作曲家・多田武彦〔通称・タダタケ〕のデータベース。

男声合唱組曲「百たびののち」(作詩:三好達治)

百たびののちヒャクタビノノチ指示速度調性拍子備考
1お茶の木オチャノキAllegretto4分音符=104 ca.ヘ長調4/4
2花はちすハナハチスAndante4分音符=72 ca.ロ短調4/4
3牛島古藤歌ウシジマフルフジウタLento4分音符=52 ca.ニ短調3/4
4残果ザンカAndante4分音符=72 ca.ヘ短調4/4
5見るミルAndantino付点4分音符=80 ca.ヘ長調6/8
6寒庭カンテイAndantino4分音符=84 ca.ト長調3/4Tenor Solo

作品データ

作品番号:T90:M72n
作曲年月日:2008年?月?日

初演データ

初演団体:上智大学グリークラブ 現役OB合同
初演指揮者:太田務
初演年月日:2009年6月28日
上智大学グリークラブ創部55周年記念演奏会(於杉並公会堂)

楽譜・音源データ


男声合唱組曲「百たびののち」

作品について

三好達治の最後の詩集「百たびののち」からの6篇をテキストとした無伴奏男声合唱組曲です。
死期を待つ姿の尊厳を山茶花に描いた終曲の「寒庭」は、特に作曲者の深い思いが込められていて静かな感動を生むことでしょう。
上智大学グリークラブのOB有志によって委嘱・初演されました。(パナムジカ新刊案内より)

テキストは自然の風物を描いた詩が選ばれている。さらに第4曲以降は植物や景色を見ながら詩人が来し方を振り返るものが取り上げられており、喜寿を過ぎた作曲者自身に投影しての選択であることが出版譜の前書きからうかがえる。

内声パートが終始ユニゾンで比較的広い音域の主旋律を歌うフレーズが多用されている。

3曲目の詩の題材は東武鉄道藤の牛島駅近くにある藤花園園内にある牛島の藤である。国の特別天然記念物に指定されている。

第1刷には誤表記がある。「花はちす」の25小節目でBaritone・Bassに出てくるGisは、♯を♮に変えてGのままである。(メロス楽譜の情報)
詩の出典
『定本三好達治詩全集』(筑摩書房、1962年):『百たびののち』の項に収められている。

歌詩

お茶の木
お茶の木お茶の木お茶畑
日本平は海の上
羶綛舛貿鬚ちジえた
ちやつちやと茶鋏茶摘み娘がならした
茶鋏茶摘み唄茶摘み娘がうたつた
お茶の木茶の木茶の木を摘んで
茶坊主をそろつた
茶畑
茶畑
花はちす
路のほとりの花はちす
野のすゑに悗は筑波
膝を折つて悗ゑ剔未つくばつてゐる
どこやらの 王城の 大木戸の戸を
ほとほとと ほとほとと 小びとが敲く
お鬚濘修垢醗篤發鮓陲佞譴陲襪
しかもこんなまつ晝まに 城のうちから應へはない
さて 何のことやら……
見てゐると 筋立ちもないお噺の 一ふしの
それがあはれな くれなゐの 花はちす
いくつも風に動いてゐる
野のすゑに悗は筑波
牛島古藤歌
葛飾の野の臥龍梅
龍うせて もも すもも
あんずも悗實となりぬ
何をうしじま千とせ藤
         はんなりはんなり

ゆく春のながき花ふさ
花のいろ搖れもうごかず
古利根の水になく鳥
行々子啼きやまずけり

メートルまりの花の丈
匂ひかがよふ遲き日の
つもりて遠き昔さへ
何をうしじま千とせ藤
         はんなりはんなり
殘果
友らみな梢を謝して
市にはこばれ賣られしが

ひとりかしこに殘りしを
木守りといふ

蒼天のふかきにありて
紅の色冴えわたり
肱張りて枯れし柿の木
痩龍に睛を點ず

木守りは
木を守るなり

鴉のとりも鵯どりも
尊みてついばまずけり

みぞれ待ち雪のふる待ち
かくてほろぶる日をまつか

知らずただしは
寒風に今日を誇るか
見る
ひよろひよろ松に暮れかかる靄の上
町の上 丘の上 草の上
昨日もここにやつてきた路の上
暮色はいよいよ濃やかに それでもずつと向ふの方は息づくやうに透明な
雲一つない 何もないひろい景色を見る
海を見る
そこには何もないのを 見る
寒庭
しぐれ空に山茶花の花が咲いた
どこやらでそこここでせつせと機械の音のする場末町
陽ざし乏しいしめつぽい貧しい庭に
寂しい庭のかた蔭に紅につつましくなにげなく
こころは高くけふの季節をひきとつて
その紅は花瓣のふちに一刷けわづかにほのかに鮮かに
それでもそれは忘れずに その一刷けは
忘れず數へてていねいにその數を並べてみせるこの花の
私は知つてゐる また甲斐もなく摧け易くさりげなくこゑもなく散り易いのを
私はかねがね知つてゐます 舊い友よ 私はその日さう呟いたが
今日もうその花は根かたの土に散つてゐる
落ちつく先はとにもあれ とばかりその途の隣りの慳擇陵佞弔僂両紊砲發箸泙弔討陲
しぐれの雨に土の上にその紅は眼に痛くなほ色も褪せずに
なべての思出よ 冬のつめたい土のもと 地下のはるかな暗闇に
また鵯どりの啼きすぎる雨空にまで……

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