マスカレード6話

ブレイドがスネークロードと取っ組み合いになる。一応『アングィス・マスクルス』という名前があるが、長いので以下はマスクルスと表記します。
ブレイドが振るうブレイラウザーはマスクルスの体を傷付け、同時にスネークロードの格闘攻撃もブレイドの装甲、『オリハルコンエレメント』を傷付ける。
しかし、そこに突如バイクが突っ込んできて……
「変身!」
バイクに乗った男はそう叫ぶと、バイクごとその姿を変身させ、ブレイドとマスクルスの間を走り抜け、二人を弾き飛ばした。
そして今までと同じようにベルトを青く輝かせ、薙刀状の武器、『ストームハルバード』を取り出し、それを変型させるアギト。
こうして二人のライダーがマスクルスと対峙することとなった。

「おい、あんた一体何者なんだ!」
アギトに質問しながらもマスクルスへとブレイラウザーを振るうブレイド。
「…………。」
質問されたアギトはブレイドを無視し、マスクルスへと攻撃を続ける。
一方マスクルスも槍のような武器、『審判の杖』でブレイドの攻撃を受け流し、アギトへと攻撃する。
お互いに攻撃を入れるアギトとマスクルス。だがこうなるとマスクルスにとってはブレイドが邪魔になってくる。
その時……
「く……!」
ブレイドは背後から何者かの攻撃を受ける。何事かと振り向けば、そこにいたのは赤いアンノウン。
女のような姿をしたアンノウンだが、こいつもまたスネークロードだ。
『アングィス・フィミネウス』という名前があるが、これも長いので以下フィミネウスと表記します。
「……またアンノウンか!」
一先ずさっきまで自分が戦っていたマスクルスはアギトに任せ、この赤いスネークロード、フィミネウスの相手をすることにしたブレイド。


ブレイドはさっきと同じようにブレイラウザーを振るい、フィミネウスにダメージを追わせていく。
「…………!」
だがそこでこれ以上攻撃を受けまいとフィミネウスはムチのような武器を取り出し、ブレイドに反撃を始める。
なんとかムチをかわしたブレイドは、一瞬の隙をついて再びフィミネウスの懐に飛び込んだ。
「(俺はこんなところで負けない!人々を守るためにも……!)」
その強い思いと共にブレイドはラウザーを横一線。その衝撃で怯んだ隙にラウザーのカードボックスを扇状に広げ、そこから2枚のカードを取り出した。
『スラッシュ』
『サンダー』
取り出したカードを読み込ませ、ラウザーがその名称を告げる。
『ライトニングスラッシュ』
そして発動するコンボ技、ライトニングスラッシュ。ブレイドの剣は黄色い雷を放ち……
「うおおぉぉ!!」
そのままブレイラウザーをフィミネウスへと振り下ろし、頭から真っ二つに切り裂いた。

「く……あぁぁぁ……」
そして頭上に紫の光が現れ、死期を悟ったフィミネウスはブレイドへと手を伸ばす……。

だがフィミネウスが助かる事は無かった。フィミネウスは『ドゴォォォン!』という効果音と共に爆発四散した……。


一方、アギトは……
「はぁ!」
「ぐぅ……!」
アギトの斬撃を食らいのけぞるマスクルス。ブレイドの時よりも有利に戦っている。
お互いが振り下ろす攻撃を受けては流しを繰り返し互角に見える二人。
だがアギトの方がわずかに有利だ。マスクルスの方がダメージが多い。

