創造論とインテリジェントデザイン論

STSとしてのインテリジェントデザイン

STSとしてのインテリジェントデザイン


インテリジェントデザイン運動は以下の3つから構成されている。
STSとしてのインテリジェントデザインという見方は、広く認められているわけではない。しかし、後述するように: ことから、インテリジェントデザインはSTSでもあると言ってよいだろう。

STS学者Steve Fullerのインテリジェントデザイン応援

著名なSTS学者Steve Fullerは、2005年のKitzmiller v. Dover裁判での証言以降、インテリジェントデザイン運動を支援する執筆・発言を続けている。
そのインテリジェントデザイン支持証言は、Steve Fuller自身から見れば、STSの授業であれば全く真っ当なもの。

ただし、Steve Fullerは、この7年前の1998年に既に、インテリジェントデザインを学校で教えること容認するような記述をしている。
また、Steve Fullerは研究対象の分野の専門知識は不要だと主張しているが... 1996年のSokal事件のときには、見事に騙されてしまった。

本人はインテリジェントデザインを選好していないと言っているが、科学の原理原則に近いところでは、同じ立場をとっている。
なお、STS分野内には、このようなSteve Fullerに批判的な研究者もいる。
科学の定義を問うPhillip Johnson

ところで、創造論やインテリジェントデザインが科学だと認められないのは、科学の定義がそうなっているからだというのが、インテリジェントデザインの父たる法学者Phillip Johnsonの基本的な考え方である、
そして、インテリジェントデザインが正しい科学理論とされるためには、科学は「有神論的科学」とならねばならない。
現代社会が採用している科学の定義について問うのは、STSという学術分野が対象とするものである。その意味では、Phillip JohnsnもSTS学者と呼んでよいかもしれない。

そして、STSとポストモダニズムの近さを象徴するかのように、Phillip Johnsonはポストモダニズムを援用する。
一方で、Phillip Johnsonは有神論は神の真理に至り、唯物論は人間の意見にしか至らないと主張する。

科学が社会に及ぼす影響を論じるインテリジェントデザイン社会・人文学者たち

逆に、科学が社会に及ぼす影響もまた、STSの研究対象である。

Discovery Instituteのインテリジェントデザイン部門であるCenter for Science and Cultureの 副センター長Dr. John G. Westは、「ダーウィニズムの米国社会への影響」を論じた自著" Darwin Day in America をダイジェストした"The Abolition of Man?"(科学の名による人間性喪失)を書いている。
一方、Discovery InstituteのシニアフェローであるWesley J Smithは自ら「人間例外主義者」を称し、他の動物に対して人間を例外的存在だと考えることの重要性を語る。
人間例外主義を否定し、人間性を喪失させるもととして、インテリジェントデザイン運動が敵視する分野のひとつが、進化心理学である。
だからこそ...
より具体的な例として、ダーウィニズムのヒトラーへの影響を論じる。
  • Darwin-to-Hitler

ただし、この"Darwin to Hitler"は容易に「Reductio ad Hitlerumとは「アドルフ・ヒトラー(あるいはナチ、あるいはスターリン)がXを支持した。従って、Xは悪である。」という形式のReductio ad Hitlerum詭弁に陥る。
このような"Darwin-to-Hilter"論への対抗議論として、"Luther-to-Hitler"がある。これは、歴史上、最強のアンチユダヤヘイトスピーチとしても知られるマルチン・ルターの言説を以って対抗したものである。
自然選択についても、社会への影響という観点でインテリジェントデザイン運動は論じる。
さらに、インテリジェントデザインの父たる法学者Phillip Johnsonは「法学者が進化論を論評できる」と論じる。 それが...
これらのSTSな活動の手法の一つにQuote Miningがある。
このような人文社会系な主張、そしてQuote Miningの手法をそのまま反映したのがインテリジェントデザイン宣伝映画"Expelled"(2008)である。この宣伝映画では、ーウィニズムはもはや進化論ではなく、反宗教のことを指す。そして、インテリジェントデザイン運動は、宗教の擁護者として、ダーウィニズムと戦っている。
Discovery Instituteも、新たな戦力を獲得することを意図したと思われる、の学生向けSTSイベントを開催したことがある。
インテリジェントデザインとSTS本流

Prof. Ron Eglashたちが進化論教育支持声明を4S(STS学会の一つ)から出そうとしたが、採択されなかった。
STS学者Ron Eglashはによれば、STSコミュニティはおおよそインテリジェントデザインを公立学校理科で教えることに心情的に反対だが、STS的に反対できないと考えている。
インテリジェントデザインを批判的に研究しようとして研究助成金申請したが却下された。
その理由が、真っ当なSTSなのか、インテリジェントデザイン支持者がSTSを偽装したのか、外からはわからない。
「Dawkinsと仲間の科学者たちは自らの世俗主義の目隠しによって見えなくなっている」という創造論者の批判を支持する者はアカデミアの中にはいそうにない。しかし、STSには、科学的探求が本質的に価値観を含んでいるという反進化論者の主張を繰り返すことがよくある。
また、Cornell UniversityのSTS学科Michael Lynch教授は、「紛争に関与するとき、STSや社会認識論は、良くて認識論の権威による欺瞞的な情報源の提供、悪ければ、茶番的専門知識の提供となりかねない」と指摘する
宗教右翼に利用されるSTSのツール


