宴の逃げ水・前編(別ルート)

久々のヨンクロです。 ナナの作者さんが湿り気あるエロシーンを見事に披露してくれた所で、そろそろ投下しようかと思います。 宴の4P編へ移行しますが、基本は三部構成で。前回は収まりきらずに続編と苦しい策をとりましたが(笑) ちなみに前回の話の別ルートという形をとり、設定はそのまま、>>535からの続きという流れで行きます。

青髪の少女は、夜空を見上げながら自らの身に起きた出来事を反芻していた。

あの時、私の身に何者かが入り込んできた。その間は覚えてはいないけど、しかし、何か懐かしい感じ・・・
そう、母なる胎内へと抱かれるような安らぎ・・・すべては青々とし、清々しく私を包んでくれたあの時・・・

「あれは一体、何だったのかしら・・・」

残念ながらランドの一件は片隅に、降臨体験ばかりに囚われていた。が、その思考は突如として遮られる。

「・・ィ〜タキタキタキタキタキタキタキタキタキタキタぁーーーーーっ!!!!!」
「きゃあっ!!」

突如、彼女の目前におぞましい動きを経て、人間らしき半裸の腰簑オヤジがターニアの行く手を妨げた。

「この私めのタキタキ踊りを無視してゆくとは50年早いですゾ!!」

シカトされたことが我慢ならなかったのだろう。目で追いきれないほど、手足が残像の軌跡を描いている。

「なっ・・・何ですか、あなたは!」
「儂は踊りの後継者を探すため、世界中をあちらこちら巡っておるのですじゃ」
「はあ・・・」

外観とは裏腹に強かな野望を持っているのね・・・青髪の少女は呆気にとられながらもそう思った。

「ところでお嬢ちゃん、踊りはいかがですかな?」
「嫌です!」

半裸にスネ毛・・・こんな格好をされて誘いを受けても「はい、そうですね」と言えるわけがない。

「ならば仕方がありませんな・・・お嬢ちゃんには何が何でも踊っていただきますゾ・・・はぁぁ〜〜っ・・・」

オヤジの背後から怪しい霧が立ち込め、どこからか気の抜けそうな笛の音がこだましてくる!

「な、何・・・」

手首をくの字に曲げ、振向き様に粒羅な瞳でターニアを捉えた瞬間、オヤジは奇妙な踊りを仕掛けてきた!

「っ!?」

ターニアの身体は何かに掴まれたかのように身動きできず、視線はオヤジの踊りへと注がれた。すると・・・

「あっ・・・そんな!勝手に身体が・・・」

もう自分の意志はことごとく無視され、身体はマリオネットと化してしまった!

「ほっほっほ、誘う踊りが効きましたかの・・・それでは、儂の動きについて来られますかな?」

突然オヤジの目が光った!なんと彼が動くに従い、ターニアも同じ動きを強いられてしまった!

「イヤァーーっ!こんなの嫌よ!」
「ほぉ〜、お嬢ちゃんには踊り子としての適正がありそうですな?」
「全く嬉しくありません!」

彼の仕掛けた不気味な眼差しとは・・・対象を強制的に踊らせてラーニングさせるという端迷惑な技である。

「そうそう、腰はこんな感じで動かすんですゾ〜」
「あうう・・・はしたないわ・・・こんな動き・・・」

乙女にとっては屈辱的な仕打・・・華麗な舞いは欠片もなく、下品に滑稽な動きばかりを強いられてしまう。

「ううっ、もうお嫁にいけない・・・」

と、草むらからガサッと何かが飛び出し、宴の場へと飛込んだ。

「彼女を解き放て!」

青年Aはオヤジへ足払いをかけた!

「おわっ!?」

オヤジはすっ転んだ!

「はぁ・・・はぁ・・・」

ターニアはようやく踊り地獄から解放された。

「あ、ありがとうございます!」
「そんなことより、早くここから離れるんだっ」

そういい捨てると、彼は体制を建て直しつつあるオヤジの前へとおどり出した。

「でも」
「いいから・・・あと、君の兄さんによろしく!」
「?」

チョキを振りかざしながらの最後の発言に首を傾げつつも一礼をすると、ターニアはその場から離脱した。

「くうっ・・・せっかく後継者を探し当てたというに・・・それを邪魔立てするとは許しませんゾ!」

腰簑に付着した砂を払いながら、突然の訪問者に怒りを隠せぬオヤジ。

「何を訳の分からんことを・・・黙って私のステテコダンスの前にひれ伏せな!」

青年Aは手を腰に回し、どこからかステテコパンツを二丁取り出し構えをとる。

「ほほほ・・・笑止千万!(・・・まぁ細工は流々ですし・・・相手してあげましょう)」

そう言うやいなや、くの字に曲げた手つきで青年Aに百烈拳を放ってきた!

