ここは、クトゥルフ神話TRPGのオンラインセッションに関する各種情報がまとめられているWikiです。

あかね色の「おやすみなさい」編集する

最終更新：ID:ncktLXkJOQ 2017年06月12日(月) 11:30:23履歴

✔シナリオ情報(PL向け)

　このシナリオはクトゥルフ神話TRPGに対応した現代日本が舞台のクローズドシナリオである。
推奨される技能は<医学>と発狂する可能性を考えての<精神分析>。その他には基本的な探索技能である<目星><聞き耳>が有用であるが、宣言や行動によっては免除される部分も多い。

　季節は春から夏に移ろい始める五月、探索者たちが都内にある余り人通りの無い道を歩いていると、眼前に少女が飛び降りてくる。
そして何やら奇妙な、ただのコンクリート作りなのに白亜の回廊を見たときと同じような感想を抱かざるを得ない『美しすぎる』のだがそれと同時に、何か不自然なほどまでに無機質な廃墟を見つけてしまうこととなる。

✔注意点・留意点(KP向け)

・推奨人数は2〜4人となっており、最終盤にPLが辛い決断を迫られる事となりますのでプレイ人数が1人というのは避けたほうがいいかと思われます。
・また、プレイヤーに対してその点を周知させてからセッションを開くことをお勧めします。
暴力描写、猟奇的な表現が多分に含まれますのでお気をつけください。
・シナリオ内における見出しの数字は添付地図に振られた番号の箇所で発生する出来事という意味になります。
　・このシナリオは広く公開するために体裁を整える、という面では処女作に当たります。そのため疑問点や作者の脳内保管という面が多いかもしれません。疑問点等がありましたら連絡してくだされば解答させて頂きます。 twitterID:yuden_TRPG
・動画化やリプレイ化についてはご一報いただけると喜んで見に行きます。
・二次配布はご遠慮ください。

✔KP向けシナリオ背景

この事件において黒幕といえるのは奥村医師である。
彼は元々夢見る人という稀有な存在であったことからミ＝ゴとの交流を深めていた。ドリームランドの知識等をミ＝ゴに渡すことで多くの便宜を図ってもらっていたのである。
彼は不治の病に犯された娘である奥村茜を救いたい一心で冒涜的な研究を進め、魂を刈る者であるイオドに茜の魂の一部を与え、仮死状態にして眠らせることで医学の発展を待とうと考えたの。そして、不完全ながらも内部を保護する結界を張りイオドの将来を行って茜の魂の一部を与えた。イオドに与えた魂を補完するために彼は自らの魂の一部や、幾つかの呪文を発動させるため仮死状態の茜にMPを与え続けた。
すぐに退散すると思われていたイオドは猟犬のように執念深くに浸食を始めたため彼は小児科委員ごと、「夢見る人を補助する」や「夢見る人の罠」といった呪文が死後も発動し続ける術式を組み、その呪文で病院ごと夢の国に転移させた。その後逃げ切ったと思っていたのだが、イオドはドリームランドまで追ってきたのである。

そうした中、彼はドリームランドの地下に巣食う食屍鬼を元に記憶の書き取り装置や細胞侵食剤等といったミ＝ゴの技術を用いて「健康な茜」を作り出すことに思い至り実行する。
上記の夢見る人の罠などの呪文で覚醒の世界から人間を呼び寄せ、その人間を食屍鬼に与えて素体を得、茜を作り出そうとしていたのだ。
記憶と姿はミ＝ゴの技術によって完全に娘の茜のものと同一になった。だがそこで奥村医師は一つの命題にぶつかる事となる。
「作り出した茜と死の病に瀕している茜に同一性はあるのか、彼女は何者なのか」という疑念である。
そして迷っている中、イオド将来の儀式によって視力を失い始めていた奥村医師は完全に「あかね」になりきれていない食屍鬼から攻撃され重症を負う。
一度目は地上に脱走してきた食屍鬼を撃退しベッドに拘束した。だが二度目は地下で致命傷となる傷を受け、その直後に彼の背後からイオドの侵食が開始、彼の魂は刈りつくされてしまった。それを見ていた食屍鬼と松永はなまじクトゥルフ神話に関する知識があるためにそれに近づくことが出来ず、地下に分断され、数週間過ごすこととなる。
そんな折、松永の命が絶えようかとしている頃に奥村小児科医院に興味を持ち迷い込んだのが探索者たちである。
この空間はドリームランドに存在しているが探索者や犠牲者は生身の魂で将来されているために、ここでの死は魂の死と同義である。現実世界での犠牲者は何故か目覚めない眠りに囚われており、彼らの魂は既に奥村医師の手によって茜を作るための材料や食屍鬼の餌となっているか、脱水などで死に絶えているため救う方法は無い。

✔NPC

✔安藤　奈津
奥村小児科医院の近所に立つ公立高校に在籍する一年生の少女。
保険委員に在籍しマイナーな運動部のマネージャー（KPが決定して構わない）を務め、部員たちの相談に親身に乗っているのだが、所属しているのがマイナー運動部故に彼女は帰宅部と間違えられる程度の活動のみ行っている。
格闘技を習っているものの、保険委員を務めることからも解る優しさと動物好きな面があり、最近奥村委員のあたりで昼寝する野良猫を多く見るという情報を聞き興味を持ち訪れた。彼女の立ち居地としては探索者達を導入に導く、猫が集まっているという情報を開示する、奥村茜の車椅子を押したり運んだりするというお助けNPC的な側面を持つキャラクターである。

STR:11　　DEX:10　　INT:12　　ｱｲﾃﾞｱ:60
CON:8　　APP:14　　POW:13　　幸 運:65
SIZ:9　　SAN:65/99　　EDU:9　　知 識:45
H P:9　　M P:13　　db:なし
―――――――――――――――――――
[技能]
キック:45％　目星:50％　精神分析:40％ 回避:40％　応急手当:45% 芸術(所属する部活動の知識):55% 医学:20%
✔松永　陽沙
奥村医院に勤めていた女性で奥村医師の計画に加担する共犯者。
奥村医師がイオドに魂を食われてからはその恐怖におののき、そちらに近づくことは出来ず薬局内にあった食べ物と水で生きながらえている。探索者たちが彼女の元を訪れた時点で彼女は一言二言程度を何とか話せる…というほどにまで衰弱しており情報を詳しく聞き出すことは出来ない。
(下部のものは衰弱時のもの)

