Wiki for Amateur Satellite Newcomers

VO-52に挑戦しよう!

 使いやすくて人気があったVO-52は残念ながら2014年7月機能停止となりました。本Wikiで紹介されているテクニックはもちろん他の/将来のSSB/CW衛星でも応用できますので、参考にご覧下さい。 

 VO-52(HAMSAT)は、AMSAT-INDIAにより2005年に打ち上げられた衛星です。

 VO-52などのCW/SSB衛星には、当然のことながらCW/SSBが同時送受信できる無線機が必要です。現行機であればIC-911、TS-790、中古でIC-910、FT-847、IC-821、FT-736などを入手されると良いでしょう。送受信が別の無線機でも問題ありません。VO-52では、「送信はFT-817(単体)、受信はTH-F7の広帯域SSB/CW受信機能」でもOKという実績もあります。

 VO-52の運用周波数は以下の通りです。
Uplink(地球から衛星へ)435.225〜435.275MHz LSB/CW
Downlink(衛星から地球へ)145.925〜145.875MHz USB/CW

 FM衛星とは違い、VO-52は搭載された中継器(トランスポンダ)で地球からの435.225〜435.275MHzの50kHz幅を、145.925〜145.875MHzに変換、しかも反転させて地球に向けて送信してきます。FM衛星は使えるのは1波だけでしたが、CW/SSB衛星では、多くの局が同時に交信できます。SSBの場合は、必ずLSBでアップします。

 VO-52はインド製とオランダ製の2つのトランスポンダを搭載し、どちらか一方がアクティブになっています。両者を判別するにはビーコンで行いますが、どちらも変換する周波数は同じです。
インド製トランスポンダのビーコン145.940MHz 連続キャリア
オランダ製トランスポンダのビーコン145.860MHz 毎分約60字のCWメッセージ(若干ダウンリンク弱い?)

■受信に挑戦


 休日には多くの局が運用しており、衛星からの信号は容易に見つけることができます。Step1に従って衛星の通過時刻を確認し、145.875〜145.925MHzをワッチしてみましょう。

 モービルホイップやグラウンドプレーンなどでも受信できます。運用する時だけアンテナを仮設したい、あるいは、屋外の広々とした場所で受信したい場合は、移動運用の方法が参考になります。

 ドップラーシフトによって周波数が次第に上がること、周辺の地形や障害物により衛星が見える範囲に限りがあること、指向性アンテナでは衛星の動きに合わせてアンテナを回転させると信号強度が変わること、などが分かります。

■運用上の注意


 まず衛星の飛んでくる方向に向け、LSB/CWで送信してみます。(※SSBは、必ずLSBでアップします。出力を過度に上げないこと。)CWの場合、短点の連打、LSBの場合はコールサインを言わないで「テストーー」や「アーー」の連呼は、マナー違反なので慎みましょう。自分の出した電波が、衛星のダウンリンクで聞こえましたか?これをループテストといいます。ダウンリンクの周波数は、下記の図を参考にしてください。

 ループテストのできない局は、衛星にこちらの電波が届いていないか、ダウリンクの受信周波数を間違えて聞いているか、受信系が貧弱か、が考えられます。ループテストができないと、衛星通信はできませんよ!

 初心者の方の中には、「自分のダウンリンクの信号が良く聞こえないから、FM衛星みたいにMaxパワーで送信してみたんだけど・・・」なんて話もよくあります。これは大きな誤解で、CW/SSB衛星では、衛星が強い信号にさらされAGC(自動利得制御装置)がかかってしまうと、ダウンリンクの信号全体が極端に弱くなってしまいます。自分の返り信号はおろか、その際行われている他人の交信にまで迷惑を与えてしまいます。CW/SSB衛星では、必要最小限のパワーで運用 (ビーコンより自分のダウンリンクが弱くなるように)してください。VO-52のダウンリンクは、同じCW/SSB衛星のFO-29(ふじ3号)よりもはるかに強力なので、CWでの運用であれば、出力10W+仰角固定の5エレ八木程度でもVO-52では十分に衛星通信が楽しめます。

 また、「自分の返り信号がよく聞こえないときは、送信出力にたよらず、まず受信系を改善してみる」ことが何より重要です。GPアンテナでやっている局は、八木系のビームアンテナにグレードアップしてみましょう! CQは良く聞こえているのに、みんなで呼べど叫べど、CQの連続の局も最近目立ちますよ!(GPを使っている局に多い)

