なのはA's×ギアス19話

「・・・全システムのリカバリー、完了しました。状況図、出ます。」
その頃、アースラのブリッジでは・・・
アヴァロンのドルイド・システムによって通信系の機能を回復させ、
艦内部の被害状況がメインモニターに映し出される

「・・・副動力炉のエネルギーパイプ損壊!第一、第二、第三、全てのデータベース大破!
居住区の一部にて火災発生!メイン転送ゲート使用不能!それと・・・これは!?
第一危険物保管庫の侵入者探知システムが完全に破壊されています!!」
「・・・そこは確か彼のデバイスを保管していた・・・!?第二留置室は!?
状況は、どうなっているの!?」
リンディが慌てて管制員に問いかける
「・・・第二留置室の警備に当たっている局員達の生体反応は感知しているのですが・・・
こちらからの呼びかけに応答しません。現在監視モニターの復旧作業を・・・完了しました。
メインモニターに出します」

メインモニターに映し出された映像を前に、ブリッジに居た全ての者達の表情が凍りつく・・・
留置室を警備していた局員全てがバインドで繋がれ身動き一つ取れず、更に
留置室内部で朱雀を拘束していた筈のベッドがもぬけの殻となっていたのだ・・・

「・・・やられた。奴は、八神朱雀は!?艦内のサーチャーで探知出来るか!?」
ルルーシュが管制員に問いかける
「・・・駄目です!探知機能は正常に稼動していますが、ジャミングによる探査妨害で
艦中央部の生体反応が探知出来ません!!」
「ちぃっ・・・!第一部隊は直ちに艦中央部に向かい、逃走した八神朱雀、並びにそれの
手引きをした物達の捕獲、もしくは排除を行え!!第二部隊は居住区に向かい、内部の消火、
及び負傷した局員の救助と避難誘導を頼む!!両部隊共に局員の人命救助を最優先に
考え行動せよ!!シャーリー。アヴァロンの救護班、医療班、技術班をこちらに回せ!!
アースラ内部の応急処置と負傷した局員の救護をさせる。急げ!!」
『了解!!』
ルルーシュの命を受け第一、第二部隊はブリッジを飛び出し、シャーリーは救護の為の
人員を送り出す為に転移ランチャーを起動させる

「・・・ブリッジ、応答して!!ブリッジ!!」
直後、ブリッジにカレンからの緊急通信が入る
「・・・カレンか!今何処にいる!?」
ルルーシュが問いかける
「良かったぁ。やっと繋がった・・・って、ルルーシュ!?貴方一体今まで何をしていたの!?
八神朱雀が脱走したっていうのに何で留置室から・・・」
「・・・そんな事はわかっているっ!!俺はお前が今何処にいるか聞いているんだっ!」
「・・・救護室よ。私はクロノ君達と一緒に負傷した人達を救助してたんだけど・・・
その間になのはさんとフェイトさんが彼等と遭遇して・・・」
カレンの口からなのはとフェイトが朱雀達に襲われ、負傷したいきさつが語られる・・・

「・・・それで、なのはさんやフェイトさんは!?まさか命に関わる様な状態では・・・!」
リンディは青ざめた表情でカレンから二人の現在の容態を聞きだす
それを尻目にルルーシュは管制員にアースラ内部の見取図をサブモニターに展開させ
朱雀達の逃走経路を模索していた
(・・・カレンの話では今回の犯行は単独犯によるもの・・・保管庫からランスロットを奪い・・・
留置室に居た八神朱雀を連れ去り逃走・・・救護室を通過し・・・その先は・・・まさか・・・)
「・・・非常用転移ゲートは?生きているのか?」
ルルーシュが問いかける
「・・・はい。非常用転移ゲートの動力は予備系統からの供給を受けていますので現在も
正常に稼動しています。ですが、非常用転移ゲートは艦長やエイミィの許可が無ければ
使用出来ない様になっています。ですから事実上使用・・・」
「・・・分かった。有難う・・・」
ルルーシュは管制員に礼を言う。その直後、彼は自身の首飾りを外し右の手の平の上に据える