STSのツールが宗教右翼に利用されていると、科学史研究者Dr. Sophia Roosthと社会学者Prof. Susan S. Silbeyは言う:

In the case of current debates over climate change, the tools of STS have not been deployed in order to point towards the contingency and underdetermination of social circumstances, but invoked by global-warming deniers to delay any political or material reponse to compelling empirical evidence of climate change. Other politically driven right-wing groups have also adapted the constructive argument to suggest that "intelligent design" of the universe is an appropriate an account as natural selection and Darwinian evolution. Thus, as one scholar confessed, his worst fears came true. Mobiling the rhetorical staples of SSK, British STS scholar Steven Fuller testified in the Dover, PA (USA) trial that "intelligent design" deserve time in science classes equal to that devoted to evolution; neither has determinant nor otherwise compelling status as more legitimate science.

気候変動についての現在の論争について、STSのツールは社会状況の不測の事態と未決定性に対処するために配備されていないが、気候変動の説得力のある実証的証拠への政治的あるいは法的対応を遅らせるために、地球温暖化否定論者によって使われている。他の政治主導の右翼団体は、宇宙のインテリジェントデザインが自然選択とダーウィン進化の適切な説明であると主張するために、構成論を採用している。したがって、ある学者が恐れていた最悪の事態が起きた。SSK(科学知識社会学)の修辞的要素を使って、英国のSTS学者Steven Fullrは米国ペンシルバニア州Doverの裁判で「インテリジェントデザインと進化論は理科の授業で同一時間、教えるべきである。いずれも正当な科学としての決定的に勝利あるいは敗北の状態にはない」と証言した。

[Sophia Roosth and Susan Silbey: "Science and Technology Studies: From Controversie to Posthumanist Social Theory" in The new Blackwell companion to social theory By Bryan S. Turner, p.466, 2009.]

インテリジェントデザインを支援し、Dover裁判でインテリジェントデザイン側の専門家証人となったSTS学者Steve Fullerを典型例として挙げている者は他にもいる。University of Alabamaの数学の名誉教授Richard C. Brownは次のように評している。
The religious right has, for instance, borrowd the constructivit argument of SSK to citiciz Darwinism. Phillip Johnson, a Berkeley law professor and a leader in the intelligent design (ID) movement identifies Darwinism as a Kuhnian paradigm. The core of this paradigm is "metaphysical naturalism", the attitude (based Johnson feels on no compelling evidence) that the natural world and its laws are all there is and whose development reflects no purpose of intelligence. Like other scientific pradigms naturalism dictates what answers are acceptable and what quetions are forbidden. .... Johnson's arguments are not a distortion of SSK/PIS doctrine, His point of view is partially shared by Steve Fuller, a leading sociologist and philosopher in the movement.

たとえば、宗教右翼は構成主義のSSK(科学知識社会学)の論を借りて、ダーウィニズムを批判した。Berkeleyの法学教授で、インテリジェントデザイン運動の指導者であるPhillip Johnonはダーウィニズムをクーンのパラダイムだと特定している。このパラダイムのコアは形而上学的主義であり、(納得できる証拠がないとJohnsonが感じている)この態度は、自然界および自然法則がそのままの存在であり、その発達にはインテリジェンスの目的は反映されえいないというものである。他の科学的パラダイムのように、自然主義はどのような答えが受け入れ可能で、どのような問いが禁じられるかを決定する。.... Johnsonの論は科学知識社会学とポストモダニズム科学解釈を歪めたものではない。彼の見方は、この運動の指導的社会学者であり哲学者であるSteve Fullerに部分的に共有されている。

[ Rihard C. Brown: "Are Science and Mathematics Socially Constructed?: A Mathematician Encounters Postmodern Interpretations of Science", 2009, p.273]

しかし、Rensselaer Polytechnic InstituteのSTS学者Ron Eglash教授は、STSが「相対主義と主観主義が多様性へ至る唯一の道だ」と考えていることによって、インテリジェントデザイン運動などに対して、STSが無力になっていると言う。
Most importantly, STS correctly recognizes the need for alternative accounts, but incorrectly frames relativism and subjectivism as the only route to that multiplicity. This leaves us completely disarmed when right wing politics attacks science: "Intelligent Design", Inventing a global warming controversy, Inventing a tobacco controversy, Inventing a pesticide controversy

最も重要なことは、STSが代替的説明の必要性を正しく認識しているが、誤って相対主義と主観主義が多様性へ至る唯一の道だと考えていることである。これによって、右翼政治勢力による科学への攻撃に対して、我々は無力になっている。たとえば、インテリジェントデザイン、地球温暖化論争のでっちあげ、タバコ論争のでっちあげ、殺虫剤論争のでっちあげ

[ Ron Eglash: "The Collaborationist Stance in STS" (PPT) ]











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