2chエロパロ板の「井上堅二 バカとテストと召喚獣でエロパロ」の作品をまとめたサイトです。

何してんのよ、あのバカ。
木下優子はソファーで寝そべりながら溜息をついた。
弟の秀吉が帰ってこない。時計はすでに午後八時を回っている。
秀吉からは、演劇部の練習で帰りが遅れる、とメールがきたっきりだ。
こちらからメールを送ったが、返答は返ってこない。電源でも切っているのだろうか。
この時間ならすでに部活動も終わっているはずだし、何より学校が空いていない。
文月学園は世界でも最新の設備がある学校なので、校舎内のセキュリティは相当のものだ。(補習室は別だが)
遅く残れるはずもない。どこかで油でも売っているのだろうか。
部活に行くと言ったからには、例の悪友達と遊んでいるわけでもないだろう。それならまずメールだって来るだろうし。
――まあいいか。帰ってきたらお仕置きしてやるから。
優子は深く考えず、お風呂に入るべく立ち上がった。


――目が覚めたら、そこは薄暗い倉庫の中だった。

(ここは一体……?)
秀吉は状況をつかめずにいた。ぼんやりしていて頭がうまく働かない。
なぜこんなところにいるのだろうか。自分は確か、演劇部の練習を終えて帰宅するところだったはずなのだ。
「……っつぅ……!」
起き上がろうとして、秀吉は身体に走る激痛を感じた。再度目を開けて自分の身体を見て、驚愕した。
「な、なんじゃこれは!?」
足と手首にガムテープがガッチリと縛られている。
「おお、やっと気付いたようだな」
暗闇から男が三人ほど現れた。最初からそこにいたのだろうか。
「今頃かよ、俺もう爆発寸前よ?どうしてくれんだよこれ」
「寝てる隙にヤッちまえばよかったんじゃね?」
「バカが、起きてる時じゃねえと興奮しねえだろ。反応しないとか人形とでもやってろって」
「ああ、すまんすまん。お前の拘りに文句言っちまって」
下卑た笑い声を上げながら秀吉の肢体をじろじろと見る。秀吉の中で不快感が高まっていく。
「なんじゃお主らは!?何のつもりでワシにこんなことを!?」
秀吉は怯えを含みながら声を上げた。
三人とも見たことない連中だった。制服はYシャツだけだが、明らかに文月学園の物ではない。
――ワシは誰かの恨みを買うような真似をしたのか……?
「まあそうだね。一応自己紹介しとこうか、秀吉ちゃん」
「……!なぜワシの名前を!?」
「いや、ただ単に学生証明書見せてもらっただけだよ。俺のことはAって呼んでね」
Aが笑顔でそう言った。秀吉は背中から汗が噴き出た。表情には出さないが、違和感が強くなっていくのを感じた。
「そっちのは右からB、Cだよ。早い話、俺達は通りすがりの学生さ」
秀吉の顔が恐怖に引き攣った。
刹那、秀吉の顔が持ち上がった。Aに髪を引っ張られたからだ。
「まあ今晩だけだけどさ、よろしくね秀吉ちゃん」
「お、お主ら正気か!?ワシは男じゃぞ!?」
「え?マジ?」
するとAは片腕を秀吉の股間に突っ込んだ。
「ひゃうんんん!?」
秀吉が非常に艶めかしい嬌声を上げる。Aはそのままズボンの中に手を突っ込む。
「や……やめんかぁ……ぁぁん!」
「お、ホントだ。確かにある。……ちっさいけど。男装少女ってわけじゃなかったんだな」
AがBとCと顔を合わせる。
「おいどーするよ、これ」
「よくね?別に付き合うわけじゃないし、つーか顔さえよかったら何でもいいし」
「お前ホント雑食だな。まあ妊娠騒ぎとかがないからかえっていいかもしれないな」
「おいA、そこまでやりまくるのはお前だけだ。もうニダースくらい妊娠させただろ」
「しかも全員足蹴にしやがったし。あれは惨かったな。何人自殺したっけ」
「ははっ、おいしく頂きましたってか」
秀吉はそんな会話を遮断したくて耳を塞ごうとしたが、縛られてるのでできない。
「まあそんなわけで結論出ました。さあ秀吉ちゃん」
Aは立ち上がり、
「舐めろ」
ズボンを下ろして、黒光りするペ○スを秀吉の顔の前に突き付けた。