「・・・ガウェイン、頼む」
(Yes,My lord.Device mode,set up)
ルルーシュがそう言うと彼の右手にある白銀の錨の様な小物から声が発せられ
直後にその小物は光と共に勇壮な白銀の三叉の槍へと変貌し、彼の手に握られる

「ガウェイン、目標は非常用転移ゲートだ。座標は分かるな?」
(はい。ドルイド・システム起動。転移先の座標を入力、監査開始・・・
転移先の環境、並びに次元交錯線に異常無し。いけます。)
「・・・よし、では行くぞ。」
(Yes,My lord.dimension shift)
ルルーシュがガウェインを前方にかざし、意識を集中する
やがて彼の足元に魔法陣が展開し、穏やかな光を発していく・・・

「・・・ルルーシュさん、私は救護室に行きます。ここの指揮は・・・ってルルーシュさん!?」
なのは達の身を案じたリンディがこの場をルルーシュに任せ救護室に向かおうとした矢先・・・
彼が転移魔法を展開している事に気付き、驚く
「リンディさん、私は非常用転移ゲートへ向かいます。後の事は頼みます」
「非常用転移ゲートって・・・あそこは私やエイミィさんの転移コードが無ければ・・・」
「・・・この状況で今更そんな物、信用出来ませんよっ!!」
ルルーシュはリンディにそういい残し、転移法陣ごとその場より消失した・・・

ルルーシュは瞬時に非常用転移ゲートの直ぐ目の前まで転移する。だが・・・
「・・・ふっ、遅かったな・・・」
彼の目の前にジェレミアが立ち塞がり、その向こうの転移ゲートでは
既に朱雀が転移の発動準備に入っていた

(・・・やはり・・・)
自らの予測が当たっていた事にルルーシュは苛立つ

「ジェレミアさん!今助けに・・・」
「・・・無用だ。貴様は先に行け。」
朱雀の好意をジェレミアが突っぱねる
「でも・・・それでは・・・」
「いいから早急と行けっ!!」
「えっ!?ジェレミ・・・!!」
ジェレミアは強引に朱雀を転移ゲートの上に押し出し、そのまま転移させてしまう・・・
「ちぃっ!!・・・貴様、何者だ・・・?何故奴に手を貸す?貴様は奴とどういう関係・・・」
「・・・答える必要など無い・・・」
「・・・何っ?・・・!?ちぃっ!!」
ジェレミアがルルーシュの問いを拒絶した直後・・・
彼はバインドを展開しルルーシュを縛り上げてしまう。しかし・・・
(Dimension slip)
ガウェインがそう言い放つと、ルルーシュに掛けられたバインドの存在次元をずらし、
バインドを無効化してしまう
「・・・話し合いの余地は無い、という事か・・・ならばっ!!」
(Graviton lancer)
意を決したルルーシュがガウェインの刃先に重力波を発生させる
ジェレミアとの間合いを計り、彼に斬りかかろうとした、その時・・・

「・・・ふっ・・・」
ジェレミアが不敵的な笑みを浮かべ右手に魔法陣を展開。
そこから衝撃波が発せられ、ルルーシュの真上の天井部分を撃ち抜く
「・・・何っ!!?」
衝撃波によって天井が破壊され、ルルーシュは崩れ落ちる瓦礫に飲まれていく・・・
「・・・ふっ、他愛も無い・・・では、さらばだ・・・」
ジェレミアはそういい残し、転移ゲートを起動させその場を離脱していった・・・

(Gravity wall)
ルルーシュは咄嗟に重力障壁を展開し、自身に襲い掛かる瓦礫をすんでの所で
受け止め、そのまま周囲に弾き飛ばす
「・・・くそっ!舐めた真似を・・・!!」
彼がジェレミアに対し怒りを顕にしていた、その時だった