 「みんなが迷惑しないように、個人個人のスキルアップ」をお願いします。

 「小さな出力、優れた耳」、これが理想のサテライターです。現状に満足せず、受信能力の向上に努めましょう。

 その他、ループテストに失敗する原因として、無線機の周波数表示の誤差があります。校正を行っていない無線機では、430MHz帯で5kHz程の周波数誤差もあり得ます。FMでは問題が無くても、SSB/CWでこれだけの誤差があると、ダウンリンク信号を探すことが困難になります。

 それ以外のよくある失敗は、次のようなものです。
・サブ(受信側)バンドの音量がゼロになっていた。またはSSB/CWでスケルチがONになっていた。
・周波数を145MHz台ではなく、144MHz台に設定していた
・送信側のコネクタが外れていた(受信は出来るので気付きにくい)
・西と東を間違えていた(上空を眺めているうちに方向感覚が狂ってしまう)

■CWの運用


 CWで相手局を呼ぶ場合、相手局のダウンリンク周波数(ドップラーシフトで常に変化する)から、自局のアップリンク周波数を計算する必要があります。初心者にとって、この操作を手動で行うには、相当な慣れを必要とします(周波数をPCで制御して自動的に合わせる方法は、ここでは触れません)。

 そこで、CWの運用に慣れた方ならば、相手局を呼びに回るよりも、送信固定でCQを出す方が容易に交信できます。送信周波数と受信周波数の関係をあらかじめ把握しておき、自局のダウンリンクを聞きながら受信周波数を調整します。すると相手局が自局の周波数に合わせて呼んできます。CQを出す時にはメモリーキーヤーを使うと、周波数調整(とアンテナ調整)に専念できて便利です。

 注意することは、自局が送信しない限り、相手局は周波数を合わせることができないため、交信を「E E」で終わらせることは衛星では意味がありません。交信が終わったら、次に呼んでくる局のために、そのまま自局のコールサインを打ってCQを続けます。誰が送信しているかを明らかにするためにも、1QSOに1回は自局のコールサインを打つことが望ましいです。無用な混乱が起こらず、交信が効率的に進みます。

※HFのCWではナローフィルタは必需品でしょうが、衛星ではCWの交信でも受信時に「ナローフィルタ」は使用しないで下さい。衛星ではぴったりゼロインできなくて、多少の「ずれ」があるものです。受信モードは、フィルタを内蔵していないSSBモードで、自局のループの信号の上下も必ず受信しましょう。あなたを必死に呼んでいる局がいるかもしれませんよ。

■SSBの運用


 基本はCWと同じです。SSBでは周波数をより正確に合わせる必要があり、CWよりも高い受信能力を必要とします。FM衛星と同様、ハウリング防止のためのヘッドホンが必需品です。

 移動局の中には、CWでの応答が途切れた後、SSBに切り替えてCQを出す局もいます。

■「送信固定」か?「受信固定」か?


 衛星は宇宙空間を高速で移動しているため、地球上からみると周波数のドプラシフトが生じます。このため衛星から送信される周波数は、刻々と変化します。(衛星からみれば、私達の送信する電波の周波数も刻々変化しています。)これが地上波通信にはない、衛星通信の「醍醐味」でもあり、同時に初心者に「敷居」を感じさせる原因にもなっています。

ドプラシフトのある交信を容易にするためには
・地球側の私達が「送信周波数を固定」し、衛星からのドプラシフトを伴う電波の受信に専念する。
・衛星からの送信周波数が一定(=「受信周波数を固定」)になるように私達が「送信周波数を変える」
のうちどちらかが必要になります。地球上のみんなが同じ条件で運用すれば、重なりあうことはないのですが、「送信固定」「受信固定」が混在して運用すると、互いに混信を生じて支障を来たす恐れがあります。

「送信固定」「受信固定」、どちらも一長一短があり、明文化されたルールもありません。昔の衛星通信では「受信固定」でやっていたようですが、「受信固定」のために送信周波数を変えるもどかしさは、いざやってみると、すごくつらくて、私には「敷居」どころか、立派に「壁」でした。ならば「送信固定」ならどうでしょうか?
・「送信を固定し、受信を動かす」方が初心者には楽なのではないか?→通常の地上波の交信は送信固定で行われている。CWであれば送信はメモリキーヤに任せられるので、受信に専念できる。
・もしCWで599/599スタイルのQSOを目標とするのであれば、短時間で交信は終了し、周波数のずれは大きな問題とならない。
・受信固定では「相手が話している間には周波数を合わせられない」ので初心者には不向き。
・「固定した送信周波数」をCQ時にアナウンスすれば、より交信しやすくなる。
・「送信を固定すれば、近くで運用するFMトラッカーとの混信を避けられる」→送信を移動すると、違法トラッカー達のお仲間交信に思わぬ混信を与えてしまう危険性もあり、社会的理念の欠如している彼らから無用・理不尽なトラブルを受ける可能性もある。

