の内に消え去った

「落ち刃を突破しようとするとは愚かな」

煙草に火を付けて煙管から煙を吸うと
男は再び白い煙をスーっと吐き出した

ベコウ大陸から派遣された侍
ラグランジュの生み出した魔剣の内の1つ
"真空"を司る魔剣 無極

「ここはすでにバローズ区域、
 敵の大将はすぐそこに居るはず」

無極はベコウ大陸から船を漕いで単身
ヴァング大陸のバローズ区域へと
漆黒の魔王を倒す為にやってきた
全ては忠誠を誓ったベコウ大陸を守る為

「あれは……」

目の前に見えたのは家の並んだ集落の様な場所

「村か、休むには都合の良い場所だ」




どれくらい休んだだろうか
貴重な休み時間は突然終わりを告げた
眼を開き、素早く立ち上がると
カサシスクはアメリィを持ち壁を背に隠れた

何かがここに来た
直感的ではあったが今は確信している

只者では無い何か
それがカサシスクの居る村へと来た

「ヤバイ奴か?」

アメリィの問いかけにカサシスクが小さく頷く

先手必勝
出鼻をくじくことによって局面を有利にすること
カサシスクの意思に躊躇いは無い
休んでいた家を飛び出し気配を消しながら
その存在へと近付いて行く
暗闇の中に影を見つけた
対象をロックしたカサシスクの行動は速い
地面を力強く蹴り、反動を持って距離を詰める

「アン、ドュー、トロア!」

アメリィの意味不明なタイミングに
カサシスクがなんとか合わせる
繰り出した速攻の一撃をそいつは刃で受け止めた

「いい攻撃だ、躊躇いが無い」

防がれた現実を受け止めつつも
カサシスクは対象から距離を取る
暗闇に慣れた瞳に敵が少しずつ映る

白髪の長い髪が印象的な侍
無極の姿がそこにあった

「漆黒の魔王の手の者か?」

カサシスクの問いかけに無極は首を傾げる

「しっこくのまおう?」
「それはもしや、
 この騒動の原因となる者か?」

無極の質問にカサシスクは頷く

「俺達はそいつを倒して
 世界から闇を消しに来たんだよ」

アメリィの言葉に何かを理解した無極は
カサシスクに対して敵対心を解いた
それを感じたカサシスクもまた
アメリィを降ろし、無極の姿勢に答えた

「自分は真空を司る魔剣 無極と申す」
「ベコウ大陸より命を受け
 そなたの言う漆黒の魔王を討ちに来た侍だ」

無極の瞳から視線を逸らさずカサシスクが答える

「私はルナの騎士、カサシスク」
「月の女神からの漆黒の魔王討伐の命を受け
 ヴァング大陸バローズ区域へとやって来た」

少しの無言が二人の間を流れた


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