5-483 無題

「うへー、酷い目にあった」
さっき妹とケーキ屋に行ったんだが、その帰りにどこの誰か分からない奴等に襲撃された。
一発殴る奴、二、三発殴る奴。何故か砂糖を俺にぶつけてきた奴もいた。
「俺が何をしたっていうんだよー…」
殴られて頭や頬は痛いわ、体中が砂糖まみれだわ、ツイてない全く!
これも何もかもケーキの精霊が現われて甘い日常をプレゼントしてくれないのが悪い!
…有り得ない事に怒りの矛先をぶつけても空しいだけだな…。
「大丈夫お兄ちゃん?痛いの痛いの飛んでけー」
我が妹が必死に背伸びして俺の頭を魔法の言葉混じりに撫でてくれた。
うん、痛みが少し引いた気がする。
「お兄ちゃんちょっと屈んでくれる?」
「ん?こうか?」
「うん、そう!こっちも痛いの痛いの飛んでけー」
頭の次は頬だ。しかしそれは手で撫でるのではなく、俺の頬に自分の頬をスリスリさせるというものだった。
あー、さすがに頬同士じゃ届かないもんな。納得。
「あ、お兄ちゃんほっぺたにも砂糖ついてるよ?取ってあげるね♪ちゅっ」
妹は俺の頬についた砂糖をペロペロと舐め取ってくれているようだ。なんて気が利く妹だ!
妹に感心していると俺達の家に着いた。
畜生!ケーキの精霊が駄目ならパソコンの精霊が待っているに違いない!
期待に胸膨らませ俺の部屋のドアを勢いよく開けたが…勿論誰もいない。
「あーあ、そりゃいる訳ねぇよなー」
するとガックリ肩を落とす俺の顔を見た妹が、何かに気付いたようだった。
「あ、お兄ちゃんの唇にも砂糖ついてる。これも取っちゃうね!」
「え?あー、頼む…」
「うん、任せて!ちゅ…れろ、むちゅ」
(あーあ、この砂糖みたいに甘い日常生活なんて送りてぇなぁ…無理だろうけど)
唇に付いた砂糖を舐め取ってくれる妹の頭を撫でながら俺は非現実な世界をまた夢見るのだった。
 
2009年06月19日(金) 21:09:03 Modified by amae_girl




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