1

「おや、誰かと思ったら随分久しぶりじゃないか」
「あ、ナズ姉――ナズーリンさん」
「いや、そう畏まらなくても昔みたいに『ナズ姉ちゃん』でいいさ。君と私の仲じゃないか。それにしてもずいぶん大きくなったなぁ」
幼い頃に両親が他界し俺は命蓮寺で預けられることになった。命蓮寺の皆は自分にとっては全員親みたいなものだが、とりわけ一番長く過ごしたのはナズ姉ちゃんだろう。見た目の年齢が一番近しい故に取っ付き易かったというのもあっただろうし、何かしらの行事ともなればやはり他の皆は忙しくなり必然的に自分の相手を出来るのは寺の信徒ではない彼女しか居なかったというのもある
そして元服の年、俺は独り立ちするために命蓮寺を出た。一人前になるまではここに顔を出すつもりもないと伝えると皆一様に寂しそうな顔をしたが、狭い人里で自分の居場所など探せばすぐ分かるだろうに一度も顔を見に来なかったのはこちらの決意を汲んでくれたのだろう
それから五年、今まで墓参りには来ても本堂の方には近寄りもしなかったのに今年に限って来てしまったのはある理由がある

2

「しかしすまないな。五年ぶりだと言うのに今少々忙しくてあまり長話も出来ないんだ」
「いや、こんな遅い時間に来た俺も悪いし……そんなに忙しいなら俺も手伝おうか?」
「あ……いや……君ではちょっと出来ない仕事なんだ。本当にごめん」
「そっか……あ、それと忙しい所悪いんだけど、これ何なのか分かるかな」
「えっ……なんでそれを君が……」
「なんでって――」
そして俺はここに至るまでの経緯を話す
事の発端は先週に仕事先の上司が全治二週間の大けがをしたことだ。そのせいで取り掛かっていた仕事がとたんに修羅場と化し結局今日の夕方頃まで掛かってしまった
それで今日の昼、その上司が松葉杖をつきながら労をねぎらいに来た。そこで、せめてものお詫びとして貰ったのが一輪の彼岸花である。一体何なのかと訊いても「これをお盆の夜に命蓮寺に持って行けば分かる」とだけしか説明してくれなかった
まだ一人前とは程遠いから迷ったが、上司の好意を無碍にするのも躊躇われ結局遅い墓参りのあと顔を出してしまったのである

3

「それで、この彼岸花って何なのかな」
「それは……その…………」
なにやらナズ姉ちゃんが言い淀んでいると
「あらあら、ずいぶん懐かしい顔がありますね」
「あ、聖さ――」
奥から懐かしい声がしたので顔を向けた俺はその姿に絶句した
首から上は記憶にあるのと寸分違わず菩薩のような優しげな笑みをしたそれだったが、その下、着ているのは素肌が透けるくらい薄い白襦袢のみで、さっきまで激しい運動をしていたかのように汗だくになっており肌にぴったりくっついている。胸の先には二つの突起が自己主張しており、まるでそれは娼婦のように淫靡な姿だった
「え……?あ……?」
「おや……ふむ、そう言うことですか。ならばナズーリン、あなたがお相手してあげなさい」
「は!?いや……その……それは…………」
「あなただって実のところ吝かではないのでしょう?それでは、私は般若湯を取りに来ただけなのでこれで」
そう言って聖さんは去っていった

4

「あの……ナズ姉ちゃん、聖さんのあれは……」
「……………………向こうで話そう。着いてきてくれ」
たっぷり沈黙したあと、意を決したようにナズ姉ちゃんは俺を奥の方へと案内した
辿り着いたのは子供の頃に入ってはいけないと厳命された部屋の一つだ。中に入ってみるとなんてことは無い、布団が一組敷いてあるだけの六畳一間であった
「あの……それで……」
「うむ、実は君にはずっと秘密にしていたことだがな、命蓮寺では何かしらの行事がある度に高額のお布施をしてくれている檀家の方々――それも独身男性に限り――に彼岸花を送り、それを割符代わりにして……その……望みの信徒と一夜を共にするという事を行っていてな……ああいや、別に強制ではなく自由参加だぞ?現に響子なんかは毎年年末年始にライブをやっているだろう?それで……まぁ……うん……そういうことだ」
「…………ナズ姉ちゃんは?」
「え?……いや、私はほら、ネズミの妖怪だろ?だから他のみんなとは違って子供が出来やすいし、聖みたいに避妊の術も使えないし、かといって避妊具を使ってまでしたいもんじゃないし……」

