最終更新: touhou_icha 2013年12月23日(月) 19:33:05履歴
部屋に戻ったときに、彼が最初に感じたのは違和感だった。
さとりが、ベッドの中央で座っている。それはまだ良い。たまにこうして待っていることはある。
だが、違うのはさとりから漂う雰囲気であった。どこか茫羊とした姿は、あまり彼女らしくない。
「あ……戻って、きたのね」
頷いて、さとりの側に寄る。どうしたのだろうか。いつもだったら、入ってくる前に既にわかっていそうなものなのだが。
どうしたのかな、と思いつつ、ベッドに腰を下ろす。下ろした瞬間、さとりの身が少し吃驚したように震えた。
明らかに様子がおかしい。一体何があったのか。
「どうしました」
どこか具合でも悪いのだろうか。頑張りすぎるところがあるから、常に気にかけてるつもりではあるのだが。
さとりはその思いを読んだらしく、首をゆっくりと横に振った。その行動もどこか緩慢で、さらに心配が増す。
もう一度首を横に振って、さとりは手で何かを指し示した。
「それ、を」
さとりが視線と指先を向けたのは、サイドボードに置いてある、桃色の液体が入った瓶だった。
もう半分以上――それこそ瓶に二割ほどしか残っていない。
手にとって、慎重に蓋を開け、中をそっとかいでみる。甘ったるい香りがした。何かの薬だろうか。
次に瓶の下にあった紙を手にした。どうやら裏書きのメモのようで、ざっと目を通す。
『お約束の品です。用法用量にお気をつけてご使用ください。きちんと分けて使いなさいね。 八意永琳』
永遠亭の薬師からのもののようだ。最後の一文だけは別に書き足したのか、書き口が少し砕けている。
文面からして、さとりが頼んだようだった。どういうものだろうか。何か病気でも患ったのか。
一体何の薬なのか――それを確認しようと紙をひっくり返して、少しめまいを覚える。
精力増進、精神昂揚、性欲増大――早い話が媚薬であった。最後の表記に思わず突っ込みたくなる。
どういうことなのか。というより、この薬がもう半ば以上ないというのはどういうことなのか。
意識が現実逃避をしはじめたのを感じて、彼は少し頭を振る。
「あ、あの……」
さとりの言葉で、はっと我に返った。本気で現実逃避をしはじめていたらしい。
傍らのさとりは、顔を紅くして、無意識のうちに額を押さえていた彼を見上げていた。
「ごめんなさい、その」
謝られても、それはそれで困る。何に対して謝られているのだろうか。
「……え、と、いろいろ、困らせているみたいで」
さとりは紅いままの顔を伏せた。大きくついた息は、どこか荒くて。
それが薬の影響なのだろうか。少しずつ薬の効力はさとりに効いてきているのだろうか。
これも現実逃避かと、もう一度頭を振る。どうも思考が安定しない。
だが、と、彼は確信に近いものを思考のうちに認める。
これを飲んだということは、そういうことをすることを意図とした――もっと言えば、そういうことを求めている、といってもいいはずだ。
「…………っ」
それを読んだらしいさとりが、さらに羞恥で顔を紅くした。しばらくの後、こくりと一つ頷く。
そのしぐさに、心臓が一つ高鳴った。どういうことをするのか、というのも、脳裏によぎる。
「直接的、なのは、その」
そっと服の袖を掴まれる。頬は耳元まで紅い。
申し訳ない、という思いを返しつつ、想いを誤魔化すように彼は自分の頭をかいた。
それでも、直接的なことを考えながらも行動に移せないのは、自身の中で戸惑いが大きいからだった。
どうして、こんなことを。その問いに、さとりは直接応えなかった。
「だ、大胆なことだとも、はしたないことだとも、思ってるの」
くいと、そのまま袖を引っ張られた。抗うことはせず、そのままさとりに寄せられるに任せる。
「…………けど、どうしても」
触れた体は、小刻みに震えていた。何に震えているのだろう。
これからの行為か、それとも少しずつ凶暴になりつつあるこちらの心か。
事態が飲み込めるに従って、じわじわと心を浸食してくるこの情欲を、さとりはとっくに知っているはずなのだから。
だが、さとりはそうではない、というように首を振った。
「……軽蔑、しないのね?」
こんな浅ましいことをしたのに、とさとりは小さく呟く。その呟きもまた、少しばかり震えていた。
「そんなこと」
そんなことするものか。叫びたいほどの思いは、安堵したようなさとりが抱きついてきたことで、言葉にする機会を失った。
「ありがとう」
礼を言われて、そんな礼などいらないのに、と胸中に呟く。
そう、いらないのだ。さとりを嫌うなどするものか。愛しい人を、どうして離すことなどあるだろうか。
さとりはその思いに少し目を細めて、こちらにさらに身を寄せてきた。
「…………お願い」
その瞳は揺らいでいた。それをそっと閉じて、胸元に頬をすりよせる。
髪から甘やかな香りが漂ってきた。湯浴みした後のしっとりとした柔らかい空気が、鼻先をくすぐる。
いい匂いだ、と、酔うような感覚と同時に、抑えがたいほどの獣欲が自分の中に沸き上がったのを感じた。
「いい、匂い?」
とろんとしたような、さとりの声がする。こちらの想いなどお見通しだろうに、身体を離そうとはしなかった。
「貴方の匂いの方が、安心できるわ」
さとりはそう言いながら、上目遣いにこちらの顔を覗きみた。
頬が上気している。瞳は潤んでいて――それが物欲しそうに見えて。
無理矢理服を剥ぎ取ってしまいたくなる。無理に服を引きちぎって、そして。
何を考えている。唸りを漏らしてその衝動に耐えた。
傷付けたいわけじゃない、乱暴にしたいわけじゃない。
けれども、それと共に、さとりを自分だけのものにしてしまいたい欲望もあって。
「っ、駄目、です」
このままでは、きっと欲望のままにそうしてしまうと、身を離そうとして。
「いい、の」
その思いを読んだであろうさとりから、そう告げられた。
「いいの、そのまま、そのままで」
そのおもいのままで。
それが限界だった。瓶の残りをくいと飲み干す。甘ったるい味と香りが、喉を通り抜けていった。
その甘さに少しだけ噎せて、その香りを吐き出すように大きく息を吐いて。
瓶を乱暴に放ってさとりの身体を押し倒し、服の合わせを乱暴に開いた。
さとりの身体が震えたのは、その乱暴さによるものだったのか、それともこれからの期待によるものだったのか。