そしてしばらくマスクルスとの攻防が続いた後、アギトは体を元の金色−『グランドフォーム』−へと戻す。
「はぁぁぁぁぁぁ……」
地面にアギトの紋章を出現させ、例によって頭の角、『クロスホーン』を展開させる。
ライダーキックを放つつもりだ。
だが今までアギトはここまできてキックを邪魔されることが度々あった。二度あることは三度あるという言葉もあって……
「ディバイィィィィン……!」
アギトとスネークロードは突然の声に驚き、声が聞こえた方向……つまり上空を見上げる。
「……!?(あれは……な、なのはちゃん!?)」
驚くアギト。さっきまで一緒にいた少女が空を飛んでいるのだ。驚くのも無理は無い。
「バスタァァーーーーーッ!!!」
そしてなのはのデバイス、『レイジングハート』から放たれた桜色の光はアギトとマスクルスの間へと降り注ぐ。
「……なっ!?」
アギトは咄嗟に回避する。
数秒後。煙が晴れた時、そこにアンノウンの姿は無かった。
「(倒したのか……いや……。)」
アギトは消えたマスクルスがどうなったのかを考える。……おそらくまだ生きているのだろう。
「金色のアンノウン。今日は逃がさない!」
なのははそう言い再びアギトにレイジングハートを向ける……が、その時。
「待ってくれなのはちゃん!」
「け、剣崎くん……!?」
走って現れたブレイドがなのはを止める。アギトはこれを絶好のチャンスと見たのか、すぐさまバイクに跨がる。
「……ってまた逃げられちゃう!」
なのははそう言いアギトを追おうとするが再びブレイドに止められる。
「待つんだ、なのはちゃん!あいつは俺が追う。あいつと話がしたいんだ!」
「……え?」
「あいつは敵じゃないかもしれない!とにかく俺、追いかけるから!」
「ちょ、ちょっと……剣崎くん!?」
ブレイドはそう言い、変身を解いてブルースペイダーに跨がり、アギトが消えた方向へと向かうのだった。


ACT.6「覚醒〜ギルス〜」


数時間後、ハラオウン家。

剣崎は一人でアギトを追い掛けたが逃がしてしまった。そして今、クロノ達は報告するために帰ってきた剣崎から事情を聞いる最中だ。
「……で、キミはそのアンノウンが味方かもしれないと判断したわけか。」
「ああ。あいつは確かに俺の目の前で変身したんだ。」
剣崎はクロノ達の前で自分が見たことを報告する。
「だからって、その……ええと……」
「敵のアンノウンはあいつの事を『アギト』と呼んでいました。」
「……そう。そのアギトが人間で、しかも味方だと決め付けるのは少し早計なんじゃないかしら?」
リンディは今まで『金のアンノウン』などと呼称していた例の敵を『アギト』と呼んだ。
「でも、信じてみたいんです!」
「……。」
剣崎の熱心な目を見て考え込むリンディ。
「はぁ……あんた達も本当にうたぐり深いわね。剣崎くんの話からもそのアギトなる者が味方なのは目に見えてるじゃない」
と、そこで栞が割り込んだ。
「な……!キミはこの前までアギトは敵だと言ってたじゃないか!」
「……あんた男でしょ?いつまでもそんな細かい事言ってんじゃないわよ。」
「そんな目茶苦茶な!」
栞の言い分にクロノも反発する。そんなやり取りを見てなのはもフェイトも「あはは……」と苦笑い気味だった。



一方、バニングス家。
「じゃあ……お父さんも、襲われたんですか……?」
アリサは電話の相手にそう質問する。電話の相手は声からして、若い女性だ。
『はい。大事に至る前に助けられたので、命に別状はありません。今は病院で安静にしてます』
「そうですか……よかった。……あの、助けられたって誰にですか?」
『……目撃者の証言から、未確認生命体第4号に救われたと見てまず間違いないでしょう。』
「……未確認生命体第4号……」
『とにかく、アリサさんには護衛をつけますので安心して下さい。』
「わかりました……。」
その後、アリサは電話を切る。護衛がついたといっても、安心はできない。あんな正体不明の敵にどう対象すればいいのか、アリサにも分からないのだ。
そんな時ふと、テレビへと目をやるアリサ。

『−繰り返します。殺人犯の浅倉威が再び脱獄しました。現場の警官は全員死亡し……−』
「……はぁ……。」
アリサはそんなバッドニュースを見てもあまり何も感じなかった。と、いうよりも何も考えられなかった。
今は自分のことで頭がいっぱいだったのだ……。