STR:7　　DEX:3　　INT:13　　ｱｲﾃﾞｱ:65
CON:2　　APP:9　　POW:16　　幸 運:80
SIZ:9　　SAN:20/90　　EDU:18　　知 識:90
H P:6　　M P:16　　db:無し
―――――――――――――――――――
[技能]
クトゥルフ神話:13%
✔奥村 茜（オリジナル）
死の病に伏せる奥村茜本人。彼女は結界を張るためのMPの貯蔵や奥村医師のPOWを取り込むといった事も行われており、その体はイオドに魂の一部を捧げられた為か人間のものというよりマネキンや死体に近い状態となっている。
彼女は聡明であり、自分自身の置かれた状況等に対しておぼろげながらも理解をしている。この異界に取り込まれる以前から感じていた自分はいずれ死ぬのだろうという将来への悲観を持っており、捻くれた印象を持たせるため「カワイイ子」ではないかもしれない。悲観になった理由は死への恐怖という側面が強いために、死に対しては非常に強い拒否反応を示す。
※KPは最終的な決断を重くしたいのであれば、オクムラアカネと対比させるためRPに留意すること

STR:1　　DEX:1　　INT:11　　ｱｲﾃﾞｱ:55
CON:1　　APP:12(13-1)　　POW:11(10+2-1)　　幸 運:55
SIZ:6　　SAN:35/99　　EDU:4　　知 識:12
H P:4　　M P:11+45　　db:彼女は戦闘に参加しない
✔オクムラ アカネ
奥村医師によって食屍鬼をベースに作り出された奥村茜の摸造品。健康な姿であり、明るい性格をしている。
自分自身の置かれた状況は多少なりとも理解しており「治療の手立てがあるはずは無い病気だった」、「周囲の自分と似た屍の山」という要素から自分が作られた存在であるという現実に薄々感づき始める。
記憶を打ち込まれて日が浅いため、普通の人間が覚えていないような過去の記憶についても不自然なほど鮮明に記憶している。
自分が「健康な茜」になったのだから、例え「自分が作られたものだったとしてもそれを望んだのは自分であり、自分が茜だ」という考えを持っている

STR:5　　DEX:9　　INT:11　　ｱｲﾃﾞｱ:55
CON:7　　APP:13　　POW:11　　幸 運:55
SIZ:6　　SAN:35/99　　EDU:4　　知 識:12
H P:7　　M P:11　　db:彼女は戦闘に参加しない
✔奥村医師（名前はKPが決定して構わない:故人、名前と死体のみ）
彼は夢見る人であり、数十年前からミ＝ゴと取引を行っていた。
取引の内容は、ミ＝ゴの欲する夢の知識を彼らに与えることで、様々な部分で便宜を図ってもらえるというものであった。当初は趣味の鉱石採集等で便宜を図ってもらったが、茜が病に伏せるようになってからは異界の治療等といった面でも協力してもらっていた。
だが彼らの技術力をもってしても外科的なものでは治療不可能な病気に茜は罹患しており治癒は不可能であった。
そこで奥村医師は研究を重ね、イオドに茜の魂の一部を与え、医学の発展まで彼女を仮死状態にすることを思いつく。だがイオドは想像以上にどこまでも茜を追い続けることとなり、奥村医師は魂を削られた茜に魔力を貯蔵しつつ結界を張り小児科医院ごと夢の国へと逃げ込んだ。
その後健康体の茜を作り出す事に思い至り冒涜的な研究を進めていく。不老不死について調べていた折手に入れたクァチル・ウタウスやイオドについての知識をミ＝ゴに上納することで、彼らから「細胞侵食剤」と「記憶書込み装置」を譲り受けオクムラ アカネを産み出すことに成功する。
だがそこで茜とアカネの同一性問題で悩むこととなり、悩みながら「オクムラアカネ」のスペアを作る実験を重ねている最中(*この時点で狂気に呑まれており健康な茜を造りだす事のみに意識が集中していた)、捕らえてきた食屍鬼から襲撃を受けて傷を負い、その後現実世界から追跡してきたイオドに魂を喰われ死亡する。

✔導入

季節は春が翳りを見せ始め、夏が勢力を強め始めている6月上旬。梅雨が刻一刻と迫っているようで段々と湿度の高い日々が多くなってきている。だが今日の空は青く高く、澄み切っている。
日が真上に無ければ完全に照らされない路地の隅からはアスファルトの上に薄く広がる水の匂いが立ち上っているだろう。
探索者たちは都内に住んでいる、又は都内を訪れている。そこで最近は見ることもなくなったような廃墟が目に付くだろう。
探索者たちは<オカルト>か、都内在住の医療従事者であるのならば最近、何一つ体に問題はなく目覚めなければおかしいという状況なのに、何故か目を覚まさない人間がかなり増えているという事を知っている。
探索者たちの一団(全員が知り合いで一緒に歩いているのでなければすれ違う瞬間)が歩いていると上から女子高生が降ってくる。
叫び声を上げながら、猫のようなしなやかさで眼前に少女が着地する。少女は探索者たちを一瞥し謝ってから名乗るだろう。
※安藤奈津である。彼女が高い塀から落ちてきたのは猫を追いかけていたためである。この病院に猫が多く住み着いている…という情報を探索者たちに彼女は伝える。

※ドリームランドと強く繋がっている場所であり、感受性の豊かな猫たちはここを通ってドリームランドへ向かうことが可能である。奥村医師は猫が増えたことから猫よけの調整を行っているため、普段通り眠って辿りつく場所とは別の場所で目覚めることとなっている。例えるならリスポーン地点が普通に眠る場合と別の便利な地点に設置されている。そのため、猫はここに集まり集団で眠っている。

