作曲家・多田武彦〔通称・タダタケ〕のデータベース。

男声合唱組曲「三崎のうた」[改訂版](作詩:北原白秋)

三崎のうたミサキノウタ指示速度調性拍子備考
1丘の三角畑オカノサンカクバタケややおそく、律動的に2分音符=約80変ホ長調2/2
2白南風黒南風シラバエクロバエおそく、素朴に4分音符=約76ホ短調4/4Tenor Solo
3海雀ウミスズメおそく、優雅に付点4分音符=約69ニ短調6/8
4雨中小景ウチュウショウケイおそく、しみじみと4分音符=約76ト短調4/4
5鮪組マグログミ中庸の速度で、活気に満ちて4分音符=約92ニ短調2/4

作品データ

作品番号:T30:M26nR

初演データ

初演団体:同志社グリークラブ
初演指揮者:須藤彰治
初演年月日:1983年6月19日
第10回同志社大学関西学院大学交歓演奏会

楽譜・音源データ

三崎のうた 多田 武彦 | 合唱楽譜のパナムジカ

作品について

「三崎」は神奈川県三浦市の地名。『白南風黒南風』の副題、「油壺」も付近の地名。
『鮪組』の原詩は14連より成るが、この組曲では第1〜3連・第7〜8連・第10連のみをテクストとしている(下記原詩では、作曲されていない部分をイタリック表示)。
改訂前版から3曲目に「海雀」が追加されている。
詩の出典
「丘の三角畑」「海雀」「雨中小景」……『畑の祭』(アルス、1920年)
「白南風黒南風」「鮪組」……『日本の笛』(アルス、1922年)

歌詩

丘の三角畑
鍬打つ、鍬打つ、
裸で鍬打つ、
空は円天井、
地面は三角、
光は薔薇いろ、藍いろ、利休茶。

鍬打つ、鍬打つ、
並んで鍬打つ。
とべらの木は山形。
反射は三角。
光は銀いろ、薔薇いろ、灰いろ。

鍬打つ、鍬打つ、
離れて彼方此方、
黙つて鍬打つ、
向うにライ麦、こちらに人参。
光は利休茶、緑に、金色。

鍬打つ、鍬打つ、
うしろむきに鍬打つ、
一心に鍬打つ、
打たずにやゐられぬ。
とべらの木の周囲を廻つて鍬打つ。
光は薔薇いろ、空いろ、利休茶。

鍬打つ、鍬打つ、
近寄つて鍬打つ、
キラキラするのは 巡査のサアベル、
畑の上では蒸汽が旗振る。
光は薔薇いろ、湾内や真青。

鍬打つ、鍬打つ、
振りかへつて鍬打つ、
とべらの木の下ではあかんぼがすやすや、
鶏がコケツコツコ。
光は薔薇いろ、藍いろ、利休茶。

鍬打つ、鍬打つ、
向きあつて鍬打つ、
拝んで鍬打つ、
打たずにやゐられぬ、心から鍬打つ。
光は薔薇いろ、向日葵、金色。

ぎあとあかんぼが啼き出した。
白南風黒南風 油壺のうた
小焼、夕焼、
風ぐるま。
  明日は日和か、風ぐるま。
  せめてたよりを待ちましよか。
  風が吹きます、白南風が。

小焼、朝焼、
風ぐるま。
  明日はあらしか、風ぐるま。
  どうで、たよりも片だより。
  風が吹きます、黒南風が。
海雀
海雀、海雀、
銀の点点、海雀、
波ゆりくればゆりあげて、
波ひきゆけばかげ失する、
海雀、海雀、
銀の点点、海雀。
雨中小景
雨はふる、ふる雨の霞がくれに
ひとすぢの煙立つ、誰が生活ぞ、
銀鼠にからみゆく古代紫、
その空に城ヶ島近く横たふ。

なべてみな空なりや、海の面に
輪をかくは水脈のすぢ、あるは離れて
しみじみと泣きわかれゆく、
その上にあるかなきふる雨の脚。

遥なる岬には波もしぶけど、
絹漉の雨の中、蜑小舟ゆたにたゆたふ。
棹あげてかぢめ採りゐる
北斎の蓑と笠、中にかすみて
一心に網うつは安からぬけふ日の惑ひ。

さるにてもうれしきは浮世なりけり。
雨の中、をりをりに雲を透かして
さ緑に投げかくる金の光は
また雨に忍び入る。音には刻めど
絶えて影せぬ鶺鴒のこゑをたよりに。
鮪組
   1
南風だ、船出だ、
鮪漁だ、組だ。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    裸でやつつけ。

今に鮪の
富士の山。
    えいそら、えいそら。

   2
一度家を出りや、
女房、子もあろか。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    早櫓ですつ飛べ。

意気は三崎の
鮪組。
    えいそら、えいそら。

   3
時化けよ、しけの風、
どんと吹いてござれ。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    三崎の若衆だ。

腕に筋金、
赤ふどし。
    えいそら、えいそら。

   4
鯱のお荒れだ、
女沙魚よ、時化だ。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    なに糞、乗り上げ。

雑魚も鰯も、
そりや逃げた。
    えいそら、えいそら。

   5
時化を相手に
荒灘かせぎ。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    運を天に任した。

肌の守りは、
象頭山。
    えいそら、えいそら。

   6
どうで惚れるなら、
鮪の雌よ。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    男の意気地だ。

豆の女雑魚に
用は無い。
    えいそら、えいそら。

   7
潮だ、早瀬だ、
そりやこそ、鮪。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    占めたぞ、追つかけ。

海は鰯の
雪なだれ。
    えいそら、えいそら。

   8
風は南風のかぜ、
八挺櫓の櫓風。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ。
    一気にやつつけ。

灘は相模灘、
初鮪。
    えいそら、えいそら。

   9
浜の五十葉で、
見せたいものは。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    もう一息だぞ。

鮪の胴切り、
沙魚の尻。
    えいそら、えいそら。

   10
漕いで漕いで漕いで、
北条の入江。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    見えたぞ、燈だ。

晩にや、大漁の
お酒宴。

   11
揃ろた、揃ろたよ、
大鮪がそろた。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    素つ裸で引揚げた。

かつげ、勇みの
伊達仲士。
    えいそら、えいそら。

   12
俺が万祝衣
朝日に波よ。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    男の伊達だぞ。

潮に鮪の
飛ぶところ。
    えいそら、えいそら。

   13
三崎城ケ嶋は
鵜のすむ嶋よ。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    大漁だ、大漁だ。

鵜のみ、酒のみ、
だだら飲み。
    えいそら、えいそら。

   14
女ろよ、惚れるなら、
鮪組に惚れろ。
    えいそら、えいそら。

    ただこの意気だぞ、
    背負つて立つた、背負つて立つた。

命知らずの
情け知り。
    えいそら、えいそら。

参考文献

なまずの孫 2ひきめ 「IX みさきめぐり―『三崎のうた』『三崎のうた・第二』を歌うために―」

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