「……はぁぁぁぁー…」
一方、当の浅倉 威はモンスターの力を使って脱獄し、海鳴市をさ迷っていた。警官達を食わせたのも、調度3匹のモンスター達の餌で困っていた浅倉にとっては一石二鳥だったからだ。
「あの赤いライダー、ブッ殺してやる……」
そして浅倉は自分を再び逮捕へと追いやった犯人、『カブト』への怒りをあらわにする。
そんな時、目の前に二人の男が現れる。
「……敗北も……最高の地獄だ……」
「お前も一緒に堕ちようよ……」
ホームレスのような姿の二人だが、なんとなく浅倉に似た雰囲気をした男達だ。
「なんだ?お前らは……これ以上俺をイライラさせるな……」
「お前も……俺達と同じか……」
浅倉は突然現れて訳の分からないことをぬかす『矢車』と『影山』に「なんだこいつら?」という表情をしている。浅倉がペースを乱されることも珍しい。
「まぁいい……調度イライラしてたんだ……!」
そう言い近くにあった鉄パイプを持って矢車へと走りだす浅倉。
浅倉は矢車の目前まで迫ると、「おらぁ!」と鉄パイプを振り下ろす。
これでだいたいの相手は落ちる。今までの経験からもそれを知っていたし、今回もすぐに倒せると思っていた。
「……な!?」
だが浅倉の思惑通りにはいかなかった。矢車は振り下ろされる直前にモトクロスブーツを穿いた左足を振り上げ、美しいキックのフォームで鉄パイプを受けたのだ。
さらに矢車の手にはバッタのような機械、『ホッパーゼクター』が握られていた。弟の影山も同じような物を持っている。
矢車はそのまま左足で鉄パイプを蹴り飛ばし、溜息をつきながらホッパーゼクターをベルトに装填する。
「……変身……。」
『Henshin(ヘンシン)』
同時に影山も変身し、二人はホッパーへと姿を変えた。
「……そういうことか」
そしてそれを見た浅倉もポケットから紫のカードデッキを取り出し、すぐそばにあった水溜まりへと向ける。
次の瞬間、浅倉の腰には変身ベルト『Vバックル』が装着された。
「変身……。」
浅倉はポーズをとり、矢車と似たような雰囲気で紫のカードデッキをVバックルに装填した。



浅倉が変身した『仮面ライダー王蛇』はベノサーベルを振り回すが二人のホッパーに翻弄され、なかなか決定打を与えられずにいた。
そしてまだ戦闘が始まって数分しかたっていないのだが、ダブルホッパーは浅倉を挟んで相対する位置を陣取り、ベルトのホッパーゼクターの足を倒した。
『Rider jump(ライダージャンプ)』
二人は同時に飛び上がり……
『Rider kick(ライダーキック)』
『Rider punch(ライダーパンチ)』
浅倉の左右から聞こえる電子音。
そして二方向から同時に降ってくるライダー。片方はキック、片方はパンチだ。
「うぉあっ!」
ライダーパンチとライダーキックが炸裂した王蛇はそのまま衝撃で数メートル吹っ飛び、そのまま変身が解除されてしまう。
そんな訳で浅倉は早くもノックアウトされてしまった。相手が二人なら仕方ないとも言えるが……

「……うぉぉぁぁあああ!!」
浅倉は床を転がった後、悔しそうに叫びながら地面を「ドン!」と数回殴る。
「最っ悪だぁっ!!!」
本当に悔しそうに浅倉は叫んだ。カブトに負け、ホッパーにまで負け、最近は不調のようだ。
するとそこへ地獄兄弟の二人が歩いてくる。
「最悪は、最っ高なんだよ?威くん」
「……お前も俺の、弟になれ……」
「…………」
浅倉はポカンとした表情で、黙って二人を見上げた。


翌日、私立聖祥大附属小学校。
最近では昼休みは皆で屋上というのが定着してきたのか、また皆で焼きそばパンを食べにきている。

「−アリサちゃん……大丈夫?」
「……え?あ、うん!大丈夫よ!どうかしたの?」
「アリサちゃん……顔色が悪いみたいだから……」
なのはが朝からずっとボーっとしていたアリサを心配して話かける。恐らく昨日の事が原因だろうということは察しがついていたが……。
「……そうかしら?別に何でもないわよ!」
「アリサちゃん……」
アリサは無理に強がってみせるが、それでもいつもと違うのは明白だった。