秀吉はそれを見て、恐怖と嫌悪と不快感の混じったような感情を抱いた。
「い、嫌じゃ!」
「え〜」
秀吉の言葉にAがわざとらしく惚けた声を上げた。
「そんな汚い物、誰が――」
そこで秀吉の言葉は途切れた。Aが秀吉に対して拳を振るったからだ。
「おおきた、早速かよ」
「さっすがA、ドサドだな」
BとCがケラケラ笑っている。そんな声も秀吉には遠く感じる。
「ゴホゴホッゲホッ」
痛い。
せき込む秀吉の思考には、理不尽な暴力に対する恐怖だけだった。
いつも姉の優子に極められている関節技とかとは違う。いつもの“手加減された暴力”とは違う。
本当の殺意。命が天秤にかかった殺す気の暴力。
Aが近寄ってきた。今度は髪ではなく胸倉を掴まれた。
「……ひっ」
Aの顔を真正面から見た秀吉の口から情けない悲鳴が漏れた。
「秀吉ちゃん、酷いなぁ。僕傷ついちゃったぁ」
惚けたような口調で話すAの顔には表情が一切ない。暗に“次はどうなるか、わかってるな?”と言っているみたいだった。
「おいA、顔はやめろって。やるなら服で見えないところにしろよ。萎えるだろうが」
「悪い悪い」
ちっとも悪びれた様子もなく、Aは秀吉にペニ○を突き付けた。
「……二度も言わせるなよ?」
「うぅ……」
嫌だ、殴られたくない、でもこんなものを咥えたくない……秀吉が葛藤しているとAが動いた。
「ああもう、おっせぇな。ふん!」
「!!むぐぅう!!!??」
髪を掴まれたと思ったら、一気に口の中に○ニスを突っ込まれた。
苦しくなってすぐにでもはきだそうとするが、髪を掴まれて固定されたAの手が動かない。
「やっべぇ、秀吉ちゃんの口マ○コすっげえ気持ちいい!今までやった女の中で一番いい!」
あろうことかAは秀吉の口に○ニスを突っ込んだままピストン運動を始めた。秀吉はしゃべることもできずに犯された。
「ンンンンンン(喉が壊れる!)!」
「やべ、もう出す、秀吉ちゃん!!」
「ンンンンンン(やめろ、やめろーー!!)!!!!!」
秀吉の口の中に熱い粘ついた醜悪な欲望の塊が溢れた。
「げほぉっごほごほっ!」
瞳に涙をいっぱい浮かべながら嘔吐した。苦くて粘々した真っ白の精液が床に飛び散る。
「おい、お前にしては出すの早すぎじゃね?」
「最高だったぜ。顔もすげぇ可愛いし最高だったわ。これ一週間もヤるの我慢した甲斐があったぜ。お前もやれば?」
「もちよ」
今度はBがズボンを下ろし始めた。未だに嘔吐する秀吉にAが近づき、
ドゴッ!
「ぐうぅっ!!」
秀吉の脇腹を蹴りあげた。秀吉の身体が痙攣するかのように細かく震える。
「おい、誰が吐いていいって言った。ちゃんと俺のザーメン全部飲めよ。ま、最初だから罰はこれだけね」
そして今度はBが○ニスを出した。
「じゃあ今度は俺のを奉仕してね、秀吉ちゃん」
涙をいっぱい浮かべ、暴力の恐怖に震えながら、秀吉は抵抗もせずにペニ○を口に運ぶ。
(こんな、こんな汚いものを……)
「おいこら!もっとちゃんと舌を使えよ!」
Bが秀吉を蹴りつける。秀吉は涙を流しながら咥え続ける。
「ン、ンブゥ、ンン〜(嫌じゃ、こんな汚い物を……)」
苦しそうに呻き声を上げる秀吉を余所に、Cが立ち上がる。
「んじゃ俺暇だし、後ろ貰っていい?」
そう言ったCは秀吉のズボンを一気に下ろした。目の前のペ○スに注意が言っていた秀吉は突然腰が涼しくなったのに驚いた。
「ンンブゥ!?」
「おっもうぐちょぐちょに濡れてんじゃん」
「ンン!」

Cが秀吉の中に人差し指をいれて、掻きまわした。秀吉は未知の感覚に思わず声を上げようとした。
「ってぇ!てめぇ歯ぁたてんじゃねえよ!」
Bが怒って秀吉の脇腹を蹴り付けた。秀吉が激痛に耐えるように身体を丸くする。
うずくまっている秀吉に構わずBは髪を掴んで起こした。
「ほら、さっさと咥えろ。次歯を立てたら殺すぞ?」
そういいながらも強引に咥えさせた。秀吉は恐怖の余り抵抗する気もなくなっていた。
後ろでCが秀吉の中に四本の指を入れてかき混ぜている。
「たまんね〜。俺もう限界だわ」
Cは指を抜き取り、○ニスを秀吉の中に突っ込んだ。
「ンンっ!?ンン〜ンヴ、ググ、ンンー!」
秀吉は指とは比べ物にならないほどの熱くて太い物が身体の中に入ってくるのを感じてパニックになりかけた。
「ああこれくそ気持ちいー!こんな可愛い顔した娘が俺のチン○咥えてるっていうだけで興奮するわ!
 これマジたまんねーよ!」
「ンンンン!!ンブンーー!」
Bは秀吉の顔を掴みながら激しく腰を振る。秀吉は口がふさがっている為に声も上げられない。
「秀吉ちゃんの中マジで気持ちい―!秀吉ちゃんマジ男じゃねえだろこれ!柔らかくてあったけー!
 きゅうきゅう締め付けてきてホントやべえよ!今までの女とか全然比べ物にならねえだろこの締め付け!」
Cも秀吉の腰を掴んで後ろからガンガン腰を叩きつける。秀吉は悲鳴を上げたくても上げられない。
腰の動きが段々激しくなっていく男二人。それを一身に浴びる秀吉歯身体に感じる苦痛に必死の思いでこらえていた。
「やっべそろそろ限界」
「うっ出るっ」
「ンンンンブゥ!!ブブゥ!!」
男二人が同時に秀吉の中で果てた。二人の欲望に満ちた白くて熱い液体が秀吉のなかに注ぎ込まれる。
――おい、誰が吐いていいって言った。ちゃんと俺のザーメン全部飲めよ。ま、最初だから罰はこれだけね。
気持ち悪さに思いっきりはきだそうとした秀吉の中で、さっきAから言われた言葉を思い出した。
同時に脇腹の痛みもよみがえってきた。ペニ○を咥えている状態では脇腹の状態を見ることもできない。
最初だからこれだけ、と言われたから今度はもっとひどい目に……
そう思うと恐怖で身体の震えが止まらなくなった。
秀吉は必死の思いで口の中に解き放たれた白くて熱い精液を呑みこんだ。
粘々していてとても苦い、とても人が飲むものとは思えないそれを、秀吉は気持ち悪さをおして吐きそうになりながらも、
こぼさないように飲み干した。頭がグラグラし、今にも失神しそうだった。
「……ンップ……ウゥ」
秀吉はようやく解放された身体を起こし、身体の殴られた部分を見た。
内出血しているせいか、部分的に青くなっていた。触ってみるとわずかに膨らんでいる。
「……痛い」
ようやくはきだせた言葉がそれだった。
身体の所々に粘々した白くてまだ体温ぐらいの熱を持っている液体が気持ち悪い。
それでも自我を保ちながら、秀吉は男達に向かって声をあげた。
「お、お主ら……こんなことをして……!?」
途端、秀吉の身体に奇妙な感覚が迸った。秀吉は腕で身体を抱えるように倒れ込んだ。
――な、なんじゃ……!この熱いのは……!?ワシの身体はどうしてしまったのじゃ……!?
身体に高温の熱が溢れ出るかのように身体が熱くなっていく。段々呼吸も激しくなっていった。
「おっそろそろ薬が効いてきた頃か」
Aが不吉なことを言った。