それは今からたっぷり聞けばいいのだと、偽悪的な気分が自身の中に広がっていくのを感じていた。
ネグリジェを強引にはだけさせると、白い肌と可愛らしい下着が彼の目に飛び込んできた。
可愛らしくリボンをあしらったそれも、だが観賞していられるほど気分の余裕などはない。
「あ、やっ」
はぎ取るのももどかしくて、そのまま胸に手を伸ばす。
伸ばしながら、乱暴に口唇を塞いだ。驚きだろうか、びくとした身体を強引に抱き寄せて、口唇を味わう。
「ん、んん、あ、ぅ、んん……」
強引に舌を差し入れて、さとりの口の中を蹂躙し、舌を絡める。
逃がさないように頭の後ろに手を回し、固定するように引き寄せた。
「ん、んん、ちゅ、あ、んん、ん――!」
軽くついばむような口付けを何度か繰り返して、いきなり深く、舌を吸い上げるような口付けに変えた。
驚きも、逃れようとする抵抗も許さず、無理矢理口内を犯し続ける。
「ん――! ん、んん、あ、んん……ん、あっ!」
貪るような口付けから逃れて、さとりは大きく息をついた。瞳はさらに濡れている。
揺らぐ瞳から、一筋雫が伝った。だが、それは拒絶でないことは、何となく伝わってくる。
再び口唇を塞ぐ。今度は少しだけ優しく、労るように。
さとりはそれに応えるように、そっと腕をこちらの身体に回した。
そしてその感触に、キスだけに夢中になっていた自分に気が付き、下着に重ねていた手を動かしはじめる。
下着の上から胸を揉みしだかれて、さとりは身を震わせた。
「んん! ん、ん、ぅ……」
くぐもった甘い声が、重なった口唇の合間から漏れる。
胸元をまさぐる手に、さとりの片手が触れた。
形だけの抵抗は、こちらを煽り立てるだけだということなど知っているだろうに。
「あ、は、あ、ん、あ」
口唇を離すと、さとりは空気を求めるように喘いだ。その合間に、陶然とした声が混じる。
だが、どこかもどかしいのか、身体を捩らせた。
「ふぁ、う、ああ、あ……」
下着の上から、胸の先端のあたりを擦る。身悶えるようにして、さとりは何かを求めるような瞳でこちらを見上げていた。
わかっている。どうして欲しいのか――あるいはこれはこちらの勝手の思いこみなのかもしれないが。
どうなのだろう。こういうときに心が読めれば、と思わなくもない。
そして自分の中にも、むろん欲望はある。この白い肌に直接触れて、その感触を愉しみたい。
「直接の方がいいです?」
言葉は思っていたよりもするりと口からこぼれた。露悪的な響きは隠しようもなかった。
わかっているなら、と言わんばかりの瞳でこちらを軽く睨んで、だがそれも長く続かず、さとりは少し泣きそうな顔でこちらを見つめた。
その表情に、心にぞくぞくとしたものが駆け上がった。こんな表情をさせたくないような、そのくせこの表情をもっと見ていたいような、奇妙な感覚に襲われる。
さとりの表情がさらに泣きそうになった。その口唇からは、今でも甘い吐息が漏れている。
この囁きの間も、さとりが泣きそうな顔をしている間も、彼の指はさとりの柔らかな胸を苛め続けていた。
「あ、うう……」
はあ、はあ、と荒くなる吐息の中、さとりは意を決したようにきゅっと瞳を閉じて、請うように彼の袖を掴んだ。
「ふ、あ、あの……んん」
刺激に甘い声を漏らしながら、さとりはそっと震えながら瞳を開く。
「お、おねがい、直接……っ」
みなまで聞く余裕は、あっさりとその表情に吹き飛ばされた。
涙目で、それこそ本当に泣きそうになりながら、頬を快楽と羞恥に上気させ、上目遣いでねだる姿。
耐えられるはずもなかった。興奮で乾き始めていた自分の口唇を湿らせると、さとりをぐいと引き寄せて、彼はもどかしい手つきでブラジャーを取り外す。
邪魔になりそうだったネグリジェも、全部取り払ってしまうことにした。
ホックを外し、白く滑らかな肌を露わにする。柔らかな乳房が少し揺れて、さとりは恥ずかしそうに身を縮こめようとした。
当然そんなことは許さず、両腕を掴んで身体を開かせる。恥ずかしそうに顔を逸らすさとりの頬に口付けて、その肢体を観賞する。
胸の先は柔らかな桜色に染まっていて、そのくせ少し固くなっているのか、つんとその存在を主張している。それがまた目眩がしそうなほど煽情的だった。
「あ……うう、恥ずかしいから…………」
さとりが紅い顔のまま懇願するような声を上げ、見上げてくる。
おねがい、という形に口唇だけが動いた。何を願われたのか請われたのか。
考える前には、身体が動いていた。
さとりの身体に再び腕を回して引き寄せ、こちらに背を向けさせ、胡坐をかいた上に座らせる。
彼の胸とさとりの背中がぴっとりと付くような体勢。
「あ、え、あ……!」
こちらの意図を読んださとりに、その通りだという代わりに、胸に片手をあてがう。
柔らかな触感が掌から伝わってきて、思わず口元が笑みの形に歪んだ。
その心地よさのまま、もう片方の手も胸に添える。
「あ、あ」
肌に触れただけで、さとりの身が再びびくりと震えた。
まだ触れているだけなのに、感じているような声が聞こえる。いや、もしかすると。
「や、あ、言わない、で」
甘い懇願を聞き届けるかどうか迷いながら、そっと指を蠢かせる。
ほどよい大きさの乳房に、指が食い込んだ。柔らかでしっとりした感触が、指先から伝わってくる。
「あ……んん」
吸い付くような感触にくらりと酔うような感覚を感じる。
こちらの勝手な思いこみだとわかっていても、まるで揉まれることを望んでいるかのような感触が、こちらの思考をさらに情欲でかき乱す。
やわやわと弄ぶように、さとりの乳房に指を順番に押しつけた。手の中で思うがままに形を変えるそれを、視覚と触覚の二つで楽しむ。
「ふあ、あ、ああ、んん、あっ……」
それだけで、さとりの身体は小刻みに震えた。だが、それは嫌がっているのではなく、快感にどうしたらいいのかわからないような、そんな震えだった。
「や、やあ、そんなに、あそばないで……っ!」
遊んでいるつもりではない。ただ、この感触を楽しんでいるだけなのに
「『そうじゃない』、なんて。や、あ、んっ、だから、だめ、たのしむなんて、あっ……」
肩越しに振り向く瞳が潤んでいて、それにぞくぞくしたものを感じる。と、同時、悪戯心もわき上がった。
では、こちらに触れたらどうなってしまうのだろうか。
白い肌を弄ぶのをやめないまま、人差し指をそこに伸ばす。
「え、な、なに……ひゃあん!」
既にその存在を主張していた乳首に軽く触れれば、さとりの身体が大きく跳ねた。
