白濁のヴィーナス(仮題)

 ハッサンの暴走が始まったのは、ガンディーノを訪れたあたりからだった。それまでの彼は呪文を唱えられない事もあって他の仲間達を気遣っていたのだが、いざ賢者をマスターしてしまうと彼に敵う者はパーティー内には居なくなり、ハッサンは事実上の支配者となっていた。そんな彼は、毎日の如く仲間たちに性的な奉仕をさせていた――(それでも流石にアルスは厄介と思ったらしく、暴走行為はアルスの居ない時に限って行われた)。

 じっとりとした闇に包まれた馬車の中に、情けないくぐもった声が響く。
「ああ……そうだ……上手ぇじゃねえかテリー……バーバラとはまた違うような……チャモロよりもずっと上手いぜ……」
 ひのきの椅子に座っているハッサンは、陶然とした面持ちでそう呟く。テリーの首はハッサンのごつごつとした岩のような手に握られており、妙な動きをしたら直ぐにでも首をへし折られるであろう事は容易に想像出来る。テリーは、ただただ無表情に同性の性器をしゃぶっていた。最強の剣士になるという夢をかなえる為には、こんな情けない理由で死ぬなんてもってのほかだ。
 微かに上下する頭に会わせて揺れるプラチナブロンドの前髪。剛直の巨大さを物語るかのように膨らむ頬。チャモロとバーバラは、その様子を為す術もなく呆然と眺めている。二人とも、とばっちりを受けたくないのだ。
 ハッサンが一際高い喘ぎ声をあげた瞬間、唐突に馬車の扉が開かれた。四角い光輝の中に人型の闇が浮かぶ――ミレーユだった。
「ちょっミレーユ……」
「あ、あのボク達は……」
 あわてふためくバーバラとチャモロを無視し、ミレーユは毅然とした面持ちでハッサンに近づく。
「姉さ……」
 すべて言い終わらぬうちに、ハッサンは指に力を込め、テリーの首を締め上げる。
「弟の代わりにあんたがしゃぶってくれるってのかい……?」
 その言葉を聞いているのか聞いていないのか、ミレーユはしなやかな白磁の指をハッサンの手に絡め、ハッサンを無言で見つめる。それを受けハッサンは満足げに鼻を鳴らし、指を開いてテリーを解放した。テリーは床に倒れ込んで数秒間むせるとおもむろに立ち上がり、雷鳴の剣が立てかけてある壁へと駆け寄る。
「やめてテリー」
 ミレーユは、ハッサンの剛直を両手で握りしめ、俯きながらそう叫んだ。
「なっ……」
 テリーは、怒りでわなわなと震えながら立ち止まり、ハッサンの方に向き直る。それを確認すると、ミレーユは続けた。
「ハッサンは強いわ……あなたの3倍、いやアルスの2倍。分かってほしいの……彼がいなくては世界の平和を取り戻す事なんて夢のまた夢……」
 反論不可能な事実を提示され、テリーは血がにじむ程強く下唇を噛む。バーバラとチャモロは、気まずさの余り馬車の外に出てしまった。
「だから……私がみんなの分まで灰を被るわ……」
 ミレーユはそう言うと、真っ赤な舌を蛇のように繰り出し、ハッサンの赤黒い亀頭を舐め上げた。ハッサンの腰がびくんと跳ね上がる。
「ねえいいでしょ……私が毎日……いえ、あなたがその気になったらいつでもしてあげるから……他のみんなに迷惑をかけるのだけはやめて……」
 ミレーユは、お祈りするかのように手を胸の前で組んだ――その手には屹立したペニスが握られているが。
「駄目だな……もっと必至に、いやらしく頼み込んでみろ」
 ミレーユは少し躊躇った後、ぎゅっとペニスを握りしめると一気にまくしたてた。
「私をあなたの性奴隷にしてください……私の体を、口を、おっぱいを、足を、おま○こを毎日使ってください……他の人なんかにかまわないで私だけを使ってください……」
「おいおい、そこまで言えたぁ言ってねぇが」下卑た声で笑い、「まあいいだろ」
「ありがとうございます……」
 そう言うとミレーユは、膝立ちになってハッサンの股間に顔をうずめた。優に30センチはありそうな赤黒い怒張に手を添えてほぼ90度まで天を仰がせると、ミレーユは膨らみきった睾丸を舐め始めた。赤い舌をちろちろと出しながら、最初にペニスの付け根の部分、次に両の袋、最後に袋の裏を、皺の一本一本を唾液で満たすかのような丁寧さで舐めあげる。怒張が、ぺたぺたと額に当たっていた。
「どう……気持ちいい……」
 ハッサンは、無言で頷く。今までミレーユにだけは奉仕させてこなかった――自分には扱えない高嶺の花、という気がしていたのだ。しかし、その女が今では自分から進んで奉仕している!その満足感だけでも天に昇りつめんばかりの快感だったが、それに加えて――おそらくはガンディーノ王仕込みのものなのだろう――ミレーユのテクニックは絶品だったのだ!