午後十時半――
「ちょっと……何で出ないのよ……!」
木下優子は焦燥も露わにして一心不乱で携帯電話をかける。
午後十時を過ぎても連絡一つ寄越さない弟に対して苛立ちを感じた優子が、秀吉に着信をかけた。しかしでてこない。
いくらなんでもこんな時間になって帰ってこないどころか連絡すらないのは初めてなので、段々不吉な予感が湧いてくる。
それを否定するように三十分秀吉にずっと連絡を送っているのだが、一度も出てこない。
「秀吉の友達なら何か知っているのかも……」
優子自身そんなのはわずかな希望だと思っている。部活で帰る時間が分かれているのだ、知っている可能性は低い。
だが、なにもしないよりは有意義だ、そう判断した優子は携帯に連絡しようとして、気がついた。
――私、アイツらの番号知らないじゃん!!
断念しかけた優子だったが、連絡手段がある事を思い出したので、急いである人物にかけた。
「代表、今暇?ちょっと聞きたいことがあるんだけど――」


坂本雄二宅――
「お、お前は、なんで人の寝込みを襲いかかってくるんだ!?」
「……雄二、私早くしょうゆの顔が見たい」
「何血迷ったことを言ってるんだ!?」
「……大丈夫、雄二は寝ていてくれるだけでいいから。後は私に全部任せてくれるだけでいい」
「お前に任せたら、人生の墓場まで超特急になるだろうが!!」
坂本雄二と霧島翔子が、蒲団の上で格闘していた。
「……雄二、少し大人しくしてて」バチバチ
「とか言いながらスタンガン出すんじゃねえ!誰か、誰か助けてくれェ!!」
prrrrr!
雄二の願いが通ったのか、翔子の脱いである上着のポケットの中から携帯の着信音が鳴り響いた。
「…………おい翔子、携帯なってるぞ。早くとれよ」
「……うん」
翔子が不服そうに上着をゴソゴソと探り、携帯を取り出した。
「はい」
『代表、今暇?ちょっと聞きたいことがあるんだけど』
「……優子?」
携帯の相手は秀吉の姉か、と雄二は一人ごちる。
「……何か用?」
『代表ならFクラスの坂本君の携帯の番号を知ってるはずよね。教えてくれない?』
「……だめ、雄二が浮気するのは許さない。元から断たなきゃ」
『別に代表の彼氏を盗るつもりはないわよ。それよりも緊急事態なの、お願い』
「……番号教えるのはダメだけど、今雄二がいるから代われる、それでいい?」
『え!?そこに坂本君がいるの!?』
翔子は携帯から顔を離して、携帯を雄二に渡した。
「……はい雄二」
「木下姉が、俺に何の用だ?」
「……愛の告白なら断って。自分には未来を共にする妻がいるって」
「いねえよ!ていうか木下姉が俺に告白とか有り得ねえだろ……」
溜息をついた雄二が携帯を手に取った。
「もしもし、坂本だ」
『……あんた、こんな夜遅くに代表の家で何やってんのよ』
「ここは俺の家だ!あいつが俺の家に忍び込んできたんだ!俺が襲ってるような言い方はやめろ!」
『まあそんな事情は今はどうでもいいわ。――それよりも坂本君』
「そういや何か用があるそうだな。何だ?」
『秀吉知らない?帰ってこないし、携帯に連絡かけても全然出てこないし』
「……何だと?」
――秀吉がまだ帰ってきてない?どういうことだ?
雄二は何故か嫌な予感がした。
「すまんが何も知らん。少し待ってくれ。こっちからかけてみる」
優子は黙ったままだ。こちらの反応を待っているようだ。
雄二は携帯を凝視しながら待つ。そして出た答えは
「こっちからも繋がらない。俺からも他の奴が知ってるかどうか聞いてみる。少し時間をくれ」
『そうしてくれるとありがたいんだけど。お願い』
雄二はそのまま携帯を切った。すぐさまある人物に電話をかけた。
『もしもし』
「遅いぞ明久」


