1話

第1話「狂乱の世界へ」


「ん……?」
なのはとフェイトは目を覚ました。ここはどこかの荒野のド真ん中。かなり殺伐とした風景だ。
「どこだろう……ここ」
「さぁ…………やっぱりだめ。時空管理局にも繋がらない。」
なのはとフェイトは完全に異世界へと飛ばされてしまったのだ。
「……とりあえず、どこか人のいる場所へいこう」
「……うん。」
そうして二人は歩き出す。

この世界にさっき見たピラミッドがあるのだろうか?何のために私達はこんな世界へ飛ばされたのだろうか?
いくら考えてもわからない。
しばらく歩いたところで、なのはとフェイトは休憩することにした。




「な……!なのはとフェイトが行方不明やて!?」
「あ、ああ……」
クロノに連絡を受けたはやてが叫ぶ。親友が行方不明になったというのだ。はやても落ち着いてなどいられない。
「わかった!うちらもなのは達探すんに協力する!」
はやてとヴォルケンリッターもなのは達の捜索に協力することに。
「テスタロッサなら大丈夫だとは思うが……」
「ったく行方不明なんて……世話がやけるなぁ!」
シグナムとヴィータが言う。一応二人も心配はしているのだ。
こうしてはやて達も捜索班入りとなった。

『ブロロロロ……』

休憩していたなのは達にバイクの音が聞こえる。
「フェイトちゃん!この音……!」
「うん、人だ!」
二人の顔に元気が戻る。ようやく誰かに会えそうなのだ。
なのは達はバイクの聞こえる方向へ走り、バイクの前に飛び出した。
「待って下さい!」
なのはの声にバイクが止まる。バイクに乗っているのは二人組の大男だ。
「あ〜ん、なんだお前らぁ?」
「あ、あの……私達遭難してしまって……できればどこか町まで案内して欲しいんですが……」
フェイトが言う。だが男はニヤついて何か喋っている。
そして……
「何言ってんだお前ら?そんなことするわけねぇだろ」
「お前らを手土産にすれば俺達ぁ晴れて聖帝正規軍だ!」
二人の男が笑いながらなのは達に迫る。なんだかよくわからないが、これは明らかにピンチだ。
「な、何するんですか……?」
「へっ、知れたこと。お前らを聖帝様への手土産にするんだよ!」
「せ……聖帝?」
「ぐふふ……これ以上の問答は無用だ!」
二人の男がなのは達に向かって飛び掛かる。
「なのは……!」
「うん!」
二人はバルディッシュとレイジングハートを起動しようと念話で合図する。
変身してこの人達を気絶させる。そのためにデバイスを起動しようとした、その時だった。

パシュ……!

目の前の男の体が音を立てて切り刻まれる。バラバラになった体は重力に引かれ地面へと落下する。
「ひ……っ!」
なのは達も驚く。悪人とはいえ目の前で人が一人死んだのだ。
「ひぃぃっ!!」
もう一人の男は一目散にバイクに乗り、この場から逃げた。仲間が死んだというのに、薄情な男だ。
「大丈夫かい?」
「……!」
突如現れた男に聞かれ、構えるなのはとフェイト。目の前で人を殺したのだ。そんな相手を簡単に信用することはできない。
「恐れることはない。もう大丈夫だ」
目の前で人を殺した大男が言う。この男どうやら目が見えないようだ。顔に大きな傷がついており、目は閉じている。
「あなたは、何者ですか?」
「何故、私達を助けてくれたんですか?」
「わたしは南斗六聖拳のひとり、南斗白鷺拳のシュウ。人を助けるのに、理由はいらない」
シュウという男は名乗った。
どうやら悪人ではなさそうだが……
人を殺した事に納得はいかない。だが今はこの男に頼るしかない
「どこか人のいる場所へ案内してほしいのですが……」
「ああ、そのつもりだ。ついてくるといい。」
シュウが言う。なのは達もシュウに従おうとした、その時……
「待てぇい!」
「……?」
後ろから聞こえる声に振り向けば、さっき逃げた男が仲間をつれてきたのだ。
「貴様ら、ただでは帰さんぞ!」
さっきの男、かなり怒っているようだ。

「フ……愚かな」
シュウが言う。また全員殺す気なのだろう。そんなこと、させない!
「シュウさん!ここは私達に任せて下さい!」
なのはが言う。シュウは何をするのかとなのは達を見る。
「レイジングハート!」
「バルディッシュ!」
「セットアップ!!」
二人がそう叫ぶと、デバイスが起動し、一瞬で姿が変わる。
「キミ達は……!」
シュウも驚いている。
「私達はこの世界の人間ではありません……」
「あの人達を気絶させるくらいなら、私達にもできます」
シュウに任せたら間違いなく全員皆殺しだろう。いくら悪人とはいえ、なのは達的にそれは避けたい。
「この世界の人間ではない?フ……いいだろう」
「行くよ!フェイトちゃん!」
「うん!」
二人は凄まじい速度で飛び上がると、小さな魔法で男達にダメージを与えていく。当たった男はどんどん気絶していき、ついに最後の一人だ。
「これで!」
なのはの魔法が直撃し、最後の男も倒れた。


数分後、男達を片付けたなのは達はシュウに駆け寄る。
「私達は、魔法のある世界からきた魔導師なんです」
「魔法……にわかには信じられんが、さっきのを見れば信じるしかないな……」
なのはにいきさつを説明され、シュウが納得する。いや、まだ完全に信じてはいないだろうが。
「あの……目、見えるんですか?」
フェイトが質問する。

「む……心の目は常に開いている。」
「心の目……ですか。」
シュウに言われなのは達も納得する。まあ、あまり深く考えないことだ。
だが、次の瞬間突然シュウが飛び上がった。
「な……!?」
後ろにはさっき気絶させたはずの男が。シュウは一瞬で男の背後に着地する。
「……あ」
「キミ達は確かに強い。だが甘すぎる……」
構えるフェイトだが、もはやその男に息は無く、またしても全身がバラバラになった。シュウがトドメを刺したのだ。
「……そんな……」
また一人、目の前で人が死んだ。
シュウが悪人でないのはわかるが、何も殺さなくてもいいんじゃないかと思うなのは。
「……ついてきなさい……。」
シュウはそんななのは達の表情を見て、静かに言い、歩き出した。
なのは達はシュウのやり方を認めたくはなかったが、今はシュウに頼るしかない。
そう判断し、シュウの後を追うのだった。



そして、これからなのは達は北斗と南斗の宿命の戦いに巻き込まれてゆくのだった……

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2007年06月15日(金) 17:53:15 Modified by beast0916




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