なのはキャラinバイオ0話

 ――9月23日。天気、晴れ。
 夏の暑さがまだ僅かに残るそんなある日、二人の少女を乗せたバイクがハイウェイを疾走していた。

「ティア〜、あとどれくらいで着く〜?」
 スバル・ナカジマはバイクを運転するティアナ・ランスターに後ろからそう声をかける。

「はあ……さっきからあんたは同じことばっか言って…………
 これでいったい何度目よ?」
 先程から同じ質問を繰り返す同乗者に呆れながらも、ティアナはちゃんとその問いに答える。
「このままの調子なら夕方には着くからもう少し我慢してなさい。
 誰のおかげでこうしして交通費が浮かせられてると思ってるの?」
「は〜い……」
 そう言うとスバルは黙ってしぶしぶと映り行く景色を眺めることにした。

(やれやれ……)
 そう思い苦笑いを浮かべながらティアナは視線を前から少し左手に移した。
 そこには(まだ少し遠く離れた場所ではあるが)観光地として有名な美しい山脈が広がっていた。
 ティアナたちが向かっているのはそのふもと――丁度山間部に囲まれる形で位置する場所にある街だ。

 少し長い休暇を利用したちょっとした観光旅行――
 スバルが唐突、しかも一方的に計画して、仕方無く付き合うことにしたティアナであったが、実は自身も密かに今回の旅行は楽しみにしていた。
 折角の休み――それも親友との旅行だ。たまには思いっきり羽を伸ばしてみるのもいいかもしれない。

(――もしかしたら夕方前には街に着けるかもね……)
 目線を前に戻しながらティアナはそう思った。
 そして、街に着いたらそれから数日の間、どのようにして休暇をエンジョイしようかな、などと考えながらスバルに悟られぬよう微かに笑うのであった。

――しかし、ティアナたちは知らない。
 自分たちが向かっている場所は、あと24時間もしないうちに一躍『地獄』へと姿を変えるということを…………

 そして、自分たちがその地獄の強火に巻き込まれてしまう運命にあることも…………



 ――ティアナたちを乗せて走るバイクの遥か上を、一羽のカラスが不吉な鳴き声を上げながら羽ばたいていった。





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2007年06月15日(金) 18:30:17 Modified by beast0916




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