5-472 無題

「全く信じられんな」
パソコンの画面を見ながら俺は呟いた。
ネットである大型掲示板サイトを覗いていたのだが、これがまたけしからん。
内容は甘えん坊な女の子が甘えてくるとかいうシチュエーションを住人が投稿すると言ったものだ。
精霊だとか悪魔だとか猫だとかが可愛い女の子になって甘えてきたらどんなに良い事か!
しかし現実は甘くない。
こんな非現実な事なんか起こる訳が無いのだ。だから俺は憤慨している訳で。
「ねーねーお兄ちゃん。美味しいケーキのお店のサイトとかないの?」
ふと俺の膝に座っている物体、我が妹がつまらなそうに画面を見つつ俺に訴えかけてきた。
「なんだ?そんなの見ても面白くないだろ。だから見ない」
「見たいったら見たいの!お兄ちゃんの意地悪ぅ」
膝の上で暴れられてはたまったものじゃない。妹がバランスを崩して倒れないように支えるのが大変だ。
仕方がないので、家の近くで美味しいケーキの店がないか検索してみる。
「ありがとうお兄ちゃん!」
妹は嬉しかったのか、ギュムーと強く抱き締められて胸板に頭をすりすりしてきた。
く、苦しい。くすぐったい。
「こら、操作しにくいだろ。大人しくしてろ」
「は〜い」
すりすりはやめてくれたものの、ギュムーはやめてくれなかった。まあ力を弱めてくれたお陰で苦しさから解放はされたが。
「お、ここなんかどうだ?美味そうなケーキが沢山あるし、家から遠くないぞ」
「わぁ本当だ!ねえお兄ちゃん、今から行こうよ!」
今からか!とツッコミを入れたいとこだが、妹のきらめく瞳を見ては断れない。
「分かった分かった。だけど給料日前で持ち合わせ少ないからあまり頼むなよ?」
「私はお兄ちゃんがあーんして食べさせてくれるだけで嬉しいの♪」
その一言に安心した。それじゃあ早速準備しないとな。
「お兄ちゃん大好き〜」
「ああ、俺も好きだよ」
しかしさっきのサイトは実に腹立たしい。あんな状況になってみたいっつーの。
「お兄ちゃん早く早く!」
妹に急かされ、俺達は手を繋いで家を後にした。ケーキの精霊でも現れねーかなー。
 
健康を考えて微糖でお許しを。
2009年06月19日(金) 21:07:37 Modified by amae_girl




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