その説明を受けた時点までに探索者たちは病院の方を一瞥するだろう。
その「奥村小児科医院」という看板がある廃墟は放置されてから少しは時間がたっているようだが、それでもかなりきれいな部類になる。敷地の入り口には鎖が張られていて入ることはできない。
一瞬横目で見ただけでも、そうした事柄が解る程度には目を奪われてしまうだろう。探索者たちはそこから直ぐに目を離すことは出来ない。
都内在住の医療従事者は<アイデア>ロール成功によって、奥村小児科委員の敷地で男性ホームレスが倒れていたのが三週間ほど前に発見され、そのまま近隣の病院に搬送された。その男性も体に問題は何一つ無いのにもかかわらず目覚めない、ということを知っている。
その後は自由行動となる。病院などを訪れるといってもホームレスの顔や行方不明者の情報が確かめられる程度である。
その夜探索者たちが眠り、意識が闇に溶けた後、そこが夢なのか現実なのかは解らないが意識がはっきりとするだろう。
※その時点での探索者の格好は昼間そこを訪れたときの物であるか、眠ったときのものであり、持ち物は眠りについた時点で身に着けていたものに限られる。この部分の裁定はKP独自に行っても良いだろう。


地上マップ

地下マップ

✔1:廊下にて
探索者たちが立っているのは小さな個人病院の玄関部分にあたる場所のようであり、靴棚が壁に備え付けられていてその隣にはスリッパの並ぶ棚が設置されている。そこに立っているのは探索者たちと昼間探索者たちの目の前に飛び降りてきた少女、安藤奈津である。床はひんやりとしており埃っぽい。
探索者たちが気付いた場所からは受付が見て取れる。周囲に点在する窓には細い鎖に十字架、そして凡字の書かれた札、呪符が刻まれた布といった西洋東洋問わない魔除けが目張りするように隙間なく貼られており、その符が放つ淡い光がその室内を照らしている。
そうした場所を見始めたのであれば安藤奈津はスリッパを差し出してくる。「足下が冷たいでしょうし、床にも浅く埃があるみたいですから…」と彼女は伝える。その彼女が手渡してきたスリッパには「奥村小児科医院」とプリントされている。
窓や入り口の符を外し、外を見る探索者がいるなら下記の描写を行う。
「そこは冥府と呼ぶ以外に方法がない。少なくともあなたたちは、その言葉以外でその光景を表す語彙を持ち合わせていなかった。上を見上げてもどこから落ちてくるのか解らないほどの水量は大瀑布と呼ぶにふさわしく、円形の滝の壁面に辛うじて自分たちのいるこの建物があることが解る。そして、水が消えていく下方には何かが蠢いている。距離感がつかめないほどの――高さではなく遠さと呼ぶべき程の距離においてもその大きさは図抜けており島か、それとも国か、その大きさが解らないほどの物であった。その中に、大きさのわからない目が輝いているのが見える。暗闇に包まれていることもあり見えるのはそれだけで、その全容をあなたが理解することは無い。だが本能的に解るだろう。それを理解したら心が砕ける、と。そしてそれは声を上げた。地鳴りにも似たそれはあなたの心を揺るがすには十分だった。」

そして、その光景を見た探索者には1/1d10の正気度チェックが発生する。
※探索者が見たものは「穴の中の獣」(幻夢境P96記載)であるが、非常に遠くからその輪郭が何とか判別できる程度なので減少量は少ない

また、これを行った際に<目星>技能成功で同じように札がはがされ、そしてその後封鎖されたように見える箇所がある事に気付く。
※これは以前迷い込んだ人物が窓を開け放ち、そして上記の怪物を見たために封鎖したものである。探索者たちがこの破った部分を封鎖しないならばいずれ(KPが選択するタイミングから)イオドの侵食がこの部分からも始まる事となるだろう。

　ガラス戸の玄関にも同じような札が貼られている。それを破って扉を開ければ、二重玄関のようになっているようで、そこにあるのは稼動していない自動販売機と厳重に、鎖と符で封鎖された入り口扉である。その封鎖は素手では確実に破壊することの出来ない封鎖である。
　その場から見える受付の方に行くならば、受付正面には待合ホールが広がっており、下記の描写を行う。「立て付けやインテリアは病院らしくない。天井は高く、消毒液にも似た独特のにおいと黴臭さが同居しており、そして長椅子が並んでいる。病院らしくないインテリアであることは確かだが、長椅子が並ぶホールの奥には符で封印された大きな窓と、一段高くなった、幼児が遊ぶためのスペースが設けられていることに気付く」

✔探索パート


受付まで来たのであれば、ここからは本格的な探索パートの開始となる。

✔地上探索個所

✔2:児童スペース
小児科ということで子供が遊ぶようなスペースがあり、児童スペースの柔らかい床には絵本が一冊放り投げられている。絵本は子供が読むには挿絵も古臭く、そしてなにより不気味なタッチだった。そして、何よりも異質なのはそれが羊皮紙ともパピルスとも解らない不思議な紙の質感を持っていたことだろう。
技能判定無しでも大まかに理解することができ、<夢の知識>技能を用いるならば内容も詳しいものが解るだろう。
夢の知識なし：「それは端的に言うと人間が化け物に変わってしまうというものだった。人間が段々と堕落し、楽園から化け物によって追い出されてしまった。その後も人間は堕落し腐肉を漁る化け物に一部は変わっていった」
詳細：「人間が堕落し、そしてその感情から生まれた化け物によって約束の地を追われた。その後人間は外部記憶とも言うべき都市を築いたが、それは約束の地の模倣でしかなかった。そしてその模倣は人間をより堕落させ約束の地から人間を遠ざけた。人間の中でも怠惰なものたち、卑しい者たちはその後穢れ、腐肉を漁る長寿の怪物となった。」
それ以外には特に何もない一般的な児童スペースで本棚に並んでいる本は特におかしいところもないただの絵本や漫画だ。
✔3:待合スペース
待合スペースには長椅子が並んでいる。治療に使ったのだろうか、消毒液の便と血の付いたガーゼ、包帯の切れ端や鋏、懐中電灯がその上には置かれており、イスの上や床には多くの護符が落ちている。
<目星>技能や護符を詳しく見るという宣言があれば護符の山の上に紙質の異なる一片のメモが置かれていることが解る。その文字は震えており、血が付いたのであろう拭った跡や不完全な指紋が見て取れる。

「誤算だった…不浄な食屍鬼の生命力を舐めていた。抵抗は予想外だったが、麻酔の量を誤った自分に非があるのは確かだ。もう危険はないだろうが、しっかりと鍵をかけておかねば。鍵は金庫に、金庫のキーはあの時の…頭がボーっとしている。だが私にはやらなければならないことがある」と書かれている

