作曲家・多田武彦〔通称・タダタケ〕のデータベース。

男声合唱組曲「花筐」(作詩:三好達治)

花筐ハナガタミ指示速度拍子調性備考
1紅梅花コウバイカModerato4分音符=92ca.3/4ト長調
2白梅花ハクバイカAdagio4分音符=58ca.4/4ニ短調
3春のあわれハルノアワレLahrgetto付点4分音符=64ca.6/8ト長調Tenor Solo
4またある時はマタアルトキハAndante4分音符=72ca.4/4ト短調
5桐の花キリノハナModerato4分音符=92ca.3/4ヘ長調Tenor Solo
6たまきわるタマキワルAndantino付点4分音符=80ca.12/8ヘ短調
7キクModerato4分音符=92ca.4/4ト長調Tenor Solo

作品データ

作品番号:T102:M84n
作曲年月日:2011年2月4日
男声合唱団ARCHERによる創立30周年記念委嘱

初演データ

初演団体:男声合唱団ARCHER
初演指揮者:岡本敏幸
初演年月日:2013年4月28日
男声合唱団ARCHER 第6回演奏会(於 京都コンサートホール 大ホール)

作品について

詩の出典
「紅梅花」……『山果集』(四季社、1935年)
「白梅花」……『朝菜集』(青磁社、1943年)
「春のあはれ」……『故郷の花』(大阪創元社、1946年)
「またある時は」「たまきわる」……『花筐』(青磁社、1944年)
「桐の花」……『艸千里』(四季社、1939年)
「菊」……『測量船』(第一書房、1930年)
作曲者コメント

男声合唱組曲「花筐」誕生記

歌詩

紅梅花
海のほとり 小山のかげ 今日もその農家の庭に
領布を振つて私を呼ぶ 一もとの紅梅花 おおボン・ジュウル
今日もまた 昨日よりも美しい 君の木影へ 野菜畑の小徑を行かう
そこに主人は跪づいて 牛の蹄を拭いてゐる 海の聞える農家の庭
白梅花
城あとのしもとのなかの
ひともとの老い木のうれに
梅の花はつはつ咲きぬ
槎枒たりやこのもかのもの
その枝の瑠璃のさかづき
甘からめ香ぐはしからめ
二つ三つ
目じろどり來てくちつくる
ひそかなりげにそのほかは
うごくものなき丘のべゆ
こゑなき海もはるか見ゆ
春のあはれ
春のあはれはわがかげの
ひそかにかよふ松林
松のちちれをひろひつつ
はるかにひとを思ふかな

春のあはれはわがかげを
めぐりて飛べるしじみ蝶
すみれの花ゆまひたちて
ゆくへはしらず波の上に

春のあはれはわがかげの
ひそかにいこふ松林
かばかり悗海の上に
松のちちれをひろふかな
またある時は
またある時は
野にいでて
艸に坐れば
花うばら
あまくかをれど
あなうたて
いまはせんなや
花うばら
香にかをれども
かくばかり
へだてし世こそ
せんなけれ
桐の花
夢よりもふとはかなげに
桐の花枝をはなれて
ゆるやかに舞ひつつ落ちぬ
二つ三つ四つ
幸あるは風に吹かれて
おん肩にさやりて落ちぬ
色も香もたふとき花の
ねたましやその桐の花
晝ふかき土の上より
おん手の上にひろはれぬ
たまきはる
たまきはる命はかなし……
かくはまた老いおとろへし命さへ
いたみなやめる日の空に
柘榴の花は咲きいでぬ
なにごとの合圖のこゑか
世はおしなべてみどり濃き晝のしじまに
火よりもあかし
その花あかし
いざさらばわれもうたはな
えしやよし耳かす人はあらずとも
わが胸底のふる歌を
われもうたはな
菊 北川冬彦君に
花ばかりがこの世で私に美しい。
窓に腰かけてゐる私の、ふとある時の私の純潔。

私の膝。私の手足。(飛行機が林を越える。)
――それから私の祕密。

祕密の花辯につつまれたあるひと時の私の純潔。
私の上を雲が流れる。私は樂しい。私は悲しくない。

しかしまた、やがて悲しみが私に歸つてくるだらう。
私には私の悲しみを防ぐすべがない。

私の惱みには理由がない。――それを私は知つてゐる。
花ばかりがこの世で私に美しい。

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