「あ、やん! だ、やあ、だめ、だめ……」
懇願の声は、けれども、もっとしてほしいと言っているようにしか聞こえなかった。
胸の先端を指先でくりくりとこね回し、指の腹で撫で回す。
固くなっているそれを軽く摘みあげると、さとりの身体が軽くのけぞった。
「ふぁ、あんっ! あ、や、んん、あっ!」
嬌声は高く、そしてさらに甘くなった。耳に心地よく、そして自分の行動が確かに感じさせているのだと実感できる。
だが、声までも楽しまれていることを知ったさとりは、自分の手を口元に当てた。
「ん、んん……」
手の甲を口元に押しつけるようにして、さとりは胸への責めがもたらす快楽に耐えている。
その姿さえもどこか色っぽく、そしてそれを行わせているのが自分だというのは非常に満足感を得るものだった。
「ふぁ、ん、んんっ、ぁ、やっ! んん……!」
身体を捩るような僅かな抵抗は、彼の嗜虐心を煽るだけだった。それなのに、さとりは形だけの抵抗を続けている。
まるで、苛められることを望んでいるかのようで。
そう考えた瞬間、さとりの身体が快感からでないもので跳ねた。
「や、ちがう、ちがうの、そんな、そんなこと……」
口元から手を離し、ふるふると必死に首を横に振っている。
さとり自身にはおそらくそのつもりはないのだろう。だが、男というのはこういうことも考えるのだと、行動と思考で伝える。
「も、もう、いじわる……っ」
嘆じる声はせども、睨む視線に力はなくて。
だから、もっとしてやろうと、手の動きを早めようとした。胸の先をいじり回し、胸の形を好き放題に――
その思考を読んだのか、さとりが制止の声を上げた。
「あ、ああ、待って、まって、おねがいまって、そのまえに……!」
待てと言われても、と思いながら、それでもさとりの訴えに耳を貸そうと顔を近付ける。
無論、その間も胸への責めを止めなどしていない。さとりが快楽に耐えきれなくなるのを楽しみながら、彼の指と掌はさとりの胸を犯し続けていた。
「あ、あのね……」
さとりの瞳は快楽に流されそうになりながら、口唇からは、はっきりと求める言葉が流れ出た。
「あなたの、んん、服、とって、ほしいの」
「服?」
「うん、んぁ、あぅ、直に、触れたいの」
快感に耐える指が、きゅう、とこちらの服を握る。おねがい、というような瞳で、さとりは見上げていた。
わかった、というように頷くと、さとりはほっとしたように瞳を細めた。
彼は、知らない。さとりがこうしたときに肌の触れ合いを好む理由を。
聞くこともはばかられて、そして何より情欲がそんな理性的な問いを許さなくて。
だから、知らないまま。
誰にも甘えることが出来なかった、知らなかったさとりが、ただ一人だけ肌を重ね合って甘えることが出来る、その証として温もりを求めるのだと言うことを。
さとり自身でさえ、その感覚が曖昧すぎて、ただただ求めるだけになってしまっているだけだということを。
まだ、知らないまま。
知らないままだが、それでも、さとりが求めるなら、彼にそれを断る道理などない。
名残惜しくはあるが一度手を離して、上着を取り払う。そして再び抱きしめれば、さとりは安心したように身を委ねてきた。
そんなに安心しきってよいものなのだろうか。再び胸に手を伸ばせば、さとりの身体がびくりと震えた。
「あ、ん、ああっ、や、んん、ん……」
再び身体がのけぞる。けれども、制止のような動きはなかった。
その前に、と言った言葉通りなのか、それとも望んでいるのか、彼の手の動きに抵抗せず、なされるがままに蹂躙されている。
シーツをぎゅっと握りしめ、頼るものと言えば彼の身体だけ、という状態で、さとりは責めを受け入れていた。
「あ、あっ、やあ、つよ……ふあ、あ、や、あああっ……」
首筋を舐めあげて、髪からの甘い香に少しだけ酔いしれる。
酔うままに、さとりの固くなっている胸の先端を、次の責めるポイントに定めた。
「あ、や、何を。ああん!」
両胸の先を指の腹で触れてみると、さとりが大きく啼いた。
やはり感じるところか、と、指を食い込ませるように強く押しつける。
あ、あ、という嬌声と荒い呼吸の中で、さとりは少し身を捩って、小さな声で囁いた。
「あ、んん、やさし、く」
「ああ、すみません、出来る限り」
少し強すぎたかと、力を緩める。それでも、触れさせた指先は離さない。
「ん、んんぅ、は、ぁ……」
艶っぽいため息を聞きつつ、指をもう一本、胸の先端に当てた。
乳首を指の間で転がして、軽く挟むように摘む。ん、と甘い喘ぎがさとりの口から漏れた。
嫌ではないのがわかって、そのまま乳首を指先で弄ぶ。その間も、胸を揉みしだく手は止めない。
「ふぁ、んん、やあ、あっ、だめ、ん、んん」
くすぐるように指先で苛めてみると、さとりは身体を捻ってそれから逃れようとした。
勿論、逃がすつもりはない。さとりの身体を抱き寄せて、揉みしだく手も休めて胸の先だけに集中する。
「や、やん、や、だめ、だめ、やあ、いじめないで、あ、ううん!」
固くなっているそこは、その一斉攻撃の良い的でもあった。なぞって、摘んで、くすぐって。
拒絶するのならばもっと強くすればいいのに、さとりの手はシーツを握りしめたままだ。
いや、片方の手はこちらの下履きを掴む対象に変えていた。それがまた、こちらを興奮させる。
「あ、ああっ、あっ、んんっ、んぁ、あっ!」
捩っていた身体を一瞬だけ硬直させて、さとりはくったりと抵抗をやめた。
薄く開かれた目は潤んでいる。もしかすると、軽く達してしまったのだろうか。
「や、や、そんな、そんなこと……」
首を振るさとりの瞳からは今にも雫が溢れそうだった。頬に口付けをして、それを宥める。
だがもっと苛めたい気分に駆られて、一先ず、指を胸から離した。
「はあ、は、あっ、はぁ……」
潤んだ瞳で放心したように、さとりは息をあらげていた。
だが、どうして手を止めたのか、と訝るように第三の目だけがこちらを見つめている。
それには応えず――おそらく心は読まれているだろうこともわかりつつ、彼は少し体勢を変えて、さとりの胸元に顔を近付ける。
「あ、ああ、だ、だめぇっ!」
その制止の声など聞かず、さとりの胸に舌を這わせた。
今度は舌先でその柔肉の感触を楽しむ。そっと触れる程度に這わせていき、少しずつ柔肉に舌を埋めていく。
「ん、んん、ん、ぅ……」