「ちょっといいか、天道……」
アリサ達と一緒に屋上にいる加賀美が、同じく屋上にいる天道に小声で話しかける。
「なんだ加賀美。俺はお前と違って暇じゃない。手短に頼むぞ」
「それが……あのアリサって娘、昨日アンノウンに襲われたらしいんだ」
「何だと?」
加賀美は「十分暇そうじゃないか!」と突っ込みたい気持ちを抑えてアリサの事を天道に報告する。
「岬さんからの情報だけど、昨日アリサちゃんとそのお父さんがアンノウンに襲われたって……」
「アンノウン……人間にはほぼ不可能な方法で人間を殺害する超越生命体……か。」
アンノウンは、最近ZECTでも存在が確認されたばかりの新たな敵で、天道もまだ戦った事は無かった。
そして少し考え込むそぶりを見せる天道。
「ああ。とりあえずアリサちゃんはしばらく俺が護衛することになった。」
加賀美はそう言い、アリサを見る。彼女の優しさを知っている加賀美は、絶対にアリサを守ろうと誓うのだった。

数時間後、加賀美は放課後のアリサの護衛のために一人で後をつけていた。
今日は珍しくなのは達と別れ、大学生くらいの青年と会っていた。読者にはもうお分かりかもしれないが、その青年こそ『葦原 涼』である。アリサが頼れる存在だ。

お互い嫌な事続きでテンションが低い。涼もアリサから「自分と父親が何者かに襲われた」という話を聞き、気を使っているのか。
「ねぇ涼……涼は私の事、守ってくれるよね?」
「ああ。もちろんだ。アリサは俺が守って見せる。」
アリサと涼は海鳴市の港を歩きながら話している。
加賀美は遠目に見ただけでも二人が恋人のような空気を漂わせていることがわかった。
だがそんな時、野暮な怪人が現れる。
「きゃあぁぁあぁ!!」
「…………!?」
アリサ達の前に現れたのは以前自分を襲ったアンノウン、スネークロードのアングィス・マスクルスだ。
そしてさらに遠くからは銃声が聞こえてくる。
「逃げて!早く!!」
銃を連射しながら走ってくる加賀美の姿を見たアリサはさらに驚いた顔をする。
「か……加賀美!?」
「いいから!早く逃げるんだ、アリサちゃん!」
尚もマスクルスに銃を撃ち続ける加賀美を見て、涼は咄嗟にアリサの手を掴み走り出した。アリサ達の姿は次第に小さくなって行く。

「よし……!ガタックゼクター!!」
アリサが見えなくなったのを確かめた加賀美は青いクワガタの形をした『ガタックゼクター』を呼び出す。
ガタックゼクターは空間を裂き、マスクルスに体当たりした後に加賀美のベルトに滑り込んだ。
『Henshin(ヘンシン)』
銀と青のアーマーが加賀美を包み、『仮面ライダーガタック』の姿になる。
「うぉぉおおおお!!」
ガタックは変身後すぐに両肩のガタックバルカンを連射し、マスクルスを倒そうとする。
ドドドドドドドッ!!
凄まじい爆音と共にスネークロードはガタックバルカンのイオンビーム光弾の嵐に見舞われる。
「……これでどうだっ!」
ガタックはしばらく撃ち続けた後、ガタックバルカンを止める。
「……まさか……逃げられた!?」
煙が晴れた時、マスクルスの姿はそこに無かった。
ガタックはしばらく辺りを散策するがマスクルスの姿は見えなかった……。

一方、マスクルスから逃げていたアリサ達は……。
「はぁ……はぁ……」
二人は息を切らしながらも必死で走り、なんとか数百メートル離れた場所へと逃げ延びる。
ここまで来れば安心かと思った、その時だった。
アリサが何かに怯えた表情で立ち尽くす。
目の前に立っていたのは外ならぬマスクルスだった。

