5-503 気持ち伝えて 前編


目覚ましの音で目を覚ました俺は、例によってベッドの中に入り込み、俺の腕にしがみ付いている小動物を見つけて嘆息する。
「はぁ、またか・・・おい、起きんかコラ」
「んー、あと5ふん〜むにゃむにゃ・・・」
「起こしにきたお前が眠っててどーすんだ!いいから起きやがれ美夜子!」

俺はこの小動物──隣の家に住む俺の幼馴染の美夜子の肩をがくがくと揺さぶる。
「んーとね、頭なでなでか、ぎゅーってするか、ちゅーしてくれたら起きるかも」
「甘えんな、起きろ」
「むー、最近りっくんが全然優しくないかもー」
「その呼び方を辞めろと何度言わせる気だ?名前で良一って呼べって言ってるだろ」
「りっくんはりっくんだもん。りっくんこそ、昔みたいにみっちゃんって呼んでよー」
「幼稚園時代の呼び方を高校生になって使えるワケがねーだろ。いいからベッドから降りろ」

口でぶーぶーと言いながら、渋々と離れる美夜子。
だが、ベッドから出た美夜子の姿を見て、俺は眼を見開く。
「ちょっ、おま!なんで下着姿なんだ!?」
「えー、だってせっかくりっくんと一緒のお布団に入るんだから、素肌が多く当たってた方が人肌で暖かいと思って」
「馬鹿言ってないでとっとと脱ぎ捨てた服を着ろ!俺は外に出てるから!」


慌てて自室の外に出て扉を閉める。
その扉に背を預け、ずるずると床に座り込む。
「ったく、あいつには羞恥心ってものがないのかよ・・・童顔で背が低めなのに、無駄に発育(特に胸の)は良いんだから警戒しろっての」

ようやく少しは落ち着いたかと思ったが、やっぱりあいつは俺に静かな時間はくれないらしい。
「ふ、ふえ〜、服が頭のとこで引っかかっちゃったよ〜。りっくん助けて〜!」
「あーもう!んっとに!」

そんなこんなで俺と美夜子の、(悲しいが)いつも通りの日常は慌ただしく過ぎていくのであった。
2009年06月19日(金) 21:28:32 Modified by amae_girl




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