最終更新:ID:3r39Celhpg 2016年04月16日(土) 00:31:43履歴
歌劇は幕を下ろし、役者たちは次の舞台へと進み始める。
孤独な死神は自らを殺めることで人となり、焦がれた楽園へと。
その安息が例え一時のものであったのだとしても、それで十分過ぎるのだろう。
鳥が飛び続けるために止まり木を求めるように、彼女もまた、ほんの僅かな安らぎを求めて足掻いていたのだから。
何かを得たのは彼女だけではない。
役者たちも、また…。
失ったものがあり、守れなかったものもあったが、
それでも確かに得たものがあった。
英雄譚とは常に後の世になって語り継がれるもの。
今はまだ、彼らの活躍を知る者はおらず、後の世にもいないかもしれない。
しかし、
誰も知らずとも、
誰かに認められずとも、
この舞台の終わりに確かに得た“何か”は、各々の胸の中で永遠に灯り続けるだろう。
その名もない輝きは……。
True endinG
―終幕 そして死神は死んだ―
Cast -登場NPC-
“影の立役者”
フェス・ライスボール
グルナド・ピースリー探偵事務所の所員であり、所長・グルナドの義兄。
影ながら今回の“歌劇”を終幕に導くため、暗躍していた。
終幕後は常と変らず、事務所で生真面目に日々の仕事に勤しんでいる。
“心臓”を取り戻した義弟を時折、穏やかな瞳で見守りつつ。
“復讐者ハムレット”
フェリシアン
グルナド・ピースリー探偵事務所で雑務を担当していた青年。
終幕後、彼は警察から釈放された後、消息を絶つ。
行き場を失った彼のその後を知る者はいない。
別の事務所に雇われたのかもしれないし、何処かで野たれ死んだのかもしれない。
“物騙の策者”
マナ
情報屋も営んでいる、顔色の悪い少年。
終幕後、彼の姿は忽然と消えていた。
メリーとレーベに連れ去られた彼の、その後の安否を知る者は今はいない。
“見つめる瞳”
シーベル
マナの飼っている黒猫。
主人の消息が不明になるとともに、愛猫もまた姿を消した。
“ベルベットルームの主”
アプリコット・ピースリー
グルナド・ピースリーの父。
終幕後も変わらずベルベットルームを経営している。
“心臓”を取り戻した息子を見て、ほっと一安心するとともに
愛する家族を取り戻せたことに彼もまた、心から喜びを感じているようだ。
“影”
アルモニア・ヴィルシュテッター
マナに影を操る力を貸していた人物。
“歌劇”は幕を下ろし、マナの書き上げた台本は策者の望む結末を迎えた。
人知れず“影”の役者はひっそりと舞台から姿を消す。
“壱拾参回目ノ晩”
マルグリット(カルディア)
グルナドの愛すべき少女であり、天使の教会の幹部。
終幕後、世間的に死んだことになった少女は新たな居場所をジャック・ミッチェルより与えられる。
マルグリット・ミッチェルとして第二の人生を歩み出した彼女は、
しかし、父母を愛するが故に何も告げず家を飛び出し、行方をくらませた。
それでも、何処かで幸せに笑っていることだろう。
得たかった本当の自由を手にしたのだから。
“オーン図書館の館長”
ヘンリー・アーミテッジ
ミスカトニック大学オーン図書館の館長。
終幕後、無事に手元に戻ってきた「カルナマゴスの遺言」に安堵するとともに、
二度と盗まれぬよう、オーン図書館の奥深くへと厳重に封印した。
“確約された利己的結末”
メリー・バッド・エンド
胡散臭い自称・占い師を名乗るレーベの友人。
終幕後、マナを連れ去った彼は常と変らぬ笑みを浮かべてあちこちに出没しているようだ。
ただ、己が望む結末へ向けて静かに歩み続けながら。
“未完の獣”
レーベ・クノレーズ
金髪金目の美男でメリーの友人。
終幕後、マナを連れ去った彼は友人メリーを振り回しつつ、何らかの組織を結成したようだ。
如何なる組織が結成されたのかは不明だが、碌でもないものであることに相違はないだろう。
何せ組織のトップたる彼自身が碌でもないのだから。
“老いさらばえた青年”
レイ・ゴードン
