2chエロパロ板の「井上堅二 バカとテストと召喚獣でエロパロ」の作品をまとめたサイトです。

「ねえ、さすがに酷すぎると思わない!? あのバカ河原でメイドの服着て発声練習してたのよ!?」
「あはは……、確かにそれはマズイと思うけど、今回の役はやりがいがあるって秀吉すごく張り切ってたみたいだしさ」
「それにしたって限度ってものがあるでしょう! 他人から見たらどうやっても頭が残念な子にしか見えないじゃない!」
電話口から聞こえてくる木下さんの声は興奮冷めやらぬといった感じだ。まあ、今回の件は僕でもちょっとどうかと思うしなぁ。
それとは別に、秀吉のメイド服はぜひ見てみたい。きっとものすごく似合うんだろうなあ。
「ほんとにアイツは……、アタシと同じ顔してるって自覚が足りないのよ! 私にまで変な噂が立ったらどうしてくれるつもりなのよ」
若干手遅れな気がしないでもない。そういえば一時期木下さんは下着を穿かない人らしいなんて噂があったんだけど、あれも秀吉が関係してるんだろうか。
……ちょっとだけ妄想してしまったのは健全な男子高校生なら仕方のないことだと思う。
「全く……バカって言葉が相応しいわ。熱中すると周りのこと全然見えなくなるんだから……って、聞いてる? 吉井君」
「あ、うん。聞いてる聞いてる」
危ない危ない。妄想の世界から戻れなくなるところだった。
「なんかごめんね? 一方的に喋っちゃって……」
「ううん。そんなことないよ」
喫茶店でいろいろ話したあの日から、木下さんとはよく話をしている。
とはいっても、直接会うなんてことはほとんどない。たまに学校で見かけても挨拶がてら喋るくらいだし。
会話手段はメールや電話。それも最初はメールだけだったんだけど、最近は電話も週に二、三回かかってくる。
内容も最初の頃は僕やFクラスでの話がメインだったんだけど、徐々に木下さんも自分のことなんかを話してくれるようになった。
共通の話題ってことで秀吉のこともよく話す。今日みたいに愚痴を聞かされることもあるんだけどね。
でも、最初に持っていたイメージより棘も少なく、何よりすごく楽しそうに話してくれる木下さんとの会話を、僕も楽しみにするようになっていた。
「なんかあいつの話すると愚痴ばっかりになっちゃうわね……。」
「大丈夫、そんなに気にしないでよ。でも、秀吉に直接注意したりはしないの?」
「え? もちろんしたわよ? ついでに曲がらないとこまで関節を曲げてあげたし」
その痛みを容易に想像できる自分が悲しい。
「でも反省はしてるみたいだけど、たぶん行動を改める気はないのよね……。またそのうち似たようなことで注意することになりそうだわ」
「あはは、秀吉は演技のことに関しては頑固だからねえ」
「こっちは笑い事じゃないのよもう……」
「どうにかするには秀吉を演劇から切り離すくらいしないとダメそうだよね」
冗談めかして言ってみた。
まあ、秀吉は誰に言われてもやめないだろうなぁなんて呑気に考えていると、なぜか木下さんは慌てたように口を開いた。