※隔離処置室の鍵は3本(奥村医師、松永、予備)で、松永の物と予備の物は金庫に保管されている。
地下の鍵は奥村医師用と予備の二本がある。


✔4:受付
受付にはファイルが残されており、その中で目を引くのは一番新しい記録と、その少し前の内容であり、他の内容とはかなり趣が異なっている。下記に記されたもの以外はバイタル安定といった物であり、それには奥村茜という少女の容態が書き記されている。
多少古い記録：「猫どもが多い。ここに誘導されてきているのだろうが非常に邪魔だ。人間以外はウルタールにでも送りこめばいいだろう。」
最新の記録：「茜はベッドで寝ている。この眠りがさめるのは当分先だろう。今のうちに地下で実験を進めるとしようではないか。まだ細胞侵食剤は薬局の方に腐るほど有る」受付の後ろにはファイルキャビネットが並んでいる。
キャビネットの間には致死量に到るだろう血が広がっている。乾いたそれはもう黒い染みといっても差し支えないが、確かに血であることをあなたたちは解るだろう。
この光景を見た探索者は0/1d2の正気度チェックを行う
✔5:診察室
　ここにはファイルキャビネットの間から来ることと、待合室側から来ることが可能となっている。
机の上が少し散らかり椅子が中途半端に引かれている以外には特段おかしいところのない診察室であり、そこ以外は几帳面に整頓されているため違和感を覚える。奥は処置室や受付の後ろとつながっているようである。
ここで全員に聞き耳を振らせ、成功者には下記の描写を行う。
「いや、少しおかしい所がある。それは腐臭だろうか…糞便や膿の臭いに似た決して好ましくはない匂いが奥から流れ込んできている」

診察机の上には半開きのファイルキャビネットが置いてあるが、大きい机の一部を占領しているだけで机の機能はまったく失われていない。そして、伏せた写真立てと積まれた医学書以外には特に目立つものは机の上にない。
写真立てには優しそうな男性と、その男性から肩にかけられたのだろうか、サイズ感のあっていないぶかぶかの上着を肩にかけられた少女が写った写真が入っている。詳しく調べるか<目星>技能等に成功すれば、写真立ての留め金が多少ずれていることがわかる。取り出せばそこに写真が二枚入っており、取り出す前は見えなかった20年以上前の写真に探索者たちは気付くことができる。それは山間部、石切り場のような場所で撮られた写真であるようで、裏面にはメモも施されている。「“彼”とのツーショット」と裏面に書かれたその写真に写っているのは奥村医師だけである。
そして元から見えていた少女と男性のツーショットの写真からは写真立ての縁に隠れていた日付が解り、それは2年前の5月26日になっている事に気付く。写真の裏面には「茜の誕生日に」と綺麗な字で書かれている。
続いて机の上に放り出された医学書に挟むようにキャンパスノートの日記を見つけるだろう。

奥村医師の日記：
1/13　なぜ茜にこんな不幸が…彼女には生きていてほしいだけなのに彼女の命はもう数年で燃え尽きる。現代医学でも不可能だし、ユゴスから来た彼らの能力でもどうしようもないだろう。外科的な物ではどうしようもないのだ
1/16　不死を与えるという存在の伝承を聞いた。これで茜の命を繋ぐどころか、彼女は永久の物となる。
3/13　だめだ…調べれば調べるほどそれは不確定で、そして気まぐれに左右されている。それに生きながらえても背骨が曲がるだと？ふざけている
3/18　彼女を助けるのは今の医学では不可能だが後に託すことはできる。体を保存する方法ならば魂を刈るものに魂の一部を与えればいい。心のほんの一部で茜の命がつなげるならば安いものだ
3/24　誤算だった…魂を刈るものは猟犬のようにどこまでも魂を狙う。茜の魂が刈りつくされてしまう。どうも上手くいかない。私の魂を一部与えて茜の心を補った。魂を別の健康な入れ物に入れて茜を作るというのがやはり一番簡単か
4/1 人間が食屍鬼に変わるならその逆もできるだろう…魂を他の物に移す術の応用で私の病院を結界にし、その魂ごと夢の国へと飛ばした。そしてこれは罠でもある。呼び寄せた人間を餌に食屍鬼を養うことにしようではないか。
4/7 ついに茜の目覚めのときだ。今まで長かった。
4/9 この子は茜なのか？茜はどこだ？
4/13 別の茜に襲われて左目が潰れた。全く、手のかかる子だ。

後半になるにつれて文字が荒れていく様が見て取れる。文字からでさえも伝わる狂気に当てられたのか、探索者たちの心が軋む。0/1の正気度チェックを行う。
ファイルキャビネットには医学書が並んでいる。それらや机の端に積まれている医学書に対して<図書館><母国語>の同時成功で詳しく読み解くか、<医学>技能成功で「体がどんどん動かなくなっていく遺伝子疾患」についてのものが大半を占めていることが解る。
椅子を引くなら机の下に小さな金庫が入っていることが解る。
茜の誕生日「0526」で開錠する
　その金庫の中にはずっしりと重い布に包まれた金属の塊が置かれている。その包みは一度解かれて再度急いで巻きなおされたようで多少不恰好である。その包みを開けるならばそこに入っているのは「拳銃」であるということが解る。*データはKPが基本ルールブックより採用して構わない。
そしてそれとは別に鍵も二本置かれている。鍵についたタグにはそれぞれ備品庫、隔離処置室と印字されている。
探索者が望むならばそれ以外の武器になるような物騒な物も入っていて良いだろう。
✔6:病室
診察室・待合室側から入ってきたのであれば、その病室の壁から壁に走るようにL字型のカーテンで仕切りが成されている。
<聞き耳>技能成功でその匂いがカーテンの奥からより強く出ていることが解る。
✔7:カーテンの奥
　この病室に光を取り入れるよう広く取られた窓も一面符で覆われている。その薄暗い室内に複数のベッドとそれを囲むカーテンが並んでおり、退廃的な風景と鼻を突くような先程よりも強い腐臭に不釣合いなファンシーなカーテンの柄は探索者達を不安にさせる。
一番手前にあるベッドはカーテンが半開きになっている。そのベッドの横には折りたたまれた車椅子が置いてあり、少女のマネキンのようなものがベッドの上にはある。(写真を見ているのであれば、写真に写っている奥村茜と同じ顔であると解り)その体は精巧な球体人形の用に見え、そしてそのプラスチックのような左腕に刺さった針にはそこからつながった点滴があるが、その内用液は既に乾ききっている。探索者たちが調べようと近づくならばそこで少女は目を開けて口を開く。
「あなたたち、誰なの？」
マネキンのような、少なくとも人間だとすれば「死体」のほうに遥かに似ているそれが目と口を開いたのだ。ここで精神を揺さぶられた探索者たちは0/1d2の正気度チェック。
※彼女こそ本物の奥村茜である。病の進行とイオドに魂の一部を刈られているため体は動かないが、まだ精神は保たれている。冬眠に近い状態だったが、この酷い腐臭と誰かが来た気配で目を覚ましたのだ。
奥村茜が探索者に語る内容
��あなたたちは誰なのか
��お父さんはどこにいるのか
��この匂いは何か
��今は何日か
��連れて行ってくれないか
といった質問を投げかける。
茜は現状何が起きているか全く解らない状態に置かれているため、探索者たちの質問にも殆ど答えられないだろう。強いて言えるとすればそれは眠りに就く前のことであるが、それも魂の一部を刈られ奥村医師の魂の一部が体内に入っているためおぼろげである。
茜が知っていることの一例
��細胞侵食剤・記憶読取装置について→侵食剤は知らない。読取装置かは不明だが変なヘルメット(食屍鬼がかぶっている者)は被った事がある
��化け物(食屍鬼)について→見たことは無い