「・・ィ〜タキタキタキタぁーーっ!・・・どうです、この手捌きは!」
「うわわっ!?」

しかし青年Aは二刀流パンツをマント代わりに、ひらりひらりと見事にオヤジの猛撃を受け流している!

「・・・よっ・・・はぁっ、なんと!・・・とんでもねぇ動きをするねっ!」
「お・・・おぬし、なかなかやりますな?」
「オヤジさんだって・・・とっても人とは・・・思えん動きで・・・こっちもびっくりだよ・・・」

半裸な腰簑オヤジにパンツを両手に構えた青年A・・・宴の場はますます神聖さを失いつつあった・・・

「ほほっ、久々に燃えてきましたゾ!」
「私に萌えてもらってもな・・・流石にオヤジは趣味じゃないから困るっ!」

二人の背後で焚き火が天まで届くかのように燃え盛る中、死烈な闘いが繰り広げられるのであった・・・


「はあ・・・今日は何なのよ・・・」

自分の身に不馴れな事態が降りかかるので、ターニアは辟易としていた。

「でも、あの人は一体・・・見たことないけど、お兄ちゃんの友達かしら?」

危機から救ってくれた青年Aのことを考えながら歩いていると、目前に何かの影が見える。

「・・あれは?」

草場の上に誰かが横たわっている。近付いてみると赤い服を着た亜麻色のポニーテール・・・知った女性だ。

「ジュディさん!?」
「あるぁ〜タ〜ニアじゃあないの〜」

ろれつが回りきらない口調からして、かなり酔っているようだ。

「どうしたのよ、こんなに飲んじゃって・・・って、まだ飲んじゃダメでしょ!」
「だってぇランドの馬鹿がぁいけないんだもぉん」
「ランド?」

自分だけでなく、ジュディにも・・・ターニアは少し腹立たしくなってしまった。

「う〜なんか踊っちゃってぇ〜一升瓶ガボガボ飲まされて〜それからね・・・」
「と、とにかく水を・・・」

しかし、井戸は先程のところへ戻らないと駄目だ。

「・・・戻るのは無理ね」
「ねぇ〜たぁにゃ〜あなたも一緒にお酒飲もうよぅ」
「もう完全に駄目ね・・・」

何か諦めた感じでいうと、仕方なく彼女に右肩を貸した。

「どこ連れてくの〜」

「どこかはわからないけど、とりあえず静かなところへ行きましょう」

こんなところで女性一人放っておいては危ないので、どこか安全なところへ・・・と思ったのだが、

「あはは〜そんなこといってぇあたしのことが目当てじゃないのぉ?」
「なな、何を言うのよ!」
「ふふふ〜じゃあねぇ・・・こうしちゃう!」

ジュディはターニアの上に覆い被さって来た!

「きゃ!?」
「ランドも当てにならないしぃ今宵はたぁにゃちゃんと一緒にあつあつしっぽりとでもいいや〜」
「よくないわよ・・・って、ちょっと聞いているの!」

ターニアの制止も聞かず、ジュディは構わずにターニアの口許へ!

「ちょ・・ん!」
「はむ・・・ん・・ちゅ」
「あん・・んっ・・・」
「んんっん・・・」

お酒の味が混ざった甘い接吻がターニアに襲いかかる。突然のことに、顔を背けることもできなかった。


「ちゅっ・・ん・・・はあ〜」
「ジュ・・ジュディ・・・」
「うふふ、ターニアだぁ〜い好きぃ♪」
「もうっ!知らないわよジュディなんか・・・」

友人の豹変に戸惑いながらジュディの手から抜け出ると、彼女を放って一人で歩き出した。

「あん、まってよぅ」

足をフラつかせながらも、ターニアに付き従って何とか追って行く。

「どこかに水はないかしらね?」
「だったらぁ、あたしが潤わせてあげるのにぃ」
「普通の女の子でいたいから、お断りするわ・・・」
「ぶぅ」

しばらく歩き・・・拓かれた場所に出ると、二人の前に酒場が見えた。

「あの馬鹿の家じゃん」
「そうね・・・でも飲み物があるはずだと思うから、少し寄ってみましょうよ」
「異議なぁ〜し」

途中最中でランドとの件を打ち明け合った二人は、先の一件のことはよそに、意気投合していた。

「中は流石に暗いわね」
「いいじゃん、入っちゃおうよ」

静かにカチャリとドアノブを捻り、二人は入店する。

「ごめんください・・・って、やはり誰もいないわね」
「ねぇ二階に行ってみようよ」
「え、勝手に?」
「だったらランドを探していたってことにすればいいじゃない♪」
「そうね・・・」