 ミレーユは袋を一通り舐め終えると、口を大きく開けて両の袋を飲み込み、それと同時に右手で怒張をしごき始めた。ペニスを包み込む暖かい指が回転するように上下し始めると直ぐに亀頭の先から先走り液が噴き出し、ミレーユの手に垂れ、ぬちゃぬちゃという淫靡な音が響く。二つの睾丸は、生暖かい口内で、ざらついた舌によって執拗に攻められていた。すぐにでも射精してしまいそうな快感に必至に耐えながら、ハッサンはミレーユに命令する。
「ひ、左手があまってるだろ」
「うう(なに)?」
 ミレーユは少し手を止め、睾丸を口に含んだままハッサンを見上げた。何時もと同じ、清楚で冷徹で繊細なミレーユの貌。ただ珊瑚のように紅い唇だけが、汚らしい睾丸を含んで無様に横に広がっている。その崩れ具合はひどく卑猥で、ハッサンはその様を見ただけで危うく出そうになってしまったが、渾身の力を振り絞って精液を押しとどめる。
「その余ってる左手で――オナニーするんだ」
 ミレーユは一瞬眼を丸くしたが、すぐにいつもどおりの切れ長に戻り、観念したように左手を股間に持っていって自慰を始めた。大陰唇を軽く撫でまわしたあと、小陰唇をもてあそびながらクリトリスをこねくりまわす。その様はスカートに隠れて直接は見えなかったが、かすかに聞こえるぐちょぐちょという湿った音と、ミレーユの上気した頬や震える伏し目がちの睫と相まって、実に淫靡だった。
「おいおい……もう濡れてやがったのか……実はこういう事が好きで好きでたまらねえんじゃねえのか」
 ミレーユは何も答えずに無言でペニスを強く握りしめ、手コキを再開した。3分の1ほどひねりながら手を上下に動かし、時には親指の腹で亀頭をねぶり、時には人差し指で亀頭の付け根の裏を刺激する。
「ああ……ぐっ……」
 ハッサンの腰がビクビクっと痙攣し始めると、ミレーユは小細工をやめ、上下運動のピッチを上げた。それにつれて左手の動きも速まり、ミレーユ自身の絶頂感も高まってきた。淫液が太股を伝わって床に垂れ、黒い染みを作り出す。あまりの快感に、ミレーユはペニスから指を放して睾丸を口から放り出し、大きく喘いだ。
「ああっ…あふっ…いい……いいっいいっ……!」
 外気が睾丸を刺激し、精液の奔流がこみ上げてくると、ハッサンは反射的に腰を浮かし、亀頭をミレーユの顔にむけた。
「あああああああああああっ」
「あ……あ……うっ……いや……いやぁっ」
 びゅっ。びゅっ。びゅっ。何回かに渡って放出された白い粘液は、ミレーユの顔面を白く染め上げるだけでは飽きたらず、鼻梁を伝って服に落ち、張り出した胸の部分に黒い染みを作る。
 ハッサンが果てるのとほぼ同時に絶頂に達したミレーユは、呆然としながら顔にぶちまけられた粘液を指ですくいとり、あやとりのように弄んでいる。ハッサンは、最高の満足感を得て、高い声で笑った。
「ははは……ん?」
 じょぼじょぼじょぼ……。ミレーユの脚と脚の間から、黄色い液体が滴り落ちていた。
「はは……そうか……小便がしたくてダンジョンから出てきたのか」
 今回のダンジョンはモンスターが弱いので、アルスが3人で十分と判断したのだろう。
 最後の一滴が床に落ちると、ミレーユは小便の水たまりと化した床にぺたっとへたりこんだ。
「まだ……俺はもう一回出したいんだがな」
 ハッサンはそう言うと、ミレーユの美しいブロンドヘアで萎えたペニスを拭った。ミレーユは、精液でぐじゃぐじゃになってしまった髪の毛を精液まみれの指で気怠く解きながら、ただ呆然とハッサンの股間を眺めていた。

「もう一回……」
「俺が望む時は何時でも、ってついさっき言ったよな」
「ん……でも……ちょっと……そろそろアルスが帰ってくるかもしれないし……」
 尚も渋るミレーユにハッサンは痺れをきらし、後頭部に両手をまわして頭を固定し、早くも硬く勃起しているペニスを硬く閉じられた唇にぐいぐいと押し付けた。ミレーユは、必至でふんふんと鼻呼吸をする。
