3-358 The President's Woman 魅惑の甘えコマンドー

あ・・・ありのまま起こった事を話すぜ・・・

友人から借りたR指定のDVDを返す為に家を出て歩いていると、彼女であるリサ
(最近転校してきて付き合い始めたハーフの娘なんだが可愛すぎるんだこれが!!)
が廃ビルに入っていくのを見掛けたんで、注意しようと後を追ったら
いきなり黒いスーツにサングラスのゴツイお兄さんに捕まって、こめかみに銃を突きつけられた。

じ、自分でも何が起こったのか解らねぇ・・・治安の悪化とかそんなちゃちなもんじゃねえ
もっと恐ろしいものの輪片を味わったぜ・・・


と、まあ自分に起きた不可解な出来事を脳内で変換していると
俺を盾にした黒いスーツの男が大声を出した。

「おい嬢ちゃん!大人しく出てこねぇとこの兄ちゃんの頭に風穴が開くぜ?」

安全装置を外す音が聞こえ、拳銃が一層強く押し付けられる。
俺が銃を突きつけられてるのを確認したのからか、物陰から様子を窺っていたリサが現れた。
冷たい目で黒スーツの男を睨んむ真希を見て俺は
(ああ、クールなリサも可愛いなぁ・・・クーデレ!クーデレ!)
なんてアホなことを考え・・・てる場合じゃねえぇぇぇ!!

「リサ!出てきたらダメだ・・・逃げろ!!」
「るせぇ!てめえは黙ってろ!!へへへ、変な真似すんなよ嬢ちゃん。
大事な彼氏を死なせるわけにはいかねえだろ?」
「・・・」
暫しの沈黙の後、ようやくリサが口を開いた。
「・・・追いつめられて人質を取るなんて諜報員としては三流ね」
「んだと!?」
馬鹿にしたような発言で男が激昂して銃をリサに向けた。

「このアマ!さっきから調子乗りや、ガッ・・・!」
ほんの一瞬の出来事だったので何が起こったのか本当に解らなかった。
バチッと音がしたと思ったら男が床に突っ伏していた。白目を剥いて泡を噴いている。

「ちょっとショックを与え過ぎたかなぁ?」
リサの手には2本の電極が飛び出した小さな鍵のようなものが握られていた。

自由の身となった俺は呆然としたまま立ち尽くしていると、いつもの優しい顔になったリサが話しかけてきた。

「しゅーくーん!大丈夫〜!?怪我はない?」
「え・・・えーっと・・・何が何なのかさっぱりわからん。夢でも見てんのか俺?」

「夢なら良かったんだけど、残念ながら現実なの。
今からわけをじっくり話・・・あ、通信だ。ちょっと待ってね」

引き締まった顔になったリサはそう言うと黒い長方形の無骨な携帯電話を取りだし耳に当てた。
・・・やっぱ甘えんぼうでもクールでも可愛いよな〜


「報告。目標を確保・・・はい。目の前で気を失っています・・・
ええ、技術班にもう少し出力を押さえるようにお伝えください。死んでしまっては意味がありませんから。
・・・はい。私からは以上です。・・・実は折り入ってお願いが
・・・えっ?パパがそんな事を・・・はいっ!ありがとうございます!大統領!!」

そう言ってリサは電話を切ると俺に振り返り満面の笑みを浮かべる。
いつもの甘えんぼうなリサだ。
「今、大統領に報告したら新しい任務と休暇を兼ねてこのままで良いって!やったね♪」

「ちょっと待った」
「な〜に?」
「お前が何を言ってるのかさっぱりわからん。任務?休暇?・・・つーか大統領って???」
「しゅーくん、大統領もわからない程おバカさんだったの?・・・きゃ!」

ムシャクシャしたのでデコピンしてやった。反省はしていない。

「アホ!俺は説明しろって意味で聞いたんだ!!・・・で、これはどうゆうことなんだよ?」
「痛たたた・・・ん〜、何処から説明したら良いかな?」
「最初からだ」
「分かった!でもその前に・・・」

そう言うとリサは足をピシッと揃えると、両手を広げて動きを止めた。

「なにしてんの?」
「お仕事ガンバったで賞のご褒美としてギュ〜ってして♪」

まあリサのお陰で助かったようなもんだしな。
「あ〜はいはい」

俺は真希を力強く抱き締めると頭をワシワシ撫でた。

「えへへ・・・幸せ〜!このまま溶けちゃいたい・・・」
「溶ける前に説明な」
「はぁい」
放っておいたら本当に溶けそうなリサに説明を促す。
大雑把に言うと、彼女の話は以下のようなものである。