空き巣でもないが、何故だか階段を静かに上がって行く二人。すると明かりがドアから洩れるのが見える。

「誰かいるようね・・・」
「じゃあ開けるよ〜」
「ち、ちょっと!」
「ひらけ!ぽん○っ○ぃーーっ!!」

バンっとドアが開け放たれた。するとそこに、女主人と青髪の青年が向き合ってマッサージし合っていた。

「わわっ!ジュディ・・・・・・それにターニア!」
「やっほ〜イイことしてるわねぇ〜イザ?」

突然の訪問者に驚きを隠せないイザ。さらに妹がそこにいたことは、正直兄として立場がなく感じた。

「ご、ごめんなさい、何かお邪魔しちゃって・・・」
「じ、邪魔だなんてそんな・・・」

何故だか弁解を試みてしまうイザであったが・・・

「あらぁ?エッチ丸出しで喜んでたくせに♪」
「なっ!?」

酒場の主人は胸を隠すような仕草をして、嬉しそうに且つ残念そうに呟いた。


「お兄ちゃん不潔よ・・・」
「きゃはははははは!」
「うぐっ・・・」

多勢に無勢・・・逆らうと何を言われるのか知ったものではない。これ以上の弁明は止めておいた。

「あっ、オザンナさん、水をいただきたいんですけど・・・」
「残念だけどないわよ?」
「ないんですか・・・」

「まあ炭酸水ならあるから、これでも飲みなさい」

二人にグラスが差し出され、シュワシュワっとした液体が注がれる。

「ありがとうございます!これで一息つけるわ・・・」
「わ〜い飲むどぉ〜」
「あっ、それは・・・」

イザは何かいいかけたが、それを無視して二人は枯渇した喉へと炭酸水を流し込み、一気に飲み干した!

「ふぅ、美味しい・・・これ味がついてますね」
「味・・・?あらら、これレモン酎とブレンドしちゃったやつだったわ」
「えっそんな、飲んでしまったじゃないですか!」

それをよそに、ジュディは一人で勝手にレモン酎のおかわりをしている。

「ごめんごめん、でもまあいいじゃない?ちょっと早いけど、これであなたも大人の仲間入りよ」
「な、なんかいい加減ですね」

普段のオザンナの性格とは打って変わって粗野だったので、少し驚いてしまう。

「ターニア、大丈夫か?」
「うん、ちょっとくらくらする・・・かな」

兄はいつでも優しい・・・だから、ターニアは彼にいつでも甘えたくなる。

「おっと・・・」

ターニアはその身を兄の腕に委ね、安らぎを求めた。

「しょうがないなぁ」

そう言うと、頭をくしくしっと撫でてくれる。これが彼女にとっての安息のひとときなのである。

「い〜なぁ、あたしもお兄さんがほしぃ〜」

物欲しそうに二人を眺めるジュディ。彼女もターニアと同様のことをしようとしたのだが・・・

「ダメっ、私だけのお兄ちゃんなんだから!」

と制止されてしまった。

「はいはい、ジュディちゃんはこっちに来なさいな。私がお姉さんになってあげるわよ」
「あん、お姉さまぁ〜♪」

そのように甘えた声を出すと、オザンナのふくよかな胸の谷間へと顔を埋めた。


「あらあら、相当に甘えんぼさんねジュディは」
「だってぇ、あたしんちにはお父様しか・・・不満はないけど・・・何だか寂しいんだもん・・・」

ジュディは三人と違い一人娘。心を委ねる家族が父だけでは、彼女にとって少し物足りなかったようだ。

「そうだったわね・・・」

オザンナは本当の妹のように、ジュディの頭をやさしく撫で撫でしてあげた。

「あはっ、いい子いい子されるって、いいなぁ・・・」

ターニアは羨ましそうにジュディを眺めている。

「なんだ、あっちに行きたくなったか?」
「う・・ううん、お父さんがいても、満たされないことがあるんだなって・・・」

主意はそこではなかったが、それも真意であった。

「それに、私はお兄ちゃんがいるだけで十分幸せよ」
「あ、ありがとう、ターニア・・・」

改めて言われると、つい照れてしまう。

「・・・なぁ、両親のこと覚えているか?」
「えっ・・・」

突然の問いだった。


前編 終

中編へ続く
2013年05月24日(金) 06:27:47 Modified by moulinglacia




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