行方不明とされていた考古学を専攻しているミスカトニックの学生。
「カルナマゴスの遺言」に目を通したことにより老いた彼は記憶を消されていた。
終幕後も記憶が戻ることはなく、ただの一人の老人としてその後の余生を過ごしたようだ。
“十二晩目の刑死者”
マリアローズ
天使の教会に所属する少女。
終幕後、詳しい消息は不明。
だが、風の噂によるとレイ・ゴードンが亡くなるまで、彼の孫で在り続けていたようだ。
- Extra -
ビル・ゴードン:レイ・ゴードンの父
ロッティ・ゴードン:レイ・ゴードンの母
受付の人;ミスカトニック大学事務所の受付
暇そうな学生:ミスカトニック大学に通う学生
不運そうな教授:ミスカトニック大学の考古学教授
バルニエ・アヴァロン:天使の教会のパトロン
Special Thanks
- PL & PC -
まほろ様
レネ・ダラハイド
最中様
グルナド・ピースリー
みゃーの様
ジャック・ミッチェル
白髭紳士様
ザック・ブラック
- Thank you for playing!! -
皆さま、予備日含め6日間お付き合いいただきまして、誠にありがとうございます!
後半は巻きに若干入ったりもしましたが、無事、卓を終えることが出来ましたこと、まずはそのことに感謝を。
とはいえ、本当の終盤にて死亡者が出てしまったことが心残りでなりません。
女神様、ダイスの操作だけは本当にご遠慮ください。
良い出目くれるならKPじゃなくて探索者にあげてください…(切実)。
…さて、「天使の教会」を巡るシナリオの1つとして製作した今回のシナリオ、
教会が何かしでかすというよりは、教会と裏の繋がりの一端を見せるような形になりました。
今後、教会の本格的なあれこれそれを描いて行けたらな、と思っております。
(その時までKPを続けられていたら…。)
もしも次の卓、あるいは次の次の卓でお会いすることがございましたら、その時はよろしくお願いいたします。
そして私の卓を楽しんでいただき、気に入っていただけたのならば、それに勝る喜びはございません。
それでは、いつかまた廻り逢うその日まで暫しのお別れです。
繰り返しになりますが、6日間、お付き合いいただきまして本当にありがとうございました!
最後に。
まほろさんへ。
恐らく「まどろみの窪」から久々にお会いしたのではないでしょうか…?
黒猫卓以来、久しぶりとなるレネくんとの邂逅でしたが…本当に申し訳ございませんでしたぁぁぁ!!
女神を連れて土下座させたい勢いです、今からでも、菓子折りを持って。
何故、何故あそこでその出目なのかと…ただもうその一念なのですが、
レネくんなりに最期になにか、幸せを見つけられたというお言葉もいただきましたので、
彼(あるいは彼女)が何か得た末で安らかに眠れたのなら何よりです。
…間違いなく安らかに眠れてはいないとは思いますが、はい、そこは、また追々…。(ぇ
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!
そして回線の機嫌が直ることを心の底より祈願しておきます…。
最中さんへ。
ここ最近は本当にずっとお付き合いいただきまして本当にKP冥利に尽きると言いますか
個人的にも嬉しさとか諸々込み上がって渾身の五体投地をしたいと言いますか…。
所長と言う大役まで引き受けていただき、本当に感謝の極みです。
今回最後の最後に失くした心臓を取り戻せたグルナドくん、心の安らぎを得るとともに
また新たな試練が始まっちゃったりしていましたが…どうか長生きしてねと祈るばかりで。
まだまだ天使の教会シリーズは続いていくかと思いますので、
末永くお付き合いいただけたら何よりでございます寧ろ終わるまで離しません。(蹴
毎度毎度、我が子に愛情たっぷりに接してくださる最中さん及び最中家の子達には
本当に心の底から感謝するとともに我が子共々幸福を感じております。
我が子共々今後とも、よろしくしていただければと思います。
本当にありがとうございます!