「あ、いやそこまで言うつもりは無いのよ? ほ、ほら確かにバカはバカなんだけど、あれはあれで頑張ってるみたいだし」
「あ、うん」
「部活動に全力で打ち込むっていうのも高校生の特権みたいなものだしさ、だからそれはそれで悪くないっていうか……」
「そうだね。秀吉すごく頑張ってるよね」
「いや、その……そう、かもしれないわね」
木下さんも理解はあるみたいだ。迷惑を被っててもこんな風に言えるなんて……。
失礼かもしれないけど、正直意外だ。
「ちょっと意外だな。木下さんってそういうのを良く思ってないのかと思ってたよ」
「……そうね、正直ちょっと前までは勉強を疎かにしてあんなことばっかりしてるのはいただけないって思ってたんだけど」
耳が痛くなるワードが聞こえた気がするけど気にしないでおこう。
「ちょっと前にね、秀吉にお願いをしたことがあったの。自分の体裁を守るようなことに秀吉を体よく使っちゃったんだけどね」
自身の失敗談を話すみたいに、木下さんは少し恥ずかしそうにしながら話を切り出した。
「その時のあいつを見て、アタシの考えって偏屈……っていうか、すごく視野の狭いものだったんだなーって思ったの」
話に相槌を打ちながら、木下さんって透き通ったすごく綺麗な声してるんだななんてことを考えてた。
「アタシはあいつに出来ないことがたくさん出来る。でもなんてことはなくて、あいつもアタシにできないことを難なくやってのけたのよ」
散々迷惑もかけられたんだけどね。と、苦笑しながら付け足す。
「くだらないってレッテル貼ってたものに悩まされて、バカだって思ってた弟に助けられたアタシはなんなんだってね。あの時は結構恥ずかしかったわよ」
「そっか、木下さんでもそういうこともあるんだね」
「ええ、まあね。ていうかなんで話しちゃったんだろう。この話秘密にしといてね、吉井君以外には誰にも話してないんだから」
「え、う、うん。わかったよ」
「うん。お願いね」
ちょっとドキッっとした。最近少しづつ仲良くなっている気はしてたけど、こんな風に話してくれるなんて。
ちょっと言葉に詰まっちゃったけど、流してくれて助かった。
「ま、だからって勉強を疎かにしていいわけじゃないんだけどね。テストも近いわけだし、練習があるとはいえあいつにも勉強させなきゃ」
そういえば、テストまでもう一ヶ月もない。
うう……頭が痛いなぁ。ひどい点を取れば姉さんにどんなお仕置きをされることやら。
「吉井君はテスト大丈夫なの?」
「あはは……」
「そう、ダメそうなのね」
何故分かったんだろう。
するとなにやら木下さんは考え事をしているみたいに小さく唸った。
「うーん、じゃ、じゃあさ今度の日曜日に勉強会でもしない?」
「勉強会?」
「そ、そうよ。ほら、一人でやるより分かんないところを聞けたほうが効率いいでしょう?」
うーん、確かにそうかもしれないけど。
「でも木下さんに迷惑じゃないかな?」
Aクラスの木下さんに教えてもらえるのはありがたいけど、僕が木下さんに教えられることなんて何一つないからメリットはないだろうし。
「ううん、そんなことはないわ。教えるのって自分の勉強にもなるし、秀吉にも勉強させたいから吉井君が来てくれれば、二人きりよりあいつも勉強する気になると思うし」
うーん、せっかくの休みに勉強したいなんて思わないけど、こんな機会はそうそうないしなぁ。
前回のテストの時もみんなで勉強していろいろ教えてもらえたから、(名前のミスさえなければ)割と点を取れたわけだし。
なにより今まであまり交流のなかった木下さんが、こんな風に心配して誘ってくれたのはすごく嬉しい。だったらせっかくだし……。
「うん、じゃあ大変かもしれないけどお願いしてもいいかな」
「う、うん! まかせて。Aクラス並にしてあげるわよ!」
それは、さすがに無謀なんじゃないだろうか。
「場所はどうしようか? 秀吉が場所知ってるし、スペースもそれなりにあるから僕の家はどうかな」
今は姉さんもいないし問題はない。そうすると部屋を掃除しなきゃいけないな。
「いやっ、ちょっとそれは……その」
「? ダメかな?」
「ダ、ダメっていうかまだ早いっていうか……」ゴニョゴニョ
何て言ってるんだろう? ちょっとよく聞こえない。
「木下さん?」
「そ、そうよ! 吉井君の家には参考書とか無いでしょう? 家にならあるからうちでしましょう!?」
あ、なるほど。そんなこと全然思いつかなかった。
「確かにそうだね。じゃあお邪魔してもいい……」
あれ? ちょっと待って。僕が木下さんの家に行くってことは……。うわっどうしよう。
「よ、吉井君どうかした?」
「い、いやその……女の子二人の家に僕が一人でお邪魔してもいいのかなって」
「……ちょっと待ちなさい。どう計算しても女はアタシ一人のはずよね?」
いやいや、ただの勉強会なんだ。変な考えを持ったら誘ってくれた木下さんに失礼だ。
でも、女の子の家に一人で行くのは初めてだし……。
「吉井君? ねえ、ちょっと聞いてる? あいつは男だからね!? ねえってば!!」


