リリカル龍騎13-2話

「それで、何かあったん?なんか警察の人もたくさん来とるみたいやけど…」
「ほら、何ヶ月か前に、浅倉威って人が脱獄したでしょ?その人がここに立て篭もってるらしいの」
 それを聞くと、二人とも黙り込んでしまった。
「こんな事をしても、何にもならないのに…」
 シャマルが呟く。その時はやてが何かに気付いた。
「あれ?あそこにいるの…編集長さん?」

 その頃芝浦は、とある住居の前にいた。ある人を訪ね、ここに来たのだ。
…と、その「ある人」が出てきたようだ。
「はーい、今出まー…あんたは!」
「や、久しぶりだね」
 出てきたのは女だった。芝浦と何の接点があるのだろうか…?
「何の用?また戦いにでも来たのか?」
「いや。一つ耳寄りな情報を持ってきたんだよ。霧島美穂さん?」
 芝浦による、場を盛り上げるための工作。それは別の仮面ライダーをあの場に放り込むことだった。
そして、白羽の矢が立ったのが霧島美穂。仮面ライダー『ファム』である。
この二人は以前戦ったことがあり、その時に聞いた名前から芝浦が違法手段で住所を突き止め、そして今に至るというわけだ。
「確かあんたの姉さん、浅倉に殺されてたんだったよね?」
 これもその違法手段で手に入れた情報である。
「!? 何で、あんたがそれを…」
「まあまあ、そんなのどーだっていいじゃん。でさ、その浅倉なんだけど―――」
 この後、美穂が戦いへと駆り出されることとなった。

「危険ですから、一般の方はこれ以上入らないでください!」
「いや、だから一般の方じゃないんだって!ちょっ、そこの刑事さーん!」
 大久保の声に気付き、振り向く須藤。
「裏情報があるんですけどー!」

第十三話『集結』

「え?浅倉が私を?…ええ、すぐに行きます。協力しますよ。では後ほど」
 北岡が受話器を置く。
「吾郎ちゃん、ちょっと出かけてくるわ」
 そう言うとスーツを着て、出発の準備を整える。当然ゾルダのデッキも持っていく。
そんな北岡を見て、不安の色を浮かべる吾郎。先ほどの真司の電話が引っかかっているのだろうか。
「先生!…危険です」
「ここで行かなきゃ俺の評判ガタ落ちよ。行けばイメージ大幅アップ。
全国ネットでしょ?多分」
 心配させまいとしたのか、わざとこのようなことを言う。
「ですけど…さっきの電話のこともありますし…」
「あれが本当だって保証ある?無いでしょ?
それに本当だとしても、ライダーってのはいつか戦う相手なんだから。
だったら今のうちに潰しておいたほうが得策、でしょ?」
 これだけ言っても吾郎の心配は尽きないのか、浮かない顔をしている。
「だーいじょぶだって。美味い夕食、用意しといてよ。じゃね」
 これで話は終わった。自家用の車を運転し、現場のレストランへと走った。

 その頃、真司の携帯にメールが入る。文面はこうだ。
『大久保だ。今から警察に全面協力する。中の様子を知らせろ。
人質の位置と状況を正確に。人質と、お前を心配してくれている子達のために頑張れ』
「編集長…!」

 それを送信した時点での外の様子はこうだ。
「『―――心配してくれている子達のために頑張れ』…と」
 島田がメールを打ち終え、真司の携帯電話へと送信した。
「うちの真司はね、やりますよ」
 大久保はそう言うと、令子へと話しかける。
「OREジャーナルの独占だ。バッチリ頂くぞ」「はい…」
 ああ、なんか二人とも素晴らしいほどの邪悪な笑顔だ。
「真司君、大丈夫やろか…」
 中に真司がいることを大久保から聞いたらしい。はやてが心配している。
「気休めにしかならないと思うけど、真司君ならきっと大丈夫だよ」
 その様子を見たなのはが、はやてを励ます。
二人とも…いや、シャマルを入れて三人か。真司は大丈夫だと信じている目をしている。

