作曲家・多田武彦〔通称・タダタケ〕のデータベース。

男声合唱組曲「叙情小曲集」(作詩:室生犀星)

叙情小曲集ジョジョウショウキョクシュウ指示速度調性拍子
1春の寺ハルノテラLarghetto4分音符=66ca.ト長調4/4
2寂しき春サビシキハルModerato4分音符=96ca.イ短調3/4
3砂山の雨スナヤマノアメAndante4分音符=66ca.ニ短調4/4
4かもめカモメAllegro4分音符=126ca.ト長調3/4
5秋の終りアキノオワリAndantino4分音符=80ca.イ短調4/4
6フエAdagio付点4分音符=60ca.ニ短調6/8
7信濃シナノAdagio4分音符=60ca.ホ短調4/4

作品データ

作品番号:T79:M63n
作曲年月日:2003年1月31日
立教大学グリークラブOB男声合唱団による委嘱

初演データ

初演団体:立教大学グリークラブOB男声合唱団
初演指揮者:髙坂徹
初演年月日:2003年11月1日
立教大学グリークラブOB男声合唱団 第2回リサイタル(於 品川区総合区民会館“きゅりあん”)

※「髙」=『高』の異体字(いわゆるハシゴ高)

楽譜・音源データ


男声合唱組曲「叙情小曲集」

作品について

室生犀星の詩による初めての合唱組曲。詩の奥底に流れる深層心理の取り扱いが難しいという理由から難渋していたが、詩集『叙情小曲集』の自序に記された「恰も小学讀本を朗読するやうに、率直な心で読み味わってもらへれば、たいへん心うれしく感じる」という言葉に出会ったことで作曲の糸口が見つかったとのこと。

『寂しき春』は17歳のとき(旧制高校在学中)に作曲した習作の独唱曲がもと。
『信濃』の原詩には「編がさやちらと見しもの雪のひま」という俳句が付けられているが、この句には作曲されていない。
詩の出典
「春の寺」……『青き魚を釣る人』(アルス、1923年)
「笛」…………『忘春詩集』(京文社、1922年)
「信濃」……『旅人』(臼井書房、1947年):初出は『新日本文学』昭和21年6月号。
上記以外……『叙情小曲集』(感情詩社、1918年)

歌詩

春の寺
うつくしきみ寺なり
み寺にさくられうらんたれば
うぐひすしたたり
さくら樹にすゞめら交り
かんかんと鐘鳴りてすずろなり。
かんかんと鐘鳴りてさかんなれば
をとめらひそやかに
ちちははのなすことをして遊ぶなり。
門もくれなゐ炎炎と
うつくしき春のみ寺なり。
寂しき春
したたり止まぬ日のひかり
うつうつまはる水ぐるま
あをぞらに
越後の山も見ゆるぞ
さびしいぞ

一日もの言はず
野にいでてあゆめば
菜種のはなは波をつくりて
いまははや
しんにさびしいぞ
砂山の雨
砂山に雨の消えゆく音
草もしんしん
海もしんしん
こまやかなる夏のおもひも
わが身うちにかすかなり

草にふるれば草はまさをに
雨にふるれば雨もまさをなり

砂山に埋め去るものは君が名か
かひなく過ぐる夏のおもひか
いそ草むらはうれひの巣
かもめのたまご孵らずして
あかるき中にくさりけり
かもめ
かもめかもめ
去りゆくかもめ
かくもさみしく口ずさみ
渚はてなくつたひゆく

かもめかもめ
入日のかたにぬれそぼち
ぴよろとなくはかもめどり
あはれみやこをのがれきて
海のなぎさをつたひゆく
秋の終り
君はいつも無口のつぐみどり
わかきそなたはつぐみどり
われひとりのみに
もの思はせて
いまごろはやすみいりしか

夜夜冷えまさり啼くむしは
わが身のあたり水を噴く
ああ その水さへも凍りて
ふたつに割れし石の音

あをあをと磧のあなたに起る
幾日逢はぬかしらねど
なんといふ恋ひしさぞ
悲しきとき笛を吹きけり
ほそく静かに吹きけり

その笛の音いろの到かんところには
かならず笛のねいろを聞くものあらんと
羽がひやさしきものの静かに耳を傾け
杖などもちてあらんと思ひ
われにもあらぬあさましき我がなす笛の
いつにならば鳴らずなるものか

河鹿を呼ぶ笛ならば
水の上にてこたふるならんも
わが笛はそらにきえちぢまりゆくのみ
信濃
雪といふものは物語めいてふり
こなになりわたになり 哀しいみぞれになり
たえだえにふり また向ふも見えぬほどにふる
村の日ぐれはともしびを数へてゐるうちに深まる

雪は野山を蔽ひ 野山も見えずなる
こなになりわたになり 哀しいみぞれになり
きれぎれにふり つひに歇んでしまふ

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