また茜の頭部、髪の毛の下に多少の凹凸を確認できる。
✔隣のベッド
腐臭の根源である隣のベッド。それを覆うカーテンを除ければその上には拘束具で拘束され、頭部にソケットのような装飾の付いたヘルメットを被った子供くらいの大きさの、腐臭を放つ半ば溶けかけている死体がある。
だがそれが何の死体であるのか探索者達には解らない。それは二足歩行をする生物のようで人間と体は非常に似ているが人間とは異なる点も多い。それはまず豚面であり、そして手足の先には蹄があり、半ば腐り落ちた体はゴム質の皮膚で覆われていた。
得体のしれない何かの腐乱死体を見た探索者たちは1/1d6+1の正気度チェック
　なおそのヘルメットは頭蓋骨と一時的に癒着しているようで取り外すことはできない。
<医学>あるいは<目星>成功で腐敗している胸部に穿たれた跡があることがわかり、恐らく大口径の弾痕であることが推察される。
✔8:備品庫
薬品などがある。<薬学>成功で小児科医院には不釣合いの強力な麻酔や毒性の強い薬品が存在することが解る。
✔9:トイレ
実際のところ只のトイレである。男子用には小児科らしく小さな便器が並んでおり、女子用も個室は広い。
掃除用具入れにはモップ程度ならあるだろうが水は出ず、便器の中の水も枯れている。
✔10:隔離処置室
通常の病院であればインフルエンザ患者等についての処置等を行う隔離処置室であり、鍵はついているものの鍵は掛かっていない。
中に入れば台の上には血の付いた刃物や赤い何かがこびりついたトレイが散乱しており、壁際にはロッカーが三つ並んでいる。
そのロッカーの隣にある鉄扉の前には、痩せこけた男性がもたれかかっている。その肌は真っ白でありながら一部どす黒く変色し、こと切れてから幾分か時間がたっていることが伺える。
この部屋の惨状は視界だけではなく嗅覚にも刺激を与え、探索者たちの心を揺さぶるのには充分すぎるだろう。0/1d3の正気度チェックを行う。
茜に何か解るかと聞けば「ここに入っちゃいけないと言われていた」と彼女は応える。

✔男の死体
扉にもたれかかっている男はホームレス然とした格好をしており、若干の腐臭に混じった汗臭さ等の体臭を漂わせている。
近づけば彼の足元に血で書かれたであろう乱れた文字列が目に付く。「おれがおれでなくなっていく」というかなり乱れた血文字が意味するところはどこだろうか。
0/1の正気度チェックを行ったうえで持ち物を確かめるならば空になったペットボトル飲料とほんの僅かな金額の入った財布、隔離処置室というタグの付いた鍵、ボロボロの身分証名称と左手に握りこまれている血の付着したタグの付いていない鍵が見つかる。
医療従事者であるならば<アイデア>技能成功でこの身分証名称の名前と先日病院に運び込まれたホームレスの名前が一致することがわかる。
また、鍵には地下室と書かれたタグが付けられている。
死体に対して<医学>を振るのならば下記成功情報+<目星>成功時の情報を得る。
<医学>成功情報としてはその死体の皮膚は若干ゴム質状となっており、足の先は骨が歪んでおり蹄状の器官が形成され手の先は鉤爪状になりはじめているのが解る。
0/1d4の正気度チェックを行う
<目星>成功ならば彼の口元と指先には乾いた血が付着していることと、彼の胸元や肩口にはかなり深い傷があること、上記の持ち物に気付ける。

※この死体の主であるホームレスはこの小児科医院に迷い込み、そして脱水と背後の扉奥に居る食屍鬼の攻撃により死んでしまった。
また、脱水で死ぬ前に奥村医師が解体した食屍鬼の血肉や腐肉を口にしていたため食屍鬼化が始まっている。
✔部屋の内部
部屋や机、医療器具などに対して<目星>や<医学>などを振るならトレイの中、どろどろの液体の中に血濡れの蹄のようなものがある事に気付く。
トレイの中の骨は自動でそれが蹄などを除けばほぼ100%人間の骨であることがわかる。
それに対して<医学>技能を振り成功したのであれば、その骨は人間として非常に密度の高いものであるように感じる。絵本を読んでいる探索者はそれと化け物の存在、異形に変わりかけたホームレスと「人間が変わる」という絵本の内容とを関連付けてしまう。その探索者は0/1d3、絵本を読んでいないなら0/1の正気度チェックを行う。
✔ロッカー内部
壁際のロッカーには分解された異形の生物のパーツが切り分けられ、そのパーツごとに心臓、肺などというようなラベルの貼られた瓶に詰められ並んでいる。
一番左端のロッカー(ホームレスがもたれかかる扉の隣にあるもの)の内部には手に馴染むメス等といった医療器具が並んでおり、使い方次第では武器にもなるだろう。
データは下記記載のものを用いる
✔ [メス:1d4+DB 貫通あり 技能:ナイフ
初期値:30%(25+5) 耐久力:5]

