なのはA's×ギアス13話

朱雀の言葉に沈黙するシグナム・・・
だが、カレンやクロノ達も彼の意外な発言に絶句していた・・・

「彼は本当に何も知らないの・・・?なら説得すれば投降してくれるかも・・・」
「いえ、カレンさん。今の内に”紅帝”の詠唱を。彼等は僕が引き付けます」
クロノがカレンの考えを押し退けそう提案した
「クロノ君?でも彼等にも最低限の人権保障を・・・」
「そんな事を言っている場合では無いでしょう。今僕達がしくじれば
いずれその対価を仲間や同胞の命で償わなければならなくなる・・・
僕達はもうこれまでの様なミスは出来ないんです。説得は僕が続けます。
カレンさんは万一に備え”紅帝”を発動出来る様にして下さい」

クロノの提案に他の魔導師達も頷き、カレンを見据える
「・・・わかったわ。では当初の作戦通りに。皆も、いいわね?」
「了解!!」
覚悟を決めたカレンが皆を奮起し、戦闘開始の檄を飛ばす
クロノや他の魔導師達が攻撃態勢に入る中、カレンは一人戦線を離脱し、
広域攻撃魔法の詠唱準備に入った

「いくわよ、紅蓮。」
(承知!紅帝、招来!!)
カレンの掛け声に紅蓮が応じ、彼女の足元に紅いベルカ式の魔法陣を展開。
カレンは右腕の紅蓮を前方に突き出し詠唱を始める・・・
「全知全能たる天の帝よ、理に背きし外法なる者共に裁きの鉄槌を・・・」
詠唱開始と共に吹き飛ぶ計6発の薬莢。
直後に紅蓮の手甲の前方に3つの円環型の魔法陣が形成され、
紅蓮の手の平に眩いばかりの閃光が集束していくのだった・・・

その頃朱雀とシグナムはクロノ他20名以上の魔導師達の集中砲火を浴び、苦戦していた

「朱雀様!!何故ヴァリスを使われないのです!?」
朱雀を辛うじて護っていたシグナムは彼にそう叱咤する
「だめだ!!僕は誰も殺したく無いんだ!!」
朱雀はそう反論し、攻撃を渋っていた
「ならば尚の事です!!今はヴァリスを使い、この者達を引き離し離脱を!!」
「くっ・・・!ランスロット!!」
(Yes,My lord. VARIS,Wide Shot)
朱雀は彼女の言葉に従い、ヴァリスを放とうとする。しかし・・・
「させるか!!」(Stinger Snipe)
クロノの速射光弾魔法に翻弄され、ヴァリス発動を妨害されてしまう・・・
「くっ・・・!ならばっ!!」(Land Spiner)
意を決した朱雀が両足のブーツに魔力を送りそれを開放。
爆発的な加速を生み出しクロノに向かい突進する
メッサーソードで魔力さえ奪えれば、と朱雀はそう考えていた。だが・・・
「甘いっ!!」(Brake Impulse)
メッサーソードとクロノのS2Uが触れた瞬間、突如発生した爆発の直撃を喰らい
朱雀は後方に吹き飛ばされる

「・・・お前の戦闘形態及び魔力波形パターンは既に解析済みだ。近接戦闘に持ち込ませはしない。」
クロノは朱雀にそう言い放つ
「くっ・・・」
全身の苦痛に耐えながら朱雀は立ち上がり、クロノを見据えた
「・・・一つ訊きたい。闇の書の所為で君の父親が死んだという話・・・それは事実なのか?」
朱雀は先程の彼の言葉をもう一度確認した
「ああ、そうだ。11年前に発生した闇の書の暴走事件に巻き込まれてな・・・」
「暴走?あれは人による制御が出来ない代物なのか?」
朱雀は更に質問を投げかける
「・・・本当に何も知らないのか?あれの本性を。あれは本来持ち主の命を喰らい・・・」
クロノが朱雀の問いに答えようとしたその時・・・

