リリカル犬狼伝説0話
プロローグ 『ある事件の結末』
全てはここから始まる。
「……どうして……なんでなの……なんで殺したのッ!うあああああッッ!!」
泣き崩れるなのは。
膝を突き、涙を流し、嗚咽は聞いた者達の胸を無念の痛みで切り裂く。
街を覆いつくした巨大な魔獣は、中枢制御の依り代とされた少女の、あっけない死によって消滅が始まっていた。
初めに消滅したのは魔獣が生み出した数多くの分身体と魔獣が召喚した無数の魔獣達。
そして千を超える攻撃手と続き住宅地の上空一杯に広がった胴体も消えていった。
まるで朝霞のごとく。
分解消滅は急速で、やがてなのはとシンの居る胴体中央部も霧のように掻き消えていった。
先刻までの激戦が嘘のように魔獣は消えた。
そして残るのは……シン・ガクが“殺した”少女の姿が現れる……。
なのはその姿を認めるや、涙を拭わず直ちに少女の元へ駆け寄る。
一塁の望みで応急蘇生行おうとしたが、無理だった。
完全に死んでいた。
シン・ガクの、文字通り命を削った必殺の一撃は全てを撃ち貫く。
依り代となった哀れで幼い少女の心臓のみ、完全に穿いたのだ。
なのはすでに事切れた少女を抱きしめ、あらん限りの声で泣き叫んだ。
初めて人の死。それもまだ幼い少女の死を目の前にし、哀しみ啼いた。
「あああああッ!ああああああああああッッ!!」
少女の亡骸の血で、なのはの純白のバリアジャケットが紅く染まる。
「どうしてなの…………この子は生きてたんだよ……助けられたかもしんないんだよ?……助けを求めてたんだよ!!なのに……なんで、なんで殺したのッッ!!ああああああ……」
近くに来た者に、少女の悲痛の叫びに誰も答えることができない。
なのはも誰に向って叫んだのか判らない。
魔獣と融合を確認し『最終決定』を下した時空管理局本部か?
それとも彼女に手を下したシンにか?
シンは、無限増殖する魔獣胴体上で、襲い掛かる攻撃手、召喚獣、分裂体全ての攻撃の全てを凄まじき精神力で耐え、少女救出のために危険な直接接触によるスキャンで胴体内の詳細なデータを送信し続けた。
シン・ガクは少女にデバイスを向けた同じ場所に居つづけ、なのはの方に顔を向けず、その叫びを聞いていた。
その表情は、眉を顰め歯を食い縛った、苦痛の顔だった。
普段の彼なら絶対に見せない顔だ。
おそらくどんな深手を負っていても、少女の命が救えていれば「どうということもなく」とにべもなく言い立ち去るだけだったろう。
彼は、己が何をしたのか認識していた。それ故動けずにいたのだ。
如何なる攻撃も負傷も歩める理由としないのが彼の理念であったが、動かなかった。
衛生班が到着するまで傷口から血を流しつつ立ち続けた。すでに足元には血溜まりができていた。
なのはは、やがて泣き止んだと思ったら、呆然とした表情で少女を抱き上げ、うわ言のように言葉を繰り返しながら歩き出した。
「……謝りに行かなくちゃ……。この子のお母さんとお父さんに謝りに行かなくちゃ……」
衛生班と共に来たシャマルがなのはのもとに駆け寄り、彼女を制止する。
「ダメよ、なのはちゃん!落ち着いて!その子を降ろしてあげて!誰か!誰か!鎮静剤を誰か、早く!!」
古代遺物管理部機動一課所属の医療班が手際よく錯乱する少女に鎮静剤を打った後、すみやかに遺体を引き剥がしてボディー・バックに入れ運び出す。
シャマルは不憫に思った。おそらくあの子は検死で徹底的に調べられるだろう。
なのはがそれを聞いたら、きっとまた泣くだろう。
リハビリが終って現場復帰してから一年も経っていないのにこの悲惨な結末……。
ひょっとしたら今度こそなのはは駄目になるのかもしれない。
タンカに乗せられたなのはがヘリに乗せられ設備の整った病院へ行くのをを見送りつつ、シャマルは思った。
だが思い悩んでも仕方がない。
この後の実況見分その他を速やかに行わなければならないことにシャマルは頭を痛めた。
重傷を負わせられた一課第三突入小隊の前衛要因が一課のヘリへ、全く何事もなかったように歩いて行くのを見てシャマルは自分の認識を再確認した。
やはり機動一課は凶犬の集まりなのだと。
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全てはここから始まる。