「・・・ルルーシュ、大丈夫か!?」
リンディより連絡を受け第一部隊が彼の許へと駆けつけてきた
「・・・済まん、対象を取り逃がした。俺の失策だ・・・」
ルルーシュが彼等に詫び、その場に居た物達全てが落胆の色を見せる
「・・・ともかくこのままにしては置けん。アースラには第二、第三部隊を残し
艦の修理と負傷者の救助を引き続き行わせる。我々はアヴァロンに移乗し
第97管理外世界に直行。八神朱雀の追撃、並びに彼の妹である八神はやての
身柄の確保を行う。いいな?」
『了解!!』
ルルーシュの言葉に皆が賛同し、彼等はブリッジへと向かっていくのだった

そして一方・・・
アースラからの脱出に成功した朱雀やジェレミアはその後数回の転移を繰り返し
ようやく朱雀の家の近くにある公園にたどり着く
「・・・ふうっ、ようやく辿り着いたな・・・」
ジェレミアが溜息混じりにそう漏らす
「ええ、そうですね・・・。すみませんジェレミアさん。僕は妹の所へ戻りま・・・」
「・・・待て」
朱雀が急ぎはやての許へ戻ろうとするのをジェレミアが制止する

「戻ってその後どうするつもりだ・・・?今の貴様に妹を救う手段があるのか?
闇の書による干渉で貴様の妹は余命幾ばくも無いのだぞ」
朱雀はハッとし、顔を俯かせる
「・・・そうだ。はやては・・・僕は、どうすれば・・・?」
「・・・まだ、打つ手は有る」
「えっ!?それは、本当ですかっ!!?」
ジェレミアの意外な発言に朱雀は思わず大声を上げてしまう

「・・・闇の書だ・・・」
「・・・えっ?」
「・・・聞いたと思うがアレは元々は魔術を行使する為に生み出された触媒だ。
それ故アレにはその創始者や歴代の持ち主達が行使していた様々な秘術やそれに関する情報が
記録されている・・・。貴様達がこれまで蒐集という行為で蘇らせて来た闇の書のページ・・・
もしかするとその中に貴様の妹を救う手立てが記されている、やも知れん・・・」
「・・・ですがアレに書かれている文字は僕には読めません。それにもしあの文字を読めたとしても
魔術を行使する為のイメージを浮かべる事が出来ません・・・」
朱雀はジェレミアに対しそう反論する

「・・・”読む”のでは無い。”取り込む”のだ・・・」
「取り込む、って・・・、それは一体・・・?」
「魔力にはその”モノ”の情報、つまり記憶を封入し保存するという性質を持っている。
闇の書もまたその例外ではない。闇の書の魔力を貴様の持つ能力、”デヴァイサー”を用いて
吸収し、その魔力をランスロットのドルイド・システムに通し解読を行わせ
その上でそれらの情報を貴様の頭に叩き込めば良い」
「そんな事が、本当に出来るんですか・・・?」
朱雀は疑いの目を隠さずにジェレミアを問い詰める

「・・・貴様は先程、アースラ内部で接触したあの少女の記憶に触れたのでは無いのか?」
朱雀はなのはの魔力を吸い取った時に見た彼女の記憶を思い出す
「・・・そんな、あれが・・・、僕の・・・?」
朱雀は目を大きく見開いてジェレミアを見つめる
「そうだ。他者の魔力を通じそれに込められた記憶や情報を我が物とする・・・
”デヴァイサー”の応用だ。我々はそれを”蒐集行使”と呼んでいる・・・」
「蒐集・・・行使・・・」
朱雀はジェレミアの放った言葉を反芻する
「・・・後はその知識を用い貴様の妹を救い出せば良い。どのみちそれが出来なければ
貴様の妹は果てるしか無いがな・・・。話は以上だ。私は他にすべき事がある。後は・・・」
「・・・待ってください・・・」
立ち去ろうとしたジェレミアを朱雀が制止する