「うぁぁぁぁああ!!」
涼は意を決し、生身のままでマスクルスへと立ち向かう。
「アリサ!逃げろ!」
涼はマスクルスを押さえ込み「逃げろ!」と叫ぶが、アリサは黙ったまま首を横に振りそこを動こうとはしなかった。
「逃げろ!!」
自分を逃がすために必死でマスクルスへとつかみ掛かる涼。涼には悪いがここは逃げるしかないと判断し、アリサは走り出した。
涼は小さくなっていくアリサを見て、少し安心する。涼はそのまま「うぉぉおお!」と気合いを入れマスクルスへと殴り掛かるが、どんな攻撃を繰り出してもマスクルスには通じなかった。
パンチもキックも呆気なく跳ね返される。
そしてマスクルスに倒された涼の近くの空間が裂け、次元断層が開く。マスクルスが開いた次元断層は凄まじい力で涼の体を吸い込もうとする。
「……うぅ……!」
涼は吸い込まれまいとあがくが、そのあがきも虚しく次元断層へと吸い込まれてしまった……。

アリサは必死に走り続け、とにかくマスクルスがいた場所から離れようとした。
しかし、遥か上空から何者かの声が聞こえることに気付いたアリサは空を見上げる。すると……
『うわぁぁあああああ!!』
叫びながら落下してくるのはさっき果敢にもマスクルスへと挑んだ涼だった。
「り、涼……!?」
驚くアリサ。だが、それだけでは無かった。アリサはさらに驚く物を目撃することとなる。

涼が地面に激突しようとした瞬間、アリサは目をつむろうとした。
だが涼が地面に激突する事は無かった。
アリサの目の前を浮かんでいるのは、緑のカミキリムシのような姿をした化け物だった。
「…………!?」
驚きのあまり目を見開くアリサ。緑の化け物はやがてゆっくりと地面に落下し、再び涼の姿に戻った。
「……アリサ……?」
「い……いや……」
気が付いた涼は目の前で怯えるアリサに声をかけるが、アリサは明らかに涼を見て引いていた。
まさか今まで信頼していた男が自分を襲った『あいつら』と同じ?
アリサは目の前にいる涼が急に信用できなくなり、同時に怖くなってきた。「こいつと一緒にいてはいけない。」そう考えたアリサは、無意識のうちに走り出していた。
とにかく涼から離れるために……。

その日の晩、バニングス家。

静かな部屋に聞こえるのは『ザァー』という雨の音だけ。夕方頃から降り始めた雨は、アリサの部屋の窓を激しく打ち叩いていた。
アリサは何をするわけでもなく、ただベッドの上で丸まっていた。そんな時……
トゥルルルルル……
家の電話の子機が鳴る。アリサはボーっとしたまま鳴り響く子機に手を伸ばし、その電話に出た。
「はい……もしもし。」
『アリサか?……俺だ』
「……涼……」
恐る恐る出た電話の相手は涼だった。

「話がしたいんだ……」
『……。』
降りしきる雨の中、電話ボックスの中から公衆電話でアリサと通話する涼。
『もう……私とかかわらないで……』
「……アリサ……?」

アリサは自室のベッドの上で丸くなりながら、涼に辛辣な言葉を告げる。
「涼も……私を襲ったあいつらと一緒じゃない……」
『…………。』
「涼のせいなんでしょ?……私とお父さんがあいつらに狙われるようになったのは……」

涼は黙って電話ごしにアリサの言葉を聞いていた。「それは違う」と言いたい所だが、それを証明する術は無い上に、涼自身もその可能性は否めなかった。
『だって、全部涼が現れてからじゃない……』
「…………。」
『お願い……これ以上私達を巻き込まないで……』
「…………わかった。」
涼はうつむきながらアリサに返事を返した。またしても信頼する人物が遠ざかっていく……。
『涼……ごめんね……』
「いや……いいんだ。……それでいいんだ。じゃあな……」
涼はそう言って静かに受話器を置いた。


翌日。

放課後、なのは達はいつも通りの道でいつも通りに帰宅しようとしていた。アリサも少し元気を取り戻したようだ。
なのは・フェイト・アリサ・すずかの4人は楽しそう話しながら歩いている。ちなみにはやては別行動である。
だが、そんな平和な空気も一転する。なのはの携帯に電話がかかってきたのだ。携帯には「クロノくん」の文字。
「もしもし。クロノくん?」
『なのは!何者かが街で暴れてる!急いで現場に向かってくれ!場所は……』