吉井宅――
「ムッツリーニ、今日は姉さん帰ってこないよ」
「…………なん……だと……?」
明久の言葉にムッツリーニがorzになる。
「大体ずっと張り込んでたみたいだけどさ、姉さんに何か用でもあったの?」
「…………ただの取引」
――よし、ムッツリーニの手に持っている僕の女装姿の写真を見なかったことにしよう。
「…………アキちゃんの写真をお前の姉が欲しがっていた」
「姉さーーーーーーん!?」
明久が絶叫している時、ポケットの中で携帯が音を鳴らした。
「…………明久、携帯が鳴っているぞ」
「そうみたいだね、相手は……雄二か、もしもし」
『遅いぞ明久』
「なんだよその言い方、っていうかこんな遅くに何の用だよ雄二」
『悪いが今回ばかりはふざけている暇はないんだ。今回は真剣な用事でお前にかけている』
雄二の真剣な声色に、明久も顔を引き締める。
「……何かあったの?」
『ああ、秀吉がまだ帰りついていないそうだ。何か知ってることはないか?』
「秀吉が帰ってないって!?どういうことだよ雄二!」
『……それについて聞きたかったんだが、知らないみたいだな』
「ちょっと待って」
一旦携帯から顔を離し、明久はムッツリーニに言った。
「ムッツリーニ、秀吉がまだ帰ってきてないんだって。何か知らない?」
「…………知らない」
「雄二、ムッツリーニも知らないって」
『何でそこにムッツリーニがいるのかはともかく、そうか、ムッツリーニも知らないのか』
「もしかしたら、何かの事件に巻き込まれてたりしてるのかな」
雄二も黙りこむ。
秀吉が夜遊びなんかするような人物ではないことは明久は良く知っている。連絡もつかないなんて何かあったのかもしれない。
明らかに異常事態だ。
『……あるいは、その可能性もある』
「何悠長なこと言ってるのさ!だったら早く探しに行かないと……」
『今秀吉がどこにいるのか、お前知ってるのか?』
明久の声がグッと止まる。知っていたらこんなやり取りしていない。
藁をもつかむ気持ちで明久はムッツリーニの方を向いた。
「ムッツリーニ、秀吉の居場所わからないかな」
「…………待て、今日つけた盗聴の受信器がまだついていれば、あるいは」
――ムッツリーニ、その台詞はギリギリ(でアウト)だ。
ムッツリーニが何やら怪しい機械をカチカチ動かす。
「…………明久、居場所が分かった」
「ホント!?」
明久が携帯に飛び付く。
「雄二、それでさ――」
『――なるほど、分かった。今からお前ら二人は秀吉の家に行ってくれ。そこを集合場所にしよう』
「分かった、秀吉の家だね」
明久は携帯を切ろうとして、ふと思い留まった。
「……あのさぁ、雄二」
『何だ』
「僕さ、今ものすごく嫌な予感がするんだよ」
『奇遇だな、俺もだ。もう手遅れって感じさえするな』
明久の背筋に悪寒が駆け巡った。


「あぁ……熱ゥいぃ……」
「おぉ、この媚薬即効性じゃないから意外と効果が強いな。ここまでまいるとはね」
Aがニヤニヤ笑いながら秀吉に向かって歩き出した。
「ち、近づくでない!!」
「まだ威勢がいいのはいいけどさ、とりあえずこれを見てよ」
Aが股間からペニ○を取り出して、秀吉の顔の前に突き付けた。
「……!!」
それは、ついさっき果てたものとは思えないほどにギンギンに硬くなっていた。
血管が浮いていて黒光りする凶器じみたそれを見た秀吉は、

――思わず、よだれを垂らした。

(な!ば、馬鹿な!)
「お、もう欲しがってるみたいだな」
Aの言葉を無視しようとしたが、出来なかった。
最初に抱いた恐怖と嫌悪と不快感の混じったような感情ではなく、寧ろ、欲しいとまで思ってしまった。
――この熱く火照った体に、あの大きなペニ○で貫いてほしい……なかで暴れてほしい……
(な、なにを考えておるのじゃ!?ワシは!?)
「おおっと忘れてた。いつまでもこんなのつけてたら悪いよね」
Aが秀吉を拘束していたガムテープを剥がす。張り付いていたところに痛みは感じたが、秀吉は全然別の感覚に感じていた。
――気持ちいい……
「じゃ、逃げてもいいよ?今の状態で逃げられるならね?」
Aは秀吉のこの状態を分かっているからこその行動だが、秀吉の頭に入ってこない。
(ど、どうしたのじゃワシの身体はぁ……なぜ何の抵抗もしないのじゃぁ……)
熱くなって頭がまともに働かなくなった秀吉。
さっきまであんなに不快だった○ニスを物色し始めた。痛みが快感に変わっている。足腰が上手く立たなくなっている。
いつの間にか秀吉の背後にいるAが、秀吉の後ろから中に指を入れた。
「アァァンン!!ヒャン!」
秀吉の口から嬌声が響く。
「どう?秀吉ちゃん。気持ちいい?」
「き、気持ちいのじゃあぁぁ……」
(な、何を言っておるんだワシは!)
さっきCと同じことをされているのにも拘らず、身体が快感を求めている。
「じゃあ、指増やすよー」
「もっとぉぉ……ンンっ」
指が二本、三本と増えていくと、秀吉の顔が段々締りが無くなっていった。だらしなくよだれも出ている。
四本に増えると、とうとう自分から腰を振るようになった。
(もう……何も考えられん……)
熱くなった身体と頭で、目の前にある快楽に身を委ねていく秀吉を見て、Aが意地悪く笑った。
「かなり順応したねえ、秀吉ちゃん」
Aが指を引く抜いた。突然自分の身体をいじっていた物が消えたことの喪失感を感じた秀吉。
「あうゥぅ……」
身体にまたもや熱が溜まっていく。
「もっと、もっとぉぉ……」
「え?もっと?何が?」
Aがまたも意地悪く笑う。
――指じゃなくて、もっと硬くて熱くて大きくて長くて――
「……が」
「え?何?よく聞き取れなかったんだけど」
「そ、それは……」
欲しい、と声に出せなかった。
火照った身体で何も考えられなくなった秀吉の中にある最後の砦でもあるプライドがそれを邪魔したのだ。
それを言ってしまっては、自分は本当に堕ちてしまう。
そうなった時、姉の優子は自分のことをどう見るだろうか。恐らく蔑視するだろう。
そうなった時、雄二、ムッツリーニ、そして明久はどう見るだろう。いや、二度と近寄らせてはくれないだろう。
それは秀吉にとって最悪の悪夢だ。一番考えたくない事態だ。
Aは先を言わない秀吉に焦れたのか、秀吉の股間に手を伸ばす。そこにあった秀吉のナニをギュッと強く握りしめた。