「・・・僕と、妹には・・・お世話になってきた人がいるんです・・・。グレイ、という人なんですけど・・・
もし、もしも貴方がその人に出会う事があったら・・・僕の代わりに、有難うと・・・
伝えて、もらえませんか・・・?」
「・・・何を訳の分からん事を言っている・・・?気でも振れたか・・・?」
ジェレミアは一瞬驚いた表情を見せ朱雀に問いかける
「・・・いえ、何でもありません、忘れて下さい。それじゃ僕は行きます。
ジェレミアさん、有難うございました・・・」
朱雀はジェレミアに礼を言い、その場から立ち去るのだった
「どうやら気付いていた様だな・・・あの男は」
付近に隠れていたヴィレッタがジェレミアに話し掛ける
「ああ、その様だな・・・」
「・・・どうしたジェレミア?情でも移ったか・・・?」
「・・・否定はせんさ・・・。だが、私、いや我々にはやらねばならぬ事がある・・・
それを忘れたつもりは無い。案ずるな。」
「・・・そうか、ならば良い・・・」
(・・・そうだ。やらねばならぬ・・・”11年前の復讐”を、何としても・・・!!)
ジェレミアは苦虫を噛み潰した様な表情で立ち去る朱雀を眺めていた・・・

朱雀はそのまま自分の家の前へと帰り着く。その姿を見かけたザフィーラが驚き
朱雀の許へと近づき問いかける
「すっ、朱雀様!?ご無事で・・・!?」
「済みません、ザフィーラさん。何とか、帰って来ました。」
「良かった・・・!!ともかく、今ははやて様の許へ・・・!」
「待てっ!ザフィーラっ!!」
朱雀の帰還に安堵したザフィーラが彼をはやての許へと案内しようとした、その時・・・
突如として響く声に驚き、立ち止まる
「シグナムさん・・・」
シグナムが家の玄関から姿を現し、朱雀の許へと近づく。そして・・・
「なっ・・・!何をするのだシグナム!?主に向かって・・・!!」
シグナムが突然レヴァンティンを朱雀の眼前に突きつけ、ザフィーラを驚愕させる
朱雀はそんなシグナムを毅然とした態度で見つめていた

「申し訳ありませんが、貴方をはやて様の許へとお連れする事は出来ません。
私は”朱雀様よりはやて様を死守せよ”との命を受けております。今の貴方がはやて様の
味方であるという確証はありません。どうかお引取りを。」
「何を言っているのだっ!?朱雀様に向かって・・・」
ザフィーラは声を荒げてシグナムに反論する
「黙ってろっ!!もし貴方がここを通りたいというならば私を討ち倒してからにして頂きたい。
それが私からの回答です」
シグナムは朱雀に敵対する態度を崩さず、彼を睨みつける・・・
それを見た朱雀は左手を突き出し、そして・・・

「すっ、朱雀様っ!?何を・・・!?」
朱雀はレヴァンティンの切っ先を左手で握り締める。彼の左手から血が流れ、
腕を伝っていく・・・
「シグナムさん、分かってます。ですが今は僕をはやての許へと連れて行って
もらえないでしょうか・・・?」
朱雀がシグナムに問いかける
「お断りします。貴方がはやて様を時空管理局の者達に引き渡す可能性がある以上、ここを・・・」
「そんなつもりはありません。彼等のやり方でははやては助かりません。だから・・・」
「信用出来ません。どうしてもというとなら、私を・・・」
シグナムはそれでも朱雀に対する疑念を持ち、彼の前に立ち塞がる
そんな彼女に業を煮やした朱雀は、彼女の頬をパン、と叩く・・・

「朱雀様・・・?」
突然の朱雀の行動に驚き、呆ける二人・・・
そんな二人を朱雀は怒鳴りつける
「・・・いい加減にしろっ!!僕ははやてや皆を助けたいからここに戻って来たんだっ!!
主とか下僕とかじゃない!!はやてや・・・皆は、僕の家族だからっ!!
皆を・・・見捨てるなんて出来ないから・・・だからっ、僕はっ!!」
「朱雀様・・・」
「そんなに僕が信用出来ないなら僕を殺せばいい!!だけど、僕は、諦めないっ!!
シグナムさんにどう思われていようと、はやてや・・・シグナムさん・・・みんなを・・・必ず・・・
助け出してみせるっ!!」
朱雀は強い覚悟を持ってシグナム達を見つめていた・・・
そんな朱雀の想いをシグナムは真摯に受け止め、レヴァンティンを鞘に収め、朱雀の前に跪く
「申し訳ありません、朱雀様。処分は如何様にでも・・・」
シグナムは朱雀に詫びる
「・・・いえ、僕もシグナムさんを殴ってしまって・・・本当に済みません・・・
ともかく今ははやての所へ・・・」
「畏まりました・・・こちらへ・・・」

