3-612 停電の力

そろそろこたつを出しても良いぐらいには寒くなった11月の夜。
本日のメインディッシュ、鮭のホイル焼きを箸で突きながら真奈美が言った。
「……今日、泊まっていくから」
「ん、ああ」
別に驚くようなイベントではない。恋人同士が一晩を共にするだけのこと。
彼女の家の両親は仕事のせいで留守がちであり、俺はこのアパートに一人暮らしなので文句を行ってくる人間は誰もいないのだ。
「はっは。今日は真奈美と久しぶりにいちゃいちゃできるわけだな」
「変態」
全く動揺することなく彼女は味噌汁をすすった。
「あら、美味しい。大輝、また腕を上げたわね」
「……どうも」
俺と真奈美は、幼なじみというほどでもないが、出会って七年、付き合い出して三年になる。
一人分を自炊するのは面倒臭いけど、外食するのはお金がもったいない。真奈美はそういって俺に夕飯を作らせていた。俺はそれが嬉しかった。
料理は好きだし、確かに二人分ぐらいの量があったほうが作りやすい。材料費が折半になるのも助かる。しかし一番の理由は……
「真奈美の笑顔が見れるからだよ」
「あっそ。じゃあもっと私を幸せにさせるような料理を作ってね。明日はカレーなんか食べたいかしら」
「飯を食いながら、よく明日のメニューの話なんてできるなあ」
「いいじゃない、別に。……ご馳走様でした」
真奈美は食器を台所に運び、その足でタンスに向かった。
……あまりの頻度でお泊りになるため、そこには真奈美のパジャマやら下着やらがちゃんと用意してあった。
下着を置きっぱなしにしているのだからなんだかんだ言って俺の事を信用してくれているのだと思う。
「じゃあ、お風呂入ってくるね。食器は後で私がやるから。置いといてくれればいいから」
「はいはい……背中でも流そうか?」
「こら。とっとと食べちゃいなさいよ、まったく」
やれやれと笑って真奈美は風呂場に言ってしまう。仕方ないので食事を再開した。

さて食休み、と本を読んでいると突然、部屋の電気が消えた。
俺の住んでいる激安アパートは風呂とトイレこそ別だが、あちこちがとにかく古い。
ヒューズ式のブレーカーだからすぐ落ちるし復帰がめんどくさいんだよな〜、と様子を見に行く。が、特に異常無し。
窓の外を見るに近所はみんな停電している様子だ。雷も鳴ってないのにおかしいな。
どこかで事故でもあって電線が切れたのだろうか。なんにせよ復旧を待つしかねえか、とその時。
風呂場から何やら声が聞こえているのに気付いた。慌てて脱衣所までくると磨りガラスの向こうがわに問い掛ける。
「おい、どうした」
「ど、どうしたって、暗いじゃないの!ブレーカー?ここアンペア低いんだからコタツとテレビと洗濯機と電子レンジとアイロンは同時に使うなってあれほど……」
「違うって。近所みんな停電してるみたいだ。どっかで電線切れたか、配電所の事故だな」
「そう、なの」
弱々しい声が帰ってくる。なんとも頼りない。
「真奈美、暗いの苦手だっけ?」
からかうつもりで聞くと、突然ドアが開いた。うわ、と声をあげる間もなく裸体に抱きしめられる。
「苦手よ!苦手っていうか無理!無理!!」
「わ、わかった。わかったから離れて……」
真奈美はうう〜、と唸りつつも身体を開放してくれた。そういえばこいつ、夜寝るときも豆電球消させないしなあ。
「……服、びちょびちょになっちゃったか……俺も風呂入るかな。真奈美は、どうする?もう上がるか?」
「真っ暗な部屋に一人でいれるわけないでしょ!」
……そんな偉そうに言われても。