✔扉の向こう側
この隔離処置室の探索を終えた、又は男性がもたれかかっている扉を調べようとした時点で扉は向こう側から叩かれる。
ドンドンドンドン！と強く、連続して叩かれた後でその音は収まるだろう。
ホームレスの死体が持っていた鍵を用いて扉を開けた場合、その扉から飛び出してきたアカネのなり損ないである食屍鬼の子供と探索者による戦闘が開始される。
この食屍鬼は女児用の服を着ており、頭部にはヘルメットをかぶっている。
また、この扉に入ろうとした時点で不定の狂気をリセットすること

食屍鬼の幼生、未完のオクムラアカネ
STR:10　　DEX:11　　INT:12　　
CON:13　 POW:12　　H P:10
SIZ:7　　db:なし
[武器]かぎ爪:30% ダメージ1d6+db
噛み付き:30% ダメージ1d6+ 牙でいたぶる1d4
[特記]頭部にはヘルメットを被っており30%の確立で1点の装甲として機能する。
食屍鬼の幼生を見て失う正気度は0/1d6。

✔地下へ進む

✔11:地下廊下
　食屍鬼の幼生が飛び出してきた扉の向こう側は下層階へと続く階段となっており、その奥底は推し量ることが困難なほどに暗い。淡い光を放つ符か、懐中電灯を持っていなければ進むのは困難だといえる。
階段を降りていくと地下、石をくりぬいたようなひんやりとした廊下に突き当たる。その廊下を見れば十数メートル離れた突き当りからは、光り輝くイソギンチャクのような触手が伸びており、触手がギリギリ届く辺りに白衣の男性が倒れていることが解る。

✔地下の屍と魂を刈る者
　その白衣の男性についてだが、近づいてみれば多くのことがわかる。体の質感は地上で見た茜という少女に似ているが茜以上に体は白く屍に似ていた。
作り物であるといわれたらそう信じてしまうほどに生物感が無く、それでいてマネキンであるとするには生々しすぎた。顔は地上の写真で見た奥村医師その人であると断言できる。写真の姿と異なっている部分といえば頭部に巻かれた包帯と片目を覆う眼帯、そして左胸に穿たれた大穴とそこから周囲に広がる黒いシミである。
異形の存在とそれに触れ大きく変わってしまったのであろうその屍を見てしまった探索者は1/1d6+1の正気度チェック
※これは魂を刈る者―イオドによって魂を刈り尽くされた奥村医師の成れの果てである。

それを確認できる程度の近さまで茜を連れていき、一緒に確認するのであれば茜は一種の恐慌状態となることは避けられない。
一時的に話すことも困難なほどの錯乱状態に陥るだろう。落ち着いたのであれば茜はこれが父であることを話してくれる。
そして奥村医師の奥、触手の伸びている壁を曲がった先には上階へと続いている階段が存在する事が見て取れる。

✔奥村医師
彼は左腕にバインダーを、左腕には弾が装填されていない猟銃を持っており、バインダーには何かが書かれた紙が挟まっているようである。
その紙は体よく言えば実験記録、有り体に言えば日記のような形をとっている。殆どのものは探索者にとってしてみれば意味を持たないような内容の物であり受け付けカウンターに置かれたファイルの続きや抜けている部分であるように思える。
それを読むと宣言があるならば下記の情報を開示する。
「不浄な食屍鬼に負った傷のせいで左側の視野が狭まっている…元々失明は視野に入っていた儀式ではあったがこれは想定外だ。右目の視力も殆ど無い。今脱走されたらこちらが危ない…管理を厳重にしなければ」
　包帯を綺麗に外すのには<医学>又は<DEX*5>のロールが必要となる。外すことができたのであれば猛獣の爪痕のようなものが頭部の左側から眼には走っており、それは致命的なまでに視覚野を破壊したであろうことがわかる。そして爪と爪の間隔から、恐らく先程の小さな食屍鬼に攻撃されたのであろうと推察されるだろう。
✔12:地下の大部屋
大部屋の扉を開けたとたん、探索者たちは眩暈がするほどの腐臭に包まれる。その腐臭を放っている元凶はその部屋の奥にうず高く積まれた屍だ。
全ては小さな体をしており少女物の服を纏っているが、それがただの少女でないことは明白だった。上階、隔離処置室で見たホームレスの屍と非常に似ている人の肌とゴムの中間とも言える皮膚、そしてはっきりと形が解る鉤爪と蹄。豚と少女のコラージュにも見えるそれは落ち窪んだ眼窩を広げ、確かにそこに存在していた。
そしてその屍の山の下に半ば隠れるように星型の光が床には描かれており、その星の中央には不釣合いな「普通の」少女が椅子の上に座っている。その少女は俯いているためその顔までしっかりとうかがい知ることはできないが、露出した肌の血色は多少悪いものの生を感じられる色をしており、そしてゴム質でもなかった。
　この時点で1/1d8の正気度チェックを行う。その死体の山に対して<目星>を行うのであればその屍の山となっている屍のどれもが頭蓋骨に穴を穿たれていることが解る。ここでどれほど冒涜的な実験が行われていたのだろうかと想像してしまった探索者は正気度チェック0/1d3を行う。
拘束された少女に近づく、あるいは話しかけるのであれば少女は何の抵抗も無く目覚め、周囲を一瞥して軽く悲鳴を上げる。そして涙目で探索者たちのほうに向き直り、背後の死体の山は何なのか、今何が起きているのか、父親はどこかと尋ねる。

✔二人目の少女
少女はオクムラアカネと名乗る。彼女こそ奥村医師が造り出した健康な茜である。彼女は病に伏している茜よりも明るく、活発であり人懐っこい「いい子」だ。
本気で怯えているが、そうした中で書き込まれた記憶とこの屍の山から自分が作られたコピーなのではないかという考えに数分で至るようになる。
コピーとはいえ奥村茜と同一の魂を持っており、そこに違いは存在しない。
彼女と「奥村茜」の違いについては下記
奥村 茜オクムラ アカネ
多少ひねくれている天真爛漫・活発
自然な忘却をしている記憶は過去まで鮮明

(オリジナルより10日ほど前の記憶から存在)

