作曲家・多田武彦〔通称・タダタケ〕のデータベース。

男声合唱組曲「燈台の光を見つつ」(作詩:伊東静雄)

燈台の光を見つつトウダイノヒカリヲミツツ指示速度調性拍子備考
1早春ソウシュンAndantino4分音符=80 ca.ヘ長調4/4
2ツバメAllegro4分音符=132 ca.変ホ長調3/4
3朝顔アサガオAndantino4分音符=80 ca.ロ短調4/4Tenor Solo
4蜻蛉アキツAllegretto4分音符=108 ca.ヘ長調4/4
5夕の海ユウベノウミLarghetto付点4分音符=63 ca.変ホ長調6/8Bariton Solo
6燈台の光を見つつトウダイノヒカリヲミツツAndantino付点4分音符=80 ca.ヘ短調12/8

作品データ

作品番号:T108:M90n
作曲年月日:2013年1月15日

初演データ

初演団体:京都大学グリークラブ&OB
初演指揮:藤田正浩
初演年月日:2015年4月25日
初演演奏会:京都大学グリークラブ創立50周年記念演奏会(於京都コンサートホール)

楽譜・音源データ

作品について

詩の出典
『夏花』(子文書房、1940年)

歌詩

早春
野は褐色と淡い紫、
田圃の上の空気はかすかに微温い。
何処から春の鳥は戻る?
つよい目と
単純な魂と いつわたしに来る?

未だ小川は唄ひ出さぬ、
が 流れはときどきチカチカ光る。
それは魚鱗?
なんだかわたしは浮ぶ気がする、
けれど、さて何を享ける?
門の外の ひかりまぶしき 高きところに 在りて 一羽
燕ぞ鳴く
単調にして するどく 翳なく
あゝ いまこの国に 到り着きし 最初の燕ぞ 鳴く
汝 遠くモルツカの ニユウギニヤの なほ遥かなる
彼方の空より 来りしもの
翼さだまらず 小足ふるひ
汝がしき鳴くを 仰ぎきけば
あはれ あはれ いく夜凌げる 夜の闇と
羽うちたたきし 繁き海波を 物語らず
わが門の ひかりまぶしき 高きところに 在りて
そはただ 単調に するどく 翳なく
あゝ いまこの国に 到り着きし 最初の燕ぞ 鳴く
朝顔 辻野久憲氏に
去年の夏、その頃住んでゐた、市中の一日中陽差の落ちて来ないわが家の庭に、一茎の朝顔が生ひ出でたが、その花は、夕の来るまで凋むことを知らず咲きつづけて、私を悲しませた。その時の歌、

そこと知られぬ吹上の
終夜せはしき声ありて
この明け方に見出でしは
つひに覚めゐしわが夢の
朝顔の花咲けるさま

さあれみ空に真昼過ぎ
人の耳には消えにしを
かのふきあげの魅惑に
己が時逝きて朝顔の
なほ頼みゐる花のゆめ
蜻蛉
無邪気なる道づれなりし犬の姿
何処に消えしと気付ける時
われは荒野の尻に立てり。

其の野のうへに
時明してさ迷ひあるき
日の光の求むるは何の花ぞ。

この問ひに誰か答へむ。弓弦断たれし空よ見よ。
陽差のなかに立ち来つつ
振舞ひ著し蜻蛉のむれ。

今ははや悲しきほどに典雅なる
荒野をわれは横ぎりぬ。
夕の海
徐かで確実な夕闇と、絶え間なく揺れ動く
白い波頭とが、灰色の海面から迫つて来る。
燈台の頂には、気付かれず緑の光が点される。

それは長い時間がかゝる。目あてのない、
無益な予感に似たその光が
闇によつて次第に輝かされてゆくまでには――。

が、やがて、あまりに規則正しく回転し、倦むことなく
明滅する燈台の緑の光に、どんなに退屈して
海は一晩中横はらねばならないだらう。
燈台の光を見つつ
くらい海の上に 燈台の緑のひかりの
何といふやさしさ
明滅しつつ 廻転しつつ
おれの夜を
ひと夜 彷徨ふ

さうしておまへは
おれの夜に
いろんな いろんな 意味をあたへる
嘆きや ねがひや の
いひ知れぬ――

あゝ 嘆きや ねがひや 何といふやさしさ
なにもないのに
おれの夜を
ひと夜
燈台の緑のひかりが 彷徨ふ

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このページへのコメント

この組曲は,京都大学グリークラブ創立50周年記念演奏会で,OBと現役が合同で演奏します。
演奏会は2015/4/25です。また,作曲完成は2013/1/15となっています。

Posted by との 2014年07月23日(水) 17:07:09

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