朱雀、シグナム、ザフィーラははやての部屋へと急ぐ
朱雀がはやての部屋へと到達しドアを開けた時、ヴィータとシャマルが泣きながら
朱雀の所へと抱きついてきた
「朱雀っ・・・すざくぅっ!俺・・・俺・・・!!」
「朱雀さんっ!!良かった・・・本当に良かった・・・!!」
「二人共・・・本当に済まない・・・それで、はやては・・・?」
「はい・・・こちらです・・・」
シャマルによりはやてのベッドの前に案内される朱雀
そこには呼吸を乱し憔悴したはやての姿があった・・・

「朱雀兄ぃ・・・?」
はやてが朱雀に問いかける。
「ごめん、はやて。帰って来るのが遅れて・・・、本当に・・・!」
朱雀ははやての両手を掴み彼女の言葉に応じる
「・・・ううん、ウチは大丈夫や・・・。朱雀兄ぃや、みんながいてくれるだけで・・・ウチは、それ・・・」
「もういい、今は休んで。お前の事は、必ず、僕が助けるから・・・」
「・・・大丈夫やて。ウチは・・・」
「・・・僕を、信じて・・・」
朱雀に心配を掛けまいとして嘘を言うはやてであったが、朱雀はそれを無視し、
はやてを勇気付ける
「・・・うん、ありがとな、朱雀兄ぃ」
「ともかく、今は休んで、いいね?」
「・・・うん」

朱雀ははやての後頭部に右手をあて、魔力を少しだけ吸収し、眠りにつかせた
その後シグナム達の許へと振り返り、尋ねる
「シグナムさん、闇の書を僕に貸してもらえませんか・・・?」
朱雀の意外な発言に一同は驚く
「闇の書を、どうするおつもりですか・・・?」
シグナムが尋ねる
「闇の書に書かれている秘術を解読し、妹を助ける手立てを探します」
「そっ、そんな・・・!まさか闇の書に直接蒐集行使を!?危険です!!
そんな事をしたら精神汚染を起こす可能性が・・・!」
シャマルが慌てて朱雀を止めようとするが、朱雀は冷静に彼女を説得する
「ですが妹を助ける手段がこれしか無いのも事実です。御願いです、やらせて下さい」
「でも・・・!」
「僕を、信じて下さい・・・どうか、御願いします・・・」
朱雀は皆に頭を下げ懇願する。それを見たシグナムは彼に闇の書を差し出す
「・・・シグナム!?」
「いいのだ・・・!朱雀様、貴方に全てを託します。どうか、はやて様を・・・」
シグナムから闇の書を受け取り、朱雀は頷く

「いくぞ、ランスロット。頼むぞ」
(はい、我が主。ドルイド・システム起動。闇の書よりの魔力を吸収、
全情報の解析、並びに翻訳を開始します)