 真司が中の様子を外に知らせるべく、テーブルの影に伏せて携帯を構えている。
カメラ機能を使って中の様子を撮影しようというのだ。
そしてカメラで中の様子を…
『はい、ちーじゅ☆』パシャッ。
 最近の携帯は盗撮防止の為、マナーモードでもカメラだけは音が消えないようになっている。
真司はそれを失念していたがために、カメラを使ってしまい、そして気付かれた。
…やはり馬鹿である。いや、迂闊で残念をつけてもいい。
気付いた浅倉が銃を構え、真司の方へと素早く近づく。そして真司を見つけ、銃を突きつけた。
だが、時既に遅し。真司は撮った写真をメールで送信した後だ。

「真司君からのメールです!中の様子の写真が届きました!」
「本当ですか?」
 島田の報告に須藤が真っ先に食いついた。それに呼応するかのように、全員でその写真を見る。
ちなみにその全員には、なのは・はやて・シャマルもいる。大久保の口添えにより、警察車両の近くにいることを許可されたのだ。
「っしゃあ。中の様子ゲ〜ット」
 大久保が写真を見てほくそ笑む。だが、ここでシャマルがある事に気付いた。
「この写真を撮って、真司さんは無事かしら…」
 その言葉に一斉に振り向く一同。「何を言ってるんだこいつは」という表情だ。
「え…?シャマル、それどういう事?」
「最近の携帯電話は、マナーモードでもカメラの音が消えないように出来ているんでしょう?だったら…」
 その言葉で全員が気付いた。
「じゃ、じゃあその音が浅倉さんに聞こえて」「その音で気付かれたって事やろか?」

 ドガシャァン!
真司が浅倉に殴り飛ばされる。その先に積んだテーブルがあったので、そのテーブルに思い切り突っ込んだ。
それを見て千佳が駆け寄る。
「お兄ちゃん!」
 それを見て、心配させまいと笑顔で答える真司。
「大丈夫だから」
 言い終えると、真司が浅倉を睨みつけた。
それに対抗するかのように、真司に銃を向け、言い放つ浅倉。
「俺をイラつかせるな」

 北岡が到着したのは、それからさらに少し経った後だ。
「弁護士の北岡さんです」
 警官が北岡を連れ、須藤のもとへと連れて行く。
「刑事の須藤です。ご苦労様です」「いえ、当然の事ですよ」
「人質が出てきたら、私も行きます。あなたが来たことで気も緩むでしょうからね」
 須藤の持つライダーの力を当てにした策だろう。だからこそ須藤も安心できるのだが。
「お一人でですか?少し心配ですね」
「ご心配なく。秘策があるんです。あなたに怪我はさせませんよ」
「…分かりました。信頼してますよ、須藤刑事」

「…分かった」
 北岡が来たことを聞き、携帯を切る。
「弁護士と引き換えにお前達を解放する。出口へ行け」
 これを聞き、大喜びの人質達。千佳も浅倉から解放され、嬉しそうだ。
人質達が出口へと向かうが、千佳が再び捕まる。
「お前は残れ。万が一の保険だ」
 母親が食い下がるが、浅倉は一向に聞き入れない。
「待てよ!だったら俺が代わりに「さっさと行け!」…この子が残るなら、俺も一緒に残る」
 放っておいたら北岡と戦い始めるだろう。それだけは止めないといけない。そう考えた真司は、人質として残る道を選んだ。
子供が一人残されるのも精神的に辛いだろうという判断の方が大きな理由だが。
「…珍しい馬鹿がいたもんだな。勝手にしろ」

