クトゥルフ神話TRPGやろうずWiki

夏が終わり、冬が過ぎ、春がきたある日。玲子さんが急に家にやってきた。
「へーた兄ちゃん、これ！都子ちゃんにちょっと書いてもらったのよ！読んで感想書いて！」
そう言って持ってきたのは玲子さんが手がけているファッション誌「アイアイ」。
古き好き、日本和服美人特集。そんな感じのキャッチフレーズ。
夏に向けて、出す予定らしいがその本の感想を求めてきた……はず。
「あ、剣之介くんたちにも渡しておいて！ふふふ……あっ！ちょっと用事あるから、来週までによろしく！」
と含み笑いをしながら彼女は嵐のように去っていきました。
……あの笑顔を見るたびに、本当に心が救われる。
「……といわれても、私……ファッション誌なんて呼んだこと無いんですよねぇ」
そう思いながらも、「アイアイ」をパラパラとめくり始める。
……どこが郁子さんの部分なんでしょうか。
全部読むことになりそうで、少し気合を入れようとして。
ふと、皆と向かったあの夏の日の旅行についておもいだしました。
「もう、あれから一年ですか……」

あの過去の清算……いや、なにもなかったんでしたね……。
故郷で友人たちと過ごし、姉さんや妹達と再開を喜び、姉さんの子供と遊んだ日々。
剣之介くんに酔ったあの時の写真を取られたのは完全な不覚でしたが……。
それでも、心から救われたあの帰省の後、海に改めて向かいました。
ダイビングや釣り、今度こそただの楽しい日常になると思っていたところに、
大雨からの海へ落とされ、首長竜に助けられて、流れ着いた島。

初めはバカンスから無人島生活が始まるかと思って、内心慌てていましたよ。
でも、都子さんに出会って、一緒に生活を初めて、こんなバカンスも悪くないなと思っていました。
当然、あっちに行ったりこっちに行ったり……走り回っていたのは変わらないんですけどね。
皆さんと一緒に雑魚寝して、風呂を堪能して、美味しいご飯を食べて。
機会を待ち続けた伍長に出会い、家族を見せていただいた。
そして、剣之助くんがきっちりと1人で歩けるのを見れた。
最後までシャンと出来なかったのは及第点ですが……いえ、あれが剣之助の良いところでもありますね。
何時でも本気で、正面から向かっていく、本当素晴らしい友人ですね。
いえ、素晴らしい友人たち、が正しいですね。
……うん、何度考えても、最高の夏でした。

あれから郁子さんのことで色々ありましたが、
今は玲子さんの所で楽しくやっているようで何よりです。
暇つぶしに顔出しに行っては
「そんなにお暇なんですか？」
と言われ、純粋な言葉に少しだけ傷ついたのは内緒です。
「あー、警察なのにこんな暇人で、そのうえ家に遊びに来るんだもんなぁ」
とニヤニヤされたのはもう何度目のことでしたか。
仕方ないじゃないですか、ちゃんと元気なことをこの目で確認したいんですよ。
ちゃんと、そこにある幸せを確認したいと。

「……さて、連絡入れて呼び出しますか。1人で郁子さんのところを探すのは厳しいですからねぇ」
友人たちに集合のメールを送り始める。
「郁子さんのことで大事な要件があります」
この文面なら飛んで来るでしょう。
ついでに玲子さんと郁子さんを巻き込んで旅行でも企てましょうかね！

まず初めに、遅くなりましたが最高の旅行を2週連続で行っていただき、誠にありがとうございます。
これまでの全てのセッションの中で、一番楽しいセッションだと今でも思っております。
旅行の途中でエンストして、新しい過去を手に入れた「孕み女の村」を経て、
ついにたどり着いた海、初めての釣り、海での溺れ、
そして優しさいっぱいの首長竜との出会いから始まった、「蛇島からの脱出」。
最初は探索が結構ギリギリになりそうだなって思いながら、頑張っていて、
都子さんに出会った時は尚さんの心理学によって全て見抜いたことで、
少しだけ安心したことを覚えています。
斎藤 平太を使っていて、「蛇島からの脱出」での感慨深いことを3つ。

エドさんと一緒に襲われた時が一つ目。
エドさんがダメージを受け、そのエドさんを抱えて、
手のひらを削りながら縄を持って飛び降りたシーン。

剣之助くんが全力で都子さんを助けに走り続けたことが二つ目。
石板を取るために必死に潜り、手に入れ、身を削りながらも真実を手に入れ、
都子さんを説得し、最後まで都子さんを支え続けていた全て。

