リリカル龍騎3話

H14.2.1 PM3:57 アースラ艦内 艦橋
「手塚さん、あなたを見込んで一つ頼みたいことがあるんだけど…」
 もしかして…予想は付くが一応聞き返す手塚。
「頼みたいこと?…モンスター退治か?」
「分かっているなら話は早いわ。全面的に戦えとまでは言わないけど、なのはさん達が戦っている時には手を貸してあげてほしいの」
 手塚としてもモンスターは倒さねばならない。さらに協力者まで得られるとなれば、選択の余地は無しだ。
「…分かった。協力しよう」
 笑顔で礼を言うリンディ。ふと、手塚が呟く。
「占いで出ていた『運命を左右する出会い』…この事だったようだな」

同日 PM4:20 アースラ艦内 食堂
「…で、これは何の騒ぎだ?」
 食堂に長蛇の列が出来ている。多分アースラの全乗組員の3割くらいはいるだろう。
というかお前ら仕事はどうした。特に今最前列にいるエイミィ。
「あー…さっきなのはが『手塚さんの占いは当たる』って言ってたから…」
「なるほど、そういうことか」
 ユーノ・スクライアから話を聞き、納得と同時に呆れるクロノ。
なるほど、確かに最前列でエイミィと話しているのは手塚だ。数枚のコインを持っている…今弾いた。
「そんなに当たるものなのか?」
「手塚さんが言うには『外れたのは片手で数えるほどだけ』だって」
「…それは占いじゃなくて予知じゃないのか?」
「…そう思いたくなる気持ちも分かるけど、あれは占いみたい」
 多分あれは予知能力者だ。
そう思いながら、恋愛運を占ってもらっているエイミィを遠い目で見ていた二人だった。
余談だが、当のエイミィはこの日以降、クロノと目が合うと顔を赤くし、多少ぎこちなくなったという。
多分占いで「仲のいい年下の男と結婚する」とでも言われたのだろう。

第三話『新たな力』

H14.2.2 PM2:20 アースラ艦内 研究室
「デッキの解析は済んだか?」
 クロノが技術班の班長に聞く。
「ええ、まあ。解析自体は済んでます」
 クロノはそう聞くと、ライアのデッキを受け取り手塚の所へと向かった。
解析が済んだのなら早く返しておいたほうがいい。
そうしないとモンスターや他のライダーに襲われた時の対抗手段が無いし、それ抜きでも契約モンスターに契約破棄とみなされて食われる可能性もあるからだ。

 アースラでは今、ミラーモンスターへの対抗手段を講じている。
少なくとも今はAAAクラスの魔導師でもシアゴースト数体をやっと倒せる程度でしかない。
その対抗手段のため、ライアのデッキを借りて解析し、それを基にした装備を開発している。
デッキのシステムが分かれば対策も練り様がある。そう考えたのだ。
すでに解析は終わり、残るはそのデータを利用しての装備の開発のみである。

