2-916 無題

夕焼けの太陽の光がやたら眩しい。ここは何処だっけ?
・・・思い出した・・・確かここは病院の一室か

もう俺にはベッドから起き上がる体力も無いし、沈む夕日を見るほど目も丈夫ではない。
目を閉じて日光を感じとることが精一杯だ。
歳だけは取りたくないものだな。

俺の女房の夕美も酸素マスクを装着して同じベッドで横たわっている。
良い歳なのに、ちゃっかりと俺の手を握り締めて身体ごと密着させているし。

そう言えば小さいときから俺にベッタリだったっけ。
あの頃から互いに惹かれあっていたんだろうけど、
なかなか想いを口に出すことが出来なかった。
恋人として正式に付き合い始めたのは高校に入ってからだったな。
あの頃から新婚夫婦みたいにイチャついてきて、悪友によくからかわれた。

俺はからかわれるのが嫌だったから、
顔を真っ赤にして否定したら夕美は泣いちゃったんだよな。
それが原因でケンカして関係が稀薄になったけど、責任を感じた悪友が
パイプ役になって仲直りしてからは本当に甘々な日々だったよな?

互いの家に泊まって一晩中体を重ねたり、一緒に食事を作って食べさせっこしたり。
大学卒業と同時に結婚してから今に到るまであっという間だったぞ。

・・・わかるか?
今の俺達の周りには息子や娘にベッタリくっついてる孫、ひ孫が囲んでくれているんだぜ。

夕美
・・・先に寝ちゃったか?

全く・・・俺とくっつくと寝付きが良いのは昔から変わらないな。

もう視界が暗くなってきたけど・・・お前の名前と同じで夕焼けが綺麗だよな・・・

天国にも・・・夕焼けってあるのかな?
もし・・・もしあったら・・・二人で・・・手、繋いで・・・見に行こう・・・な・・・・・・夕美・・・
2008年11月14日(金) 01:54:17 Modified by amae_girl




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