ウチの親父「ところで私が発明したこの新素材を見てくれ。どう思う?」

国家&悪い奴ら「凄く・・・画期的です・・・」

悪い奴ら「警備が厳重じゃなければ博士を奪えるのに・・・悔しい・・・!ビクンビクン」

国家「おっと、警備を厳重にし過ぎてしまったか。いつまでも博士に近寄れないだろう?」


―――で、代わりに俺を誘拐して親父の頭脳と新素材を脅し取る計画してるを察知した合衆国が
俺を護る為にリサを送ってきたというわけだ。

更にリサは何故自分が護衛役に抜擢されたのかも教えてくれた。

どうやら彼女の家族は先祖代々内政や外交では解決出来ない問題を秘密裏に解決する
大統領お抱えのエージェントで、本来なら彼女の父親が俺を護衛する予定だったが
腰痛で動けない為に彼女が代役になるよう命じられたらしい。


「そうだったんだ・・・」
事情を把握した俺はリサの頭を撫でながら少し不安になった。
任務を終えたのなら、リサは帰国してしまうのではないか?
俺と付き合っていたのは任務の一環だったのではないか?と。

だがすぐにそれは杞憂である事を知った。
「本当は任務が完了したから帰国しなきゃいけないんだけど・・・その・・・初めてしゅーくんに会った時から、
しゅーくんに一目惚れしちゃったし、離ればなれになりたくなかったから・・・
その事を大統領に相談しようとしたら、パパは私達が付き合っているのを知ってたみたいで、
大統領に進言してくれたみたいなの。
『まだ100%安全なわけじゃないから、休暇を兼ねてリサに引き続き護衛させてくれ』って。
大統領も『若いうちはいっぱい彼氏に甘えなさい』って快諾してくれ・・・」

「つまり、リサと別れなくて良いって事なんだよね?」
そう確認すると彼女は赤くなりながら頷いた。

「・・・」

「しゅーくん?」


「・・・イヤッタァァァァァァァ!!」
喜びを我慢出来ずに叫びながら、抱きしめたままのリサをブンブン振り回す。

「ひゃ!ちょ、ちょっとしゅーくん!!
嬉しいのは分かるけどそんなに回さないで!!目が、目が回る〜・・・」


ゴメン、少しやりすぎた。
目を回してキュ〜っとしているリサを抱えて公園へ行く。
道中、近所の奥様方にお姫さま抱っこしている所を見られてヒソヒソ話されたがキニシナイ。


公園に到着しベンチにリサを座らせる。
今のうちに何か飲み物を買ってこようと立ち上がろうとしたら、リサに腕を引っ張られベンチに尻餅をついた。

「・・・行っちゃヤダ」

「何か飲み物買いに行こうとしたんだけど・・・」

「飲み物よりしゅーくんが側にいてくれる方が良いもん」

今日一日で色々なリサを見たけど、あ〜!何でこんなに可愛いんだろうな?
わかったわかった!もうずっと側にいてやるよ!


「ねぇしゅーくん?」
「どした」

「確かに私は任務の為に来日したけど、
今はしゅーくんの事がだーい好きなんだからね!
浮気しちゃヤダよ?」

エージェント相手にそんな無謀な事はしないって。
つーか浮気する気なんか更々ないし。

「大丈夫だよ。俺はリサ一筋だから」
安心させるようにそう言って頭に手をポフッと置く。
「でも心配だなぁ・・・しゅーくん意外と学校の女の子にも人気あるし・・・そうだ!」
何か閃いたのかリサがポンと手を叩いた。
「緊急の任務で呼び戻されない為にも、しゅーくんを他の女の子に
取られない為にも、既成事実を作っちゃう?」

そう言うとリサは軽やかにベンチから飛び上がりニヤニヤしだす。

「リサ・・・既成事実ってまさか・・・」

リサは俺の腕を引っ張り走り出す
満面の笑顔で。俺の家の方向を指差しながら。

「決まってるでしょ?・・・子作りしよ・・・ね?」

ああ、可愛いなぁ〜・・・もう俺の完敗でいいです。
何人でも作ってやるさ!サッカーチームを結成出来るくらい頑張ってやるさこんちくしょう!!


「報告します・・・はい。リサは目標との接触に完全に成功しました。
今のところ順風満帆です。これでリサが身籠れば、全てが計画通りにいきます。

邪魔な他国のエージェントは情報を引き出した後、まとめて処理します。
・・・ええ、産まれた赤子は我が国の国籍になるよう仕向けます。

これで彼の父親も、新素材の応用技術も我々が独占することに。
我が国の権力は揺るぎないものになるでしょう。

リサにエージェントとしての知識を叩き込んでいた甲斐がありました。
当の本人達はなにも知らずに慈しんでいれば良いのですから。

引き続き監視を続けるために、私も日本へ。
経過報告は随時するつもりです。

ええ・・・では、失礼致します。


――――副大統領」
2008年12月07日(日) 00:28:59 Modified by amae_girl




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