「紫電・・・一閃っ!!」
魔導師達を振り切ったシグナムがクロノに斬りかかった
クロノはすんでの所でシグナムの魔力波をかわし、距離を取る

「・・・そこまでだ。朱雀様に余計な事を吹き込まないで貰おうか?」
シグナムはそう言ってクロノを睨みつける

「成程・・・そういう事か・・・おいお前、スザク・・・とか言ったな
僕達に投降しろ。お前はそこの女に騙されているんだ」
「貴様ぁっ・・・!!」
クロノの要請にシグナムがいきり立つが朱雀はそんな彼女の前方に左手を突き出し、制止する
「投降すれば、真実が分かると・・・そう言いたいのか?」
「勿論、そのつもりだ。少なくとも君には弁護の余地がある。
投降すれば君の生命の安全は保証すると約束する。だから・・・」
「朱雀様っ!!いけません!!敵の言葉など・・・」
シグナムが声を荒げて朱雀に進言するが、朱雀はまたもそれを制止する
「僕が投降すれば皆の命を奪わないと、妹を助けると、約束出来るのか・・・?」
「・・・君以外の生命の保証は出来兼ねる。少なくともそこの女は闇の書の魔導生命体だ
生かしておく事は出来ない」
朱雀は黙り込む・・・
「君達が抵抗を続けるならば排除も止む無しとの命令を受けている・・・
もう一度言う、僕達に投降しろ。これは最後通告だ。でなければ・・・」

(警告!上空に強大な魔力反応あり!広域攻撃魔法、発射態勢!!)
ランスロットが突如朱雀にそう警告する
朱雀とシグナムが空を見上げると、カレンが紅蓮を朱雀達に向けて下方に突き出し
手甲の前方に強烈な閃光とプラズマ過流を発生させていた・・・
それと共にクロノや他の魔導師達も範囲攻撃魔法の詠唱準備に入った

「・・・それが君達のやり方なのか?これは只の脅迫だ」
朱雀は怒りを顕わにしてクロノを睨みつける
「・・・それだけ僕達も本気だという事だ。本当は僕達もこんな手法を取りたくは無い・・・
だけど僕達もこれ以上の悲劇を繰り返したくは無いんだ・・・投降してくれ。頼む」
クロノはそう朱雀に頼み込んだ

朱雀はクロノの言葉を受けてシグナムにもう一度確認する
「シグナムさん、彼等の言っている闇の書の暴走・・・それは事実なんですか?」
朱雀の疑念に観念したのか、シグナムは首を縦に振りそれを認めた
「・・・我々も故あって全てを知っているわけではありませんが、おそらく彼等の
言っている事は全て”事実”でしょう・・・」
シグナムは更に発言を続ける
「詳しいことはこの場を脱してからシャマルに訊いてください。
・・・私が囮となり突破口を開きます。朱雀様はどうぞ脱出を」
朱雀は努めて冷静に彼女に質問する
「・・・つまり、シグナムさんは自分を犠牲にしてでも僕を逃がすと・・・?」
「はい。はやて様が貴方の帰りを待っているのです。騎士の使命に懸けても
必ず貴方を守り抜いて見せます。ですから・・・」

朱雀は考え込んだ・・・その後に首を横に振り、彼女の言葉を否定する
「帰りましょう、シグナムさん。二人ではやての許へ」
朱雀の予想外の提案にシグナムは驚く
「ですが、この状況を・・・」
「さっきも言ったでしょう?はやてが帰りを待っているのは僕だけじゃないって
シグナムさんも僕達の”家族”なんです。見捨てるなんて出来ません
ここは僕が何とかします。だから、無事に家に帰る事が出来たら・・・
真実を全て打ち明けて下さい。約束ですよ」
シグナムは朱雀の言葉に狼狽していたが、彼はそれを見て微笑み
クロノ達に返答を投げつける

「・・・投降は出来ない。やはり彼女を見捨てるなんて事は僕には出来ない
僕は皆ともう一度話し合って誰も殺めずに済む道を探す。
必ず誰も傷つけないと誓う。虫の良い話だという事は分かっているが
どうか見逃して欲しい。頼む!」

朱雀は彼等の提案を跳ね除け、逆に懇願する
それを聞いたカレンは大声を上げて朱雀に再度投降を促す
「御願い!投降して!今ならまだ間に合うから・・・!」
「・・・すみません。でも僕はそれでも彼女を見捨てたくは無いんです・・・」
カレンの悲痛な叫びを朱雀は済まなさそうに否定する
それを聞いたカレン他の魔導師達は落胆の色を隠せずにいた。だが・・・
「・・・残念だ。君なら分かってくれると考えていたんだが・・・」
クロノは怒りに打ち震えながら朱雀達を睨んでいた
「ならば・・・ならば実力でお前達を排除するっ・・・!!
スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!!」

クロノの掛け声と共に瞬時に生み出される無数の魔力刃
それらが一斉に朱雀に襲い掛かる!