5

「そっか…………うん、それじゃあ俺もう帰るよ。忙しい時に邪魔しちゃったね」
「あっ……」
立ち上がり帰ろうとする俺の裾をナズ姉ちゃんが掴む
「その……君は、私じゃ嫌か……?」
「えっ……?」
「私は君になら……いや……君にして欲しい」
突然の告白に頭が真っ白になると同時に、昔の思い出がフラッシュバックする。寅丸さんが無くした宝塔を探しながら散歩をした日々、いいとこを見せようと馬鹿をやって怪我をしてしまった時の呆れ半分微笑ましい半分なあの顔、独り立ちすることを告げた時の表情、そして五年ぶりに出会った時に見せたあの表情
ああ、多分俺は昔からずっとナズ姉ちゃんが好きだったんだ
俺は俯くナズ姉ちゃんの顎に手を添え顔を上げさせる。そして顔を近づけ
「んっ……」
そっと口付けをした

6

数分だろうか、数秒だろうか、はたまた数時間だろうか、その時間は永遠にも刹那にも感じられた。顔を離してみれば首辺りまで真っ赤になったナズ姉ちゃん
「その……それは……そういう事でいいんだよな?」
「うん。好きだよ、ナズ姉ちゃん」
「……うん、私も」
そう言ってきゅっと胸元に抱きついてきた。こうしていると、子供の時には大きく感じた存在が本当はこんなにも小さかったんだと自覚させられる
と、おもむろにナズ姉ちゃんは体を離す
「それでだな……私はこういうことはしたことないから……気持ちよくなくても文句は言わないでくれよ?」
そしてこちらのズボンを脱がし始めた
「これは……男というのはここまで大きくなるんだな……」
半勃ち状態の陰茎をマジマジと眺め、ふにふにと感触を確かめる

7

「わ、わ、お、おい、これどこまで大きくなるんだ!?」
こんな状況に勃起を我慢できるはずも無く、俺の陰茎はみるみる内に怒張していった
「これは……すごいな……」
顔を近づけスンスンと鼻を鳴らす。そしてチロチロと亀頭を舐め始めた
気持ち悪いわけではない。むしろ気持ちいい。しかし、それ以上にもどかしい
どうしようかと考えあぐねいていると、ナズ姉ちゃんがこちらの反応をうかがうようにチラチラと目を向けているのに気が付いた
「あ……その、出来れば咥えてくれないかな」
「こうか?あむ」
ナズ姉ちゃんは俺の陰茎を口いっぱいに頬張る。その小さな口には余りにも大きすぎるのか亀頭部分しか咥えられていないが、それでも十分だった
「はむ……グチュ……ジュリュ……ぷはっ……レロ……あむ……」
「っく……ナズ姉ちゃん……出る……」
「んむ?んんっ!?」

8

一週間の激務で溜まりに溜まっていた事もあり、いともあっさりと果ててしまった
「んっ……チュル」
ナズ姉ちゃんはいきなり口内に出されたにもかかわらず吐きだすことも無く、尿道に残った精液も吸い出すようにゆっくりと口を離していく
そしてクチュ、クチュと味わい、ゴキュと一気に嚥下した
「はぁ……生臭くて……苦味があって……これは少し癖になりそうだな。え……と、それで次は服を脱げばいいのかな」
「え?あ、う、うん。多分」
ナズ姉ちゃんの裸は子供時代に一緒に風呂に入った時に何度も見てるはずなのに、目の前で一枚、また一枚と服が脱ぎ捨てられていく光景に俺は酷くドギマギしていた。と、
「……君は私だけに脱がさせる気か?」
据わった目で怒られたので俺もいそいそと服を脱ぐのであった

9

「……なんか、恥ずかしいな」
「……うん」
お互いこういう時の作法なんて知る由も無く、布団の上で正座して向かい合っている
「……それを、私のここに挿れるんだよな」
「……うん」
「…………一つお願いがあるんだが……その……ギュっとしながらしてくれないか?」
「え?あ、うん」
ナズ姉ちゃんがこちらの胸元に体を預けてくる。それを片手で抱きしめながら、もう一方の手で脚を開かせて挿れ易いようにする。所謂対面座位という形……なんだろうか
陰茎が秘裂にクチュと触れるとピクッとナズ姉ちゃんが体を震わせる
「ナズ姉ちゃ――」
「『ナズーリン』って……呼んでくれないか?」
「……じゃあナズーリン、いくよ」
「ん……」