みゃーのさんへ。
今回が初卓となりますが、始めて数カ月とは思えぬRP力に舌を巻かされました。
ジャックさんのキャラもしっかりと確立されており、口が悪いという部分を上手い具合に調整され、
嫌味なキャラというわけではく、口は悪いけれども親しみの持てる部分がしっかりあり、とても愛らしかったです。
合法ショタ素晴らしい。マンセー。ムチでぶっ叩かれて構わないので撫でまわしたいです。
後半ではいきなり投げさせていただいた大役もしっかりとこなしていただき、本当にありがとうございます。
そして後日談でちょっと(?)ジャックさんを好き勝手書いてしまっています、
すみません、先に謝ります。土下座ものです。(土下座)
何はともあれ、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!
白髭紳士さんへ。
今回初めてお会いしましたが、当卓は楽しんでいただけましたでしょうか。
初めのうちは寡黙な方かと思っていたザックさんも、言いたいことはずばっと言ったり、ノリが良かったり。
彼女なりに色々考え悩んでいたりと、とても人間味溢れる方で引き込まれました。
あまりプロフィールを生かした絡みを仕掛けることが出来なかったため、
ザックさんの深いところを掘り下げられず、そこが悔しく思います。
次の機会があったら今度こそ戦闘でスイッチを入れry(そこじゃない)。
6日間というプチ長期卓でございましたが、最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!
戸籍というものはアプリコットたちが作ってくれていたのを知っている。名実ともに、私は彼らと家族であったということも。
けれど、彼らと家族であった幼い少女はもういない。カルディアは死んでしまった。私が殺した。
今ここにいるのは、“マルグリット・ミッチェル”という少女。医師ジャック・ミッチェルの娘。天使の教会の人間でも、死神でもない。ただの、どこにでもいる、普通…とは少し違うかもしれないが、それでも、憧れていた“ただの少女”。
お父さんには感謝している。こんな私を愛してくれたこと。彼の望んだ形ではないけれど、今も愛してくれていること。
だから…、とてもこの決断を心苦しく思う。それでも、そうするべきだと私は感じた。
お父さんは、私のためにお母さんと結婚した。
お母さんは全てを承知の上で、お父さんを愛して結婚した。
でも愛は、とても度し難いもの。
近くにいればいるほど募る苦しみを、私は知っている。愛情の天秤が釣り合わぬ苦しさを、私は知っている。
私がいなくなれば、どうにかなる問題ではない。原因を排除したところで気持ちは簡単に動くものではない。
単なるうぬぼれて、お父さんの愛情は全てお母さんに向いているのかもしれない。それでもやはり、不安なのだ。私から見た愛とは、そんなに簡単なものではない。
だから。
娘として、父を愛するならば。
娘として、母を愛するならば。
そして一人の女として、思いにこたえられぬ自分を愛してくれている男(ヒト)を慮るならば。
私は私なりに、傷つける結果が待ち受けているのだとしても、その決断を下そう。
自己満足だとののしられ後ろ指を指されても構わない。
利用するだけ利用しただけだろうと謗られるならばそれも甘んじて受け入れよう。
温かな籠の中で匿われ、翼は十分に休められたのだから。
後は、飛び立つだけ。
「…お世話になりました」
誰にも何も言わず、飛び立つ私を許してとは言わない。恨んでくれるのならば、それが一番良い。
願わくば、己が悪かったのだと自分を責めるようなことはしないでほしい。
何も持たずに私は飛びだす。
行き先は決まっていない。そんなものは、後で見つければいい。
今は、ただ。
もう自分は“死神”ではなく、ただ一人の“子供”になることが出来た喜びをかみしめて。
愛してくれた父母へ何も告げずに去り行く罪悪をかみしめて。
“かつての私(カルディア)”と“今の私(マルグリット・ミッチェル)”に別れを告げて。