朱雀は闇の書に意識を集中させ、少しずつそれの魔力を奪っていく・・・
その魔力をランスロットに通し、情報解析を行わせる
「ぐっ、ぐあっ・・・ぐあああああああああああああっ!!」
朱雀の頭の中に余りにも膨大な情報が流れ込み、激痛が走る
(ちっ、違う・・・これも・・・これも・・・違う・・・)
朱雀は激痛に耐えながら、必死にはやてを救う手段を探していた、そして・・・
(・・・これなら・・・もしかして・・・!!)
はやてを助ける手段を見つけ出し、闇の書を振り落とす
「ぐっ・・・!!はぁっ、はぁっ・・・!!」
頭を抱え苦しむ朱雀。その様に慌てて4人は朱雀の許へと駆け寄る
「朱雀っ!!大丈夫かっ!?」
ヴィータが不安そうに朱雀に尋ねる
「・・・大丈夫だ、済まないヴィータ。それよりも少し離れてもらえるか?
はやてを助ける手段を見つけたから、試してみたいんだ」
「ホントか!?ホントに・・・はやてが助かるのか・・・!?」
ヴィータの問いに朱雀は首を縦に振って頷く
そしてはやての前に歩み寄り魔法陣を展開。魔法の詠唱に入った

「・・・大気と冷気の英霊よ。我橋渡しとなり願うは婚礼の儀式。
汝ら互いに結びつき、其の四方五千において凝固せよ・・・」
朱雀の魔法詠唱と共にはやての身体が宙に浮かび上がり、
やがて眩い光にはやてが包まれていく・・・

「これは・・・!?まさか空間凍結魔法!?そんな・・・!?
朱雀さんが・・・これほど高度な魔法を使いこなすなんて・・・!」
シャマルが驚き、声を上げる
「んな事どーでもいいよ!!それより、はやては、ホントに助かるのか!?」
ヴィータがシャマルに尋ねる
「・・・助かるわ・・・。けど・・・」

やがて光が収まり、辺りが静まり返る・・・
だが、はやてが忽然と姿を消していた・・・

「えっ・・・?はやては・・・?はやては、どこに・・・?」
「・・・はやては・・・ここだ・・・」
朱雀はヴィータに自身の手の平程の大きさの青白く輝く結晶を手渡す
「・・・おい、朱雀・・・冗談だろ?はやてが、こんな・・・」
「いや、これが、はやてだ・・・」
朱雀はヴィータに悲しそうな顔を向けそう言った
「・・・何でだよ・・・。何ではやてがこんな姿になんなくちゃいけねーんだよっ!?
答えろっ!朱雀っ!」
逆上したヴィータが朱雀に掴みかかり、それをザフィーラやシャマルが慌てて押さえ込む
「ヴィータちゃん落ち着いてっ!!仕方が無いのっ!!こうしなければはやてちゃんが・・・!!」
「だから何でなんだよっ!?何でこんな・・・!」
「落ち着けっ!!」
暴れまわるヴィータをシグナムが一喝する

「シグナム・・・」
「シャマルの言うとおりだ・・・。はやて様の身体は深刻な魔力不足で窮地に陥っていた・・・
それを朱雀様は・・・はやて様の肉体の時間経過を停止させ、身体の魔力負担を無くしたのだ・・・
そうしなければ・・・はやて様は・・・いずれ・・・朽ち果ててしまう・・・」
シグナムは涙を流しながらヴィータに説明する
「そんな・・・じゃあ、はやては・・・このまま、なのかよ・・・?」
ヴィータは震えながらシグナムに問いかける
「・・・そうだ。我らが闇の書の蒐集を果たし、はやて様が闇の書の真の所有者になるまでは・・・」
「そんな・・・んな馬鹿な事があるかよっ!?何で・・・はやてが、こんな・・・!!
はやて・・・はやて・・・はやてぇっ!!!」
朱雀を除いた皆がはやての惨状に絶望し、泣きつくしていた・・・

そして一方・・・
ルルーシュ率いる第一部隊は海鳴市に到達し、朱雀達を捜索していた
「・・・この空間のズレ・・・あの家か」
朱雀の使った空間凍結魔法を感知し、ルルーシュは朱雀達の居場所を突き止める
「よし、あの家を中心にして拘束結界を展開しろ。奴等をここで抑えるぞ。」
『了解!!』
ルルーシュは第一部隊に命じ、朱雀の家の周囲に拘束結界を展開していった

「この感じは・・・」
「・・・まさか」
「・・・ああ、奴等だ」
「そんな・・・こんな所にまで」
「仕方有るまい・・・既に朱雀様の素性が知れているのだからな・・・」
朱雀達5人は、ルルーシュ達の展開した結界の波動に気付く