「んぅアアアアアアンンッ!!」
「“これ”が欲しいんならさ、今から言った通りにすればしてほしいことしてあげるよ?」
Aが秀吉の耳元で何かを囁いた。秀吉の顔が今まで以上に真っ赤になる。
「だ、誰がそんなこぉぉンンっ!!」
Aは秀吉のを握りながら、もう片方の手でまた秀吉の中に侵入する。
さっきのように指で掻きまわすかのように、Aの指が秀吉の中を暴れ回る。
「えぇっと、なぁにが欲しいのかなぁ?」
「わ、ワシはぁ……ん」
――言うな、そこから先はだめじゃ……!それを言ってしまえば……!
必死に自分を抑えつけようとする秀吉。
「ここかな?秀吉ちゃんの一番感じるところ」
Aが秀吉の乳首を音を立てて吸った。
「!!!」
秀吉の身体がビクゥっと痙攣した。
Aは次第に舌で舐めまわし、もう片方を手でいじくった。秀吉の思考が膨張の限界に来ていた。
Aが同じ場所を責め続けると、秀吉は声も出せず、みるみるうちに顔の締りが無くなっていき、涙とよだれが垂れ流される。
頭が度を超えた熱と快感で、殆どパンク状態になった。
「ワシはぁ……」
「コラ、教えた通りにやれよ」
秀吉の精神にひびが入った。
「ワシ、私はぁ!Aのぉ大きくて、立派なペニ○でぇ!私のいやらしい身体を犯してほしいですぅぅぅ!!」
秀吉の精神が完全に崩壊した。
「はい、よ〜くできました」
「あ、あぁ……」
Aが後ろから腰をガッチリ掴み、秀吉の中にペ○スを挿入しようとする。
秀吉は贖う事もなく、虚ろな目で空を見つめる。
「あきひさぁ……助け……」
自我が崩壊する最後の瞬間に、秀吉は友人に囁くように力なく助けを求めた。
「ひゃ、ひゃあああぁぁぁぁんんんん!」
「やっぱ秀吉ちゃんの身体最高だな!本気で今回は上玉だ!」
「もっと、もっと奥にイイいぃぃぃィ!もっと激しくぅゥゥゥゥん!」
「とんだ淫乱になったもんだな、秀吉ちゃん!もう自分から腰を振ってやがるぜ!」
バッコンバッコンと音を立てながら、激しく腰を振る二匹の獣。
「う、そろそろ出すぞ」
「んん、あああああああああああぁぁぁんン!!」
Aが解き放った精液を、秀吉は全身で受け止めた。
「さて、次は俺等の番か」
「もう待ち切れねえよ」
ぐったりと倒れる秀吉を力任せに起こすCとB。
秀吉の悪夢は、まだまだ終わらない。


「あのさぁ、雄二」
「何だ明久」
「今僕すごく怒っててさ、ちょっと抑えられそうにないかも」
「今日は妙に気が合うな。実は俺もだ」
明久と雄二、ムッツリーニに翔子、そして優子が走っていた。
さっき、盗聴機を使って状況を知ろうとして、後悔した。
流れてくる会話、そこから確信できる事実は一つしかない。さすがに明久達でも理解できた。
――秀吉が、レイプされている。
明久は危うく盗聴受信機を握りつぶしそうになった。これがないと居場所が分からなくなる。
最後に聞いた、擦れるような助けを求める声を聞いて、明久の額の血管が破れた。
後ろを走ってる優子の顔は真っ青になっている。まさに顔面蒼白だった。顔中汗で濡れている姿は正直直視できないほどだ。
ある程度は知っていると、人気の少ない廃工場が並ぶ所に出た。
「…………!二人とも隠れろ。誰か来る」
ムッツリーニが警告したので、明久と雄二が物陰に隠れる。翔子は今に飛び出そうな優子を掴んで後に続く。
「代表……!秀吉が、秀吉が襲われてるのよ!?なんでこんなところで」
「……少し静かにして、優子」
全員が身を伏せるように隠れる、すると見たことのない三人組が通りかかった。

「最高だったな、今日のあれ。一週間溜めた甲斐があったぜ」
「ああ、久しぶりに当たり引いたぜ。アレ一回でヤリ捨てるとかもったいねえだろ」
「今度どうする?何人か童貞の後輩連れてくるか?あいつ等にもさっさと卒業させてえし。俺優しい先輩じゃね?」
「五人くらい連れてこようか?寺子屋時代の乱交パーティ再び、か」
「寺子屋じゃねえだろ。廃工場じゃねえか」
「いいじゃんそんなの。それよりあの子の写真とっておいたよな」
「おうバッチリ」
下卑た会話に殆ど確信に近い疑惑が湧く明久達。
「あいつらが……あいつらが秀吉を……!」
優子が小さい声で何か言ってるが、明久達には聞こえていない。
「ねえ、どう考えてもあいつ等だよね」
「…………受信機の反応もすぐそこ。恐らく」
「ああ、さっさと取り押さえて吐かせねえと。……って木下姉はどこ行った?」
「え?」
その辺りを見渡しても優子の姿が見当たらない。すると、
「あんた達ね!秀吉をどっかやったのは!」
前にいる男達に掴みかかっていた。男達は優子を見て驚いた顔になった。
「おいおい秀吉ちゃん、まだ立てたの?あれだけヤッたってのに」
一人が下卑たように笑う。優子の顔が羞恥と怒りで真っ赤になった。
(おいムッツリーニ、明久、今の言葉は)
(…………どう考えてもクロ。自分で証明したから間違いない)
(じゃあ話は早い。さっさと行こうよ)
「おい、こいつたぶんあの子の家族だぜ」
「ああそういうことね」
男達の会話を無視して優子が詰め寄る。
「秀吉を返して!あの子はあんた達の道具じゃないのよ!」
「だが残念、ついさっき俺等の肉便器になりましたとさ。めでたしめでたし」
「……!ふざけんなこの強姦魔!」
男のうち一人が不愉快そうにペッと唾を地面に吹きかけた。
「てかさぁ、アンタウザいんだけど」
ドガッ
男の膝蹴りが優子の脇腹に当たる。優子ががくりと膝を折った。
男の一人がせせら笑う。
「うぐ……!」
「威勢がいいのは姉妹譲りなんだねえ。秀吉ちゃんも最初は鬱陶しかったけど、薬盛ってやったらす〜ぐに純情になったよ?
 君もやってみる?」
「自分で試したら?」
突然、横から声がした。
「よ、吉井君!?」
「何だぁテメェ?」
「うらぁぁぁぁぁあ!」
明久が思いっきりその男の腹部に飛び蹴りをかました。男はふらついて、それでも手を抑えながら堪えた。
「テメェ……痛い目見てえようだなぁ」
「いや、見るのはお前だろ」
「なっ!?」
反対サイドから雄二が拳を叩きこんだ。男は咄嗟にガードしたが、勢いを殺しきれず尻もちをつく。
「雄二!」
「坂本君!?」
「木下姉、さっさと秀吉の所に行ってやれ。ここは俺達に任せろ」
「あ、ありがと」
「…………こっちだ」
ムッツリーニが優子を連れて走り去る。そんな彼らに見向きもせず、男達は雄二を見て表情を変えた。
「坂本って言ったぞ……まさかあの悪鬼羅刹なのか?」
「中学の頃に鳴らしてたっていう、噂のあいつか?」
「チィ……面倒なことになったな」
男達が服の中から刃物を取り出した。手をポキポキと音を鳴らして、雄二が一歩前に出た。同時に明久も前に出る。
「さぁてと、暴れてやるか明久」
「雄二こそ、怖くなって逃げ出したりするなよ?」
「ふん」