同日 PM3:00 バニングス邸
「失礼します」
 佐野が応接間へと入る。そこには既に一人の男性がいた。
何者なのかは分からない。だがここにいる以上、この家の関係者なのだろう。
何者だろう…佐野がそう考えていると、ふいに男の方が口を開く。
「君が佐野満君だね?」
「あ、はい。えっと…」
「ああ、私はデビッド・バニングス。アリサの父だ」
 …アリサの父?それを聞いて脳をフル回転させる。
その結果、アリサの父=ここの主=雇い主という図式が佐野の脳内で完成した。
そんな様子に気付かないのか、佐野を椅子に座らせ、デビッドは話を始める。
「娘から話は聞いたよ。確か鏡の中の怪物と戦う仮面ライダーということだが」
 この話をこうも簡単に信じている。
普通なら狂人などのように思われかねない、そんな荒唐無稽な話だというのに。
「なぜ信じたか疑問に思っているようだね?」
「ええ、まあ。こんな荒唐無稽な話、普通ならライダーかそれを見た人しか信じないでしょうから」
「確かに、私も最初は疑った。だが、アリサがそんな事で嘘をつく必要も無いだろう?
それに、ここ最近起こっているという行方不明事件も怪物の仕業なら納得がいく」
 驚いた。ずいぶん柔軟な思考が出来る人物のようだ。
まあ、だからこそ実業家として成功したのだろうが。
「そこで、君に頼みたいことがある」
「…頼みたいこと…ですか?」
「そうだ。モンスターがいるのなら、今回のようにいつアリサが危険にさらされてもおかしくはない。
だから、もしもの時はアリサを守ってやってくれ…この通りだ」
 頭を下げるデビッド。驚いた佐野は慌てて頭を上げるよう言う。
「分かりました、任せてくださいよ。娘さんは俺がお守りしますから」
「そうか、ありがとう」
 用事はこれで終わりだったようで、佐野とデビッドがともにに退室する。
ちなみに次の給料日に驚くような高額の給料が払われることになるのだが、それはまた別の話。
おそらくアリサを守る分の追加報酬も合わせた金額だろう。

H14.2.5 PM1.30 大通り
 ここはどうやら占い師が多く現れるらしい。占いをしている人たちがそこかしこに点在している。
手塚もそのうちの一人だった。今も客の女性の占いをしている。
「あまり良いとはいえないな。だが、立ち止まるよりは進む方がいい」
 一人分の占いを終え、そろそろ昼食を取ろうと席を立とうとする。
「手塚海之さんやな?」
 声に気付き、顔を上げる手塚。見ると、茶髪の少女と金髪の女性が目の前に立っている。
初対面なのに名を知っている、何者だろう。そう思っているのが分かったのか、茶髪の少女が名乗る。
「ああ、そんな身構えんでええよ。うちは八神はやて。こっちはシャマル。
なのはちゃん達から話は聞いとったからな、手塚さんのことも知ってるんや」
「…なるほどな、管理局がらみの人間か」
 うなずき、同意を示すはやて。
「手塚さん、腕のいい占い師やて聞いとるからな。うちらも占ってくれへん?」
 管理局がらみの人間がいきなり何の用かとも思ったが、何のことはない。ただ客として来ただけだったようだ。
それを理解した手塚は代金を受け取り、コインを取り出す。
そして、いつものようにコインを弾く。宙を舞ったコインは回転しながら落ちてきて、やがて止まった。
「…どうだったんですか?」
 はやてに代わり、シャマルが結果を聞く。
「次に何かと戦うとき、八神、お前は新たな力を得られるだろう…そう出ている」
「…何か?何かって何なん?」
「それは出ていないが…思い当たる節はあるんじゃないのか?」
 そう聞かれ、考え込むはやて。だが、それはすぐ中断されることとなる。
 キィィィィン…キィィィィン…
 手塚が金属音のようなものを感じ取る。それと同時に路地へと駆け出した。
はやてとシャマルが気付き、手塚を追う。
「どうしたんですか?」
「モンスターの事は知っているだろう?そのモンスターが現れたんだ!」
 カードデッキを持っていると、モンスターの気配を音として感じ取れるようになる。
そう、先ほどの金属音はモンスターの気配だ。

同日 PM1:36 路地
 先ほど手塚の占いを受けた女性が歩いている。
モンスターは人気の無い場所によく現れるが、そうならモンスターがここで現れても不思議ではない。
女性もその気配を感じ取るが、カードデッキが無いため音ではなく違和感でしかない。
足を止め、周りを見渡すが、特に何も見つからな…いや、ガラスに映っていないはずのモンスターが映っていた。
それに気付き、逃げる。逃げる。逃げる。
だが相手は高い機動力を持つレイヨウ型のメガゼールとギガゼール、それとオメガゼールだ。すぐに追いつかれ、捕まってしまう。
そしてミラーワールドに引き込まれかけるが、駆けつけた手塚がモンスターをミラーワールドに叩き返した。
「八神、その人を連れて逃げろ!」
 そしてはやてとシャマルが女性を連れ、路地から離れる。
三人が逃げたことを確認すると、すぐさまライアへと変身し、ミラーワールドへと飛び込んだ。