「・・・私は時空管理局第4特務師団師団長、ルルーシュ・ランペルージだ。5分待つ。
今すぐ武装を解除し、我々に投降せよ。繰り返す、武装を解除し、我々に投降せよ・・・」
ルルーシュは朱雀達に投降を促しながら、第1部隊に朱雀の家を包囲させていたのだった

「許さねぇ・・・アイツ等ぜってぇ許さねぇっ!!まとめてブッ潰して闇の書のエサに・・・!」
「・・・いえ、脱出しましょう」
いきりたつヴィータを制止し、朱雀はこの場よりの離脱を提案する
「だけどっ・・・!!」
「ヴィータ・・・気持ちは分かるけど、今はやてを護る事が出来るのはもう僕達だけなんだ・・・」
「・・・」
ヴィータは黙り込む
「それに・・・僕はもうここの人達をこんな事に巻き込みたくは無い。僕達はこの世界から
離れるべきなんだ・・・」
「朱雀・・・」
「僕達全員ではやての事を護り、闇の書の事も何とかして・・・そして全てが終わったら・・・
皆でこの家に戻ってこよう。だから、それまで我慢してもらえないだろうか・・・?」
「・・・朱雀・・・うん・・・うん・・・!」
ヴィータは朱雀に抱きつき、泣きながら頷く
「いい子だ・・・。シグナムさん、僕が結界を破壊します。皆はその隙に脱出してください」
「いえ、結界の破壊は私が行います。朱雀様が先に脱出なさってください」
シグナムは朱雀にそう反論するが、朱雀は首を横に振る
「シグナムさん・・・さっきも言いましたけど、みんなは僕やはやての家族なんです。
誰も失いたく無い気持ちは僕も同じですし、それに僕もはやてを残して死ぬつもりは
ありません。信じてください。僕の想いと、そして”力”を・・・。」
「・・・かしこまりました。全ては、我らが主の御心のままに・・・」
「・・・シグナムさん。僕達は家族ですよ・・・」
朱雀は苦笑いをしながらシグナムをたしなめる
「あっ・・・すっ、済みません・・・私とした事が・・・」
シグナムは顔を赤らめながら朱雀に詫びる。
「ホント、シグナムって頭かてーよなぁ」
「まぁ、そこがシグナムのいいトコロなんでしょうけど」
「ふっ・・・そうシグナムを責めるな。全ては主を思ってこその事だ」
皆の緊張が一気にほぐれる
「まぁ、いいでしょう。さて、僕は下に行きます。僕が結界を破ったら皆は全力で
上に逃げて下さい。それまではこの部屋で待機です。いいですね?」
「解りました」
「おう!!」
「はい!!」
「承知いたしました」
4人は朱雀の提案を快く受け入れ、それぞれの口調で応答する。それを見た朱雀は
笑顔を見せながら部屋を後にする
階段を下りながら朱雀は結界をどう打ち破るかをランスロットと相談する
(・・・前回と違い敵の包囲を打ち破りながらの結界破壊となると、メッサーソードや
ハーケン・ブースターでは時間が掛かり過ぎてかえって危険です。推奨出来ません)
「そうなると、変質させるのではなく砲撃系の魔法をぶつけて破壊、という手段を取らなければ
ならない訳か・・・」
(はい。それがベストです)
「それについてなんだが・・・ちょっと考えがあるんだけど・・・」
朱雀は自分の考えをランスロットに打ち明ける
(・・・それはかなり危険な賭けですね・・・私は推奨しませんが・・・)
「解ってる。でも、恐らくあのルルーシュっていう人は相当な実力を持っている筈だ。
逆にここまでしなければ彼を抜く事は出来ないと、そんな気がするんだ・・・」
(承知しました。では”後”の方の詠唱はお任せください。
朱雀様は”前”の方の詠唱を御願いします)
「ああ、解ってる。行こう、ランスロット」
(Yes,My lord.Divine buster.Stand by ready)
ランスロットが朱雀の案を了承し、魔法の詠唱を始める。
「来よ、白銀の風、天よりそそぐ矢羽となれ・・・」
そして朱雀もまた、魔法の詠唱を始めるのだった

