作曲家・多田武彦〔通称・タダタケ〕のデータベース。

男声合唱組曲「海に寄せる歌」(作詩:三好達治)

海に寄せる歌ウミニヨセルウタ指示速度調性拍子備考
1砂上サジョウやや早く,大らかに4分音符=約120ヘ長調4/4
2仔羊コヒツジやや遅く,はっきりと2分音符=約72イ長調2/2
3ナミダやや早く,しみじみと4分音符=約102ニ短調4/4Bass Solo
4この浦にコノウラニ早く,さびしく4分音符=約134ト短調5/8
5鴎どりカモメドリやや早く,烈しく4分音符=約126ニ短調4/4
6既に鴎はスデニカモメハ遅く,うつろに4分音符=約64変ロ長調4/4Tenor Solo
7ある橋上にてアルキジョウニテ遅く,しみじみと4分音符=約64ト長調5/4(2/4+3/4)

作品データ

作品番号:T36:M32n
作曲年月日:1976年9月23日
崇徳高校グリークラブによる委嘱

初演データ

初演団体:崇徳高校グリークラブ
初演指揮者:天野守信
初演年月日:1977年9月14日
第7回崇徳高等学校グリークラブ定期演奏会

なお同団体・同指揮者により、『3.涙』『6.既に鴎は』を除く演奏が3ヶ月前に行われている。
1977年6月13日 第8回男声合唱の夕べ(於広島郵便貯金会館ホール)参考

楽譜・音源データ

作品について

『鴎どり』は合唱名曲シリーズNo.11(S57)にM4として収録された。
近年『鴎どり』に改訂が加えられた。内容と理由は出版譜の末尾に「(註)」として説明書きがある。ただし、どの時点で加えられた改訂かは明記されていない。
詩の出典
「砂上」……『硫崕検戞併裕┝辧1934年)
「仔羊」……『山果集』(四季社、1935年)
「淚」……『艸千里』(四季社、1939年)
上記以外……『一點鐘』(創元社、1941年)

「この浦に」「旣に鷗は」「ある橋上にて」は、「海 六章」と題された詩群におさめられている。
「ある橋上にて」は第一章、「旣に鷗は」は第四章、「この浦に」は第五章にあたる。

歌詩

砂上
海 海よ お前を私の思ひ出と呼ばう 私の思ひ出よ
お前の渚に 私は砂の上に臥よう 海 鹹からい水 ……水の音よ
お前は遠くからやつてくる 私の思ひ出の緣飾り 波よ 鹹からい水の起き伏しよ
さうして渚を嚙むがいい さうして渚を走るがいい お前の飛沫で私の睫を濡らすがいい
仔羊
海の悗気房にたて 圍ひの柵を跳び越える 仔羊
砂丘の上に馳けのぼり 己れの影にとび上る 仔羊よ
私の歌は 今朝生れたばかりの仔羊
潮の發蠅亡磴鮟屬 飛び去る雲の後を追ふ
とある朝 一つの花の花心から
昨夜の雨がこぼれるほど

小きもの
小きものよ

お前の眼から お前の睫毛の間から
この朝 お前の小さな悲しみから

父の手に
こぼれて落ちる

今この父の手の上に しばしの間溫かい
ああこれは これは何か

それは父の手を濡らし
それは父の心を濡らす

それは遠い國からの
それは遠い海からの

それはこのあはれな父の その父の
そのまた父の まぼろしの故からの

鳥の歌と 花の匂ひと 惷と
はるかにつづいた山川との

……風のたより
なつかしい季節のたより

この朝 この父の手に
新らしくとどいた消息
この浦に
この浦にわれなくば
誰かきかん
この夕この海のこゑ

この浦にわれなくば
誰かみん
この朝この艸のかげ
鷗どり
ああかの烈風のふきすさぶ
砂丘の空にとぶ鷗
沖べをわたる船もないさみしい浦の
この砂濱にとぶ鷗
(かつて私も彼らのやうなものであつた)

かぐろい波の起き伏しする
ああこのさみしい國のはて
季節にはやい烈風にもまれもまれて
何をもとめてとぶ鷗
(かつて私も彼らのやうなものであつた)

波は砂丘をゆるがして
あまたたび彼方にあがる潮煙り その轟きをも
やがてむなしく消えてゆく
春まだき日をなく鷗
(かつて私も彼らのやうなものであつた)

ああこのさみしい海をもてあそび
短い聲でなく鷗
聲はたちまち烈風にとられてゆけど
なほこの浦にたえだえに人の名を呼ぶ鷗どり
(かつて私も彼らのやうなものであつた)
旣に鷗は
旣に鷗は遠くどこかへ飛び去つた
昨日の私の詩のやうに
翼あるものはさいはひな……

あとには海がのこされた
今日の私の心のやうに
なにかぶつくさ呟いてゐる……
ある橋上にて
十日くもりてひと日見ゆ
沖の小島はほのかなれ

いただきすこし傾きて
あやふきさまにたたずめる

はなだに暮るるをちかたに
わが奥つきを見るごとし

参考文献

なまずの孫 3びきめ 「VIII (かつて私も彼らのやうなものであつた) 『海に寄せる歌』をうたうために」

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