同日 同時刻 アースラ艦内 艦橋
 一方アースラ。
「モンスター二体の出現を確認!現在手塚さんが一人で戦っています!」
 エイミィの報告を受け、すぐに指示を出すリンディ。
なのはとフェイトは技術班から改修型のデバイスを受け取り、すぐに出撃しようとするが、
「二人ともちょっと待て」
 クロノに呼び止められる。何だろうと思い、なのはが聞き返す。
「どうしたの?クロノ君」
「なのは、フェイト、これを持っていけ」
 そう言ってクロノが取り出したのは、青く光る小さな玉だった。
受け取ったはいいが、これが何なのかが分からない。そのことでフェイトが問う。
「これは?」
「対ミラーワールド用の追加装備だ。これならミラーワールドでの粒子化も防げるし、モンスターやライダー相手でもまともに戦えるはずだ」
 それを聞き、クロノに礼を言う二人。
「礼なら技術班に言ってくれ。彼らが急ピッチで作業を進めてくれたからこれだけ早く完成したんだからな」
 そして技術班に礼を言うと、転移装置で現場へと向かう。
「で、使い方だが…って、もう行ったのか」
 使い方を説明する間もなく行ってしまった二人に呆れるクロノ。
仕方ないとばかりに念話を試みようとするが、そこであることを思い出す。
「…しまった、リインフォースを忘れていた」
 数十秒後、クロノがリインフォースと追加装備を持って転移装置に向かう姿が目撃された。

同日 PM1:40 ミラーワールド
 ライアは今、二体のモンスターを相手に戦っていた。
最初にいた三体のうちの一体、メガゼールを仕留めることには成功したものの、それで残るカードはアドベントとコピーベントのみ。
しかもコピーできる武器も無いので実質使えるカードはアドベントのみ。
ライアは苦戦を強いられていたが、諦めずエビルウィップでモンズターを叩き続けた。
だが、ギガゼールに気を取られていた隙に、オメガゼールが背後から襲い掛かる。
手塚が後ろを向いたときにはもう間合いに来ていて、杖を振り下ろそうとしていた。
『Divine buster. Extension.』
 次の瞬間、轟音とともにオメガゼールが消え失せる。それと同時に空から落ちてくる薬莢。
その理由を理解したライアとギガゼールは空を見る。
するとそこには、レイジングハートを構えたなのはとバルディッシュを構えたフェイトがいた。
「凄い…こんなに強化されたんだ…」
 そう、その理由とは、なのはの攻撃魔法『ディバインバスター』がオメガゼールに叩き込まれたからである。
…なのはには分かっていないようだが、デバイスの強化はあくまで防御面。この攻撃力は追加装備によるものだ。
「お前達…どうやってミラーワールドに入ったんだ?」
 その場に残っているギガゼールの相手をしながら、ライアが問う。
「こういう時のための追加装備を、兄さんから受け取ったの」
 追加装備?聞き慣れない言葉に首をかしげるライア。
 その隙を突いてオメガゼールとギガゼールが仕掛けるが、逆にかわされ同士討ちをする羽目に。
「詳しいことは終わってから話すから、今はモンスターを!」
「ほな、うちも混ぜてくれへん?」
 突然聞き覚えがある、しかしミラーワールドにいるはずが無い人間の声がした。
声がした方を見ると、騎士甲冑を纏ったはやてがいる。
「はやてちゃん!?リインフォースは整備中だったんじゃ…」
「クロノ君が届けてくれたんや。
ちょうどモンスターも出てるみたいやったし、これのテストも兼ねてな」
 そう言って取り出したのは、なのは達が使っている追加装備と同じものだった…どうやらまだテストしてなかったらしい。
まあ、粒子化していないということと、前とは桁違いの破壊力から、ミラーワールドでの活動と戦闘力の強化は成功しているようだが。