さとりはこちらの頭に手を当て、髪に指を絡ませてはいるものの、力はこもっていない。
ならば、と、乳首を舌先でつついてみた。舐めるのではなく、ほんとうにそっと、くすぐるように。
「や、あっ!」
さとりの身体が跳ねて、そのまま細かく震えた。その律動を止めるように――あるいはさらに抵抗できないように押さえ込んで、舌先でちろちろと胸の先を舐め始める。
「あ、やっ、あ、あ、あ……」
抵抗を示す声は弱々しく、その責めを受け入れているかのようだった。
悪戯心から、絡めていた舌を外し、強く吸い上げる。
「やぁっ! あ、ああ、あっ、すっちゃ、だめぇ……っ! やあ、やっ、ああっ……」
首を大きく振って、こちらの髪を強く掴む。それに応じるように舌を離すと、少し安堵したような息がさとりの口唇から漏れた。
だが、ここで終わらせるつもりはなく。
「あ、だ、めっ。やっ、やああっ!」
反対側の胸を、今度は標的にする。いきなり吸い上げて、その後にやわやわと舐めあげながら、さとりの表情を伺った。
「やん、あっ、ふぁ、も、もう、そんな、や、えっちなこと……!」
蕩けたような表情で、さとりはこの責めを受け入れていた。
言葉は拒絶していても、本心からはそうは思っていない。それがわかって、歓喜と興奮が綯い交ぜになった想いが、こちらの胸中を駆けめぐる。
「あ、んっ、あ、は、あうっ!」
それに応えるように、舌の動きを早くする。片方の胸にしていたように、乳首に絡め、舐めあげ、舌先でゆるゆるとつついて苛めて。
さとりの手は、離そうとしているのか押さえつけようとしているのか、もうわからないほどになっていた。
「あ、はう、ふぁ、あ、あの、んん、ああっ……!」
呼ばれた気がして、しばらくさとりの胸で遊んでいた舌を離す。
ぬらぬらと唾液で濡れた乳首がどこかいやらしく映った。
「や、あ、そんなこと」
羞恥に染まった顔を少しだけ背けた後、さとりはもう一度こちらを向いて、口唇をなぞってきた。
「そ、の」
何を求めているのかなどわかっていた。ただ、さとりから求めてくるのは珍しくて。
「だめ?」
「いえ」
少し驚いただけ、ということを伝えながら、さとりの口唇を塞ぐ。
さとりの瞳が細められて、ゆっくりと閉じた。ふっと、何とも言えない愛しさがわき起こる。
「ふ、あ、んん、あ……ちゅ、あ」
何度も何度も、口唇を重ねる。時に深く、舌を絡ませるものも交えつつ、触れるだけの口付けも繰り返す。
「ん、んんん。ん、あ……んん」
一際強く舌を吸い上げた後、口唇を解放する。
ちろ、と、離されたさとりの口唇から、小さく舌がのぞいた。
それがまたこちらを誘っているようで、再びその口唇を塞ぐ。
塞ぎながら、片手を下腹部の方に下ろしていった。滑らかな、スレンダーな腹を軽く撫で回し、それに軽く震えるのを口付けの合間に楽しんで、下着に手をかける。
「あ、やっ、だ、だめ……!」
抵抗を許すはずもなく、片腕でしっかりと抱き留めたまま、さとりの下着の上から秘部を撫でる。
かわいらしいショーツは、既に用を為さないのではないかと思うほどしっとりと濡れていた
ここまで感じていたのか、と満足げな思いになる。さとりはいやいやをするように首を横に振った。
「や、そんなこと考えないで、思わないで……」
目尻には羞恥からの涙がたまっていて、顔は耳元まで紅く染まっている。
その姿が何とも背徳感と罪悪感をそそるもので、わざと音を立てて布越しの秘部をかき回す。
「や、やあ! や、だ、だめ、やあ、んん、あ、あっ、ああっ、あっ……」
拒絶の声の合間には、確かに感じている音が混じっていて、それが満足感をさらに煽る。
さとりはそれを全て読んでいて、だからこそそれこそ本当に泣き出しそうになっていた。
僅かな謝罪の思いと共に、頬に口付ける。
そして、そのほとんどその意味をなくしてしまっていたショーツを脱がす。
さとりは彼の動きに合わせるように、少し膝を折って脱がしやすいようにしてくれていた。それがまたこちらの熱を煽る。
「う、あ、だ、だって……」
弁解の言葉は、恥ずかしげに揺れていた。下着と秘部に、一筋粘った何かの橋が架かる。
よほど感じていたのだろう、ならば。
「あ、きゃっ、ああ、いきな……んんっ」
指を伸ばして、温かい粘液を指にとって擦るように馴染ませる。
そして陰核に指を這わせ、ぬるりとしたそれをすり付けた。
「あ、んん……! や、あ、つよ、ああっ……」
さとりはすがりつくように抱きつきながら、だが彼の手を外そうとはしなかった。
十分に充血して固くなっている陰核を、指でくりくりと弄ぶ。さとりは小さく震えながら、シーツを握りしめてそれに耐えていた。
「や、やあ、っ、んんっ、ふ、あ……」
くったりと身体はこちらにしなだれかかってきている。
開いてしまった片方の手は、遊ばせるのはもったいなく、またその感触を楽しみたいのもあってさとりの胸に向かった。
「あ、やっ、そんな、どっちも、あ、ああ、んぅ……」
しっとりと汗ばんだ肌が、手にさらに吸い付いてくる感覚を与えてくれた。
柔らかいそれを揉み上げながら、陰核を弄りつつ、秘部にも指を伸ばす。
濡れているそこは、思った以上にすんなりと侵入を許してくれた。
「ふ、ああっ、ん、んんっ……!」
秘所の中に、指を出し入れする。ぬるぬるとした触感と、ぎゅうと締め付けてくる感覚。
頭がくらりとするようなものを感じて、意識が持って行かれないように彼は大きく一つ息を吐いた。
「あ、んっ」
その吐息が首筋に触れたのか、それから逃れるようにさとりが身を捩った。
どうやら無意識の行動だったようだが、当然見逃すわけもなく。
「あ、あっ、んっ」
首筋に軽く口付けて、そのまま舌を滑らせる。首筋からうなじ、そして。
「ひゃ、ああん、あ、だめ、みみ……っ!」
弱点である耳を甘噛みすると、さとりの声が高くなった。
「あ、や、そんな、そっちも、ああ、んあ、だめ……! ん、んぁ、ふぁ、ふ、あ……!」
さとりを拘束するように強く抱きしめながら、耳と胸と秘部を同時に苛めたおす。
耳をねぶり、荒い呼気を吹きかけ、固くなった胸の先を指で挟んでくりくりと動かし、秘部は中と陰核とを刺激するように指を蠢かした。
「や、ああ、んぁ、ああっ! ふああん、も、もう、や、あ、あ、ああああ――――っ!」
その性感を苛む責めに耐えきれず、さとりの身体が一際大きく震えて、そして弛緩した。
「は、あっ、はあ、はあ……」
上気しきった顔で、ぼんやりとさとりはこちらを見上げる。