 北岡が出入り口の前で止まり、呼びかける。
「浅倉、俺だ!人質を解放しろ!」
「よし、中に入って来い。同時に人質を解放する」
 それを聞き、店内に入る北岡。その後も指示に従い、浅倉に近づく。
「よし、お前達は外に出ろ」
 それを聞いた人質達は、一斉に外に出た。外では警官達が人質達を保護している。
そして中にいるのが真司・北岡・浅倉・千佳の4人だけになったとき、浅倉がポケットからあるものを取り出す。
「お前…!」
 その取り出したもの…王蛇のデッキを北岡に見せた。
「へえ、さっきの電話は本当だったって訳だ」
「電話だと…?」
 そう言って真司を睨む浅倉。その視線にはどういう意味が籠められているのか。
北岡がその視線の意味を察し、言う。
「さっきの電話、あんたがかけてきたの?そんなの知ってるってことは…あんたもライダー?」
 うなずく真司。そして一言呟いた。
「結局止められないのかよ…!」
 外から何かの音がするようだが、今の彼らは気にも留めない。
「神崎士郎…ほんと人が悪いよ。まさかお前をライダーにするとはな」
「まずはお前に借りを返すためだ…来いよ」
 そう言うと、店の鏡に近づく浅倉。
北岡も近づこうとするが、その前に先ほどの音の正体が現れ、一度中断された。
「なるほど、そういう事ですか」
 全員が振り向く。あらかじめ知っていた北岡以外は驚いているようだ。
「須藤刑事ですか。せっかくですが、あなたは帰ったほうがいい。
こいつはただの人間の手に負える相手じゃない」
「ご忠告ありがとうございます。ですが、私もあなた達と同じ力を持っているとしたら?」
 そう言って、背広のポケットから何かを取り出そうとする。
真司にはその『何か』の正体が分かっていた。だから思わず口をついて出る。
「須藤刑事…って、仮面ライダーシザースの?」
 知られていたことに驚く須藤。それもそのはず、合った事もないライダーに知られていたのだから。
「ほう、あなたは私を知っていたようですね。それなら話は早い」
「何でもいい…俺を逮捕した刑事と、俺を無罪にしなかった弁護士。
そいつらにまとめて借りを返せるんだからな…!」
「前も言ったろ?あれが目一杯だって」
 そう言いながら、北岡・浅倉・須藤が店の鏡に近づく。
「ちょ、ちょっと待てよ!あんたら一体何を…」
「何を…だと?決まってんだろ」
「ライダーは戦うもんでしょ?」
「そういう事ですよ。貴方もライダーなら、戦ってはどうです?」
 そう言うと、三人揃って鏡に向き直り、Vバックルを腰に装着し、各々の変身時のポーズを取る。そして…
「「「変身!」」」
 北岡がゾルダ、浅倉が王蛇、須藤がシザースへとそれぞれ変身し、ミラーワールドへと飛び込んだ。
「止めないと…変身!」
 それを見た真司も、戦いを止めるべく龍騎へと変身し、ミラーワールドへと飛び込んだ。

『STRIKEVENT』
 左腕のシザースバイザーに、ストライクベントのカードを装填するシザース。
それと同時に蟹のハサミみたいなものが飛来、シザースの右腕に収まった。
これがシザースの武器『シザースピンチ』である。
「まずは貴方からです!浅倉ァァァァッ!!」
 シザースピンチを手に、王蛇へと駆け出すシザース。
「来いよ…」
 王蛇もそれに対抗し、ベノバイザーに一枚のカードを装填する。
『SWORDVENT』
 突撃剣『ベノサーベル』が飛来し、それを右手でキャッチ。シザースへと向かっていった。
そして、振り下ろしたシザースピンチと振り上げたベノサーベルが激突、鍔迫り合いの様相となった。
「く…!」
「何だよ…こんなもんか?」
 やはり契約モンスターの力量が勝る王蛇が優勢だ。力でシザースを押し返した。
そのままベノサーベルを突き刺そうとするが、真横から別のライダーの攻撃が飛ぶ。それはゾルダが放った銃撃だ。
彼の持つ『マグナバイザー』は、連射式の拳銃としても使用可能。それを使った銃撃が王蛇を襲ったのだ。
ベノサーベルを使い、それを紙一重で防ぐ。そしてゾルダの方に向き直った。
「そう言えば、お前もいたんだったな…北岡」
「おいおい、呼びつけた張本人が忘れるなよ」

   次回予告
「せっかく盛り上がったんだから、水差さないでよ」
「死にたくないならどいてな!」
「近くにいた、お前が悪い…」
「どうしてそんな簡単に人を殺せるんですか!」
仮面ライダーリリカル龍騎 第十四話『砕け散る鎧』

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2007年06月15日(金) 17:46:55 Modified by beast0916




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