「ちっ、強情な奴だな」
 と、ミレーユは鼻と上唇の間にある溝にたまっていた精液を吸い込んでしまい、思わずむせ込んでしまった。ハッサンは、その隙を逃さず一気にミレーユの頭を股間に引き寄せ、それによって必然的に、剛直はミレーユの口内に進入した。喉の奥まで犯され息が詰まってしまったミレーユは、必至でハッサンの太いふくらはぎを握る。
「んんんっ……んんぅん、んんん」
「もう一回する気になったかい?」
 了解を示すようにミレーユがふくらはぎを強く二回握ると、ハッサンはミレーユの頭から手を離した。ミレーユはキツツキのように素早く頭を後ろに振ってペニスを口から引き抜き、激しく咳き込みながら酸素を取り入れる。ある程度息を整えると、彼女はハッサンのペニスを両手で握り、上下にこすり始めた――しかしハッサンは、すぐに彼女の手首をつかみ、上下運動をやめさせた。
「ワンパターンだな」
「さっきこれで十分気持ちよさそうだったから、今度もこれでいいかなと……」
「口でしろ」ミレーユは無言で俯く。
「意味分かってんだろ。言ってみろよ」
「……つまり、フェラチオしろって……」
 ハッサンは、その通りだ、という風にうなずき、ふんぞり返るように座り直した。優に100kgを越えるハッサンの全体重を預けられた背もたれは、ぎしぎしと悲鳴をあげている。ハッサンの性欲を預けられた私は悲鳴をあげることすら許されてないのに――なんてことを思いながら、ミレーユは口唇奉仕を開始した。
 最初はまず、汚れを落とす事から始めた。付け根に群生している陰毛に付着している精液を、一本一本丁寧に唇でこそげとり、次に亀頭の付け根に付着している恥垢を舌先ですくいとる。ハッサンは当然包茎ではないが、最近水浴びをしていないのか、恥垢はかなり溜まっていた。ハッサンは下卑た笑いを漏らす。
「そんな臭いモノよく喰えるなあ?お前、澄ました顔して、相当な変態なんじゃないか」
 ミレーユは、侮辱の言葉に耐えながら黙々と恥垢をすくい取る。その悪臭は強烈だったが、それが逆にミレーユの被虐心を煽り立ててもいた。口の中に、あのなんとも言えない臭いが広がるたびに、子宮がずんと疼く。股間に、また淫液が溢れてくるのが分かった。どうしようもなく淫乱な自分がひどく情けなくなる。ガンディーノでかけられた淫乱化の魔法に責任をなすりつけてみたところで、その罪悪感は消えはしなかった。
「おいおい、何泣いてんだ……涙と精液が混ざって、綺麗な顔が台無しになってるぜ。ま、いいからさっさとおしゃぶりを再開しろよ」
 一通り恥垢を取り終わると、裏筋へと移行した。根本からカリまでを何度も舐め上げ、途中何回か、すぼめて尖らせた舌先で亀頭の付け根の柔らかい部分を刺激する。裏面の全域が唾液でべとべとになると、今度はハーモニカを吹くように、血管に沿って交互に両側面を舐める。
「どお、私、龍を呼ぶ笛だけじゃなくてハーモニカも得意なのよ……それに茸の傘の部分大好き……」
 ミレーユは半ば自棄気味でそう言うと、はむっと亀頭を唇で包み込んだ。そして、尖らせた舌先で執拗に小さなくぼみを攻める。いつしか右手は乳房をもみしだき、左手は陰部をこすっていた。
「あふっ……んっ……くふっ、んんくふぅ……うああっ……」
「おいおい行儀が悪いな……モノをしゃぶっててその気になっちまうなんて、色きちがいそのものじゃねえか」
「そんなことっ……ああっ……んっ……うううっ……!」 
ミレーユは、たまらずにハッサンのペニス全体を呑み込んだ。一瞬息が詰まるが、気にせず頭を前後に振り、そして吸う。その激しさと同調して、マスターベーションも激しさを増す。二人の絶頂感は、ほぼ同時に高まっていった。
「ああっいっちゃういっちゃうっ……いくっいくぅっっ」
 だが、先に達したのはミレーユだった。びくびくっとしばらく痙攣した後、ペニスを口に含んだまま、ハッサンの股間に頭を預けてぐったりとへたり込んだ。