外に出て奥村医師の屍を見てしまったのならばオクムラアカネも恐慌状態に陥る事は必至である。
天真爛漫な彼女が病に伏している奥村茜と違うことといえば、健康であることと食屍鬼から造り出されたことだけであり、完全に一人の人間・少女としての自我を確立している。
✔13:上階へ
L字状になった廊下の角に倒れ伏す奥村医師の屍の脇には通路が続いている。そしてその奥には、半ば影に飲まれていると言っても過言ではない階段が上に続いている。壁から伸びる光り輝く触手がその闇を、影を際立たせているようにも見えるだろう。
✔14:地上、薬局
階段を上っていくとその先には鉄製の扉が鎮座している。鍵は掛かっていないようでドアノブを回し、少し押せば抵抗無く扉は開く。
鋼製の扉を開ければそこには薬棚が並んでいる建物の中であり、辺りの風景からして薬局のようである。
棚の間を抜けていくと調剤スペースやカウンターがあり、そのカウンターの上には薬瓶とヘルメットが置かれている。
瓶には「茜」とだけ書かれたラベルが貼られており、その瓶の中にはカプセル状の薬が大量に詰められている。


✔ [ミ＝ゴの細胞侵食剤]
カプセルの中に変質したい対象の組織の一部を入れ経口で摂取する。
摂取後1d100時間以内に変異が始まり、それは3d10日間続く。変異が終了すると体の組織は対象のものと完全に同一となり、EDU、INT、POWを除く全ての能力値が完全に同一となる。変異開始から終了まで毎日自身の体の変化を実感することとなり、変異終了まで毎日0/1d2の正気度チェックを行う。また、別の存在へ変異が完全に終了した時点で1d10ポイントの正気度を喪失する。


✔ [ミ＝ゴの記憶上書き装置]
これはヘルメットのような形をしており、事実頭に被って使用する。
吸い出しであれば、この装置を被った対象は深層心理から自分では思い出せないような記憶までの全てをコピーされる。コピーは3d10分で終わり、対象は1d3ポイントのMPを消費する。
上書きであればこの機械が現在蓄えている他人の記憶を1d100時間かけて自らの記憶の上に上書きしていく。他人の記憶を上書きする場合は、一時間ごとに1d10ポイントの正気度を喪失するが、頭蓋骨と癒着しているため自らの意思で取り外すことはできず途中で外した場合は例外なく死亡する。
記憶の書き込みが終了した時点で対象とEDU、INT、POW、技能値が同じ値になり、記憶を吸い出された時点での対象と正気度も同一になる。だが、書き込まれて数ヶ月間は遥か過去のものと数日前の記憶を遜色なく思い出すことが可能である。記憶が定着していくに従ってそれらは自然な忘却の波に飲まれる。


そしてそのカウンターの奥には薬局で売っている食品の包装や空のペットボトルなどが散らばっており、それらに囲まれるようにかなりやつれた女性がファイルを握り締めながら壁を背に座っていた。その女性からするのは腐臭とも違うが、かなり不安になる匂いだ。
生きながら腐っていく、死ぬ寸前の匂いという感じだろうか、医療関係者であればそれに気付くかもしれない。
✔松永陽沙との会話
彼女は非常に衰弱しており意識も混濁している。会話できるとしてもそこまで長くは無理だと探索者はその様子からうかがい知る事ができる。
彼女は探索者全体からの質問に対し一度しか返答はできないが、<医学>もしくは<応急手当>技能の成功によってもう一度だけなら質問に答えられる程度には持ち直すだろう。

探索者が話しかけ、対話を済ませたならば彼女はこう呟く「ここから、出たいなら、魂を、刈る者に、二人のあかねちゃんのうち、どちらかを、捧げなさい。触れれば、魂、は吸われ、奴は帰り、結界も、解ける。私にも、先生にも、その選択は、できな、かった」とかすれた声で言うだろう。
こうした会話と対話を終えた後、松永は気を失う。
ファイルを強く握り締めていた腕からも力は抜けたようで、その場にだらりと垂れ下がっている。

✔冒涜的な知識の詰まったファイル
その中に挟まれた書類は冒涜的な知識が書き連ねられている「イオドの書」の不完全なドイツ語版写本をスキャン・ファイリングしたものであった。
またそれだけではなく、「カルナマゴスの遺言」と呼ばれる本の不完全な写本の一部をスキャン・プリントアウトしたものも挟まれている。
それは読めば一気に精神を抉り削る冒涜的知識が脳内に流れ込んでくる。それを読んだ探索者には1d3*2の正気度喪失と5点のクトゥルフ神話技能を得る。
(イオドの書:1d3 カルナマゴスの遺言:1d3)

イオドの書 不完全ドイツ語写本の一部
<神格との接触/イオド>1d6の正気度ポイントと1POWを消費する。非常に明るい光源を見つめながら呪文を唱える必要があり、POW*6に成功すれば『即時』の失明を避ける事が出来るが視力は低下し、いずれは失明する可能性が高い。
<狩りを始める/不完全版>五芒星の結界を張り、10正気度を喪失する。それはこの呪文を知っていて助けようとする者も同じである。その後、任意のMPを支払うことになる。その支払われたMPの合計が成功する確率である。

この冒涜的な書物を読めば解ることだが光り輝く触手をもつ鉱石であり生物でもあるイオドは、一度対象にした者・一度でも喰らい付いた者の魂を食らいつくすまで数百年でも、数千年でも、別世界であろうとも猟犬のように追い続ける性質を持っていることや、あの触手に触れただけで魂がどんどん喰らわれていくことが解る。
また、それを読んでいけばメモがそこから一枚落ちる。
「どちらかを捧げなくてはいけないのか…かの者は神、私たちの人生など奴らにとっては閃光のような一瞬なのかもしれない。篭城は無意味だ。だが、それでも私には選べない。どちらかを捧げ、それで帰ってもらうだと…これも罰なのかもしれない。もっと茜を作れば良いのだろうか。与えてもスペアが居れば、それは茜の一部を失ったに過ぎないだろう…それならもっとたくさん作って、そして……」

カルナマゴスの遺言 不完全写本の一部
<魂を分け与える>
呪文<自己保護の創造>(基本ルールブックP258)の応用であり、毎日肉親に自らの肉体の一部とMPを分け与え、それによって自らのPOWを2日に1つの割合で対象に移し変える呪文である。術者はPOWが1減少するごとに1d4歳ずつ老化していく。この呪文は術者と対象が近しい血族間でなくては成功しない。