数秒後、電話を切ったなのはは険しい顔でフェイトとアイコンタクト。
「ごめん!私達、行かなきゃ……!」
「ちょ、ちょっとなのは!」
アリサは軽く驚いた顔でなのはを引き止めようとするも、なのは達はすでに走り出していた。
「行っちゃったね……」
「うん……。」
残ったのはアリサとすずかの二人だけ。二人はそのまま歩いて帰ろうと、また歩を進める。
だが、この時アリサは後ろから敵に狙われているなどと思いもよらなかっただろう。アンノウンは目標を倒すまでは決して諦めないのだから。

再びアリサを仕留めるために現れたのはマスクルスだ。今度はアリサにも気付かれる前に後から攻撃するつもりだった。
だが、その時……
「いい加減にしろ!!」
マスクルスの背後から大きな声が聞こえ、マスクルスは後ろを振り向いた。
トンネルの向こう、そこに立っていたのは、昨日自分が殺したと思っていた男だった。

男−葦原 涼ーはマスクルスの前に再び立ち塞がり、そして昨日とは違う冷静な目付きでマスクルスを睨んだ。
「……二度とアリサに触らせない!……二度とアリサの前には立たせない!!」
そう言った瞬間、「バサバサッ」と大きな音をたてて涼の周囲のハト達が飛び去った。そして涼の後ろから何かがゆっくりと歩いてくる。

『それ』はゆっくりと歩いてきて、涼の横に並んだ。緑の鎧を身に纏い、大きな赤い二つの目を持った戦士……
その名は、『仮面ライダーギルス』。


海鳴市、アーケード街。

「な、なに……あいつ……?」
天音はまたしても事件の現場にいた。一人の怪人によって人々は逃げ惑っている。天音は買い物の帰りにそこに出くわしてしまったのだ。
「……つまんないなぁ。もっと強い奴はいないの?」
怪人はつまらなさそうにそう呟く。すでに自分に挑んで来た警官達は皆殺害している。
頭からは2本の角を生やし、両腕に龍の顔のような武器を装備した灰色の怪人だ。
「あ……あ……」
怪人は今度は天音に気付いたのか、こちらに向かってくる。天音はただ怯えながらゆっくり向かってくる怪人を見つめるしかできなかった。
そして天音も目をつむろうとした、その時……
「逃げろ……!」
遠くから聞こえる声に振り向く天音と怪人。こちらに向かって走ってくる男が見える。
男は走りながらベルトに何かを装填し。
「変身!」
『Henshin(ヘンシン)!』
電子音が鳴り響き、ベルトから伸びた全身へと広がる黒い光は男の体を包む。
『Change punch hopper(チェンジ、パンチホッパー)!!』