――あれからどのくらいの時間が経ったのかわからない。
気付けばそこの空間には、自分一人寝そべっているだけだった。
拳を握るほどの力も気力も残っていない。立ち上がることもできない。
この痴態を男達の携帯に収められ、こう言われたことを朦朧とした意識の中で覚えている。
『また今度も頼むわ』
それは、暗に約束を違えれば、写したものをばらすというもの、要するに脅迫だ。
実際には、秀吉にとってそんなことはどうでもよかった。
汚れた。身も心も。
最初は襲われ、最後には自分から求めるようになった。なんという浅ましいことか。
誰にもこんな姿を見られたくない。快楽に溺れた自分の姿など。
外から何かの騒ぎの音がする。誰かの叫び声と、何かが崩れる音が。
――そして、ドアを激しく叩く音も。
『秀吉!そこにいるんでしょ!返事しなさい!』
『…………待て、鍵がかかっている。すぐに開けるようにしてやる』
ガチャガチャと音がする。しばらくするとバシンと勢いよく扉が開いた。
「秀吉!!」
何か、いつも聞く声に似ておるなぁ……とはっきりしない意識の中で秀吉はそう思った。


白い液体を全身に滴らせながら、身体中に青い痣をたくさん残して、目が虚ろになっている秀吉を、優子は抱き上げた。
「秀吉!しっかりしてよ!秀吉!!」
「…………身体の怪我が相当酷い上に、精神もボロボロ。これは早く治療が必要……!」
珍しくムッツリーニが怒りを感じながらも拳を握りしめる。
翔子が後ろから走ってきた。
「……もう警察と救急車は呼んだ。もうじき来る」
「ありがと代表。でも、こんなのって……!!」
「優子……」
優子が意識を失っている秀吉を抱きしめながら涙を流した。
翔子は、慰めるようなことはしなかった。被害に遭ったのは優子ではなく、秀吉なのだから。


その後のこと――
救急車が到着してすぐ、秀吉は病院に運ばれていった。
あの男達は例外なく雄二と明久にぼこられた挙句、警察に引き渡された。その場で強姦していたのだ、言い逃れは出来ない。
しかもそのあと、色々と湧くかのように明らかになったことがあった。
過去に何回か強姦をやったとか、無免許でバイクを運転したとか、ひき逃げをしたとか、違法賭博をやっていたとか――
要するに、碌でもない連中だった、ということだ。
秀吉の方はと言うと、目を覚ますのは次の日の昼頃と、随分と早かった。
秀吉の傷は、当たり前かもしれないが、時間がたてば治るものだった。――身体の傷は、だが。
しかし、心の傷は未だに癒えず、もしかすると一生消えないのかもしれない。
今も秀吉は病室で塞ぎこんでいる。本人曰く「合わせる顔がない」とのことらしい。
因みにこのことの真相は、学校では五人以外知らない。美波や瑞希も知らない。

文月学園――
「木下姉が昼頃になってようやく学校に登校してきたってさ、翔子が言ってたぞ」
「そうか。何か言ってた?木下さん」
「いや、何も。というかあの状態では誰かとしゃべる気にはなれないだろうがな」
明久にも思い当たる思いっきり節がある。
因みに明久と雄二は、喧嘩のあと絆創膏を至る所に貼っている。瑞希達に聞かれたりしたが『喧嘩した』の一点張りにした。
後、三人とも朝まで起きていたので目のクマが付いている。
正直あの連中には火炙りにしても許さないぐらいだが、あんな連中で面倒な罪にかかることもない。
何より、警察に引き渡したからには、ちゃんとした方法で裁かれるだろう。
そんなことよりも明久には重大な用件があった。
「秀吉……まだ目を覚ましていないのかな」
「わからん。木下姉に聞いてみるか?」
「そうだ。学校終わったらさ、病院行こうよ。見舞いにさ」
「…………明久の言うとおり。その方が有意義」
「……わかったよ」
ガラッと扉が開いて、鉄人が現れた。
「席に着け!授業を始めるぞ!!」
鉄人は相も変わらず良く通る声で、皆に言った。