「くっ!ランスロット!ユグドラシル・ドライブ起動!!シールド展開!!」
(Yes,My lord. Yggdrasill Drive, Begining to move.MG shell,set up!)
朱雀の右腕のユグドラシル・ドライブが光り輝き、手甲から翠色の半透明の膜が形成される
そしてその膜はクロノの魔力刃をいとも容易く弾き返していく!

「なっ・・・!?」
その状況に驚きながらもクロノは尚もスティンガーブレイドを放ち続け、
また他の魔導師達もそれを見て一斉に範囲攻撃魔法を発動し集中砲火を浴びせる
だが・・・朱雀のシールドはその豪雨の如き攻撃を右腕一つで全て弾き返していくのだった

「カレンさん!”紅帝”を!!僕達が引き付けている内に!!」
焦ったクロノはカレンにそう進言した
「・・・分かったわ。皆、離れて!!」
カレンの言葉と共に魔導師達は攻撃を続けながらも上空へと距離を取り、そして・・・
「唸れ、紅き烈光!紅帝、招来!!」

カレンの叫びの直後、紅蓮から発せられる直径20メートル以上は在ろうかと言う
巨大な紅きプラズマ過流の柱・・・
それを身動き出来ずにいた朱雀に文字通り叩きつける!!
その余りに膨大なエネルギーは大地を抉り、やがて眩い光と共に
強烈なプラズマと爆風を周囲に撒き散らす!
付近にいた魔導師達も障壁を張り自身を守るが、その余りの爆風に
障壁ごと吹き飛ばされてしまう程だった・・・
やがて爆風も収まり、辺りには目を覆う程の大量の噴煙が充満していた
カレンの持つ最強の広範囲殲滅魔法、通称”紅帝”・・・
これを喰らって生きている人間はいまいと、誰もがそう思っていた。だが・・・
「紅蓮、もう一度よ。いけるわね?」
(無論!魔力弾装填!紅帝、招来!!)
カレンは再度紅帝の発動準備を始める
彼女自身あの闇の書の守護騎士達相手にこれだけで平伏させられるとは考えてはいなかった
ならば彼等が動けなくなるまで何度でも”紅帝”を叩き込んでやると、そう思っていた
「嘘・・・どうして・・・?」
だが、噴煙が風で飛ばされ視界が回復した時に見た光景にカレンは絶句した・・・

朱雀達は無傷だった
朱雀の展開したシールドがあの強大なプラズマ過流を完全に防ぎ切ったのだ
それだけでなく朱雀のバリアジャケットがこれまでの騎士服から
白をベースにと金色のラインが入った甲冑の様な物に変貌し、手甲も腕全体を覆う程に大型化。
そしてその手甲の中に収められたユグドラシル・ドライブが
かつてない程に強大な白光を放っていた

その状況に、クロノや他の魔導師達はおろか、朱雀に守られていたシグナムさえも
驚き、呆けていた・・・

「くそっ・・・!ならばっ・・・!!」
カレンが迷いを吹っ切り再度紅帝を放とうとする。だが、その直後・・・

「ランスロット!シールド解除!並びにハーケン・ブースター発動!!」
(Yes,My lord.Harken booster,Absorb bind mode!)
朱雀の言葉と共にランスロットが前方に巨大な魔法陣を展開。
その魔法陣から数十本に及ぶ光の帯が飛び出し
それらが一斉に魔導師達に襲い掛かった

「くそっ!」(Stinger Snipe)
クロノや他の魔導師達は迎撃、防御、回避と即座に対応する
だが、その光の帯は迎撃魔法や障壁を紙の様に突き破り、爆発的なスピードで
魔導師達を追尾し、遂にはその場に居た者達全ての両腕を縛り上げてしまう

「バインド!?だが、このくらいっ!!」
クロノ達は魔力を送りそれを破壊しようとするが、光の帯が彼等の魔力を吸い尽くし
ついにはデバイスが機能不全に追い込まれてしまう

