最終更新: chorus_mania 2021年01月21日(木) 01:55:58履歴
燈台の光を見つつ | トウダイノヒカリヲミツツ | 指示 | 速度 | 調性 | 拍子 | 備考 | |
1 | 早春 | ソウシュン | Andantino | 4分音符=80 ca. | ヘ長調 | 4/4 | |
2 | 燕 | ツバメ | Allegro | 4分音符=132 ca. | 変ホ長調 | 3/4 | |
3 | 朝顔 | アサガオ | Andantino | 4分音符=80 ca. | ロ短調 | 4/4 | Tenor Solo |
4 | 蜻蛉 | アキツ | Allegretto | 4分音符=108 ca. | ヘ長調 | 4/4 | |
5 | 夕の海 | ユウベノウミ | Larghetto | 付点4分音符=63 ca. | 変ホ長調 | 6/8 | Bariton Solo |
6 | 燈台の光を見つつ | トウダイノヒカリヲミツツ | Andantino | 付点4分音符=80 ca. | ヘ短調 | 12/8 |
京都大学の委嘱だから「東大の光を見つつ」という多田先生なりのジョークの可能性をあえてここに記す。
伊東静雄の詩をテキストとした男声合唱組曲。3曲目「朝顔」にはテナーソロが、5曲目「夕の海」にはバリトンソロが配されるなど多田作品のフォーマットに沿った無伴奏男声合唱組曲ですが、その詩と音楽はいつものように世の男声合唱ファン、タダタケファンを裏切ることはないでしょう。(パナムジカ出版より)
伊東静雄の詩をテキストとした男声合唱組曲。3曲目「朝顔」にはテナーソロが、5曲目「夕の海」にはバリトンソロが配されるなど多田作品のフォーマットに沿った無伴奏男声合唱組曲ですが、その詩と音楽はいつものように世の男声合唱ファン、タダタケファンを裏切ることはないでしょう。(パナムジカ出版より)
野は褐色と淡い紫、
田圃の上の空気はかすかに微温い。
何処から春の鳥は戻る?
つよい目と
単純な魂と いつわたしに来る?
未だ小川は唄ひ出さぬ、
が 流れはときどきチカチカ光る。
それは魚鱗?
なんだかわたしは浮ぶ気がする、
けれど、さて何を享ける?
田圃の上の空気はかすかに微温い。
何処から春の鳥は戻る?
つよい目と
単純な魂と いつわたしに来る?
未だ小川は唄ひ出さぬ、
が 流れはときどきチカチカ光る。
それは魚鱗?
なんだかわたしは浮ぶ気がする、
けれど、さて何を享ける?
門の外の ひかりまぶしき 高きところに 在りて 一羽
燕ぞ鳴く
単調にして するどく 翳なく
あゝ いまこの国に 到り着きし 最初の燕ぞ 鳴く
汝 遠くモルツカの ニユウギニヤの なほ遥かなる
彼方の空より 来りしもの
翼さだまらず 小足ふるひ
汝がしき鳴くを 仰ぎきけば
あはれ あはれ いく夜凌げる 夜の闇と
羽うちたたきし 繁き海波を 物語らず
わが門の ひかりまぶしき 高きところに 在りて
そはただ 単調に するどく 翳なく
あゝ いまこの国に 到り着きし 最初の燕ぞ 鳴く
燕ぞ鳴く
単調にして するどく 翳なく
あゝ いまこの国に 到り着きし 最初の燕ぞ 鳴く
汝 遠くモルツカの ニユウギニヤの なほ遥かなる
彼方の空より 来りしもの
翼さだまらず 小足ふるひ
汝がしき鳴くを 仰ぎきけば
あはれ あはれ いく夜凌げる 夜の闇と
羽うちたたきし 繁き海波を 物語らず
わが門の ひかりまぶしき 高きところに 在りて
そはただ 単調に するどく 翳なく
あゝ いまこの国に 到り着きし 最初の燕ぞ 鳴く
去年の夏、その頃住んでゐた、市中の一日中陽差の落ちて来ないわが家の庭に、一茎の朝顔が生ひ出でたが、その花は、夕の来るまで凋むことを知らず咲きつづけて、私を悲しませた。その時の歌、
そこと知られぬ吹上の
終夜せはしき声ありて
この明け方に見出でしは
つひに覚めゐしわが夢の
朝顔の花咲けるさま
さあれみ空に真昼過ぎ
人の耳には消えにしを
かのふきあげの魅惑に
己が時逝きて朝顔の
なほ頼みゐる花のゆめ
そこと知られぬ吹上の
終夜せはしき声ありて
この明け方に見出でしは
つひに覚めゐしわが夢の
朝顔の花咲けるさま
さあれみ空に真昼過ぎ
人の耳には消えにしを
かのふきあげの魅惑に
己が時逝きて朝顔の
なほ頼みゐる花のゆめ
無邪気なる道づれなりし犬の姿
何処に消えしと気付ける時
われは荒野の尻に立てり。
其の野のうへに
時明してさ迷ひあるき
日の光の求むるは何の花ぞ。
この問ひに誰か答へむ。弓弦断たれし空よ見よ。
陽差のなかに立ち来つつ
振舞ひ著し蜻蛉のむれ。
今ははや悲しきほどに典雅なる
荒野をわれは横ぎりぬ。
何処に消えしと気付ける時
われは荒野の尻に立てり。
其の野のうへに
時明してさ迷ひあるき
日の光の求むるは何の花ぞ。
この問ひに誰か答へむ。弓弦断たれし空よ見よ。
陽差のなかに立ち来つつ
振舞ひ著し蜻蛉のむれ。
今ははや悲しきほどに典雅なる
荒野をわれは横ぎりぬ。
徐かで確実な夕闇と、絶え間なく揺れ動く
白い波頭とが、灰色の海面から迫つて来る。
燈台の頂には、気付かれず緑の光が点される。
それは長い時間がかゝる。目あてのない、
無益な予感に似たその光が
闇によつて次第に輝かされてゆくまでには――。
が、やがて、あまりに規則正しく回転し、倦むことなく
明滅する燈台の緑の光に、どんなに退屈して
海は一晩中横はらねばならないだらう。
白い波頭とが、灰色の海面から迫つて来る。
燈台の頂には、気付かれず緑の光が点される。
それは長い時間がかゝる。目あてのない、
無益な予感に似たその光が
闇によつて次第に輝かされてゆくまでには――。
が、やがて、あまりに規則正しく回転し、倦むことなく
明滅する燈台の緑の光に、どんなに退屈して
海は一晩中横はらねばならないだらう。
くらい海の上に 燈台の緑のひかりの
何といふやさしさ
明滅しつつ 廻転しつつ
おれの夜を
ひと夜 彷徨ふ
さうしておまへは
おれの夜に
いろんな いろんな 意味をあたへる
嘆きや ねがひや の
いひ知れぬ――
あゝ 嘆きや ねがひや 何といふやさしさ
なにもないのに
おれの夜を
ひと夜
燈台の緑のひかりが 彷徨ふ
何といふやさしさ
明滅しつつ 廻転しつつ
おれの夜を
ひと夜 彷徨ふ
さうしておまへは
おれの夜に
いろんな いろんな 意味をあたへる
嘆きや ねがひや の
いひ知れぬ――
あゝ 嘆きや ねがひや 何といふやさしさ
なにもないのに
おれの夜を
ひと夜
燈台の緑のひかりが 彷徨ふ
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この組曲は,京都大学グリークラブ創立50周年記念演奏会で,OBと現役が合同で演奏します。
演奏会は2015/4/25です。また,作曲完成は2013/1/15となっています。