秀吉の病室――
「……出て行ってくれ」
「そういうわけにはいかないわよ。あんた自分が何されたかわかってるの?」
「わかっておるから出て行ってほしいのじゃ!」
病室で秀吉が声を荒げる。
「ほっといてくれぬか!ワシのことはどうでもいいじゃろう!」
その言葉に優子がぴくっと眉を動かした。
「どうでもよかったら、最初から貴重な時間を割いてまでアンタの部屋なんか来ないわよ!」
「迷惑じゃと言っておるのじゃ!」
「何ですって……!?」
優子は秀吉の胸倉を掴んだ。秀吉はひっと悲鳴を上げて、優子と目を合わさぬように顔を逸らした。
「み、見ないでくれェ……ワシの顔を見ないでくれェ……!!」
「あんた……」
顔を隠すように、手で覆う秀吉の目じりから、涙の雫が零れおちる。
「姉上……あんな場所を探すことができたのは、ムッツリーニ――土屋のおかげなのじゃろう?」
「ええ、そうよ。彼らがいなかったら見つからなかっただろうし、犯人をどうこうすることもできなかった」
「それはつまり……ワシの痴態を、明久達に知られた、という事じゃな?」
「そうなるわね」
涙のがボロボロと出続けている。それをぬぐう事もせずに秀吉は言う。
「あんな破廉恥極りない言葉を使い、自分から腰を振るような淫乱を相手に、今まで通りの対応をしてくれるわけが
 ないじゃろう……。……こ、こん……な、こんなぁ……奴に今まで通り……仲良くしてくれるはずが……ない。
 ワシは……ワシは、い、嫌じゃ……そんなのは…あいつ等に……け、軽蔑されるのだけは……嫌なんじゃ!!」
「だから、誰にも顔を合わせたくない、ってこと?」
秀吉は何も言わない。優子はそれを肯定と受け取った。
「あんたのそんな葛藤なんか知ったこっちゃないけどさ、お礼くらいいったらどうなの?」
「こんな醜態を見られるくらいならば、助けられなかった方がマシじゃ!」
「何ですって……?」
優子が掴んでいた秀吉を乱暴に投げ捨て肩を強く抑える。秀吉はわずかに悲鳴を上げた。
「あ、姉上……?」
「吉井君達、すごい形相でこう言ってたのよ。『今僕すごく怒っててさ、ちょっと抑えられそうにないかも』って。
 アンタが襲われているって知ってから、すごかったわよ。もう人殺せそうな程に恐かったの。
 なんでそんなに怒っていたかわかる?アンタのせいよ。アンタのことを大切に思っているからこそ、なのよ。
 アンタさっき助けられなかった方がいいって言ったわね。
 吉井君達、家族でもないのに一睡もせずにずっとアンタに付きっきりだったわよ。『心配だから離れられない』って。
 そこまで想ってくれる友人なんてそう簡単に手に入るものじゃないわよ。それをアンタは蔑にするの?」
秀吉が弱弱しく反論する。
「……じゃが……こんな汚れた身体を持つ奴となんてぇ……」

優子が優しそうな声で諭すように言う。
「言い訳なんかどうでもいいの。アンタの考えは何なの?」
「ワシは……き、嫌われたくない……明久達と……い、いつも通りに……一緒に楽し…く過ごしたい。
 でも……こんなワシを……どう見るか……知るのが怖いのじゃぁ……!
 姉上だって……今のワシの姿……どう思っておるのじゃ……?」
秀吉は涙で潤んだ両目で優子を見上げた。優子はそんな秀吉を見て、うっと唸る。
(ちょ、何なのよこの子……!私にはできないようなこんな表情をできるなんて……!
 こんなことでこいつに付き纏う男どもの気持ちを理解できちゃうなんて……!私の理性収まれ……!)
敗北感と葛藤を呑み込み、表情を作り直す。
そのまま優子は秀吉を抱きしめた。
「アンタは勉強はできなくて、演劇バカで、性別をよく間違えられたりするけど、私の弟、木下秀吉なの。
 そして私はアンタのたった一人の血の繋がった姉なのよ?
 あんたがどんなことがあっても見捨てないし、ちゃんと助けにも行く。私はあんたがどうなっても捨てたりしない。
 あんたはもっと、あんたの『姉上』に頼ってもいいのよ?」
――なぁんか、私っぽくないこと言うなあ。すっごく恥ずかしいんだけど。
柄にもなく秀吉を抱きしめて慰める優子。腕の中で秀吉がグずっと鼻をすする。
「勉強は見てくれない癖に……」
「そのくらいは自分で解決しなさいよ、全く」
「姉上は嘘つきなのじゃ……」
シュンと項垂れる秀吉。すると突然ドアが勢いよく開いた。
「秀吉!無事かい!?」
「お、やっと起きたようだな。身体の方は大丈夫か?」
「…………見舞いに来た」
「お、お主ら……!」
秀吉は侵入者三人を見ると、突然蒲団に潜り込んだ。
「どうしたの!?秀吉!」
「み、見るな!」
明久が近寄ろうとすると、秀吉が拒絶の声を上げた。しかし、秀吉は身体を毛布に隠したまま明久の服の裾を摘む。
「え、何?」
「あ、明久……ワシのこと、どう思っておるか?」
「え?」
明久は質問の意味を図りかねたので、逆に聞き返した。
「どうって、どういう事?」
「ワシは、あんなことがあって、その……身体を穢されてしまって……こんな奴のこと、ど、どう思っておるのじゃ……?
 わ、ワシは……お主らにだけは軽蔑されたくない……のじゃ……」
――なんだ、そういうことか。
明久はようやく質問の意味を理解した。同時に秀吉の頭を優しく撫でた。
「僕達が秀吉のそばにいるのは、秀吉のいいところをいっぱい知ってるし、一緒にいるのが楽しいからだよ。
 だから秀吉のことが嫌いになるなんて、有り得ないよ」
「そうだな。嫌ってる奴だったら最初から付き合わないし、こんな風に見舞いに来ることもない。助けにも行かん。
 全部お前の考え過ぎだ。俺達がここにきていること、それが答えだと思うがな」
「…………杞憂」コクコク
「お、お主らぁぁ……!!」
明久達の言葉に秀吉は一気に大きい瞳を潤ませて、明久の腰に抱きつくようにしがみ付いた。
明久があやす様に秀吉を撫で続ける。
「そういや木下姉の啖呵の切り方も相当すごかったな。そういう一面もあったんだって思ったな」
「ちょ、ちょっと!あの事は秀吉には言わないでよね!今考えるとちょっと恥ずかしかったんだから!」
「…………『秀吉を返して!あの子はあんた達の道具じゃないのよ!』とか」
「返しなさい!そのボイスレコーダー!!」
優子はムッツリ―二から奪い取り、捨てに外に出て行った。ムッツリーニが「…………すでにコピー済み」と呟く。
そばで色々やりとりしているのを見ていた明久は、握られた手の強みが増したのに気付いた。
視線を戻すと、顔を赤く紅潮させて息を切らしている秀吉が潤んだ目で明久を見上げた。
「熱いのじゃぁ……明久ァ……身体が熱くてしょうがないのじゃぁ……おかしくなるぅ……ンッ、アン」ハァハァ
「ど、どうしたの秀吉!?(ヤヴァイ!?僕の理性をガリガリ削るこの天使は誰!?)」
視線を戻すと、顔を赤く紅潮させて息を切らしている秀吉が潤んだ目で明久を見上げていた。
ひでよし は こんらんしている!
ひでよし の うわめづかい !
こうかは ばつぐんだ !