肌にはりつく服をなんとか脱いで風呂場に入る。僅かな月明かりにうごめく仄暗い水面は、確かに気味が悪い。
真奈美がぴったりくっついているせいで身体を洗うに洗えず、俺はすぐに湯舟に入った。彼女を後ろから抱きしめる形になった。
「……ねえ、大輝。居る?」
「いや、居るだろ。密着してるじゃん」
「う、うん……」
「……」
「……ね、ねえ、大輝?」
「なに?」
いつもの飄々(ひょうひょう)とした女性はどこへ行ったか。真奈美はか細い声で呟く。
「ちゅー……していいかな?」
クルリと腕の中で彼女が反転するのを感じる。俺は無言で唇を奪った。
「ふ……ん……ちゅ……」
顔が可愛い掌に固定され、口に舌が差し込まれる。震えるその指から、彼女の不安な心が滲んで俺に染み渡る。
「くちゅ……っは、大輝、んむぅ……んく……ふぁ…………む……」
は、激しい。いつもは真奈美はどちらかというと受け身なのだが、今日は貪るように求めてくる。
しっかり者ぶっているがやっぱり本来こいつは甘えん坊だ。身体の緊張をとかすため頭を撫でてやる。
「んちゅ、あ…………」
真奈美は一旦キスの手を休めると、俺の胸の辺りに顔を擦り付けてくる。
「ふにゃ……大輝ぃ、あったか……」
まったくこの娘は甘えさせがいがありすぎて困る。もっと愛してあげたくなったので顔をこちらに向けさせて再び口を塞ぐ。
「ふぁ、んちゅ、ちゅく、ああ、んあ……ん……」
真奈美は腕を俺の首に回し身体全体をくっつけてくる。
さすがに反応した俺自身に気付いた真奈美は、キスしながら腰をそれに擦り付けてくてくれた。
「……んふ、ん……ああ、ん……いい、これ」
お湯の中でお互いの秘部が擦れ合う感覚が気に入ったらしい。彼女はもうすっかりその気といった風だった。
「……真奈美、ここ座って」
「あ、うん……」
真奈美は俺の示した風呂桶のフチに腰掛けた。股をゆっくり開かせると、暗闇の中で性器がいやらしくぬめっていた。
「これは、お湯で濡れたの?」
聞くと真奈美ははっと息を飲んで、頬を朱く染めた、気がした。
「……たぶん、それだけじゃない、と思う……」
「じゃあ、もしかしてエッチな汁で濡れてるってことか?」
言い放ちそこに口づけする。
「ひゃ、ん…………そう、だよ……んあっ」
舌を割れ目に差し込んで溢れ出る愛液をすくいとる。指でもクリトリスを刺激してやると、真奈美の腰がビクビクと震えた。
「い、やあ……あ、あん、ふぁあ……ん」
気分が乗っているのか、はたまた暗闇への恐怖感による吊橋効果か、いつもより早く感じ入った声を出すようになった真奈美。俺は口で愛撫を続ける。
「んや……やあっ……く、ふ……うあ、ああ、あっ……いや、ベロ、良いよ!大輝、いい……ああ!」
そろそろいかせてあげたい。口を股間からはなし、代わりに小さいが形のよい胸へと移す。
「あ、やんっ、おっぱい、そんな、あ……ん……」
下ではクリトリスへの愛撫もやめていない。とどめとばかりに、割れ目の中に指を二本ほど沈めた。
「あっ!んっ、ふあ、ああ、うあ、指っ、指が、おっぱいも、あ、なんて、あ、い……」
もう限界か。中の奥の方を引っ掻くようにする。「あああっ!?いや、あ、ふぁ、ふ、ああ、ああああいいああああぁぁあぁあああ!!!」


