創造論とインテリジェントデザイン論

批判サイド

否定論・陰謀論を信じる理由について

科学と直観

米国における根強い創造論支持という驚異的現象は、社会認知・心理学のテーマとなっている。そのなかで、いくつかそれらしいことが見えてきている。

ひとつは、我々の直観が自然科学に反していること。我々は、直観ベースで誤った「慣性の法則」を持っている。
「目的」などという概念が存在しない「自然科学」の世界。しかし、我々は自然現象について、容易に「目的論」な思考をしてしまう。 また、生物学の記述にも、目的論ぽい記述が見られる。
どうやら、我々の脳がそれなりの個体数で構成される社会でうまくやっていくように発達してきていて、それを自然界の理解にも流用していることが、影響しているらしい。
そのあたりの「エージェント探知」という心の傾向あるいは機能は、副産物として神や陰謀論を信じさせているのかもしれない。
一方、これら目的論選好・エージェント選好とは別な理由で、人々が科学理論を理解できない・誤解するという研究もある。それは「そもそも科学理論が前提としている概念」を持っていないため、手持ちの概念で解釈してしまうというもの。 エマージェント過程という進化が持つ特徴は、意図や単純メカニズムよりも、はるか理解しがたい概念らしい。
共和党支持と民主党支持

1990年代終わりから米国で世論調査において、目立ってきたことが、意見の差異に影響を与える要素として、政党支持が卓越してきたこと。もはや、人種や性別や学歴や収入よりも、民主党支持か共和党支持かが世論を分かつという事態になっている。

その原因を求めて、社会認知・心理系の研究者たちが探求をしている。そのなかで、わかってきたことは、民主党/リベラルと共和党/保守の人々の心理が、生理レベルで違っているということだった。その影響は、テレビ番組の選好や感情などにも及んでいる

そして、陰謀論についての知識の増加は、リベラルな人々がリベラルな陰謀論を信じるのを抑制するのに対して、保守な人々が保守な陰謀論を信じるのを促進することもわかってきた。そのことは、保守とリベラルは非対称であり、保守な指導者が保守な人々に働きかけるには、陰謀論を以ってすることが有効な方法であることを示唆してる

そのような世論の乖離は自然科学の分野にも強く及んでいる。そして、共和党支持者では高学歴の方がアンチサイエンスの傾向がみられる。それはもちろん彼らが愚かだからではない。

「彼ら」は愚かではない

矛盾する考えを支持することにも、首尾一貫性がある。愚かに行き当たりばったりをやっているわけではない。
人はコントロールの喪失(状況に対処する方法を見失う)すると、たとえ空想上の秩序であっても、本能的に秩序を求める。 そして、人は大きな事件には大きな原因を求めて、陰謀論を信じる。 もちろん...
否定論者と戦う困難さ

そして、ひとたび否定論を信じたなら、転向させることは非常に困難であることを社会認知・心理学者たちは明らかにしつつある。
それに基づいて、アプローチは考えられてはいる。
しかし、そうそう容易なことではない。
また、「これはないわぁ」というエクストリームな主張であっても、影響を受けてしまう。放置できるわけではない。
恐怖を煽る方法は有効ではない

メッセージを伝えるために恐怖を煽る方法は有効ではない。短期的には効くかもしれないが、時間的に効果は薄れていく。かといって、恐怖を煽るメッセージを繰り返せば、内的恐怖への対処・メッセージに対する嘲りなどによって、逆効果になっていくようだ。
それでも対抗議論を

告発あるいは主張に対して、誰もが沈黙した場合、その告発あるいは主張は正しいを受け取られる可能性が高まる。

「ビリーバーを説得するのは非常に困難なので、ビリーバー対策は諦めて、ビリーバーになる前の人々に情報を先に注入することで、ビリーバーになるのを防ぐ」というのができることの最善であるとしても、対抗議論を出し続ける必要があるようだ。

だから...

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なお否定論は、学術上は存在しない論争が存在するかのように見せかける手法をとる。
Diethelm and McKee (2009)によれば、この否定論には5つの特徴的な方法がある。すなわち、陰謀論、ニセの専門家、選択的な文献参照、到達不可能な目標の設定、藁人形論法である。否定論における陰謀論の利用は...
Denialism is a process that employs some or all of five characteristic elements in a concerted way. The first is the identification of conspiracies. When the overwhelming body of scientific opinion believes that something is true, it is argued that this is not because those scientists have independently studied the evidence and reached the same conclusion. It is because they have engaged in a complex and secretive conspiracy. The peer review process is seen as a tool by which the conspirators suppress dissent, rather than as a means of weeding out papers and grant applications unsupported by evidence or lacking logical thought. The view of General Jack D Ripper that fluoridation was a Soviet plot to poison American drinking water in Dr Strangelove, Kubrick’s black comedy about the Cold War is no less bizarre than those expressed in many of the websites that oppose this measure.

否定論は、5つの特徴的方法の一部もしくは全てを協調的に用いるプロセスである。第1は陰謀の特定である。科学的意見の圧倒的多数が何かが正しいと考えているとき、これは「科学者が独自に証拠を調査して同一の結論に到達したからではない」と論じる。科学者たちが複雑かつ秘密の陰謀に加わっているからだと論じる。査読プロセスは、「証拠に支持されなかったり、論理思考を欠いている論文や研究助成金申請を淘汰する手段」ではなく、「陰謀の共謀者たちが反対意見を抑圧するための手段だ」とみなされる。キューブリックの冷戦ブラックコメディである"博士の異常な愛情"にでてくる、「水道水へのフッ素添加は米国人の飲料水に毒を入れるソビエトの陰謀だというジャックDリッパー将軍の見方」は、「この方法に反対する多くのウェブサイトで表明されていること」より奇妙というわけではない。
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There is also a variant of conspiracy theory, inversionism, in which some of one’s own characteristics and motivations are attributed to others. For example, tobacco companies describe academic research into the health effects of smoking as the product of an ‘anti-smoking industry’, described as ‘a vertically integrated, highly concentrated, oligopolistic cartel, combined with some public monopolies’ whose aim is to ‘manufacture alleged evidence, suggestive inferences linking smoking to various diseases and publicity and dissemination and advertising of these so-called findings to the widest possible public’.

陰謀論の変種には、自分の特徴や動機を相手の属性にする逆転論がある。たとえば、たばこ会社は喫煙の健康への影響について学術研究を、「禁煙産業」の産物だと描写し、「何等かの公的独占と垂直統合され・高度の集中した・寡占カルテルが、喫煙と様々な病気をリンクさせる嫌疑証拠と示唆的推論を捏造し、広範な国民へ、これらのいわゆる知見を広報・普及・宣伝する」ものだと描写する。

[ Pascal Diethelm; Martin McKee (2009). "Denialism: what is it and how should scientists respond?". European Journal of Public Health 19 (1): 2–4. ]





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