「あ、あのような下郎に……身体を任せるのは……屈辱極まりないのじゃが……お主なら……許せるかもしれん……
 わ、わしの……身体をい、触ってくれぬか……?とても……耐えられそうにもない……」ハァハァ
「ななななな何をいいいいい言ってるんだい秀吉!?そそそそそんなこといったらダダダダメだよよよ!?」
――僕が獣に変身しちゃうじゃないか!!おちけつ僕、相手は正気を失っている。ここは冷静に
「そんなぁ……こうなったらぁ」ハァハァ
秀吉が明久にくっつき、艶っぽいとろけそうな顔になって、囁くように懇願した。秀吉の体温と吐息をまじかに感じる。
「明久……私の身体を……私のいやらしい身体をたくさん……犯して…くだしゃぁい……!」
――明久の身体の奥で、何かが割れる音がした――
明久は割と乱暴に秀吉をベッドに押し倒した。秀吉は目を瞑った。明久は秀吉の肌蹴たシャツをわずかにめくる。
後ろで鼻血を盛大に出して気を失うムッツリ―二と珍しく生唾をごくりと音が聞こえるほどに呑み込む雄二が立っていた。
自称保健体育の参考書、帰ったら全部捨てよう。そう誓った明久だった。
「ひ、秀吉……!痛くなったら言ってね」

「ア〜キ〜?ちょ〜っといいかしら?」
「明久君ったら、ダメじゃないですか」

「あれ?突然天使のような秀吉が見えなくなったぞ?どうした僕の目は!」
両目を抑えて転がり回る明久に、美波と瑞希が立ちはだかる。
「ようやく視力が戻ってきたか。やあ美波、姫路さん。二人も秀吉のお見舞首が捻じれる様にイタいぃぃぃぃ!?」
「アキ、何やってるのかしら?病人に襲いかかるなんて」
「いけませんよ明久君。木下君の容体が悪化するじゃないですか」

「……雄二、お仕置き」
「翔子!俺はまだ何もしていない!」
「……まだ……!?まだってどういうことなの……!」
「しまった!ま、待て!俺の息子を握るな!お前に握られたら!」
「……私の時は、こんなに硬くならないくせに……!!」ギュッグチャッ
「クァwセdrftgyフジコlp!!」

――雄二の方を見ないようにしよう。
視界から雄二を排除した明久は、目の前の鬼二人に対して必死で弁護した。
「待ってよ!秀吉!秀吉なら僕の無罪を証明してくれるはず!!」
「秀吉なら寝てるわよ?」
いつの間にか戻ってきた優子がそう言った。秀吉は規則的な寝息を立てて寝ていた。
「寝ている木下が、何かしら?」
「明久君。少し、お話しませんか?」
明久は絶望的な表情になった。

〜END〜


後日談――
木下優子が、Fクラスの前に来ていた。そこには明久、雄二、ムッツリーニの面々がいた。
「秀吉は来週から学校に来るわ。まだ薬の効果が抜け切ってないからね」
「そうか、わかった」
「言い忘れていたことだけど……弟を助けてくれてありがとう。私一人じゃどうにもならなかった」
「は、どういたしまして」
「まぁ、僕達も秀吉を助けたかったしね」
「…………困った時は、お互い様」
優子が笑った。そしてすぐ引き締まった。
「あとそれと、坂本君?いくら代表が大人しい子だからって、自分の家に連れ込むのはダメじゃない。節度を持ちなさいよ」
「ちょっと待て!あれは翔子が勝手に――」
「ほう?雄二貴様どういうことだ?」
明久が問いかける。黙る雄二の代わりに優子が教えた。
「私が十時半頃に代表に電話したら、代表が何故か坂本君の家に」

『これより、異端審問会の開催を告げる。反逆者には』
『死の鉄槌を!!』
『妬ましい妬ましい妬ましい』
『ぶち殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスケ……』

「違う、違うんだァァァ!俺は無罪だ!」
「と言ってるけど、霧島さんの言葉は?」
「……雄二ったら、あんなに激しく迫ってきて」
「翔子いつの間にここに!?あと捏造するな!むしろ迫られたのは俺の方だ!」
「……優子の電話がなかったら、雄二と一つになっていたかも///」ポッ

『殺 せ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ ェ ! ! ! !』

その後、雄二は14回に渡る処刑を行われたとか。どうやって生き延びたのかは神のみぞ知る。

〜今度こそ本当にEND〜

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