真奈美は盛大に達した。湯舟に倒れ込みそうになるのを抱き留めてやる。
「はあ……はあっ。……大輝ぃ、私、私、おちんちんで、いきたいよぉ……」
「ああ」
優しくキスをして浴槽を出て、真奈美を風呂場の床に仰向けて寝させた。
「両足を持って、拡げてみせるんだ」
「え、あ、う、うん……」
はあはあとまだ荒い息のまま、俺の言う通りに脚を抱き抱える真奈美。刹那、突然の光量に瞳孔が悲鳴をあげる。
「う……電気直ったか……」
「そ、だね……」
「ああ。真奈美の安心そうな顔も、ぐちゃぐちゃなアソコもよく見えるよ」
「え?……あっ、あ、ああああ!??」
明るくなって突然恥ずかしくなったのか真奈美が顔を真っ赤にするが、動揺して格好はそのままだ。
「い、やぁ、見ないで……」
「でも、明るいからしょうがないだろう?」
「あ、やだ、恥ずかしい、のに…………あ、ああ、大輝っ!」
突然様子がおかしくなる。混乱して、大事なところを隠そうともしない真奈美が、必死に腰をよじる。
「だめ、だめえ、ああ、だめなの、あ、んんんっ!」
何かと思っていると、なんと……彼女はちょろちょろとおもらしを始めた。突然の恥ずかしさにお腹が緩んだのか、放尿は細く長く続く。
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ぁあぁぁあ、ぁぁ、ああ、あ……ん……や、ぁ、おもらし、しちゃった……ふぇえ……」
涙目になる真奈美に俺は正直興奮していた。泣くなよ、と瞼にキスをして囁いてやる。
「真奈美、大丈夫。可愛かったよ。……入れるからな?」
「あ……うん、入れて、はやく、きてぇ……」
たまらず一気に奥まで突き入れる。
「ひゃうううんっ!」
十分に出来上がっていた真奈美の身体はスムーズに俺を受け入れてくれる。
「ひゃあっ、あ、あふっ、んあああっ、ああ!く、ふ、あ、あん……あう、ふっああ!」
「真奈美っ」
「うんっ大輝!いいのぉ、あ、あん、やああっ」
真奈美も必死に俺を、快感を受け入れている。口角からよだれが零れていた。
「いい、よぉ、ああっ、どんどん、身体、あつくなってぇ、気持ちいいの、とまんなあああっ!」
胸も揉みしだきながら、ストロークも激しいく続ける。二人の空間が、心が卑猥な音と鈴の音のような嬌声で充たされる。
「あ、あひ、だめ、だよえぉぉ……くひぃっ、いいいい、やあああっ!
大輝っ!好きい!はあっはあっは……イッちゃうぅ!あふぁっ!エッチな音しゅごぃいぃ!そこっ、いいぃ!」
「こ、ここか?」
「ひゃあああっ!そこっ、そこイイ!!はっ、あっ、あんっ、奥、一番凄いとこ、当たってぇぇ、ほんろに、あたま、とんぢゃう!おかひくなるよぉ」
真奈美は虚ろな眼で俺を捉えると、押し付けるようにキスをしてきた。お互いに限界だった。
「真奈美っ、いくかっ?」
「うん、うんっ、イク、イクのお、イッていい?いい?」
「ああ」
真奈美の可愛い耳に口を近付けて言う。
「ぐちゃぐちゃになっていいよ」
ぞくり、という音が聞こえたようだった。
「あああ、あああん、ひゅっ、あうう、ああ、やああ、あ、ああああっ」
「真奈美!」
ついに頂点にたどり着き一番深くに打ち込んで欲望を吐き出した。
「いぐう!ひい、いあああああああいいああああああああぁぁぁいぁあああぁああああああ!!!!!」
長い絶叫が狭い風呂場に反響し、跳ね返り、お湯に吸い込まれた。俺はくたりとなる愛しい恋人を抱きしめた。
「…………あ、大輝、好、き…………」
余韻が、湯気に霞んで染み渡った。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


さて、お互いにパジャマを来てお休みタイム。
先に布団で待っていると、あれだけ乱れていたのが嘘のように凛とした女性がやってきた。
真奈美は無言で部屋の電気を消して、わざわざ俺の布団に潜り込んでくる。
真っ暗になった部屋に違和感を覚え、尋ねてみた。
「今日は豆電球も消しちゃうんだな?」
俺の問い掛けに、ややあってから真奈美は答えた。
「私ね、真っ暗な方が甘えられることに気付いたの。顔が見えないのがいいみたい」
停電パワーかなあ、と擦り寄ってきた彼女を抱きしめると、胸板に顔を埋めてくる。
「暗いのは怖いけど……頼りになる変態がいるし」
そう言って彼女は笑った、ような気がした。
2008年12月07日(日) 01:06:08 Modified by amae_girl




スマートフォン版で見る