創造論とインテリジェントデザインをめぐる米国を中心とする論争・情勢など

STSとしてのインテリジェントデザイン

インテリジェントデザインに理論が必要ない理由

インテリジェントデザインに理論は必要ないという支持者たち

インテリジェントデザイン支持者たちは「インテリジェントデザインに理論は必要ない」と言う。

当然のことながら、研究プログラムがないので、成果もない。実際、普通の学術誌はもとより、インテリジェントデザイン運動内の「学術誌」すら論文の数がなく、放棄された

このため、インテリジェントデザインには理論モデルがない。したがって、学校で教えるべき内容がない

それでも十分だとインテリジェントデザイン支持者たちが考えている理由の一つとして、批判サイドが想定しているのが、False Dichotomy (誤った二元論)である。これは、創造論の時代からあるもので、「CA510 創造論と進化論は起源の唯二つのモデルである」という前提のもと、「進化論は間違っているので創造論は正しい」という形の論である。

インテリジェントデザインの主張は「進化論で説明できないくて、それらしいもの」は「不明な目的をめざした選択をするインテリジェンスによる、部品の意図不明な意図的配置であるデザインだ」というものであり、確かに典型的なGod of the gaps詭弁であり、False Dichotomy (誤った二元論)である。

STSの論理と法学者

もう一つは、STSな方法、すなわち科学の議論を迂回して、理論採択基準を変えることで創造論などを科学にする方法である。

実際、神への言及を禁じる科学の原則によって、ダーウィニズムが正しいということになっているのだというのが法学者Phillip Johnsonの主張である。

Phillip Johnsonが求めるのは、検証方法など知ったことではなく、「心を持ち、我々の存在を気に懸ける」ものが世界の創造に関与したことを記述することを可能とする「理論の基礎」である。その手段として、「経験的事実によって検証可能な範囲に対象を限定する」方法論的自然主義排除を延々と主張し続けてきている。

その過程で法学者の果たす役割とは、科学の原則たる「超自然に言及しない」という「方法論的自然主義」は「唯物論」の偽装にすぎないことを見抜くことである。その際に必要な専門知識は、専門家が一般向けに書いた書籍から入手するようである。

法律家の論理

数学者Mark Perakhは科学の論理と法律家の論理の違いを指摘する。
There are various kinds of logic. One is that of a scientist, whose goal is to establish facts and to distinguish clearly between the facts and their interpretation. When a scientist starts a research, he is not supposed to know in advance what he will find. He is equally interested in every fact regardless what theory or hypothesis that fact jibes with. A scientist uses logic to separate the chaff from the wheat and to arrive at the most reasonable and plausible interpretation of his findings.

多様な論理の種類がある、ひとつは科学者の論理で、その到達点は事実の確立及び、事実と解釈の明確な分離である。科学者が研究を始めるとき、予め発見するものを想定しない。事実が理論や仮説と合致するか否かに関わらず、すべての事実に等しく関心を持つ。科学者はクズと小麦を分離して、発見についての最もリーズナブルで尤もらしい解釈に到達する。
Another logic is that of a lawyer. The lawyer's goal is not to find the truth but to win in an adversarial process. The lawyer's logic is naturally subordinated to his goal. A lawyer's arguments necessarily tend to stress everything that supports his, already adopted, position and to downplay or disregard everything that contradicts it. Therefore Johnson's assertion that he is perfectly qualified to attack a biological theory does not seem to be convincing.

法律家の論理は別の論理である。法律家の到達点は真理の発見ではなく、対立プロセスで勝利することである。法律家の論理は、自然とその到達点に従属する。法律家の議論は必然的に既に採択した立場を支持するものを強調し、それに反するものを軽視あるいは無視する傾向がある。したがって、生物学理論を攻撃する資格があるというPhillip Johnsonの主張はまったく納得しがたい。

Mark Perakh;"How a lawyer (Phillip Johnson) disproves Darwinism" (1999/08/12)

「進化論を検察、インテリジェントデザインを被告」に見立てれば、インテリジェントデザインの擁護者のやることは「進化論が証明できていないことを一点でも指摘すること」である。インテリジェントデザイン"理論"の正しさどころか、内容を言う必要すらない。

進化論が完全には証明できていないと指摘できれば、自動的に「インテリジェントデザインは無罪=正しい」ことにできる。それなら、インテリジェントデザインに理論は必要ない

なお、この形式の詭弁を、"Argument from ignorance"と呼ぶ。





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