身体に力が入らないのか、くたりと彼に身を預けていた。その様子さえ艶めかしい。
そのさとりの身体をベッドに横たえた。そして、ちょっとした悪戯心と共に身体を下に滑らせる。
「え、な、何を……!!」
驚きの声には耳を貸さず、右足の甲に恭しく口付けた。
「ん、っ」
ぴく、となった身体にも戸惑う声に構わず、口唇を滑らせていく。
甲から、すらりとした脚、膝の裏から、太股の内側に。
「や、ああっ、そ、そんな、こと、んんっ」
ぞくぞくと、さとりの身体が慄いた。そして、脚の付け根に到達する辺りで、口唇を離す。
「え……? あ……!」
疑問の声はすぐ理解のそれに変わった。さとりには隠し事は出来ないのだ。
次は左の脚に移る。同じように、足の甲から始めて。
「や、あ、焦らさない、で」
さとりが、彼の頭に手を当てた。いやいやと首を振って、脚を這い上ってくる舌の感触に耐えているようだった。
「おねがい、いじわるしないでぇ……」
潤んだ瞳で、さとりが懇願する。その少し泣きそうな表情に、ぞくりとしたものが背筋を這い上った。
ふとももの内側に口付けて、少しだけ強く吸って痕を残して。
「ん、あっ」
びく、となったのをさらに楽しんで、さらにその身体に触れようとして――
瞬間、どくん、と心臓が大きく鳴った。
胸を押さえる。自分でも驚くような身体の変化。
口の中が乾くような、そんな渇望。だが、求めているのは水ではない。
さとりが、欲しい。
今までもそうとは思っていた。愛撫を重ねて、達する様子を見て、自分の中の情欲が煽られるのを楽しんでさえいた。
ただ、これは違う。くらりと目眩がする。ぐらと揺れたのは視界だけではなかった。
思考が乱される。先ほどまでの、さとりの痴態にかき乱されているのではなく、自分の奥底からわき上がってくる何か。
心の中にわき上がった獣欲は、先ほどまでの比ではない。目の前の肢体を、思うがままに蹂躙したい。
既に半分ほど切れかかっていた理性で無理矢理押さえつける。
どうして急に。そんな、この思いのまま乱暴にしてしまうなんて――
「だい、じょうぶ?」
そのさとりの言葉に、はっと我に返った。我に返ったことで、薬かとようやく理解する。
そして、さとりが怯えていないことを、少しだけ不思議にも思う。
この思考も、この凶暴性を増した感情も、さとりには全て流れこんでいるのに。
「ん」
頷いて頬を撫でる手にぞくりとなる。再び、情欲が心を駆けめぐった。
この肌に、思い切り痕を刻み込んでしまいたい。
先ほどは気を取り戻させた声さえも、今となっては甘く思考に染み込んでいく。
手を離しながら、そういうこともわかっていながら、さとりは口唇を開いた。
「おね、がい」
その、切羽詰まったような声に、さとりの方がより多く、そして先に飲んでいたということを思い出した。
こんな情欲に襲われたまま、さとりは待っていたのだろうか。
この情欲に煽られながら、この自分を。
どくんと、心臓が早鐘を打ち続ける。
「いいの、ですか」
優しくできる自信など微塵もない。もしかしたら壊してしまうかもしれない。
呼吸が荒い。まさに獣のようだ。
さとりを蹂躙してしまいたい。
さとりを滅茶苦茶にしてしまいたい。
――さとりを、犯してしまいたい。
箍を外そうとする思考がそう叫ぶ。さとりにも全部聞こえているだろうに、そう喚く。
身体などとっくに反応しきっていた。このまま無理に押しつけて、そして。
そんな思考の奔流から逃げようともせず、さとりは再びこちらに手を伸ばしてきた。
「だ、だいじょう、ぶ。だから、あなたの、好きなように」
ぼんやりとした声で、だが、瞳だけは求めるような光が漂っていた。
切なげに睫毛が震えて、慄くように瞬きする。
身体を寄せて、こちらの頬に手を当てて。
濡れた瞳で、彼を見つめて、再び同じ言葉を口にした。
「おねがい」
さとりも求めているのだ。自分が求めるのと同じが、それ以上に。
暴れ出しそうな心を何とか抑え、下履きを取り払い、ぐいと、寄せていた身体を強く抱き寄せる。
ならば、それに最大限に応えるのが義務と言うものだろう。
そういう弁解がましい思いを抱きながら、さとりもまた情欲に支配されかかっているのだという事実が、彼の外れかけていた理性の箍を完全に破壊した。
さとりを抱え上げて、自分の太股の上に乗せる。さとりの秘部から溢れるものがそこを汚したが、それすらもまた興奮を煽るものでしかない。
「あ……」
どういう体勢を求められているのか理解して、さとりは、かあ、と頬を赤らめつつも、彼のモノの上に擦るように移動する。
「ん……」
軽く口付けして、さとりはゆっくりと、身体を下ろしていった。くちゅり、と、互いの陰部が擦れ合う音がする。
「ん、んん……あ」
濡れそぼった感覚が彼自身を襲って、思わず声が出そうになるのを耐える。
それでも漏れかけた声を、ぐう、と、小さな呻きだけに収めて歯を食いしばった。
壊れかけた理性でも、少しの意地は残っている。情けない声は上げたくない。
そのかわり、獣のような呼気だけが自分の歯の隙間から漏れていった。
「んんん、ああ、あっ、ふぁ」
ゆっくりと、もどかしいほどの動きで、さとりは彼のモノを中に収めていく。
思い切り下から突き上げたい衝動に駆られるが、さとりのこの感じながら自ら求めている表情も見ていたくて、少しの葛藤の後、後者を楽しむことにした。
「ふ、あ、そ、んな、や……」
思考に反応したのか、半ばまで彼のモノを収めたさとりの中が締め付けてきた。
快感が、目眩にも似た感覚をこちらに与えてくる。
「も、う」
さとりはじと目でこちらを睨むような視線を送った後、再び腰を下ろしてきた。
表情が、拗ねたようなそれから切なげで感じているものに変わる。
その変化は、おそらく誰にも見せたくない、自分だけのモノだと主張したいほど愛しく可愛らしいものだったが、それを楽しむ余裕は彼女が彼自身を全部秘部の中に収めたことで霧散してしまった。
「ん、あ、あっ、や、おっきくなっ……」
さとりが小さな悲鳴と共に身を捩る。捩ると同時に、さとりの中に飲み込まれている自身が締め付けられて、思わず口唇から唸りが漏れた。
ぬるりと湿った中は、彼のモノを包み込むように締め付け、快感を与えてきてくる。
「や、だ、だめ」
こちらの肩に手をかけて、さとりが腰をくねらせた。その度に襞と彼自身が擦れあって、こちらの喉からも唸りに近い音が漏れる。
