クトゥルフ神話TRPGやろうずWiki

雪に覆われた屋敷で恐ろしい怪異と遭遇したあなたたち。
無事それぞれにかけられた呪いを解き、屋敷の主「館山幸三」を打ち倒すことに成功した。
もうあの屋敷の毒牙にかかるものはいないだろう。
あなたたちはこの地で行われてきた、忌まわしき儀式を封印することができたのだ。
━━もしかしたらカエルの味を忘れられない者もいるかもしれないが、それはまた別のお話。

ふと、思い出してしまう。
どうしてあの時肉体を奪わなかったのだろうか。いくらでも機会はあったのに。
名前も知らぬ洒落たカフェで、新しい友人と会話をしながら彼女は考える。
人間の女性の肉体であれば誰でもよかったのだ。ましてや館山めぐみは好条件そのものだった。
"今の肉体"も得るのが困難であったのに、どうして……。
開放的な造りを意識した、ガラス張りの窓からは通行人がよく見える。
彼女は悩みなんてなさそうに歩く人々を一瞥し━━

「どうしたの？」
「━━ううん、なんでもない」

もう彼らには関わるべきではないのだ。それが互いのためになる。
それに━━文字通り、彼らに合わせる顔はもうないのだから。
遠のく友人たちの後姿から視線を外し、彼女は再び話し続けるのであった。

彼女が屋敷から逃げ出し、警察の世話になってから一週間。
親切に家に来ないかと言ってくれたあなたたちの誘いを断り、めぐみは最終的に施設に預けられることとなった。

「これからは自分の道は自分で決めて、自分の足で歩いて行きたいの！大丈夫、心配しないで！」

そう楽しげに話す少女の足には、もう鎖はなく、窮屈なドレスも身に纏ってはいない。
彼女を縛るものはもう何もないのだ。
急ぎ足でたまに転びながら、それでも確実に成長していく彼女を、あなた達は静かに見守ることになるだろう。

あの時、どうすれば良かったのだろう？
あなたの言う通り携帯を渡していたら？それともまた別の方法を考えるべきだった？
それとも…

「ほらそこ。講義中だぞ。携帯弄ってるなら…」

そんな教授の一声で今は大学にいて、講義を受けている最中だったのを思い出した。
どうやらかなりの時間ぼーっとしていたらしい。
消される直前の黒板を慌てて写しながらも頭の中ではあの冬の館での出来事が蘇る。化けものに襲われて、みんなと一緒に力を合わせて帰って来て、それから…。

もう、何もかも元通りの日常だった。ただ、あなたがいなくなったのを除いて。
さよならも、助けてくれてありがとうも言えずに只々あなたが去っていくのを見ていくことしかできなかった自分が恨めしい。
もう一度、たった一度でいいからあなたに会いたいと思うのはわがままなのでしょうか。

講義も終わって帰り支度をしていると、ふと携帯が震え、メッセージの到着を知らせる。
中古品店を探し回って買った型落ちで銀色のスマホを手に取ると
満面の笑みをしためぐみちゃんから「スマホデビューしたよ！」と言わんばかりの自撮り写真が送られてきていた。

これで…良かったのかな？

返信をすませた私はホームボタンを押し続けて、誰にも聞こえないような声で、ただ強い意志をもって呟いた。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　“また、会いましょう”

　”すみません、よくわかりません。”

無機質な女性の声が流れ終わる前に携帯をポケットにしまい、決意を胸に私は前へと歩き出した。

後日談作成の為だけにsiriと30分近く格闘したけどいいワードが出ませんでした。ふままです。

改めましてセッションお疲れさまでした！
利休と化したり、ラストでは駄々こねたりと好き勝手やらしていただき、
ＫＰ様、他ＰＬの皆様には頭があがりません...
色々謎解きや選択を迫られ、ＴＲＰＧらしく悩んで、決断できた卓だったと思います！
また機会があればこんなへっぽこＰＬですがまたご一緒させていただけると幸いです！

ではまた！

あれからの出来事はあっという間だった。
館山を倒した直後の記憶は曖昧だが、猫村の小さな手の感触だけはよく覚えていた。

そのあと鏡で見た自分の目は真っ赤に腫れていて。涙が止まらなかった。
なんでだろうな。
もっと頼りがいのあるやつだと思ってたんだけどな。年長者だし。少し情けない。

そして「時雨かりん」はいつの間にか俺たちの前から姿を消していた。
正直、俺にはそれまでの時雨と同一人物だとはとても思えなかった。
耳に入るその声は紛れもない彼女のものだ。しかし冷徹で人間味を感じない。

なぁ、俺の選択は間違っていたのか？
あの「時雨かりん」は本当に俺たちの親友の「時雨かりん」だったのか？
こんなことを言いたくはないが、俺たちは利用されていただけなんじゃないのか？
吐き出せるもんなら全部吐き出してしまいたい。
…でもあいつらに軽蔑されるのはもっと怖いな。

めぐみはあの後施設に預けられることになったらしい。
同年代の友人とはうまくやっていけるだろうか。
虐められていないか。好きなやつはできたか。趣味はできたか。
食べ物の好き嫌いはしていないか。
失った時間は戻ってこないが、これから先の未来で穴埋めはできる。
まああいつのことだ。きっと愚直に、生意気に生きていくんだろう。
その過程であいつなりの幸せを掴んでほしいと思う。
…いつか、成長したあいつの姿を見てみたいもんだ。

俺はまた研修医としての生活に戻った。
入院患者の診察や看護婦のご機嫌取りに追われて今日も終わるのだろう。
今度また、みんなでスキーにでも行きたいな。

KP様、PLの皆様、本当にお疲れ様でした！
素敵なセッションでしたね…！
最後のシーンで迷いに迷い、なんだかPLとしてもこれでよかったのか…なんてしばらく考えておりました。
でもあれだけ真剣にPCの気持ちになり切って考えられたこと、また、そういった方々と卓を囲めた事をとても嬉しく思います。
黒須はこれからもきっと色々なところで迷い壁にぶつかるのだろうなと思います。
もしまたどこかでお会いすることがあればその時は宜しくお願い致します！