作曲家・多田武彦〔通称・タダタケ〕のデータベース。

男声合唱組曲「秋風裡」[改訂版](作詩:三好達治)

秋風裡シュウフウリ指示速度調性拍子備考
1海にむかいてウミニムカイテAndantino4分音符=80ca.へ長調3/4Tenor Solo
2喪服の蝶モフクノチョウModerato4分音符=92ca.ニ短調2/4
3蜑女のほそ路アマノホソミチAdagio4分音符=60ca.ハ短調2/4
4藍にけむれるアイニケムレルAllegretto4分音符=108ca.ト短調3/4
5海鳴りウミナリLarghetto4分音符=66ca.イ短調3/4

作品データ

作品番号:T44:M39nR
作曲年月日:2010年2月1日
東京工業大学シュヴァルベンコールOB会による委嘱

初演データ

初演団体:燕友合唱団(東京工業大学シュヴァルベンコールOB会傘下の合唱団)
初演指揮者:青木雅美
初演年月日:2010年10月16日
燕友合唱団第3回演奏会(於亀戸文化センターカメリアホール)

楽譜・音源データ


秋風裡
初演と同時に発売された。

作品について

旧版から「雨の鳩」が外され、終曲を除き曲順を入れ替えたうえで「藍にけむれる」が追加されている。差別的な語句が存在したのを敬遠しての封印だと推測される。
ただし、作曲者自身は増補改訂の理由を「組曲構築性の脆弱性」「詩の特質を見失って小利口に音だけ追い掛けすぎていたことへの反省」によるものと説明している。
全体に指示表記など大小の改訂が施されている。特に「蜑女のほそ路」は全面的に書き直された。
詩の出典
『駱駝の瘤にまたがつて』(創元社、昭和27年):「秋風裡」の項より。

歌詩

海にむかひて
海にむかひて白百合の
爲朝百合が咲きました

花の發蠅板の香と
昔の人の消息と

けふ吹く風のときのまに
いづれあとなきものばかり

つねあるものをたのむより
けふのうれひはあれにけむ

されど悗はいよいよに
まさりて悗空と海

世にあるもののうつろふを
うべなひあへぬ心かな
喪服の蝶
ただ一つ喪服の蝶が
松の林をかけぬけて
ひらりと海へ出ていつた
風の傾斜にさからつて
つまづきながら よろけながら
我等が酒に醉ふやうに
まつ赤な雲に醉つ拂って
おほかたきつとさうだらう
ずんずん沖へ出ていつた
出ていつた 遠く 遠く
また高く 喪服の袖が
見えずなる

いづれは消える夢だから
夏のをはりは秋だから
まつ赤な雲は色あせて
さみしい海の上だつた
かくて彼女はかへるまい
岬の鼻をうしろ手に
何を目あてといふのだらう
ずんずん沖へ出ていつた
出ていつた
遠く 遠く
また高く

おほかたきつとさうだらう
(我らもそれに學びたい)
この風景の外へまで
喪服をすてにいつたのだ
蜑女のほそ路
風ふけば風にとわたり
雨ふれば雨にゆあみす
鶫どり庭に來る秋

うれひなき昔はわれも
杖かろく越えし山路を
ふと思ふ鳥のふりかな

世にたゆき肱をひぢつき
艸の戸にくむにごり酒
友もなくおく盃や

きのうふけふ海は高なみ
鱶のむれ水門をすぐと
つたへいふ蜑女のほそ路
藍にけむれる
藍にけむれる峰々を
ひとあしとびにわたりくる
魔界の王のさきぶれや
銀の砂子を朝あけに
さらばかけすもかささぎも
をしもあいさもちりぢりに
こころおびゆるかも鹿の
うなじをあげてきくはなに
山毛欅のおほ樹もみぶるひす

秋ぢや
秋ぢや
鶫のむれも
ひとわたり
人の子どもは
山を降れ
小屋の扉を
かたくさせ
木馬きしらせ
仔馬もつれて
あとはただ吹雪木枯し
風のいくさ場
また空の悗疑爾
晝光る星のかそけさ
海鳴り
わが庭園は薯畑
夏の夜露がしつとりと
星がとぶまた星がとぶ
庵の主じが窓に出て
籐の臥椅子にねる頃には
秋のこゑして蟲がなく
ひき蛙めが片われの
月を見るとてまかりでて
陶のあたりでこれもなく
よいやれさあよいやのさ
あれはいさああれはのさ
濱にたてたる高張りの
二つばかりの火のかげに
けふもをどりの輪がたつて
ほうやれほうほいやれほ
こゑあるもののみながみな
かなしいうたをうたふ夜だ
さればかなたの海鳴りの
かすかなるさへとりわきて
身にも骨にもとほる夜だ
たのしい夏は夢ばかり
――ほんにもう秋かい

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