「う、うごい、ちゃ」
「い、いや、まだ」
違う、まだ、動いていない。声はそれ以上出なかった。だが、さとりにはそれで十分なはずだった。
こちらは動いていない。動いていると感じるのは、つまり。
「っ、んっ…………っ!」
びくん、と大きくさとりは震えて、泣きそうな瞳で彼を見下ろした。
こちらの意識を読んでいるのだとすぐにわかった。第三の目が忙しなく動いている。
「ふ、あ、あっ……」
滲んだ声が漏れる。さとりが身体の上で、身を捩るほどに感じているからで。
そして、そうでもしなければ耐えられないのに、動けば動くほど、さとりは自分自身を責め立てていることになる。
「あ、あっ、やっ、ああ、だめ、ん、こんな、こんな……っ」
さとりは泣きそうな声で彼の身体に手を当てて、自ら腰を動かし始める。
それは、彼にも勿論快楽を与えてくれるが、さとり自身も快感を求めている動きだった。
「あ、や、こん、こんな、はしたな、やっ、あ、ああん……!」
腰の動きは、円をかくように緩やかなものであった。それでも十分なのか、さとりの口唇からは嬌声が零れ出ている。
「ふ、あ、あっ、んん、あ、ん……」
は、は、と、息を荒げながら、さとりは彼の上で懸命に動いている。
何とも贅沢な様子ではあっただろう。だが、それを長く愉しんでいる余裕は彼にもなかった。
「は、あっ、は。え、あ、んん、どう、したの……?」
薬の影響は、無論自分にも大きい。このまま貪ってしまいたい思いは、こちらの方が大きかったに違いない。
腰をぐっと掴む。もう構わない。身体をぐいと起こして、さとりと対面するような体勢になった。
「あ、やっ、ふか、つよ……ん! あ、お、おく……あ、んんっ……!」
こつ、と奥の方にまで当たった感覚がして、かっと熱くなっていた身体がさらに熱を上げる。
そして、さとりの反応も待たず、強引に腰を引き、そして打ち付けた。
「あ、ああっ、や、やあっ、はげし……! あっ! あ、あ……!」
肉壁が彼自身に吸い付くように絡みついてくる。それを愉しみ、肉壁に自身を擦りあわせ、かき回すように腰を動かし続ける。
初めは戸惑うように手を彷徨わせていたさとりだったが、こちらの背に腕を回してきた。
強く、すがるように抱きついて、さとりはこちらに責められるに任せている。
「ふぁ、あ、ああん、ん、んぅ、んんぁ、ふぁ、はう、あ」
さとりの両の瞳はきゅっと閉じられているのに、第三の瞳だけがこちらを見つめていた。
その瞳に指を這わせ、優しく愛撫する。
「あ、ああ、だめ、そこ、まで……っ!」
びくん、と大きく震え、中がきゅうと締め付けてくる。ひくひくと襞が絡みついてくる。
彼のモノの先を包み込み、全体をやわやわと刺激するそれは、意識が溶けそうなほどの快楽を脳髄に伝えてくる。
「ふぁ、あ、んん、あ、あなた、も」
さとりは瞳が、嬉しそうに揺らいだ。こちらの快感をも読んでいるのだった。
そうだ、という想いを隠すことなく伝えながら、その口唇を塞ぐ。
気持ちよくて、快感を、快楽を貪って。
さとりの表情の、しぐさの一つ一つを楽しんで。
けれどもそれは。
思考は形にならない。たださとりが愛しくて、さとりを貪ってしまいたくて。
そのとりとめない想いを読んだのだろうか、口唇を離した後、さとりは密やかに告げた。
「ぷは、あ、んん、あ、あ……あの、ね。大好き」
その一言だけが妙に明瞭だった。同時に、こちらの意識を本格的に溶かしていく。
自分も、という言葉は言葉になったか。
蕩けたような表情を見ながら、スパートをかけるように、腰の動きを速くする。
「あ、や、はげし、あん、あ、ああ、ん、んぅ……!」
限界が近い。そんな表情を見せられて、言葉をかけられて、長く持つようなものではない。
中に出してしまうかどうか、刹那ほどの時間に、その思考が脳裏によぎった。
「いいから、そのまま……!」
ぎゅ、と、腕と足を絡ませるようにさとりは抱きついてくる。
その言葉が最後のとどめだった。
突いて、奥から手前へ襞を擦り上げるように動いて、また奥に突き返して。
動きが速くなるにつれて、さとりの身体の上下も激しくなる。
「あ、ああ、あっ、んん、ん、あ、ああああっ、ああっ――――――!」
さとりの絶頂と共に肉壁が彼自身を一際強く包み込み、擦り上げる。
その責めに耐えられず、自身の欲望をさとりの奥に解放した。
「あ、あああ……ふ、あ……」
強く抱きしめていた腕が緩んで、さとりの身体が離れる。
はっ、はあっ、と、口から荒い息を漏らしながら、ゆっくりと彼の胸に倒れ込んできた。
少しの間身体を寄せた後、このままはつらかろうと身体を離す。
「ふ、あ、あっ……」
彼自身を引き抜けば、どろりとしたものが大量にさとりの秘部から流れ出してきた。
とろとろと音が出そうなほど流れ出すそれは、どこか淫靡で、少しだけ目を逸らす。
「あ、ん、たくさん……」
さとりは惚けたような表情で、彼女の中からこぼれていく彼の欲望の跡を眺めていた。
その表情にぞくりとなって、自身に力が戻ってくるのを感じる。
そうなるとわかっていたから、少しだけとはいえ目を離したのに。
薬の効き目は本当に確かだと思った。だがそれも、現実逃避の思考に近い。
「あ……まだ、なのね?」
心と彼自身の反応とを見たさとりが、彼の顔をのぞき込んでくる。
さとりの瞳は、まだ揺れていた。ぞくぞくと快感に似たものが背筋を這い上る。
もしかすると、さとりも。
「……まだ」
「あ……う。ん」
さとりは恥ずかしそうに目を逸らし、そして大きな吐息をはいた。息は熱っぽさを持っていた。
どくんと、再び心臓が高鳴る。
「ご、ごめんなさい、あさましいことも、はしたないこともわかっているの」
無理もない、さとりは自分の倍以上の媚薬を口にしている。
妖の身にどれほど効果を及ばすのかわからないが――だがあるいは直に注文したものだからこそ、効果は高いのかもしれない。
さとりは、こく、と一つ頷くと、微かに揺れたままの声で告げた――懇願した。
「おねがい」
瞳は滲んでいた。彼の手をつかむ手のひらはやや震えている。
それに気が付く前に、もう自身は臨戦態勢に入っていた。
先ほどまであれほど貪ったのに、まだこの身体は足りないらしい。
節操のない、と思うも僅か、さとりが首を横に振った。
「わたしが、ほしい、から」
あなたのことがほしいから。だから。
そのさとりの言葉が、もう一度理性を叩き壊した。