「……どうして……なんでなの……なんで殺したのッ!うあああああッッ!!」
泣き崩れるなのは。
膝を突き、涙を流し、嗚咽は聞いた者達の胸を無念の痛みで切り裂く。
街を覆いつくした巨大な魔獣は、中枢制御の依り代とされた少女の、あっけない死によって消滅が始まっていた。
初めに消滅したのは魔獣が生み出した数多くの分身体と魔獣が召喚した無数の魔獣達。
そして千を超える攻撃手と続き住宅地の上空一杯に広がった胴体も消えていった。
まるで朝霞のごとく。
分解消滅は急速で、やがてなのはとシンの居る胴体中央部も霧のように掻き消えていった。
先刻までの激戦が嘘のように魔獣は消えた。
そして残るのは……シン・ガクが“殺した”少女の姿が現れる……。
なのはその姿を認めるや、涙を拭わず直ちに少女の元へ駆け寄る。
一塁の望みで応急蘇生行おうとしたが、無理だった。
完全に死んでいた。
シン・ガクの、文字通り命を削った必殺の一撃は全てを撃ち貫く。
依り代となった哀れで幼い少女の心臓のみ、完全に穿いたのだ。
なのはすでに事切れた少女を抱きしめ、あらん限りの声で泣き叫んだ。
初めて人の死。それもまだ幼い少女の死を目の前にし、哀しみ啼いた。
「あああああッ!ああああああああああッッ!!」
少女の亡骸の血で、なのはの純白のバリアジャケットが紅く染まる。
「どうしてなの…………この子は生きてたんだよ……助けられたかもしんないんだよ?……助けを求めてたんだよ!!なのに……なんで、なんで殺したのッッ!!ああああああ……」
近くに来た者に、少女の悲痛の叫びに誰も答えることができない。
なのはも誰に向って叫んだのか判らない。
魔獣と融合を確認し『最終決定』を下した時空管理局本部か?
それとも彼女に手を下したシンにか?
シンは、無限増殖する魔獣胴体上で、襲い掛かる攻撃手、召喚獣、分裂体全ての攻撃の全てを凄まじき精神力で耐え、少女救出のために危険な直接接触によるスキャンで胴体内の詳細なデータを送信し続けた。
シン・ガクは少女にデバイスを向けた同じ場所に居つづけ、なのはの方に顔を向けず、その叫びを聞いていた。
その表情は、眉を顰め歯を食い縛った、苦痛の顔だった。
普段の彼なら絶対に見せない顔だ。
おそらくどんな深手を負っていても、少女の命が救えていれば「どうということもなく」とにべもなく言い立ち去るだけだったろう。
彼は、己が何をしたのか認識していた。それ故動けずにいたのだ。
如何なる攻撃も負傷も歩める理由としないのが彼の理念であったが、動かなかった。
衛生班が到着するまで傷口から血を流しつつ立ち続けた。すでに足元には血溜まりができていた。
なのはは、やがて泣き止んだと思ったら、呆然とした表情で少女を抱き上げ、うわ言のように言葉を繰り返しながら歩き出した。
「……謝りに行かなくちゃ……。この子のお母さんとお父さんに謝りに行かなくちゃ……」
衛生班と共に来たシャマルがなのはのもとに駆け寄り、彼女を制止する。
「ダメよ、なのはちゃん!落ち着いて!その子を降ろしてあげて!誰か!誰か!鎮静剤を誰か、早く!!」
古代遺物管理部機動一課所属の医療班が手際よく錯乱する少女に鎮静剤を打った後、すみやかに遺体を引き剥がしてボディー・バックに入れ運び出す。
シャマルは不憫に思った。おそらくあの子は検死で徹底的に調べられるだろう。
なのはがそれを聞いたら、きっとまた泣くだろう。
リハビリが終って現場復帰してから一年も経っていないのにこの悲惨な結末……。
ひょっとしたら今度こそなのはは駄目になるのかもしれない。
タンカに乗せられたなのはがヘリに乗せられ設備の整った病院へ行くのをを見送りつつ、シャマルは思った。
だが思い悩んでも仕方がない。
この後の実況見分その他を速やかに行わなければならないことにシャマルは頭を痛めた。
重傷を負わせられた一課第三突入小隊の前衛要因が一課のヘリへ、全く何事もなかったように歩いて行くのを見てシャマルは自分の認識を再確認した。
やはり機動一課は凶犬の集まりなのだと。
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2007年08月01日(水) 11:07:05 Modified by beast0916