「おいおい、先にそっちがイッてどうすんだよ……どうしようもねえ低脳女だなったく……」
 ハッサンはそう言うとミレーユの頭を股間からはなし、ゆっくりと仰向けに寝かせた。汗・精液・尿によって、ぴっちりと肌に張り付いた踊り子の服。微かに上下する乳房。上気した頬。ハッサンはその様子をながめながら自分で自分のモノをこすった。そして、射精する直前に手近の鍋を手に取り、精液をその中にぶちまける。精液は先ほどよりは薄いが、その分量は多かった。彼はそれを満足げに眺めると、大声を張り上げた。

「チャモロッ中に入れっ」
 おどおどとチャモロが中に入ってくる――ミレーユの痴態を見て勃起しているのが、服の上からでも十分分かった。
「おいチャモロ、いつも奉仕してくれたお礼だ、こいつを使ってヌいていいぜ」
 一瞬チャモロの顔がひきつる。彼は確かに男だ――しかし、その前に神官だった。女性を性処理道具として使うことなど彼の倫理観が許さないだろう。
「す、すみませんが、お、お断り申し上げます……」
 ハッサンはにやにや笑いながらミレーユの横に跪き、胸部の布を破った。現れたミレーユの乳房は円錐型で、その細い体に後からとってつけたように大きかった。
「ほらよ、ミレーユ、そのおっぱいでしてやれよ……」
「……私はあなたの奴隷にはなったけど他の人の奴隷になるとは約束してないわ……」
「奴隷はご主人様の要望を何でも聞くもんだと思うんだけど、なんか文句ある?」
 ミレーユは諦めきったように睫を伏せ、おもむろに起きあがると、正座してチャモロを呼んだ。
「お願い……来て……」
 チャモロは最初まごまごしていたが、結局ミレーユの魅力には抗いきれず、彼女の前に座った。
「どうすれば……」
「仰向けに寝て……」
 チャモロが言われた通りにすると、ミレーユは胸がペニスの位置にくるように調節してチャモロに覆い被さった。
 怒張は水の羽衣を押しのけ、包皮を破って天を仰ぎ、その先からは先走り液がどくどくと流れ出していた。ミレーユは、胸の谷間にその棒を導き、すっぽり収まると乳房を上下に動かし始めた。そのあまりにいやらしい行為に、彼女は子宮が疼くのを感じた。下半身がもどかしい感じで、太股をもぞもぞとこすり合わせる。ハッサンはにやついた笑いを貌に浮かべながら彼女の後ろにまわり、ブーツを脱いだ爪先でそっと大陰唇をつついた。
「キャウンッ」
 ミレーユの腰が、びくっと跳ね上がり、ラブジュースがどくどくと溢れてきた。ハッサンは割れ目の中に爪先を押し込み、ぐりぐりと中を刺激する。
「はは、やっぱとんでもねえ淫乱だ……マゾッ気もあるんじゃねえか」
 チャモロは、必至に首を持ち上げてその様子を食い入るように見つめていた。白い乳房が大きく上下し、自分の亀頭が見え隠れする。ぬちゃぬちゃぬちゃ。最初はさらさらとしていた感触が、先走り液と汗によって段々と粘着質のものへと変容している。オナニーすら一ヶ月に一度程しかしない少年にとって、これはあまりに強烈な刺激だった――実際、ゲント族の厳しい戒律によって生み出された鉄の自制心を持っていなければここまでは保たなかったろう。
「うっ……出、出そうです……」
「んっ……」
 ミレーユは、乳房の隙間からわずかに顔を出している亀頭を口に含んだ。仮性包茎が生み出すハッサンよりも強烈な臭いが口一杯に広がり、彼女はつい熱い吐息を漏らしてしまった。
「ああっ出るっ出ますっ」
 びゅるっびゅるっ。熱い吐息が亀頭に当たった瞬間、チャモロは射精した。ミレーユの口は、三週間分の若い精を受け止めきれず、いくらかは外に漏れ、顎を伝って垂れて乳房を汚した。
「おっと、飲み込むなよ、ここに吐き出すんだ」
 ハッサンはそう言うと、先の鍋をミレーユに差し出した。ミレーユはそこに精液を吐き出す――ぬらぬらと光る唇の間から滴り落ちる精液。その情景にチャモロは興奮し、また射精した。先と余り変わらない濃さの精液がミレーユの顎を直撃し、一部は肩甲骨の窪みに溜まり、一部は乳房に垂れる。ミレーユは、それらの精液もすくいとって鍋に移した。
