第八話 奇跡も起きるわ
最終更新：
slashjoule 2019年12月03日(火) 19:41:38履歴
「あの剣から放たれる月光色の剣閃、
見ているだけでイライラさせやがる
まるで…月の女神を見ているかの様に！」
魔王の声を正面に受けながら
カサシスクは猛然と魔王に距離を詰める
「アメリィ、今こそ――
月の力を使って魔王を倒す」
「あぁそうだな！」
カサシスクにアメリィが答えた瞬間
一人と一本は突然月色の光に包まれた
「何をする気かしらんが死ね！」
魔王がカサシスクに向けて技を放つ
「ジェットブラック！アロービリオン！」
魔王が指を鳴らすと同時に無数の漆黒の弓矢が
再びカサシスクに向かって襲い掛かった
「邪魔立て無用！」
「攻撃のミキシング！メーアスプラッシュ」
その攻撃を無極とエーデルワイスが相殺する
「チッ！ならカーテンコールだ」
魔王が再び攻撃に移ろうとした時だった
カサシスクを包み込んでいた月色の光が弾け飛び
辺り一面が光の閃光に飲み込まれる
魔王の生み出した漆黒を全てかき消すかの様に
「この閃光は」
「光は闇を吹き飛ばす！」
目を腕で覆う魔王に
その目前にまで接近したカサシスクが答えた
鈍い音がした
それはカサシスクの一撃が魔王を貫いた音だった
「グヲ……」
魔王の口から苦痛の声が漏れる
「こいつ……」
自分の目の前に居るカサシスクを怒りの表情で見下ろす魔王
顔を上げカサシスクもまた力強い目で魔王をにらみ返す
「あたしはルナの騎士、
月の女神とは違う」
「お前を殺しに来たんだ！」
さらにカサシスクは持つ剣に力を入れる
何かが起こる――
辺り一面の空気の緊張を
"真空"を司る魔剣 無極が感じ取った
「月よ！あたしに力を！」
「貴様ァッ！」
魔王がカサシスクの首を掴み上げる
アメリィを魔王に突き刺したまま
カサシスクは魔王に持ち上げられてしまった
「このまま死ね、闇の中で」
それでもカサシスクはアメリィを放さない
薄くなる閃光を再び闇が覆い始める
「漆黒の勝利だ！ルナの騎士！」
「違うっ！」
明けていく光は消滅せずにアメリィの中へと吸収されていく
月色の光を吸収し続けるアメリィの刃が月光色の刃に輝き始める
「グワアアアアアアアアアアアア」
声にならない声
断末魔が突然魔王の口から発せられた
「消え去れ漆黒よ！月光の前に！」
とてつもない光の閃光が全員を照らした
無極も、エーデルワイスも
カサシスクでさえもその光の眩さに瞳を閉じる
閉じた瞼の上から感じる光が少しずつ弱くなっていく
全員がそっと瞳を開けると同時に視界に色が戻り始める
「漆黒の帳が……、上がる」
エーデルワイスが色を取り戻していく世界を見ながら呟いた
「漆黒の魔王は！？」
無極がカサシスクのほうへと目をやると
そこには片膝をつき座り込むカサシスクが居た
カサシスクはうっすらと瞳を開けながら
涙を流しながら漆黒から開放される世界を見ている
「お母さん……、漆黒の魔王は倒したよ」
そう呟くとそのまま彼女はうつ伏せに地面へと倒れた
手を放したアメリィブレイカーがその横にカランと音を立てて倒れる
心配そうな声を上げて無極が近づいてくるのが分かった
自然とこぼれる笑みの中でカサシスクは目の前に転がる魔魂を見つけた
視界の中にアメリィブレイカーと魔魂
漆黒の魔王と呼ばれた存在は月の聖剣によって漆黒の力を全て失った
結果、漆黒の魔剣であったソレは元の存在である漆黒を司る魔魂へと戻った
「大丈夫か？カサシスク」
無極に優しく抱えられながらカサシスクは小さく返事をした
世界は完全に色を取り戻し、漆黒の世界は闇へと消え去った
戦いが終わった実感が段々と身体の中に駆け上がってくる
同時に……、限界を超えていたカサシスクの疲労やダメージも
分泌するアドレナリンで誤魔化されていた状態から
一気に身体の中へと駆け上がっていった
静かに瞳を閉じて、眠りに入るカサシスクを
無極は何も言わず抱き上げ、隣に転がるアメリィを拾い上げた
「手間かけちまって」
アメリィの言葉に無極が笑顔で頷いた
「あんな取って置きがあったとは驚いた」
「奥の手は隠しておくもんさ」
「漆黒の魔王と対峙した時に拙者…、
正直敗北を悟ってしまっていた」
「お主達が月から来てくれて良かった
我々だけではあいつは倒せなかっただろう」
無極の言葉に最初は答えていたアメリィだったが
やがて彼も戦いで疲れたのか何も言わなくなった
そのまま無極が座り込むエーデルワイスの隣を通る
「戦いは終わり、世界は色を取り戻した」
無極の言葉にエーデルワイスは大きく何度も頷く
「拙者まるで……、奇跡を見た様な感覚だ」
その言葉にエーデルワイスは無極の顔を見上げて笑った
「今日はクリスマス、奇跡も起きるわ」
色を取り戻した世界に
深々と闇を払う白い雪が降り始めている
戦いは終わった
漆黒の魔王と呼ばれた存在
漆黒を司る魔剣は月の聖剣を振るうルナの騎士により
討伐され力を失い魔魂へと戻った
１２月２５日 ＡＭ３：００
漆黒の魔王が世界を闇に包み込んでから
１４時間が経過しての一件落着である