10

恐怖心からか体を固くしているが、ここでやめると言うのも失礼な話だろうと意を決し、ゆっくりと、押しこむように腰を下げさせていく
「ぐっ…………い゛っ…………ぎっ…………」
ナズーリンの中は想像以上に狭かった。それはまるで肉塊に切れない包丁を押しこむような感じであった
「はっ……はっ……も、もう全部入ったか?」
「ううん、まだ先っぽだけ」
「そ、そうか……うぐっ……」
歯を食い縛っているナズーリンの姿に罪悪感が込み上げてくるが今更やめるわけにもいかない。抱きしめる腕にもより一層力を込めながら挿れていく
と、陰茎の先端に触れるものがあった。恐らくこれはナズーリンの処女膜だろう
「それじゃあナズーリンの初めて、貰うよ」
「あ、ああ……その、出来れば一気に……」
「うん、分かった」

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せーの、とタイミングを取りグッと一気にナズーリンの体を押し込む
「ひぐぅ!」
ビクリと大きく体を震わせたあと、短く息を吐きながら痛みに耐えているようだった
「奥まで入ったよ」
答える余裕も無いのか返事は無い。ならば少しでも痛みが紛れればと子供をあやすように背中を優しく叩いてやる
そう言えばよくナズーリンにこうしてもらっていたなぁと昔を思い出す。それで時々悪戯でこう尻尾を触ろうとして怒られたり……
「んふっ……」
と、無意識的に尻尾の付け根辺りに手を伸ばしてしまっていた。しかしさっきのナズーリンの吐息は今までのとは質が違わなかっただろうか。試しにもう一度触ってみる
「はぁ……ふぁ……」
根元をさする度、ピク、ピクと体を反応させ、鼻にかかったような声を出す

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「もしかして、ここ気持ちいい?」
「…………」
顔を真っ赤にしたまま答えが返ってこないのでもっと弄ってみる
「あっ♥だめだ♥そこっ♥変っ♥変になるからっ♥」
ナズーリンはビクンビクンと明らかに悶え始め、陰茎の締め付けも、押し出そうといきんでる様な感じから全体をしゃぶりあげ奥へと引き込もうとしてる様な感じに変わる
これではそう長くは持たないと感じた俺は
「ナズーリンごめん、動くよ」
「そ、そんな、ダメ♥ふぎぃ♥」
陰茎にまとわりつく膣壁ごと引きずり出すように抜き、子宮の中まで入れと言わんばかりに力強く挿れる
「あ゛あ゛ぁ゛っ♥お゛ぉ゛♥ひぎぃ♥」
ナズーリンは涙と涎を垂れ流しながら顔を蕩けさせ獣のような喘ぎ声を上げ出す。痛みと快楽で彩られたその痴態は、普段を知る者にとってはきっと信じられないものだろう

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「はっ……はっ……んっ……ナズーリン出すよ!ん、んーーーっ!」
「あ゛ぁ゛っ♥子宮♥子宮叩いてる♥君の精子が奥に♥あ゛、あ゛ぁ゛ーーーっ♥」
ドクッ、ドクッとナズーリンの最奥に力一杯ぶちまけたあと引き抜くと、ぽっかり開いたまま閉じ切らない膣口からドロリと精液が溢れ出てきた
「ナズーリン、終わったよ」
「ん……」
よほど疲れたのか、今だ荒い息のままこちらの胸に顔をうずめたままキュっと抱きつき動かなくなった
十分ぐらいはそうしていただろうか
「……なぁ」
「ん、どうしたのナズーリン?」
「君のここはまだ元気みたいだし……夜もまだ長いし……その……そう少し優しくしてくれるなら……もっとしてもいいぞ?」
俺はその問いに対し布団の上に押し倒すことで返事とし、それから夜通し獣のようにまぐわい続けた

14

朝、目を覚ますと、どうやらナズーリンもついさっき起きたらしく目を擦りながら体を起こしたところだった
「ん……おはよ、ナズーリン」
「ああおはよう……ふぁあ」
ナズーリンは大きなあくびをすると首を振り目を覚ます
「あ、そういえばまだ言ってなかったな」
「ん?」
「おかえり」
「……ただいま」

次の年のお盆、いつもは一人しか訪れていなかった墓にはその人の他にもう一つ、赤子を抱いた女性の人影があったという

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