今度は強引にベッドに身体を押しつける。どう乱暴に抱いてやろうか。いつもはしない思考が脳裏をよぎり、さとりの身がまた震えた。
それでも、その瞳の中に、僅かな期待をも見つけてしまって。
「あ、あの」
自分の顔は、どれだけ獣じみたモノになっているのだろう、と一瞬だけ思う。
それでも、さとりを満足させられるなら、それでもいい気がした。
「いいですか」
「……ん」
さとりは微かに頷いた。こちらの獣欲も流れ込んでいるのだろう、身体は微かに慄いている。
それが、またこちらを煽り立てるのに。それを知っているのに。
「あ、あっ、あ、つよ、ああっ」
肩を押さえて、さとりの奥に強引に突き入れる。
一度性欲を受け入れていたそこは、大した抵抗は示さなかった。
だが、そのぎゅうと強く締め付けてくる感覚は変わらない。きゅうきゅうと音を立てそうなほど――物欲しそうに包み込んでくる。
「あ、ああっ、ああ、んあ、ああっ――!!」
一際高く嬌声があがって、さとりの身体が達したのだと声と身体の両方が教えてくれた。
今が二度目の交わりとは思えないほどの強さで、さとりの中は締め上げてくる。
情けない声は出したくなくて、吐息と唸りだけに止めた。
「ふ、あっ、ああっ、あ……」
快感に揺らぐ声で、さとりは喘ぐ。はあ、はあ、と荒い息を吐きながら、こちらを見上げてきた。
それは、もっとと求められているかのようで、実際そうだろうと思いこんで、腰をゆっくりと引く。
「あ、ん、んん、あ」
さとりは抵抗もしなかった。ただ嬌声をあげながら、こちらの動きに合わせて緩やかに腰を動かしていた。
「あっ、あっ、ああっ」
入れられただけで軽く達したというのに、それでも身体の疼きがおさまらないのか、さとりはもどかしそうに身体を捩っている。
おそらく、さとり自身はそれに気が付いていないのだろう。少し惚けたように、彼を見上げていた。
その艶っぽく動く腰を押さえつけて、自分の欲望を満たすために強く腰を動かす。
「ふぁ、あ、ああっ、あ、んんあ、あっ」
声が高くなる。締まりが良くなって、知らず知らず呻きが口から漏れた。
獣じみた唸りと共に、さとりの中を味わう。それこそ本当に襲っているかのような動き。
「う、あ、ああ、んん、あ、ああ、ふぁ」
肉のぶつかる音がする。淫らな水音が耳を犯す。吐息が重なって、欲にまみれた空気を二人の間にたゆたわせた。
「ふああん、あん、あっ、あ、あっ」
子猫が鳴くような声で、さとりは責めを受け入れている。
それを楽しみながら、身体を屈めてさとりの口唇を奪った。
「んん、ん、ぷはっ、あ、んん、んぅ、ん、んん……!」
さとりの身体のことなどほとんど考えないような乱暴な抽送をする。
腕をとらえて、ベッドに組み敷いて、まるで無理矢理襲っているような体勢で。
その様子がまた満足感と嗜虐心を駆り立てた。
「あ、ああ、ふ、ああ、ん」
さとりの涙で濡れた瞳が、こちらを捉えた。少し強くしすぎただろうか。
少し力を緩め、だが奥深くにゆったりと打ち付けながら、さとりの様子を伺う。
「んぁ! あ、ち、ちが、ふ、ぁっ! なか、あなたで、いっぱい、で、ふぁっ!」
ぐらと再び視界が揺れた。そんなことを言われて酔わない男などいるものか。
さとりの両腕を拘束していた手を離し、片手だけでさとりの両手首を掴んで頭の上に押さえつける。
そして、再び身体を屈めた。
「や、ああ、だめ、なめちゃ、やあっ!」
さとりが身悶えする。舌と掌でその身悶えに合わせて揺れる胸を苛めながら、その声と感覚を思う存分楽しむ。
火照っている白い肌と、うっすらと桜色に染まっている胸の先端が対照的で、それをまた舌で舐り、指でくすぐる。
「ふぁん、あ、あっ、ん、やあ、つよい、つよいのっ……ふぁん、だめえっ!」
懇願と共に、さとりの身体がのけぞり、中がこちらのモノを締め上げんばかりの勢いで収縮した。
はあ、はあ、と、さとりは荒い息をつく。だが、それの姿も、こちらの獣欲を駆るものでしかない。
「ふ、ああ、あっ、あ、や、だめ、いま、いまだめぇ……っ!」
絶頂でひくつく中を、さらに擦り上げる。絶頂の余韻に浸らせる余裕などなかった。
胸とさとりの中を存分に犯しながら、首筋に舌を這わせる。そして、強く痕を残すような口付けを何度も繰り返した。
「は、あっ、あ、あっ、あっ」
赤い花びらのような痕が、さとりの首筋から胸元に散っていく。
それを自分が付けているのだという事実が独占欲を少しだけ満足させた。
けれども、まだ足りない。腰を一際強く打ち付ける。
「あ、ああっ、おく、やあ、んん」
奥がいいのかと、ぐりぐりと擦るように腰を動かせば、さとりの口唇からさらなる嬌声が漏れた。
「や、ぁあ、んん! つ、つよ……!」
強い、といいつつも、さとりの中もこちらを絡みとったまま離そうとしない。
それに誘われるがままに、さとりの弱いところを探り当て、思い切り擦る。
「そ、そんなにしちゃ……! ふぁ、あ、あああ、また、きちゃ、あ、んぅ、あああああっ――――!」
強く締め付けて、さとりが今日何度目になるかわからない絶頂を迎えた。
だが、こちらの昂ぶりはおさまらない。さとりを押さえつけて乱暴に出し入れしながら、自分の快楽を貪る。
「や、だめ、いま、つよい、んん、のにぃ……!」
達したまま降りてこれないのか、さとりの声は慄いていた。けれどもそれは、快感と快楽にも満ちた声で。
はっ、はっ、と荒い呼吸が響く。自分の息なのか、さとりの息なのか、どちらかの判別などもうつかない。
その呼吸を奪って、絡めて、どちらの息とも唾液ともわからない口付けを交わして。
彼のモノの全体を、先を、根本を、締め付けつつも包み込むものを感じて。
互いしか見えなくなる中で、さとりの切羽詰まったような声がした。
「や、や、だめ、きもちい……だめ、め、このままだと……」
きもちよくて、わからなくなる。
やや悲鳴じみた声は、だからこそ、こちらをこの上なくそそるものになる。
見れば、第三の瞳までが、どこか潤んでいるかのようだった。
快感に溺れかけているのだろうか。それでもいい、それでいい。
「んん、あ、なた、も」
快楽に満ちた声が、こちらを誘ってきた。一緒に、とその瞳は言っていた。
表情にも、確かに与えられる快楽に悦んでいる色が見受けられて。
言われるがまま、求められるがままに腰を引き、突き、擦り上げて、高みへと昇らせていく。
「ふぁ、ん、んん、あ、ああっ、あっ、ん――――!!」