飛んで行こう、何処までも。
だって世界はこんなにも広いのだから。
* * *
空っぽの部屋の中に残された一枚のカード。
“いってきます。”
簡素な別離(わかれ)の言葉。
そのあまりの素っ気なさに幾許かの寂しさを感じ、同時に、彼女の優しさを理解しているが故に笑みが零れ落ちる。
「…君は残酷だな」
呟く言葉を拾うのは、直ぐ傍に控えていた妻。そっと寄り添う妻は、カードの文面を見て目を見開き、次いで酷く心配そうな顔をする。
案ずることはない、と緩く首を振って安心させると、そっと窓の外、陽に染まる街へ向けて駆けて行く小さな背を見送る。追いかけることはしない。年長者の意地と…それから愛する“娘”の旅立ちの祝福。
寂しさと悲しさは消せはしないだろうが、これが彼女の決断ならばと受け入れる。
初めから叶わぬことは知っていた。だからこれでいい。
「“いってらっしゃい”。…待っているとも、君が帰ってくる日を」
いつまでも、いつまでも。
その日は、来ないかもしれないが。
もしかしたら、という僅かな希望と。
傷付き行き場を失くした時に、彼女が帰ってこられる場所を守るため。
別れの言葉は紡がない。紡いでやる気もない。だって彼女も別れの言葉を言わなかったのだから。
「多少の期待くらいは許されるだろう?」
傍らの妻が、そっと目を伏せた。
よぉ、久しぶりだな。久しぶりっつーのも変か? まあ、どっちでもいいや。ちっと俺の話に付き合ってくれねぇか? どうせお子様は暇だろ?
あ? お子様じゃねぇって?
はは、そういやそうだったな。…そういや言ってなかったけどよ、実は俺もなんだ。見てくれはこうだけどよ、本当は違うんだ。
…前から知ってたって?
…。
はは、なんか嬉しいな。んー…いや、親近感とはちっと違うかもしれねぇけどよ…なんか、そういうのに似たもんが湧いてきた。
話って何かって? そう焦んなよ。まあ、なんだ、くだらない話さ。ちょっとした俺の後悔っつーか、なんつーか。まあ、胸の中のもやもや?を吐き出してすっきりしてぇわけだよ。
…へへっ、悪ぃな。ありがとよ。
なんつうかさ。俺、多分どっかで分かってたんだ。所長が探してる女が、俺の恨んでる魔女だっつーことも…あの魔女が俺を見逃した本当の理由が、俺に殺されるためだってことも。
意外か? 学のねぇ馬鹿だけどよ、それなりに頭はまだ使えるのさ。
で、まあ、なんだよ。分かってたけどさ、他にどうすることもできなかったんだ。所長には感謝してるぜ? 恩を仇で返しちまうことになるのも分かってた。けど…どうしようもできなかった。他にさ。俺に生きる理由ってもう無かったんだ。ダチは皆逝っちまったしよぉ…こんな図体じゃ元いたところ帰ったって誰も俺を分かりゃしねぇ。
…寂しかったのか、ってか? 当たり前だろ。寂しいに決まってら。親兄弟の顔なんざ知らねぇけどよ、それでも仲間はいっぱいいたんだ。…独りじゃなかった。
ははっ…。なんつうか、一気に全部から見放された気分っつーのかな…そんな感じでさ。何のために自分が生きているのか、生かされているのかもわからなかった。あの魔女から渡されたナイフだけが、俺と世界をつないでるなにかみたいに見えた。
俺は、魔女に生かされてた。今だから、はっきりわかる。理由は何でもいいんだ。人間は理由さえありゃ生きていけるんだって、今なら分かる。
今、か?
…。
思いつかねぇや。ははは…。……。なんで生きてるんだろうな、俺。なんで、此処に居るんだろうな。警察も結局俺を捕まえちゃくれなかったしよ。…フェスの兄貴が何か口添えしたんだろうけど。
…お前に愚痴ってもしょうがないよなぁ。ははは、ほんっと、悪ぃな。
それじゃ、さようなら、だ。
ああ、そういやよ。
お前を探してた奴がさっきいたぜ。
いいや、赤い髪の。
…なあ、おい、大丈夫か? 顔色がすっげぇ悪――あ…、お前、さっきの…。
「 み ぃ ー つ け た 」
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