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見ているだけでイライラさせやがる
まるで…月の女神を見ているかの様に！」
魔王の声を正面に受けながら
カサシスクは猛然と魔王に距離を詰める
「アメリィ、今こそ――
月の力を使って魔王を倒す」
「あぁそうだな！」
カサシスクにアメリィが答えた瞬間
一人と一本は突然月色の光に包まれた
「何をする気かしらんが死ね！」
魔王がカサシスクに向けて技を放つ
「ジェットブラック！アロービリオン！」
魔王が指を鳴らすと同時に無数の漆黒の弓矢が
再びカサシスクに向かって襲い掛かった
「邪魔立て無用！」
「攻撃のミキシング！メーアスプラッシュ」
その攻撃を無極とエーデルワイスが相殺する
「チッ！ならカーテンコールだ」
魔王が再び攻撃に移ろうとした時だった
カサシスクを包み込んでいた月色の光が弾け飛び
辺り一面が光の閃光に飲み込まれる
魔王の生み出した漆黒を全てかき消すかの様に
「この閃光は」
「光は闇を吹き飛ばす！」
目を腕で覆う魔王に
その目前にまで接近したカサシスクが答えた
鈍い音がした
それはカサシスクの一撃が魔王を貫いた音だった
「グヲ……」
魔王の口から苦痛の声が漏れる
「こいつ……」
自分の目の前に居るカサシスクを怒りの表情で見下ろす魔王
顔を上げカサシスクもまた力強い目で魔王をにらみ返す
「あたしはルナの騎士、
月の女神とは違う」
「お前を殺しに来たんだ！」
さらにカサシスクは持つ剣に力を入れる
何かが起こる――
辺り一面の空気の緊張を
"真空"を司る魔剣 無極が感じ取った
「月よ！あたしに力を！」
「貴様ァッ！」
魔王がカサシスクの首を掴み上げる
アメリィを魔王に突き刺したまま
カサシスクは魔王に持ち上げられてしまった
「このまま死ね、闇の中で」
それでもカサシスクはアメリィを放さない
薄くなる閃光を再び闇が覆い始める
「漆黒の勝利だ！ルナの騎士！」
「違うっ！」
明けていく光は消滅せずにアメリィの中へと吸収されていく
月色の光を吸収し続けるアメリィの刃が月光色の刃に輝き始める
「グワアアアアアアアアアアアア」
声にならない声
断末魔が突然魔王の口から発せられた
「消え去れ漆黒よ！月光の前に！」
とてつもない光の閃光が全員を照らした
無極も、エーデルワイスも
カサシスクでさえもその光の眩さに瞳を閉じる
閉じた瞼の上から感じる光が少しずつ弱くなっていく
全員がそっと瞳を開けると同時に視界に色が戻り始める
「漆黒の帳が……、上がる」
エーデルワイスが色を取り戻していく世界を見ながら呟いた
「漆黒の魔王は！？」
無極がカサシスクのほうへと目をやると
そこには片膝をつき座り込むカサシスクが居た
カサシスクはうっすらと瞳を開けながら
涙を流しながら漆黒から開放される世界を見ている
「お母さん……、漆黒の魔王は倒したよ」
そう呟くとそのまま彼女はうつ伏せに地面へと倒れた
手を放したアメリィブレイカーがその横にカランと音を立てて倒れる
心配そうな声を上げて無極が近づいてくるのが分かった
自然とこぼれる笑みの中でカサシスクは目の前に転がる魔魂を見つけた
視界の中にアメリィブレイカーと魔魂
漆黒の魔王と呼ばれた存在は月の聖剣によって漆黒の力を全て失った
結果、漆黒の魔剣であったソレは元の存在である漆黒を司る魔魂へと戻った
「大丈夫か？カサシスク」
無極に優しく抱えられながらカサシスクは小さく返事をした
世界は完全に色を取り戻し、漆黒の世界は闇へと消え去った
戦いが終わった実感が段々と身体の中に駆け上がってくる
同時に……、限界を超えていたカサシスクの疲労やダメージも
分泌するアドレナリンで誤魔化されていた状態から
一気に身体の中へと駆け上がっていった
静かに瞳を閉じて、眠りに入るカサシスクを
無極は何も言わず抱き上げ、隣に転がるアメリィを拾い上げた
「手間かけちまって」
アメリィの言葉に無極が笑顔で頷いた
「あんな取って置きがあったとは驚いた」
「奥の手は隠しておくもんさ」
「漆黒の魔王と対峙した時に拙者…、
正直敗北を悟ってしまっていた」
「お主達が月から来てくれて良かった
我々だけではあいつは倒せなかっただろう」
無極の言葉に最初は答えていたアメリィだったが
やがて彼も戦いで疲れたのか何も言わなくなった
そのまま無極が座り込むエーデルワイスの隣を通る
「戦いは終わり、世界は色を取り戻した」
無極の言葉にエーデルワイスは大きく何度も頷く
「拙者まるで……、奇跡を見た様な感覚だ」
その言葉にエーデルワイスは無極の顔を見上げて笑った
「今日はクリスマス、奇跡も起きるわ」
色を取り戻した世界に
深々と闇を払う白い雪が降り始めている
戦いは終わった
漆黒の魔王と呼ばれた存在
漆黒を司る魔剣は月の聖剣を振るうルナの騎士により
討伐され力を失い魔魂へと戻った
１２月２５日 ＡＭ３：００
漆黒の魔王が世界を闇に包み込んでから
１４時間が経過しての一件落着である
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