「仮面……ライダー?」
天音はその場から動けずに、変身した男の姿を見てそう呟いた。
『仮面ライダーパンチホッパー』−『影山 瞬』−は怪人の前まで走っていき、重いパンチをお見舞いする。
「落ぉちろぉ!」
だが怪人は「?」といった感じで、ビクともしない。
「……!?」
ホッパーは今度は何発も打撃を入れる。だがそれでも相手には通じなかった。
「……そんな!?」
「つまんないなぁ……。ZECTのライダーってこの程度なの?」
そして今度は怪人の方がホッパーの体に重い一撃を入れた。
「ぐっ……!」
「この分じゃ、ZECT製ライダーには期待できないね……」
そう言いながら怪人は嘲笑うかの様にホッパーを殴り続けた。
右、左、次々と打撃が入って行く。このままでは自分が落とされてしまう。だがホッパーはなんとか最後の一発を受け止めることに成功した。
「お前、兄貴を笑ったな…?」
「……?……何言ってんの?」
自分の右腕を両手で掴みながらも訳の分からないことを言うホッパーに、怪人が問い返す。
「……悪いけど、兄貴を笑った奴はタダじゃあ帰さないぜ……!」
『Rider jump(ライダージャンプ)』
「何!?」
突然聞こえた電子音。次の瞬間、パンチホッパーの足の裏が怪人の腹に密着していた。
「……!?」
ドンッと言う衝撃と共に怪人の腹に衝撃が走る。さらに……
『Rider punch(ライダーパンチ)』
自分の腕が突然離されたかと思うと、今度は胸部へとパンチホッパーの必殺技、『ライダーパンチ』が飛んでくる。
赤く光輝くライダーパンチは力強いフォームで怪人の胸部に直撃した。
「……っ!」
まともに喰らった怪人は数足後ろへと後ずさる。
「……へぇ……ちょっとはやるみたいだね……」
ライダーパンチをまともに受けたにもかかわらず怪人は少しよろめいただけだった。通常のワームならたいていは爆発するというのに、たいした防御力である。
そして次の瞬間には、怪人の姿はスリムになり、その姿を消した。
「……これはっ!?」
この動きには見覚えがある。
そう、クロックアップだ。
それに気付いたホッパーはすぐにクロックアップする。
「クロックアップ!」
『Clock up(クロックアップ)!!』
ベルトから聞こえる電子音と共に、周囲の速度がスローになった。
「……なっ!?」
「へぇ?これがクロックアップって奴……?」
だがホッパーがクロックアップした時、既に怪人は目の前で自分の首を掴んで持ち上げていた。クロックアップするのが遅かったのだ。
「殺す前に僕の名前を教えてあげるよ……」
怪人はそう言い、元のがっちりした体形に戻る。
『Clock over(クロックオーバー)』
そしてそれとほぼ同時にクロックオーバーの音声が鳴る。結局クロックアップした意味は無いままに世界は元の速度に戻ってしまった。
「僕はラッキークローバーのドラゴン……」
『トルネード』
「え?」
そう名乗りかけた怪人が、横から聞こえた音声に振り向く。すると凄まじい疾風を纏った黒いバイクがこちらに突っ込んでくる。
怪人は咄嗟にホッパーの首を離し、突っ込んでくるバイクに向き直る。
そのまま風を纏い突っ込んだ黒いバイクは怪人に受け止められ、弾き飛ばされる。だがその瞬間にバイクに乗っていた黒いライダーは地面に着地することに成功。
「………一体何なの?」
「…………。」
怪人はライダーに問い掛ける。


「うわぁぁぁぉぉ!」
涼は『仮面ライダーギルス』へと変身し、トンネル内に激しい叫び声をこだまさせる。
その大きな口を開き、両手を獣の様に開き、咆哮するその姿はマスクルスをもひるませる程だった。
そしてギルスは独特の構えをとり、マスクルスを睨みつける。
マスクルスはギルスへと走っていき、殴りかかる。
「…………!」
「うわぁぉっ!」
だがマスクルスのパンチは軽く弾かれ、今度はギルスの打撃を食らってしまう。
そして数分間二人の攻防は続いたが、マスクルスが何回攻撃を繰り返してもギルスには通じない。
ギルスは「わぁぉっ!」と叫びながらマスクルスにパンチ、キックと連続で技を決めていく。
マスクルスは不利になると感じ、頭上に発生させた紫の光から槍状の武器である『審判の杖』を取り出す。
だがギルスもそれに対応するために再び叫び声をあげて腕から突起物、『ギルスクロウ』を生やす。

マスクルスは武器を手に、ギルスに飛び掛かる。
だがそれもギルスには回避され、さらにすれ違い様にギルスクロウの一撃を食らう。
「ぐ……あぁぁぁぁ!!」
マスクルスの腹に大きな切り傷ができ、痛みに耐え兼ねたマスクルスは苦しそうな声をあげる。
そして苦しむマスクルスを尻目にギルスは再び構えをとり……
「うぅぅわぁぁぁっ!!!」
また叫んだかと思うと、今度はギルスの頭の角、『ギルスアントラー』が伸びたのだ。この辺はアギトと類似しているとも言える。
気力が上がり、さらに凶暴な外観となったギルスは大きく口を開き、マスクルスにつかみ掛かった。
「わぁぁぁぉ!」
「がぁぁぁ……っ!!」
ギルスはその大きく開いた口でマスクルスの首筋へと噛み付いたのだ。
マスクルスはこれまた苦しそうな声をあげる……。