ということで、昔からの衛星運用をされている方には「受信固定」というポリシーの方も少なからずいらっしゃるのは十分承知しておりますが、なるべく壁を低く初心者向けという観点から、このWikiでは、短時間の交信であれば「送信固定」を推奨したいと思います!初心者の方は、ループテストに成功したら、どんどん送信固定でCQを出してみてください。慣れた局は貴方にぴったり合わせて呼んでくるはずです。

■アップリンク周波数とダウンリンク周波数の関係

JH1EKH/7作成のチャートを掲載します。(TNX JH1EKH/7) 参考にされてください。


このページへのコメント


ダウンリンク周波数帯をワッチされていると気付かれると思いますが、過大な出力かつ連続短点でループテストをおこなっている局が少なくありません。ただこのような行為は、AGCをかけたり、他局のQSOを妨げたりと、他の衛星通信愛好者に迷惑をかける行為となりますので、厳に慎むべきだと思っております

#こういう局に限ってアリゲーターなケースが多いhi

今後ともどうぞよろしくお願いいたします
de JK2XXK/JI2ZLX

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Posted by きこり@JH最大の難所 2013年12月28日(土) 07:27:13
http://yamaoku.seesaa.net/
返信

JJ5JKGさん、こんにちは。先ほどはVO-52経由でのQSO、ありがとうございました

お尋ねの件ですが、試験電波で送出する電文はその通りです。ただ低軌道衛星は可視範囲にある時間帯が長くて10数分程度のため、私はゆっくり目のCW(先ほどJKGさんが打電されていたぐらいの速度)で自局コールサインのみを打電しループテストをしています。なおFO-29やVO-52では、短点を1〜2度打てばループがほぼ取れることから、それで済ますこともあります(続く)

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Posted by きこり@JH最大の難所 2013年12月28日(土) 07:26:01
http://yamaoku.seesaa.net/
返信

はじめまして。
こんにちは。
JJ5JKG ハマダと申します。

アマチュア無線初心者で最近アマチュア衛星通信に興味が湧き、このブログを参考にさせて頂いております。これまで、色々なアマチュア衛星からのビーコンやQSOを受信することができ、是非次回は自分もQSOをチャレンジしてみたいと思っています。

そこで、まず、CW/SSBモードの衛星でCWでループテストを試してみたいとおもうのですが、質問がございます。
ループテストで送信する電文は、電波法運用規則第39条に規定する試験電波の発射手順、EX(3回)+DE(1回)+自局のコールサイン(3回以下)+VVV(連続)の繰り返しでいいものでしょうか?他になにか付加する必要とか(サテライトとか?)、まったく違う手順でしょうか?

恐れいります。
是非、ご指導いただけますようお願いいたします。

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Posted by JJ5JKG 2013年12月10日(火) 07:59:28
http://jj5jkg.cocolog-nifty.com/
返信

早速のご丁寧なご回答ありがとうございます。
とても参考になります。
「衛星通信」には(アナログ、デジタルとも)非常に興味があるので、今後ともよろしくお願い致します。
今日は、秋葉原に行ってみようと思います♪

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Posted by 小波 2005年11月03日(木) 08:05:55 返信

ご質問ありがとうございます。

■SSB/CWを受信できて、簡便に安価でかつ携帯性に優れているものは、TH-F7、VR-500、IC-R20などでしょう。ただこれらは「受信するだけ」で、SSB/CWの送信はできません。

■衛星はどうしてもドプラ効果を避けて通れないので、いきなりCWを受信といってもやや壁が高いかもしれません。HFのCWの交信を聞いて、耳を鍛えておくのがよいでしょう。(巷間で評判の良いSSB/CWを受信できる「愛好者3号」など;1万円以下で購入できると思います)

■このWikiは、「衛星通信を行う」ことが目標ですので、(トランスポンダを搭載していない)Cubesatの受信法については、現在このWikiで取り上げる予定はありません。Cubesatについては、詳しく説明をされているサイトもございますので、そちらをご覧下さい。

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Posted by amateursatellites(管理人) 2005年11月02日(水) 20:57:52 返信

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