「・・・時間だ。ガウェイン、頼む」
(Yes,My lord.Bariiier Jacket,set up)
ルルーシュはガウェインに命じ、バリアジャケットを装着させる
黒を基調とし、金色のラインの入った甲冑の様な威厳のある容貌で
さしずめ黒の皇帝、という言葉が似合いそうな、そんな姿であった
更に背中には翠玉色の魔力翼を左右対称に3枚ずつ、計6枚展開し
右手の手甲にはランスロットと同じ”ユグドラシル・ドライブ”が組み込まれていた

ルルーシュが部下達に突入を指示しようとした、その直後・・・
家のドアから朱雀が出てくるのを見つけ、身構える
(奴一人だけ・・・?他の者達は、中にいるのか・・・?)
ルルーシュがそう考えていると突如朱雀が足元と自身の眼前にそれぞれ形の違う魔法陣を展開する
「ランスロット、サポートを頼む。いくぞっ!フレスベルグッ!!」
朱雀の眼前に生成される複数の魔力反応弾。それらが一斉にルルーシュ達に襲い掛かる
「こんな至近距離で広域型魔法だと!?正気か!?くっ、ガウェイン!!」
(Yes,My lord.Dimentional canceller,set up)
ガウェインのユグドラシル・ドライブが光り輝き、ルルーシュの前方に巨大な
召還系の魔法陣が形成される。そしてその魔法陣は、朱雀の発した反応弾を
一つ残らず吸い取ってしまう、だが・・・

「なのはちゃん、済まない・・・。君の魔法、使わせてもらうっ!!
撃ち貫けっ!!ディバイン・バスター!!」
ランスロットがあらかじめ詠唱しておいた魔法・・・
なのはの記憶を奪い習得した直射砲撃魔法ディバイン・バスター・・・
朱雀は先ほどの魔法陣を解除し、右腕に円環型魔法陣を展開。
右の手の平から膨大な魔力波動が放射される
「何っ!?」
その魔力波動はルルーシュをかすめ、やがて結界上部へと到達する。そして両者は互いに
干渉しあい、やがて結界はディバイン・バスターと共に完全に消滅するのだった

「すげえ。朱雀の奴、いつの間にあんな事が・・・」
家の中で結界が破壊される様を見ていたヴィータは驚き、呆けていた
「驚いている場合ではないぞ。ヴィータ、お前は私と共に敵の前衛の排除を行え。
シャマルは転移ゲートの展開準備を。ザフィーラはシャマルと朱雀様の援護を頼む」
シグナムの指示を3人は頷いて承諾する
「ぜってー、ぜってー、この家に帰ってくる・・・」
「朱雀さんや、はやてちゃんと一緒に・・・」
「あの頃の平穏を、必ずや・・・!」
「では行くぞ。ぬかるなよ!!」
4人は一斉に二階の窓から飛び出し、上空へと飛翔していくのだった

「ちいっ!!先程の第一波はオトリか・・・やってくれる!!八神朱雀の相手は俺がする!!
お前達は守護騎士達の排除に当たれ!!いいな!?」
『了解っ!!』
ルルーシュの命を受け、第一部隊がシグナム達と交戦状態に入った

「行くぞガウェイン!!」
(Yes,My lord.Graviton lancer)
ルルーシュがガウェインの刃先に重力波を発生させて朱雀に向かい突撃する
「来るぞ、ランスロット!!」
朱雀もまたメッサーソードを抜き取りこれに応戦する

ルルーシュ・ランペルージ、そして八神朱雀・・・
後に”黒の賢皇””白の聖騎士”と呼ばれ、ミッドチルダの歴史に名を残す二人の偉人・・・
二人の出遭いは、戦いという哀しき形で始まるのであった・・・

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2007年06月18日(月) 18:23:48 Modified by beast0916




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