4-115 男性恐怖症のリハビリ

いつも通りベッドでうつぶせになって、DSで犬を育てていたときだった。
「みっくんとこのまりんちゃんは、いつもかわいいねぇ。」
「姉さん、いつも僕の上に乗るのはやめてください。」
「なんで?」
横からニヤニヤと僕の顔を見てくる姉さん。この人、わかっててやるから性質が悪い。
「いつも言ってるじゃないですか。胸が当たってるんです!」
「減るもんじゃないからいいでしょ?私が好きでやってるんだから。それに、みっくんの事、好きじゃないならこんなことしないよ?」

臆面もなく、ストレートに好意を示す姉さんに、思わず照れてしまう。
「あ、みっくん照れてるんだ。かわいいなぁ〜。」
「余計なお世話です!と言うか何しに来たんですか!」
赤い顔を隠すようにそっぽ向きながら、今日の目的を聞く。

「ん〜とね、みっくんに抱いてもらおうと思って、ね。」
抱く、と言ってもやましい意味ではない。ただ抱きしめてあげるだけである。
一度勘違いして、思いっきり反論したら、
『何?お姉ちゃんにいやらしい想像してるの?みっくんはヘンタイさんねぇ。』
とニヤニヤと突っ込まれたことがあった。

「わかりました。今日はどのように、ですか?」
そう、なぜか毎回オーダーが違うのだ。
正面から頭を抱えるように、とか、横から腕枕をするように、とか。
その度に姉さんの女性らしい体に触れてしまうわけで、いつも聞かん棒の制御に一苦労するわけで。
「ん、今日はね、後ろから優しく、抱きしめて。」
「じゃあ、抱きしめますよ。」
「うん、来て。」

抱きしめるとき、姉さんはいつも震えている。
実は姉さん、4年前から極度の男性恐怖症に陥り、親族でも僕以外の人に触れられると発狂した後、気絶してしまう。
自分から触れる分には問題がないのだが、相手から触れられるとダメらしい。
それを克服するために、こういうことをしている。唯一、拒絶反応が少ないの僕で、リハビリを行っているのだ。

ゆっくりと姉さんを抱きしめる。その時、腕や手が胸に当たらないように気をつける。
一度誤って当たってしまったときは、大変だった。全治3週間の怪我を負ったくらいだ。
「ん……」
姉さんがびくっと震える。頭を撫でてあげると、幾分か安心するらしい。
「ん…ふぅ…」
姉さんの震えが少しずつ治まっていく。少しほっとする。
「姉さん、どうですか?」
「…」
「姉さん?」
「…すぅ…すぅ…」
どうやら撫でられて安心したのか、眠りについてしまったらしい。
あまりに寝つきのいい姉さんに、少し苦笑する。

開きっぱなしで構ってあげられなかったDSの蓋を閉じ、姉さんに毛布をかける。
携帯のアラームを1時間後にセットし、再び姉さんを後ろから抱きしめ、僕も少し眠りにつこう。
そう思い、僕は目を閉じた。
2009年01月16日(金) 22:14:58 Modified by amae_girl




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