「っ、っ……!」
さとりの身体が硬直する。びくびくと襞が震えて、こちらのモノを絡みとり、締め上げ、求めるように蠢いた。
耐えることもできず、再び欲望を解き放つ。どく、どくとしばらく脈動して、全てをさとりの中に吐き出した。
「あ、んん……あ、ふ、あ」
さとりが腕を伸ばしてきた。その意図するところを諒解して抱きしめ返す。
「ん……」
安心したような優しげな瞳が、非常に美しく、嬉しそうに見えて。
この瞳が愛しくてたまらないのだという実感と共に、その華奢な身体を強く抱きしめた。
二度の交わりの後、少し落ち着いた身体を寄せて、一先ずの休息をとっていた。
さとりを腕に抱いて、少し癖のある髪を撫でる。彼女は気持ちよさそうにしていた。
目を細めて、その様子を眺める。こうした時間をさとりが非常に好むということはよく知っていた。
しかし、その様子を眺めているうちに、最初抱いていた疑問が、ふと首をもたげてきた。
「ところで、どうしてこんなことを」
疑問は口をついてすんなりと出てきた。確かにいつもとは様子が明らかにおかしかった。
何より、媚薬を飲んでまで誘惑しよう、などとは、なかなか考えないものだろう。
「あ、うう……」
さとりは少し迷ったように視線を彷徨わせ、こちらの胸にぽすりと顔を埋める。
「……だって」
少しばかり嗄れた声で、さとりは顔を伏せたまま小さくぽそぽそと呟いた。
「……貴方の周りにいる女の子は、みんな魅力的だから」
さとりの言葉がよく要領を得ず、首を傾げる。
「ほら、貴方はたまに地上にも行くし、宴会とかでも他の人にあったりするでしょう?」
言われて、何となくつながってきた。
他の少女達と会ったりしている、というのが不安になっていた、ということなのだろうか。
その思考に、さとりはこくりと頷いた。
「前の宴会だって」
ぼそぼそ、とさとりは呟く。以前の宴会に強引に連れ出されたことを言っているらしい。
あのときは純粋にからかわれ続けただけだったし、それはさとりもわかっているはずなのだけど。
「わかっていても、ね。周りに女の子がたくさんいる、というのは、不安になるものなの」
妖としてではなくて、女としての私がね、と、さとりは少し自嘲気味に苦笑した。
それで、永遠亭の薬師に相談して作ってもらったというわけか。
その思考を読んで、さとりはこくりと頷いた。
「ええ、だから、私だけ、見ててほしくて」
それで、と、さとりは小さな声のまま続けた。
それは、最初からこちらを誘惑するつもりだった、ということなのだろう。
しかしどうして自分で飲むという発想に至ったのだろうのか。
こちらに飲ませる、というのもありそうだったのに。
「だ、だって、ほら」
さとりは慌てたように言葉を紡いだ。
「……私だけじゃなくて、みんないるでしょう?」
それは、目移りされるかもしれない、と思ったということか。確かに、地霊殿には少女の姿のペットもいるにはいるが。
自分がさとりしか見ていない、さとりしか目に入らない、というのはわかってもらっていたつもりだったのだが。
少し意地悪なことを思ってみると、さとりから謝罪の言葉が返ってきた。
「ごめんなさい。それを疑っているわけではないの……でも、どうなるかわからなかったもの。惚れ薬みたいだったら嫌だったから」
なるほど、それでこちらの部屋でこのタイミングで飲んだ、ということか。
だとしても、自分であんなに飲むことはあるまいに、とも思うのだが。
「あれは何というかこう……勢い、で」
さとりは恥ずかしげに目を伏せ、そしてそれに可愛いな、と思ったこちらの思考を読んで頬を抓ってきた。
「も、もう、何を、思い出して」
顔は耳まで紅い。あれほど大胆に求めてくれたのに、と思ったらまた抓られた。
「もう、えっち」
ふい、と、さとりは顔を逸らしてしまった。そういう様子も可愛いが、あまり拗ねられるのも困る。
宥めるように腕を伸ばして抱き寄せた。大した抵抗もなく、腕に収まる。
「……こう、優しくされたら、長く怒れないじゃない」
甘く拗ねるように、さとりはそう口にした。可愛さのあまりに、強く抱きしめる。
「ん、ちょっと、苦しい」
身を捩るさとりの要請に応えて、腕を緩める。
さとりは少し息をついて、そして、意を決したようにこちらを見上げた。
「あ、あの、ね」
くい、と手を引くさとりの瞳が、やや濡れて揺らいでいた。
ああ、もしかすると、まだ収まらないのだろうか。
「…………っ、ごめん、なさい」
心底恥ずかしそうに、それこそ恥ずかしさに消え入りそうになるほどの声で、さとりは呟く。
その様子が可愛らしくて、思わず口の端が緩んだ。同時に、自分の身体の一部分に力が戻ってくるのを感じる。
幸い、こちらもまだ薬は十二分に効いているようだ。
それこそ、まだ足りないのは、一体どちらなのだろうか。
「あ、その……ん」
何か言い掛けたのを遮るように口唇を塞いだ。
軽く口唇を舐め、深くは舌を進めず歯列だけをなぞる。
「ん、ぷは、は、あっ……」
甘い吐息と共に、さとりの潤んだ瞳がこちらを捉えた。
「……気を遣ってくれてる、だけでもないのね」
その通りだ、と心に呟く。
そこに欺瞞がないとは言えない。さとりがこれ以上は、と止めたならば、彼は引き下がっていただろう。
けれども、さとりが求めるのならば、そこに止める理由も止まる理由もなかった。
「ん」
さとりが軽く身を寄せてくる。そして、何かを求めるように、切なげに見上げてきた。
何が欲しいのか、直感に近いもので判断して、さとりの頬に手を当てる。
言葉は必要ない、それもわかっているけれど。
それでもきっと、欲しいものもあるのだろう。
この言葉は、それでも少し照れてしまうものだけれども。
「愛して、ます」
「私も、貴方を愛してる」
だから、たくさん愛して、愛させて。
さとりの言葉は、静かに胸中に染み込んでいった。
当然のごとく、それに煽られる情欲もある。
けれども、それよりも深い恋情や愛情が、心の中からわき上がって。
「ん、んん――――」
さとりの身体を抱き寄せて、口付けを交わす。
口唇を塞ぎ、舌を絡ませ。
指を絡め、肌を重ねて。
想いと想いを、重ね合わせて。
そうして再び、二人はシーツの海に沈んでいく。
イチャネチョするロダ : icyanecyo_0406.txt
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