役目を終えた携帯を充電コードに繋ぐ。
「もう……確かに双子とはいえ女の子っぽい顔してるけど」
全く同じつくりの顔はともかく、無頓着な割に綺麗な肌とかに女のアタシが嫉妬しちゃったりすることはあるんだけど……。
正直、その認識は割と本気で改めてほしい。
乙女小説を読んでる私が言えることじゃないかもしれないけど、吉井君と秀吉が万が一「そう」なったらと思うと笑えない。やっぱりあれはフィクションだからこそよね。
ちょっとだけ頭が痛くなった。そして、それ以上に頬が熱をもってきた。
「誘っちゃった……」
実は以前から計画だけはしていた。
最近、吉井君とは少しづつ仲良くなれてる。ほとんど電話はアタシからだけど、メールは吉井君からもしてくれるようになった。
吉井君と話すのは楽しい。今までだったら恥ずかしくて人には言えなかった秀吉のバカな行動も話の種にして、あんなに大声で話しちゃった。
自分のことを見直すキッカケになった出来事も、内容はぼかしたけど喋っちゃったし。
どうもアタシは吉井君に対してガードが緩いみたい。
そもそも吉井君だって悪い。バカバカ言われてるのに、話すことは面白いし、私の話はちゃんと聞いて返してくれるし、なにより優しいし……。
自分の思考のダメっぷりにさらに顔が熱くなる。なんていうかこれはもう……。
違う違う! うん、たぶんそういうことじゃないハズ。大丈夫大丈夫、落ち着け私。
まあ、せっかく仲良くなれたのになかなか直接話す機会がなかったのよね。
見かけたら挨拶くらいはするんだけど、吉井君の周りっていつも人がいるからちょっと話しかけづらいってのもあるのよ。
坂本君、土屋君、うちの愚弟もいるし、姫路さんや島田さんもよくいるわね。
あとは吉井君と話してるわけじゃないんだけど、うちのクラスの久保君と、名前は分からないけど確かDクラスの女の子もよく見かけるのよね。
はぁ……、代表みたいに気にせず行ければいいんだけどな。
ま、でも約束もできたんだし前向きにいこう。さてと、じゃあ今のうちにっと。


コンコンコン
「秀吉。入るわよ」
む、姉上か。いいぞい。
弟の返事を確認してドアを開ける。
「何か用かの?」
「うん、まあね。あんた今度の日曜暇よね?」
「うむ、部活もないしの。」
「じゃあ、その日開けといてね勉強するから」
「? 姉上が勉強するのと儂になんの関係あるのじゃ?」
「なに言ってんの。アンタも一緒に勉強するのよ」
「え゛っ」
どういう反応よそれ。
「なんて声出してるのよアンタ」
「い、いや儂は別にいいのじゃ」
「ふーん、そう。知らなかったわ。テストも近いけど勉強しなくても余裕なくらいアンタ頭良かったのね」
「いや、そうではなくて……」
わかりやすく狼狽してるわね。そこまで勉強したくないのかしら。
「なによ、あたしが教えてあげるんだから喜びなさいよ。どうせアンタ一人で勉強しても、たいしてはかどらないでしょうに」
「その……怒らないで聞いてくれるかの?」
そう上目遣いで聞いてくる秀吉。……無駄に可愛いわね、これってナルシストになるのかしら。
「とりあえず、言ってみなさい。怒るかどうかはそれから判断するから」
秀吉はなにやら随分言いにくそうにしながら口を開く。
「昔、姉上に勉強を教えてほしいと頼んだ時にかなりキツく言われた覚えがあるのじゃ。じゃから、少々驚いてしまっての」
……確かにそんなことがあったわね。あれは中一の頃だったかしら。
あの頃から既に学力の差は明確で、秀吉の事を見下していたような気がする。
うーん、でも……。
「それは覚えてるけど、そんなにヒドイこと言ったかしら?」
すると秀吉は胸に手を当てて、ひとつ深呼吸をした。
『ハァ? なんでアタシがあんたの勉強なんか見てあげなきゃなんないのよ。勉強できないのは自業自得でしょう。そんなことで私の手を煩わせないで』
「と、言われたのじゃ」
……うん、まあ我ながら確かにきついなぁって思うけど、いちいち声真似までしなくていいわよ。
ていうか、数年前のことをそんなに明確に覚えてるって、何気に根に持ってるのかしら?
「確かに姉上が教えてくれるなら助かるのじゃが、なぜ急に? と疑問に思っての」
「どうでもいいでしょそんなこと。もう来年は三年生になるんだからアンタがいつまでも成績悪いままじゃ父さん達も心配するでしょ」
一応理由はあるんだけどね。たとえ誰に言おうが、アンタにだけは絶対教えてあげないわよ。
「そうじゃの。ではお願いするぞい姉上、ついでにこの宿題も教えてくれると……」
「ダメよ。宿題くらい自分でやりなさい」
「姉上はケチなのじゃ……」
うるさいわね、宿題を教えてもらったら意味ないでしょうが。恨みがましい視線を向けてくるバカは無視して自室に戻る。


