クトゥルフ神話TRPGやろうずWiki

島で起きた事件、それは世間に知られること無く幕を閉じた。
榊は事件後自ら警察に自首し、内密に処理をされた。
しかし、赤槻色音、白木優衣、その両名は未だに見つかっていない。
<天才>赤槻色音、<芸術家>白木優衣
世間でもかなりの知名度を誇っていた両名の失踪は様々な憶測を呼ぶ。
だが、あなた方は真相を知っていた。
『Justiz　Ritterorden』
榊が所属していたというその組織により二人は拉致されたのだ。
彼らの目的は何なのか？なぜ二人を誘拐したのか？
今のあなた達にはまだ、何も分からない。
だが、執事が残した言葉があなた方の心に一抹の不安を残す。
『暗黒たる混沌』『無貌なる者』
彼らが目的とするものはきっと、成就させてはならない物だ。
また、いつか彼らは動き出す。
その時、あなた達はどうするのか、どうすればいいのか。
その答えは出ないまま日常は過ぎていく…。
…………
………
……
…
「ああ、今回のコモーエディアはなかなか面白かった」
「『次』も僕を楽しませてくれよ？」
「ククク、アハハハハ…」
暗い闇の中、『Nicolas Jacob Rudman』そう書かれた本を持った褐色肌の男が愉快そうに笑う。
致命的なまでに何かがズレた男の哄笑は、いつまでもその空間に響いていた…。

あの島での事件の後、私は梨香と一緒に暮らしている。
…神凪梨香、私の最愛の妹であり、そして『罪の証』
みんなは私の事を励まし、梨香と一緒に過ごすという道を示してくれた。
でも、私はまだ恐れている、私が殺し、そして生み出した彼女を。
梨香は私の事を昔の様にお姉ちゃんと言って慕ってくれる、『あの時』のままの姿で。
私は…未だに心の何処かで梨香と距離を置いている。
いつか、この心に刺さった棘は消えるのだろうか、それとも…。
でも、このままでいいのだと思う。
梨香を蘇らせたのは私で、殺したのは紛れもない私なのだ。
この『罪』は私が死ぬまで背負っていかなくてはならない。
それでも今は…

「おねーちゃん！実ちゃんが来たよ、一緒に遊ぼ！」

「はーい、今行くよ〜」

…今はこの幸せな日常を謳歌したい。いつか、その罪の審判が下る日まで。

私には数年前より昔の記憶がない。
最初の記憶は曖昧だが、ただ一つ、お姉ちゃんが私を殺した事だけははっきり覚えている。
あの時の記憶が私の原点であり、始まりなのだ。
でも、だからといって私がお姉ちゃんを恨んでいるなどということは決してない。
『前の私』がどうだったのかはもう覚えていないけど、『今の私』にとってお姉ちゃんは唯一無二の存在なのだ。
きっとお姉ちゃんが私を忘れれば私は消え、お姉ちゃんが死ねば私も消える、そんな予感があるのだ。
だから私はお姉ちゃんとずっと一緒なんだ。
もう、一人でいることはない、いつもお姉ちゃんが一緒に居てくれる。
…それが結果的に何を引き起こしても、私は後悔をしない。
そう、私は…

「お姉ちゃん、実ちゃんが来たよ、一緒に遊ぼ！」

私は、お姉ちゃんの最愛の『妹』なのだから。

これは、榊宗一が牢の中で書いた手記であり、彼の意向により、何者かへと届けられた。

『暗い独房の中、私は一人考える。
…どこで私は間違えてしまったのだろうか。
「夕紀…」
初めはただ、彼女のためだけに、ただ彼女を蘇らせようとした。
…いや、これはエゴだ。彼女は人の世の理を曲げてまで蘇ろうとはしないだろう。
体は決して強い方ではなかったが、彼女の精神は私が見てきた人間の中で最も強かった。
だからこそ、私は彼女のことを求めたのだ。
ああ、本当に私はなんと弱い人間なのだろう。
サミュエル、ニコラス、彼らに乗せられ初志すら貫くことができなかった。
私はきっとこれからの人生をこの暗い独房の中で過ごすことになるだろう。
だがしかし、これは当然のことなのだ。
それは何かに縋らなければ生きてこれなかった弱い私への『罰』なのだから。
…こんな私だが、最後に一つだけ願いを口にしても許されるだろうか。

私の凶行を止めた彼ら、あの正しき心を持った若者達がこれから生きる先に幸多からん事を

榊　宗一』