「ははは、結構溜まったじゃねか……でもまだ足りねえな……おっ、そこに丁度チンポを
ギンギンにした男がいるぜ」
 ハッサンの指さした先にいたのはテリーだった。あわててズボンの前を隠すが、時既に遅し、その膨らみは三人にしっかりと観られてしまった――彼が赤面するのを観るのは、ランプの魔王が仲間になるようなものだった。
「姉さん……ごめん……」
「あなたが謝る事ないわ……」
 ミレーユは鍋を手に取り、そう言いながらテリーに歩み寄る。
「ごめんね……ごめんね……」
 そう言いながらテリーの足下に跪き、ズボンの上から剛直を握った。
「よせよっ」
 ミレーユは構わずズボンと下着を一緒に下ろす。
「実の姉と弟がこんな事していいわけないだろっ馬鹿っ」
 しかし、腹にくっつかんばかりに勃起している怒張の前では、その言葉は説得力皆無だった。
「ごめんね……ごめんね……」
 何度も何度も消え入るような声で謝りながらミレーユは立ち上がり、スカートを腰までたくし上げてテリーに抱きつく。
「はは、本番は弟だけってか……そうとう歪んでやがるぜ、変態め」
 ハッサンに侮辱され、テリーは血がにじむ程強く下唇を噛んだ。ミレーユはその前歯を軽く舐めて口を開かせ、唇を合わせて舌を入れる。そして、そうして抱き合ったまま180度方向を変え、自分の背中を壁に付けた。最初はゆっくりだったテリーの腰の動きが段々と速くなり、ついには馬車が揺れ始めた。
「猛っている、猛っているぞテェリィィー!!」
 ハッサンの野次なんか介在する余地のない、二人だけの空間がそこにあった。単純な前後運動だけの一次元空間。にちゃぬちゃという湿った音と、板材が軋む乾いた音だけが鳴り響く。
「ああっあっ、あっ、ごめんっ姉さんっ」
「来てっテリーッ」
 二人の動きが止まった。しばしの放心状態を味わったのち、精神的にも肉体的にもすべてを出し切ったテリーは、チャモロと一緒に黙ったまま馬車を出た。
 馬車に残されたのは、結局ハッサンとミレーユだけになった。
「おいおい、中に出しちまってどうすんだよ」
「……」
「掻き出せよ」
 ミレーユは、もうどうにでもなれといった風情で鍋にまたがり、左手の人差し指と中指で性器を広げ、右手で中に入っている精液を掻き出した。
「フフフ……良し……さあ仕上げだ……」
 そう言うとハッサンは、鍋の中に勢い良く小便をし、袋から取り出したひのきの棒でそれらをよくかき混ぜた。それを、ぺたっと床に座り込んでいるミレーユの頭上に掲げる。
「さあ、受け止めるんだ」
 ミレーユは面を上げ、両の掌もお椀型にして、体勢を整えた。その眼は虚ろで、いつもの理知的な輝きは失われていた。そして鍋が傾き、小便と精液の混合液がミレーユへと降り注いだ。黄色いねばついた液体は、顔面全体に幕を張り、口腔を満たし、髪の一本一本を汚しつくし、乳房に垂れ、谷間から流れ落ちて性器へ進入し――ほぼ全身を覆った。
「あはっ……」
 ミレーユは、虚ろな眼で笑った。そして、高価な香水のように全身に精液を擦り込み、口腔内の液体はごくんと飲み込み、染毛剤のように髪に擦り込んだ――ちょろちょろと尿を漏らしながら。ハッサンは、その様子をこれ以上ないほどの至福の表情でながめていた。

「……もうすぐアルスが帰ってくるわよ。アモスも。ホイミンも。どう片づけるの……」
 ハッサンはにやりと笑って、袋から出した砂時計をひっくり返した。すると、馬車はアルスが出た直後の状況とそっくり同じ状態になった――皆の記憶以外は。

「さあ、もう一回やろうか?」
2008年05月14日(水) 06:38:13 Modified by dqnovels




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