「そんな・・・これもなの・・・!?」
現在の状況に驚き、絶望するカレン
ハーケン・ブースターによって文字通り吊るし上げの状態にされて身動き一つ取れず、
魔導師達は自らの死を覚悟した。しかし・・・
「シグナムさん、行きましょう。」
と、朱雀はそうシグナムに進言した
無論シグナムはそれに猛反発する
「何故です!?今ここで奴等を仕留めなければまた・・・」
「でも、それでも僕は誰も殺したくはないんです」
朱雀は冷静に自分の思いを述べ、シグナムの発言を阻んだ
「・・・ならばせめて闇の書の纂集を!!命は奪わずとも足止めにはなるでしょう!!」
シグナムの憤りは止まらなかったが、それでも朱雀は首を横に振る
「・・・シグナムさん、僕は彼等に妹と同じ様な思いを味わわせたくは無いんです・・・
彼等も守りたい者の為に戦っていただけですから・・・御願いします、どうかこのまま・・・」

朱雀は悲しみの表情と共にシグナムに頭を下げた
それをみた彼女は沈黙し、考え込む・・・
(そうだ・・・我等の今の主はこういう方なのだ・・・だからこそ、我等は・・・)
朱雀の愚直なまでの優しさに溜息をつきながらも、安らぎを感じていた

「ふうっ・・・全く、貴方という方は・・・仕方ありませんね・・・
では急ぎこの場より離脱しましょう。奴等の増援に来られては厄介ですから」
「本当にすみません、シグナムさん」
朱雀は嬉しそうにシグナムに頭を下げた
「構いませんよ。では、行きましょうか」
「あっ、ちょっと待ってください」

朱雀は魔導師達をゆっくりと地面に降ろし、ハーケン・ブースターを解除した
カレンはそんな朱雀の行動に声を荒げて反論する
「どうして・・・どうして私達に止めを刺さないの・・・!?」
「・・・そうしたく、無いからです・・・」
朱雀はカレンを見詰めてそう答えた
「・・・貴方みたいな人がどうして闇の書の復活なんかに手を貸すの!?
何でよ!?答えなさいよ!!」
カレンは涙ながらに朱雀にそう訴えた。朱雀はそんな彼女に深く一礼し・・・
「ランスロット、転移ゲートの位置は?」
(南南西約150キロの位置にあります)
「・・・済みません。いくぞ、ランスロット!」
(Yes,My lord.Flight ynit get set)
悲しそうな瞳をカレンに向けた後、朱雀は彼女達の許から飛び去った・・・
「くっ、そおぉぉぉぉっ・・・!!」
二度も敗れ、その上情けまで懸けられた・・・
クロノは自分の無力さに憤り、地面に拳を突きつけた
カレンや魔導師達も同様の思いに駆られ、自責の念に苛まれていた・・・
その時だった・・・

「カレンさん、皆さん、大丈夫!?」
突如エィミィの声がデバイスから飛び込んで来た
アースラがなのは達を引き連れ救援に来たのだ
「ええ、全員無事です・・・」
カレンがそう応答し、リンディやエィミィ、なのは達はホッと胸を撫で下ろす
「・・・ですが、私の失策で対象を取り逃がしてしまいました・・・
責任は全て、私にあります・・・」
カレンの言葉にリンディは首を横に振って答える
「いえ、貴方達は良くやってくれたわ。責は私が負います
なのはさん達や救護班をそちらに回します。今は撤退し、ランペルージ師団長と
今後の善後策を練り直しましょう。」
「そうですね・・・なのは達だけで奴等を追撃するのは自殺行為以外の何者でも・・・」
クロノがリンディの提案を受け入れようとしたその時
カレンが突如クロノの発言を阻んだ

「・・・待ってください。なのはさん、フェイトさん、そしてアルフさんをアヴァロンの
”緊急転移射出発進用ランチャー”に移送してもらえないでしょうか?」
カレンの提案に驚くリンディやクロノ
「カレンさん?一体何を・・・」
二人は同時にカレンに質問を投げかけるが、彼女は尚も発言を続ける

「私に、考えがあります」

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2007年06月15日(金) 16:35:21 Modified by beast0916




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