そして人間に死と不死をもたらすというクァチル・ウタウスという神についての突拍子もない話が続いている。不死をあたえられた者は寵愛の印として背骨が曲がるが、寵愛を受けられなかったものはその場で塵芥と化すとも書かれており、その近辺の隙間に「ふざけるな」と手書きで書かれている。

✔ 「あかね」をイオドに捧げる
地下、奥村医師の足に絡み付いているイオドに「あかね」を捧げることがこのシナリオの終了条件である。
選択できず時間が無為に流れていくのであれば、奥村医師の足元から進むイオドの侵食が進んできたとして時間制限を設けてもいいだろう。

※追っている魂が二倍となったのである。イオドにとっては獲物が傍に長時間居る状況に他ならず侵食を活性化させても不自然ではない。
また、地上階で窓を破っているのならば護符を再び貼ったとしてもその部分からも侵食が進むとしても良いだろう。


奥村 茜を捧げる場合
彼女は嫌がるが、説得をする場合や無理やりに触手の方へ車椅子を押されれば泣き出す。「死にたくないよ、死にたくないよ」と
それでも説得を続けるならば「…お父さんとお医者さん以外と話したことなんて余りなかったから友達なんて全然居なかったけど…でも、それでも楽しかったよ。今日も、ありがとう。」と言い「私の分までその子が生きてくれると思うから…忘れないでね」と覚悟を決めたように言い、探索者に車椅子を押され触手の中に呑まれる。　→エンドルートAへ

オクムラ アカネを捧げる場合
彼女は非常に嫌がり全力で抵抗するだろう。
君が偽者だからだ、ということを探索者が言えば彼女は「偽者だったら生きていちゃいけないの？お父さんは私に生きて欲しいからこうして、私を、造ってくれたのに！…私死にたくない！」と泣くだろう。それでも大人の腕力には適わず、直に触手に呑まれ、見えなくなる事だろう。　→エンドルートBへ

✔エンディング

✔共通
※あちらの世界からこちらの世界に物を持って帰ってくることは出来ない。ただし、魂がむき出してあの空間に捕らえられていたため怪我をしていればそれだけは残っている。

少女が触手に飲み込まれると周囲には光があふれ出し、視界は白く包まれ、その白の中に意識は解けた。
そして次に探索者たちが目を覚ますとそこはいつもの自室だった。時刻は午前4:12分、空が白み始めている。あれは夢だったのだろうか、と思うが妙に現実感に溢れていたあれを夢で片付けるのはいささか難しいだろう。それに何よりこの脳内にこびりついた冒涜的な知識(と負った怪我)があれは夢ではないと核心を持たせるだろう。
活動しだすには少し早いだろう、あかね色の朝日に包まれながら探索者たちはまどろむ。その意識が柔らかく落ちる寸前に「おやすみなさい」という声が聞こえた気がした。

※どちらのルートでも松永は茜と同じ病院に入院することとなる。彼女は栄養失調と脱水が酷いが、いずれ回復するだろうことが予想される。
※またエンディングルートは双方とも後味の悪い展開となっているためKPの裁定次第で後部をカットし、ハッピーな展開のまま終わらせるのも良いだろう
✔エンドルートＡ
その日の夕方、探索者たちはかの奥村小児科医院へと向かう。あれが夢だったのか、それとも現実だったのか。
集合時間ちょうどのその時間には探索者たちと安東奈津が病院前に集まっている。
そこで話していると一台の軽自動車が探索者たちの前に止まる。
その後部座席から降りてきたのは「奥村茜」だ。彼女は遠縁の家に預けられ、昏睡状態に陥っていたそうだが今朝急に眼を覚まし、「お父さんの病院が見たい」ということで親戚に連れて来てもらったのである。
今後どうなるかは解らないが、少なくとも親戚の下から遅れた勉強を取り戻しつつ学校へ通うことになるのだろう。
「えへへ、ありがとう！」と彼女は天真爛漫に探索者に語りかける。
<アイデア>技能を振らせ、それが成功ならば、「病の自分」が目の前で触手に飲まれ死んだのにもかかわらず明るく振る舞う彼女に対し、それは子供ゆえの残酷さなのか、それとも人外の要素なのか、と考えてしまい背筋が薄ら寒くなる。
それが杞憂なのか確かめる術を探索者は知らない。西日は空をあかね色に染めるが、それも直に夜に呑まれるだろう。
✔エンドルートＢ
探索者たちが病院での探索を終えてから数日後、一通のメールが届く。差出人の名前は「安藤奈津」。
「調べるのに苦労しましたよ！茜ちゃんの入院先解ったので今度お見舞いに行きませんか？」というメールだ。
これに応える探索者は数日後の夕方、奥村茜が入院する病室を訪れる。彼女の病は今後も進行していくが、残された時間を過していくのだと語る。
傍には優しそうな老齢の親戚が座して彼女を見守っている。歓談を終え帰路に着く探索者たち。それから数日後、彼女の魂はあかね色に染まる病室の中で魂を貪られ、物言わぬ屍となる。
それを探索者たちは知る由もない。(奥村 茜には父である奥村医師の魂の一部*POWで言えば1から2程度与えられているため、奥村医師を食らったイオドが残り香を追って顕現し、彼女の魂ごと全てを食らい尽くしたのである)
彼女の死後病室を訪れれば彼女は急に死んでしまったと伝えられる。同伴の親戚は「光の紐が！天井から！」と訳の解らないうわごとを繰り返して措置入院させられたという話を看護師から聞けるだろう。
こうした事柄を聞いた探索者は0/1d6の正気度チェックを行う。
✔クリア報酬

「少女」との生還 1d10 正気度回復
探索者が生還した 1d8 正気度回復
松永陽沙の生還 1d4 正気度回復
安藤奈津の生還 1d4 正気度回復

「イオドの書」と「カルナマゴスの遺言」を双方読む
クトゥルフ神話技能1d4
医学的見地から神話事件を読み解こうとした
探索全員 1d4+1 医学技能成長
あかね色の「おやすみなさい」 - クトゥルフ神話TRPGやろうずWiki 先頭へ

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