「とにかく、今はあれを何とかするぞ。話はそれからだ」
 ライアの一言と同時に戦闘が再開される。
 それと同時にフェイトがオメガゼールを斬りつけた。高機動形態『ソニックフォーム』で突撃を仕掛けたのである。
その時にできた隙を狙い、エビルウィップを叩き込むライア。
さらに蹴り倒してさらなる隙を作り、一枚のカードをバイザーに装填した。
『ADVENT』
 エビルダイバーが飛来し、エビルフィンでの斬撃を見舞う。
「バルディッシュ、ハーケンフォーム」
『Yes,sir.Load cartridge,Haken form.』
 バルディッシュが変形を始める。その姿は先ほどまでの斧ではなく、魔力の刃を持つ鎌となった。
これがバルディッシュの格闘戦特化形態『ハーケンフォーム』である。
大鎌を振りかざし、凄まじい速度で接近するフェイト。そして…
『Haken slash.』
「やぁぁぁぁっ!」
 一閃。オメガゼールが両断され、そのまま爆散した。

 その頃、なのはとはやてはギガゼールと戦っていた。
「リイン、あれを使うで」
『了解です、マイスター。アドベント・システム、起動!』
 アドベント・システム?聞き覚えの無い単語に首をかしげるなのは。さっきもライアが同じようなことをしたが気にしない。
杖の先に魔力が集まり、そこから何かが現れる。
現れたのはエビルダイバーだった。
「ええ!?それ手塚さんの契約モンスターじゃ…」
 ライアの方を見る。エビルダイバーがすでに呼び出されていた。
ならばなのはの目の前にいるこれは何だ?エビルダイバーがもう一体いるとでも言うのだろうか。
「何や、クロノ君から聞いてへんかったん?」
 なのはは追加装備…いや、『アドベント・システム』の詳細を知らない。もっとも、詳細を聞かずに出撃したからだが…
とにかく、今はそれはどうでもいい。そのシステムでエビルダイバーがもう一体現れたのは確かだから。
「まあええわ。なのはちゃん、私らがモンスターの気を引く。その間に砲撃の準備しといて」
 そう言うと、はやてがエビルダイバーとともにギガゼールへと向かっていく。
時間もあまり残っていない。だから一回の魔法で仕留める必要がある。
それを理解しているのかいないのか、なのはが予備弾をポケットから取り出そうとする。が、一発も入っていない。
「…レイジングハート、カートリッジはあと何発残ってる?」
『残弾は四発です』
「その四発を全部ロードして。それでアクセルシューターを使うよ」
『All right.』
 ドンッドンッドンッドンッ!
 残弾四発が全てロードされる。それと同時に魔力弾がなのはの前に作り出される。
魔力弾はどんどん増え続け、最終的にはもの凄い数になった。ざっと50は超えている。
「はやてちゃん、準備できたよ!」
「分かったで。エビルダイバー!」
 はやての指示とともに、エビルダイバーがギガゼールを空中に跳ね上げる。
この瞬間、ギガゼールの消滅が確定した。
「行くよ、レイジングハート!アクセルシューター、シュートォォォォォ!!」
『Accel Shooter.』
 無数の魔力弾がギガゼールへと向かっていき、そして当たる。
着弾箇所が一箇所ずつ削られ、着弾のたび穴が開き、最後にはエネルギー光以外何も残らなかった。

 エネルギー光はこの後、手塚のエビルダイバーがおいしくいただきました。

  次回予告
「アドベント・システム…」
「あれ?俺、これどこかで…」
「折れたァ!?」
「お前…ライアの手塚海之!?」
仮面ライダーリリカル龍騎 第四話『龍の再誕』

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2007年06月15日(金) 17:37:10 Modified by beast0916




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