怪人が暴れているとの情報を受けたなのはとフェイトは、取り急ぎ現場へと向かっていた。
『なのはさん。』
「え……どうしたんですか、立川さん?」
すると、途中で立川からなのはに通信が入った。作者のせいで立川の存在感が薄いが、一応鍵を握った人物なのである。
『現場ではすでにZECTのライダーと、カテゴリーAが戦闘を繰り広げています。気をつけて下さい。』
「……はい、わかりました!」
カテゴリーA……その名前には聞き覚えがあった。一度はやてが出会い、そして橘さんが封印しようとしたアンデッド。
「なのは……カテゴリーAってまさか……」
「うん。天音ちゃんを助けたっていう……」
フェイトも空を飛びながらなのはに自分の憶測を伝える。
「(もしそのアンデッドなら、もしかしたら話せるかもしれない!)」
なのははそんな淡い期待を胸に現場に急ぐのであった


場所は変わって、ここは海鳴市の比較的人通りの少ない広場のような場所。すぐ近くに海がある。
ギルスとマスクルスはさっきのトンネルから戦いながら場所を移り、ついに決着がつこうとしていた。

すでにマスクルスの体はボロボロに傷付き、かたやギルスはほとんどノーダメージ。
ギルスは「うわぁぁぁ!」と叫び、気合いを入れる。
すると踵から鋭く尖った『ギルスヒールクロウ』が伸びる。
そのままマスクルスのレンジまで急接近し、踵を大きく振り上げる。
「うおおおおおお!!」
「…………っ!?」
次の瞬間、マスクルスの肩にギルスヒールクロウが突き刺さり、マスクルスは声にならない声をあげる。
ギルスは踵をマスクルスに突き刺したまま、口を開き「わぁぁぁぁああ!!」と叫んだ。
ギルスの必殺技、『ギルスヒールクロウ』をまともに受けたマスクルスの頭上にはあの紫の光が現れる。
「がぁ……ぁ……」
そして断末魔の声をあげたマスクルスは、そのまま爆発、炎上した。
「(……アリサ……これで、お前を脅かす奴はいない……)」
涼は心の中でそう告げると、そのまま力無く地面に転がった。


「じゃあアリサ、また明日ね」
「うん♪ばいばい、すずか」
アリサは家に到着し、すずかに別れを告げた。友達と一緒にいる時にのみ見せる穏やかな笑顔。
アリサは何故か安心していた。もう自分を襲う怪物はいない。確証などどこにも無いが、何故かそう思えた。

涼はアリサの笑顔を守ることができたのだ。もう会うことは無いかもしれないが、それでも涼は守るべき者を守った。
そしてマスクルスを倒し、意識を失った涼の体は激しく老化していた……。


一方、海鳴市アーケード街。

黒いライダー、『仮面ライダーカリス』は弓状の武器である『醒弓カリスアロー』を手に、怪人と対峙する。
そして立ち上がったパンチホッパーも怪人を前に構えた。
「ふぅん……ちょっとは楽しませてくれるの?」
怪人は二人のライダーを前にしてもなお余裕の態度だ。

次回予告


ついに動き出したラッキークローバー……

そして進化した人類、オルフェノクと称された彼らの目的とは……?

さらに謎に包まれた『プロジェクトD−電王計画』はその片鱗を見せる……


そして……

『俺の名前は神代 剣。神に代わって剣を振るう男……。そして全ての頂点に立つ男だ…!』


次回、魔法少女リリカルなのは マスカレード
ACT.7 『さそり富豪と戦いの神』
にドライブ、イグニッション!!





スーパーヒーロータイム


「……貴様らが俺を見るのは初めてか……。仕方ない、挨拶してやる……」

「俺の名は三島。ZECTの一員だ。北岡とかいう弁護士の付き人が俺と似ているらしいが別人だ。」

「……フン。挨拶はここまでだ。……ブレイド・ギャレン・カリス・カブト・ガタック・王蛇・アギト・ギルス……見ての通り様々なライダーが目覚めた。」

「そして次に目覚めるライダーは……」

「フン……それが知りたければ自分の目で確かめるんだな。」

「兄貴……俺達、忘れられてるよ……」

「……期待するな、相棒。どうせ俺達なんか……」

「そうだね兄貴……でも、だからって次回も見ないと、読者のお前らまで地獄に堕ちちまうぜ?」

「へっ……地獄の闇をはいつくばれるのは俺達二人だけだ。……はぁ。まぁいい……次回も見ろよな……」

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2007年07月25日(水) 18:20:24 Modified by beast0916




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