「ふう……」
ベットに腰かけて携帯をチェックする。
お、新着メール一件。送り主は……予想通りの人物。
『日曜日は10時頃お邪魔するね。なにか飲み物でも持って行くよ。』
吉井君て意外と気を遣うのよね、気にしなくてもいいのに。
自然と頬が緩む。えーと、『わかったわ、教科書とかも忘れないでね』っと、送信。
はぁ……秀吉に吉井君も来るって言えなかったな。さらっと言えれば良かったんだけど、下手に追及されたら冷静に返せなさそうだし。
まあ、その日に言えばいいわよね。それより当日の事考えなきゃね。吉井君に苦手なとことか聞いとこうかしら。
そんなことを考えながら、ふと本棚のほうに目を移して……青ざめた。
ちょ、ちょっと待って。アタシこの部屋に吉井君を呼ぶつもり!?
男の子を部屋に入れるのが恥ずかしいとか言う前に、見せられないような小説やら、つい買ってしまったグッズやら致命傷クラスの危険物がたくさんある。
マズイ、これだけは見られたくない。特に吉井君には絶対に。押入れに全部入れられるかしら。
いっそ、秀吉の部屋でやるべきかな。でも、あいつの部屋にも参考書なんて全然置いてないし……。
しょうがない、ダンボールに入れて押入れに隠しておくしかないわ。入りきるかしらねコレ……。
結局この日は夜遅くまで部屋の整理をしなければならなかった。

「はぁふ……、眠いわね」
本日は日曜日。現在時刻は八時半、朝食も食べ終えたし身だしなみも整えた。時間には十分余裕がある。
昨日も確認のためのメールしたんだけど……、その後あまりよく眠れなかったのよね。
なんていうか遠足前の小学生じゃないんだから。と、自分自身にツッコミを入れたくなる。
父さんと母さんは朝早くから出かけて行った。帰りも遅いらしいしちょうどよかったわね。
「はあ……、なんか緊張するな」
男の子を家に呼ぶのは初めてだし。まあ、勉強が目的だし秀吉もいるから二人きりってわけじゃないし大丈夫よね!
唐突に誰かが階段を慌ただしく降りてくる。秀吉のやつ何をしているのかしら、足音を辿って洗面所へ向かう。
「あれ? アンタなんで制服着てるわけ?」
秀吉は休みなのに制服に身を包んで、身だしなみを整えるためにせわしなく動いている。
「おお、姉上。すまぬ! 実は急に部活の召集がかかってしまったのじゃ。勉強はまた今度にしてくれぬか」
「ハァ!? なに言ってんのよ! 日曜は開けとけって言ったでしょうが!」
「だからすまぬと言っておる。演劇部の外部コーチが今日になって都合がついたらしいのじゃ。先ほど電話があっての」
「だからって……先に約束してたじゃない! 今日くらい休みなさいよ!」
「それは無理な話なのじゃ。コーチは多忙じゃから今日を逃せばいつ練習を見てもらえるか分からん。電話でも全員必ず出席と言われたのじゃ」
言い争ってる間に準備を終えた秀吉はバッグを持って玄関に向かう。
「ちょ、ちょっと待ちなさい。秀吉!」
「すまぬ。お説教は帰ったら聞くのじゃ。夕方には帰るからの」
止める間もなく脱兎の如く飛び出して行った秀吉を見て、アタシはしばらく呆然としていた。
現在時刻は九時五分。吉井君が来るまで一時間を切っていた。

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