最後の最後、都子さんのご両親を説得し、最後の儀式が三つ目。
怯え、驚きながらも、前に必死に進む剣之助くんと都子さん。
そして、儀式を始めた時の恐怖。その解決策を導けたあの瞬間。
全員で一人の少女を助けることに参加できたあの時。
剣之助くんが刻んだあの印を繋いでくれた、今までの全部がこのために会ったと思えた時間。

代表的な3つをあげさせていただきましたが、あげるときりがないくらい、
今でもはっきりと覚えています。
斎藤平太としても、
「孕み女の村」は過去の清算、取り戻し、救い
「蛇島からの脱出」は未来への希望、これからの楽しみ
キャラとしても、また、成長し厚みが増しました。
最高に楽しい日々でした。誠にありがとうございました。

　孕み女、蛇島と二つ続けてこのメンツで遊べて楽しかったです！シナリオ自体の面白さも然ることながら、振り返ってみるといろんなことがうまく噛み合ったハッピーエンドだったなあと痛感します。塗り潰されたページを透かして見なかったら、魔道書を警戒しすぎていたら、伍長と話せなかったら……そして村でイゴーロナクの名前を知っていなかったら！あのクリスマスの姿を見ることはなかったのかと思うと身震いしますが、今はただ、嬉しいです！
　後半の一は期せずして先輩組と離れてうろちょろした結果、武器庫になったり目玉がポロリしたり剣呑なことになっていましたが、郁子ちゃんと話したり、海でプカプカしかけたり、密度の濃い時間をすごせました！中の人もサブのジュラシックパーク展開(みたことないんですけど！)に手に汗握ったり、中二感を増していく一に爆笑したり、郁子ちゃんの心の叫びに半泣きになったり、最初から最後まで楽しめたセッションでした。とくに、クライマックスでの絶望感の中、全員POW*5に成功して魔力の中に身を投じていくシーンは、キャラ的にも私としても胸がすくような思いでした。最初から気づけなかったのは残念ですけど、なんというか、あのシーンがあってこそのこのシナリオだったなあと思うんですよね。うまく言えませんけど。
　休憩時間の幼稚園茶番やクリア後の流れるような居酒屋行きも含めて、良いメンバーに恵まれたなあと感無量です。もう先輩たちや郁子ちゃんと物語の中で会うことはないかもしれないと思うと寂しさでいっぱいですが、幕間ではみんな末永く仲良くしてると信じて……

P.S.クリア後、シナリオを読んで
　ばかやろう！なぜ最初から郁子『ちゃん』って呼ばなかった一！こんな時のためのフランクキャラだろうが！(´；ω；｀)

郁子は色々な食材が入ったトートバックを片手に雑踏行きかう町をニコニコと歩いていた。
緑色の着物に身を包んだ彼女の容姿は、冬支度を追え寒さの厳しくなってきた街路樹のしたでも人目を引くものだろう。
首に巻いたマフラーを風に遊ばせながら彼女は軽く思い出し笑いをしていた。
色々な意見が出たものの郁子は結局みんなの近くにいたいと言う事で、ファッション誌の編集をしている首塚 玲子の家で住み込みの家政婦をするということで落ち着いた。
最初は玲子もいぶかしんでいたものの、実際彼女の能力を見るや「この娘！わたしの嫁にしていい！？」
などと言い出す始末だった。
郁子は笑いながら人の過ぎ行く町を見る。
（ここは本当にいろんな人がいる。自分がいかに狭い世界にいたのか思い知らされる。）
（そんな町を見ていると、自分の生きてきた世界が壊れそうに思い少し怖くなることがある。）
（でも・・・）
（でもね、沢山の友達がいる。）
（平太さんも、尚さんも、エドさんも、剣之介さんも、光希さんも、みんながいてくれます。）
（玲子さんも、ここにはいないけど、梅子さん、由加奈ちゃん、美子さん、夕美さんに静香さん、ちょっと怖いけど隆則さん）
（みんな、みぃんな、郁子の大切な友達です。）
空を仰ぎ見、行きかう雲の間に間に、ゆったりと悠然に泳ぐ巨大なクチナワとその子供たちの影を見る。
（ととさま、かかさま、みしゃぐじさま。郁子はこの人の町で、人と交わり、話し、笑い、生きていきます。）
（いつかそちらに行ったら、沢山、本当に沢山聞いてもらいたい話があるんです！）
（それまでは、少しだけ寂しいけど、お体に気をつけ、幾久しくご健勝であらんことを祈っております）
（ととさま！かかさま！みしゃぐじさま！郁子は、今とっても幸せです！）
それは、蛇になるはずだった少女が人として生きることを決めた後日談。
それはきっときっと楽しく、ずっとずっと幸せな、ひどくちっぽけで穏やかな後日談。